Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

平成仕事人・ポスト中村主水の回顧

遺された者たちの話

 

NOVA「さて、仕事人話の続きだ。2010年に仕事人の旗頭である中村主水を演じた藤田まことさんが亡くなって、今年で10年になったわけだ。その後、今回の2020に至るまで、7作のスペシャルドラマが作られた」

晶華「私は2018年生まれだから、直接知ってるのは2019だけなんだけど」

NOVA「一応、2018年にも放送されていたんだが、放送日が1月だったから、お前が生まれる前か。まあいい。『仕事人2018』というタイトルの作品は存在しないしな」

シロ「放送されなかった年は、2011年と2017年ですね」

NOVA「2011年は東日本大震災と、中村主水亡き後の話をどう作るか見えていなかったことが考えられる。2017年は理由不明だけど、もしかすると作曲家の平尾昌晃さんがその年の7月21日に亡くなったことと関係しているのか、いないのか」

シロ「そして、2018年に放送された分は、タイトルがただの『必殺仕事人』」

NOVA「正直、紛らわしいよな。俺は必殺マニアだが、主水亡き後の小五郎シリーズはあまり振り返ってみる機会を作らなかったので、例えば『仕事人2014』がどんな話? と聞かれても、素で答えるのは無理だ。だから、この機に記事まとめして、それぐらいの質問なら軽く答えられる令和の必殺マニアの入り口を開けたいと思う」

晶華「NOVAちゃんの必殺マニアの基準は?」

NOVA「作品タイトルを挙げられると、うん、それはね……と脳内記憶回路と連動して、すかさず語れるレベル。さすがにサブタイトルを出されて、全部答えられる自信は全くないし、昭和のウルトラマンレベルには至らないが」

シロ「必殺仕事人Ⅳの第一話のサブタイトルは?」

NOVA「『主水、悲鳴を上げる』だったと記憶する」

晶華「正確には、『主水 悲鳴をあげる!』だけどね」

NOVA「、の代わりに空白とか、!までいちいちチェックできるかよ。人と話しているときには、誰もそんなこと気にしないっての」

リトル「同作最終話は何ですかぁ?」

NOVA「『秀 夕日の海に消える』だな」

晶華「ブブーッ。正確には『秀 夕陽の海に消える』よ」

NOVA「だから、字で読まなきゃ、夕日と夕陽の漢字の違いなんて誰も気にしねえよ」

晶華「でも、ブログ記事や同人誌を書くマニアさんだったら気にするレベルね」

NOVA「ああ、そうだ。少なくとも文責を負う立場だと、知ってるはずの知識でもきちんと資料に当たって確認する。そして、稀に資料の方が間違えていたりして、そこにツッコミ入れられるレベルになると本物だ」

晶華「とにかく、マニアレベルの話になると凄いってことね」

NOVA「ああ。仕事人Ⅳ39話のエリマキトカゲ回とか、仕事人Ⅴ9話のキン肉マン回とか、有名な話は誰かが話題に出したら、ああ、あの話ね、と反応できないと、会話が弾まない。まあ、知らない人間には懇切丁寧に説明してあげるのがマニアで、その話を聞いて上手く相槌を打てるのが、マニアと付き合うのに必須の会話能力だな」

晶華「へえ、必殺にキン肉マンが出たんだ」

NOVA「そう、作者コンビがゲスト出演して、ゆでたまごを投げて悪人を牽制するんだ。そして、お付きのキン肉男が格闘技で仕留める……という妄想を自分たちのマンガで描いてみせる。だけど、現実はそんなにうまくは運ばず、仕事人マニアの素人が悪人の手で殺されるという哀しい話。なお、その前年の映画では、同じマンガ家の赤塚不二夫さんも霞の半吉という役でマンガで殺し技を披露するけど、呆気なく殺される役を演じていたな」

晶華「『必殺シリーズとマンガ家』というタイトルで、記事が書けそうね」

NOVA「だったら、このタイトルを挙げないといけないが、話が際限なく膨らみそうなので、今はパス。映像作品の回顧に戻ることにする」

必殺仕置長屋 1

必殺仕置長屋 1

 

 

 2012(主水亡き後の再出発)

 

NOVA「さて、この話からオープニングナレーションが春風亭小朝さんから、市原悦子さんに代わって、うらごろしファンを喜ばせつつ、新出発の雰囲気を醸し出した」

晶華「その人も昨年1月に亡くなったのよね」

NOVA「ああ、追悼記事はこちらな。まったく、必殺話を展開すると、どうしても追悼記事が多くなって、湿っぽくなるよなあ。まあ、こういう供養記事を大切にするのも、必殺マニアの嗜みと思うんだが」

晶華「この回のスペシャルゲストは高橋英樹さん」

NOVA「そう。中村主水亡き後の時代劇ファンの興味を引くために、この時期、大物役者を出演させて、渡辺小五郎と対決させて、必殺の顔としての株を上げようとしていたんだな。一方、若いドラマファンのためには、売り出し中の女優・剛力彩芽をプッシュして、話題集めに励むわけだが、作品としては高橋英樹さんが悪役と助っ人仕事人の双子を演じて、いろいろとトリッキーに仕込んだ形。俺の感想はこちら

シロ「他にトピックとしては?」

NOVA「そうだな。小五郎の職場が、お馴染みの南町奉行所からオリジナル設定の本町奉行所に替わり、町役人としての格が下がったところだな。窓際とはいえ本社勤務だったサラリーマンが、子会社に飛ばされた感じ。まあ、撮影事情的に南町奉行所の大門とかが使いにくくなったのか、本町奉行所の職場が寺子屋レベルのセットになって、奉行所とは名ばかりのみすぼらしさを露呈。一応は、町人に対して権力者の立ち位置だった主水さんに比べて、小五郎周辺の権力感覚の頼りなさが露呈して、彼よりも上司の増村さま(生瀬勝久さん)の苦労人ぶりが次第に見えていく形に」

シロ「ええと、その人はジオウに出てきた時計屋のおじさんですね」

晶華「ああ、散々、黒幕じゃないかと疑われていたけど、実はいい人だったメガネの人」

NOVA「うん。特撮番組との役柄比較するのも、本筋とは関係ないけど、結構ネタ的に楽しめるよなあ。小五郎の前の上司、坂本さまも宇梶剛士さんで、ハッピーバースデイの鴻上会長だったけど、そちらは2010年なので、坂本さま→鴻上会長の順だったから、リアルタイムだと響かなかった。まあ、宇梶さんはその前にウルトラマンガイアで堤チーフをやっていたから、知っている人なんだけど、2009当時はあまりつなげて考えてなかったな」

 

2013(里見浩太朗さんキター)

 

NOVA「次に2013。ここでのトピックは、水戸黄門の助さんからご老公に上り詰めた大物時代劇俳優の里見さんのゲスト出演だ。あとは、助っ人仕事人に中村獅童さん演じる『胡桃割りの坐坊』さんの登場と、仕立て屋・匳が俳優の不祥事により本作で退場したことぐらいか。感想ツイッターはこちら

 

2014(新人・隆生と、高橋英樹さん再び)

 

NOVA「前作の後、匳が登場できなくなったので、代わりに新人の隆生(知念侑李)が登場。本作は、彼を中心にした作劇で、改めての仕切り直し感が強い作品だったなあ」

晶華「NOVAちゃんは、隆生くんを全くと言っていいほど評価していない、と」

NOVA「いや、だって年一本のスペシャルだぜ。今さらど素人のキャラを登場させて、じっくり成長を見届けようなんて、まだるっこしいドラマに付き合えるか? そういうのは連続ドラマでやれよ。殺しのプロ同士のチームとして、匳がそこそこいいキャラとして定着していたのに、今さら源太よりもさらに頼りない若造を加えて、ドラマとして面白くできるか。結論、できない。俺は基本的に2014以降の仕事人をレギュラー間のやりとりを基調としたドラマとしては、ほぼ期待していない」

シロ「だったら、何を期待して、見ていたんですか?」

NOVA「ゲスト大物俳優の役柄と熟達した演技。他に期待できるものがあるか?」

リトル「隆生さんの成長は?」

NOVA「成長すればいいんだけどな。結局、5年間見ていても、あまり成長した感はない。脚本家の寺田さんはこのキャラを永遠の素人として扱いたかったんじゃないだろうか。まあ、脚本家が替わった今年は、頼れるキャラになった隆が見られるかもしれないと、少しは期待してみるか。大体、新人仕事人だったら、見せ場を派手に彩るために、せめて殺し技ぐらいアイデアに満ちた面白いものにしてもいいのに、ただの短刀で刺すだけとか、必殺ファンの楽しみを何だと心得るんだ」

晶華「NOVAちゃんの愚痴はさておき、次に行きましょ」

シロ「一応、当時の視聴ツイッターはこちら

 

2015(瓦屋さんの登場と女仕事人)

 

NOVA「2015は俺的に当たりだ」

晶華「あまり期待していなかったんじゃないの?」

NOVA「それでも新作が来れば見る。それがファンの嗜みだろう? そして見たからこそ、ファンとして文句を言う権利もある。次に自分のツボを突く作品が来ることを信じてな。ろくに見てもいないのに、よく知りもしないのに、文句を言ったり、キャラをバカにするような奴とは、話にならん。

「また『文句があるなら見るな』というのも間違っている。『作品批評も含めて、毎回の期待と失望と愚痴も含めて、マニアは楽しんでいる』んだ。そして2回に1回でも、3回に1回でも自分のツボを突く作品が来たら、きちんと褒める。別に文句を言っているわけじゃない。自分はこういうのが好きなんだ、と明言した上での批評なら、それは悪口じゃない。自分の批評基準を明確にして、自分の愛はここにあり、と宣言した上での、ただの揚げ足取りじゃない批評、それが俺の批評スタンスだ」

シロ「で、2015は何が当たりなんですか?」

NOVA「まず、敵ボスが竹中直人さんだ。当時放送していた仮面ライダーゴーストの仙人さまなんだよ。もう、これだけで特撮ヒーローネタと絡めて話題にできる。つまり、俺が楽しい。楽しめる作品を褒めて何が悪い?」

晶華「それって、ただの主観よね」

NOVA「感想は主観でいいんだよ。ただし、理由は明確にな。俺は特撮ファンだ。必殺が特撮ゆかりの俳優を登場させてくれた。すなわち特撮ファンを楽しませる作品を提示した。だったら特撮ファンとしては歓迎すべきところだろう。そこに何らの論理的矛盾はない」

リトル「それだけですかぁ?」

NOVA「もちろん、違う。何よりもこの回は待望の女仕事人『泣きぼくろのお宮』(山本美月)が登場して、華やかな技を見せてくれるんだよ。仮面ライダーで言えば、待望の女性ライダー登場みたいなものだ。お宮と、その旦那である『瓦屋の陣八郎』(遠藤憲一)の夫婦仕事人が、夫婦をテーマにしたドラマと上手くフィッティングして、ドラマもアクションも完成度が高い。惜しむらくは、お宮が死んじゃうことだけど、それが陣八郎のキャラを引き立てることになった。女性が殺されて男が仇討ちに燃えるというのは、定番だけどいいドラマだよね」

晶華「殺される女の子キャラにとっては、いいとは言えないんですけど」

NOVA「だから、本当は殺されずに男女共闘がベストなんだって。ただ、それとは別に美しく散るとか、愛する男を庇って戦いの中で死ぬというのがお宮のいいところなんだ。ただの犠牲者ではなくて、戦士としての誇り高い死なんだよ。玉櫛で描けなかったことを、寺田さんが描き直してくれた感じはあって、そこは好意的に受け止めた次第。当時のツイートはこちら

 

2016(さらば結城さん。そして友情劇の危機)

 

NOVA「この回は、珍しく小五郎がドラマの中心になる。彼の同僚同心、結城新之助が死んでしまう話で、2009ラストの大河原伝七に次いで、2人めの日常相方の死。ゲストではなく、レギュラーの退場劇ということで、いつもよりも小五郎の感情移入度が高い。彼を主役としたドラマとしては当たり回と言える。ただ、その分、他のキャラが割を食った感じで、チーム物としては偏り過ぎた感が強いかな」

晶華「この辺のバランス感覚って難しいわね」

NOVA「レギュラー放送だと、毎回キャラのローテーションがあっていいんだけどな。年一スペシャルだと、推しキャラの扱いの大きさが問題になる。俺は小五郎が好きじゃないので、彼が主役のドラマを強調されても、楽しくないわけだ。一方で、結城さんがコメディーキャラとして機能していたので、そのイジメられるかのような非業の死、そして一番身近で止められるかもしれなかった小五郎のいつもの見て見ぬふりが祟って、そこは主水さんと違うキャラゆえに、余計に後味が悪い印象なんだな」

シロ「主水さんと小五郎さんでは何が違うのですか?」

NOVA「主水さんは、奉行所で無能という立ち位置なんだ。だから、自分がイジメられることで笑われるし、周囲も期待しない。そして、無能な仮面ゆえに、真面目で危なっかしい同僚に対して抑えが利く立場でもない。だから、犠牲が出ても、主水さんには止められないんだ。一方、小五郎はそうではない」

晶華「有能に立ち振る舞っているの?」

NOVA「いや、要領よくサボるキャラなんだ。そして、自分がサボっているのに、真面目な結城さんに自分の落ち度を肩代わりさせる。つまり、表で貧乏くじを引きがちな主水に対して、小五郎は貧乏くじを引かず、主水のコメディーポジションを結城さんが担うことになっていたんだ。つまり、結城さんが殺されたのも、イジメのスケープゴートにした小五郎の遠因があるわけで」

晶華「つまり、小五郎さんが悪いってこと?」

NOVA「単純に良い悪いじゃなくて、おそらくは脚本家の寺田さんがこの話と、2年後の2018年版とで、自分の描いてきた小五郎のキャラを再定義しようとしたんじゃなかろうか」

晶華「キャラの再定義?」

NOVA「そう。元々、渡辺小五郎は『中村主水の後継者』として、しかし『主水と異なるキャラ』として作られた経緯がある。つまり、若き日の主水、とりわけ前期必殺の仕置屋、仕業人、そして商売人時代のプロフェッショナルな恐ろしい殺し屋時代の主水だ。仕事人になって、年若い仲間を仕切るチームリーダーの主水じゃなくてな」

シロ「老年の主水さんが、年若い自分に似たキャラを盛り立てて、看板を担ってもらおうとするのが仕事人2009だったという意見ですか」

NOVA「そう。そして連続ドラマの2009は前期必殺のオマージュを濃厚に、小五郎を終盤で掘り下げて、チームリーダーとして盛り立てるクライマックスで終わった。これはいい。問題はその後だ」

晶華「後見人的な主水さんが役者の逝去で出られなくなったのね」

NOVA「これで、寺田さんの描こうとしていた小五郎の青写真は狂うことになったのではないだろうか。その後は、小五郎を主水の後継者として殺しのBGMだけ継承してみたりするものの、いまいちしっくり来ない。作品シリーズとしても匳の退場とか、新キャラの加入など、小五郎以外のイベントにしばらく物語を割かれることになる。小五郎のチームリーダーとしての成長を描く余裕などないわけだ」

シロ「そんな小五郎さんに再度のスポットが当たる回が来た」

リトル「それが2016ですかぁ」

NOVA「正確には、2016と通称2018の二部作だな。この2本は間を1年空けているため、連続して考えることはなかったが、今、つなげて考えると、ここで小五郎というキャラの見つめ直しが行われていることに気付いた次第だ。そういう視点で論を組み立ててみる」

晶華「論って、またややこしいことを言い始めたわね」

NOVA「まず、この2016の作品テーマは『友情や同僚意識、仲間の絆を信じていいのか』というテーマを各キャラにぶつけて、一先ず『否』という結論を出す。後味が悪くなるのも当然だ。友情とか義理人情とかを信じたキャラがみんな痛い目に合う話なんだからな」

リトル「それは酷いですぅ」

 

NOVA「まず、小五郎と結城さんの関係だけど、一応、表面的な社交は成り立っているが、どちらかと言えば、陽性で友達想いの結城さんが、ぼっちでさぼり魔な小五郎を気に掛けて絡む関係で、小五郎は一応、同僚だからと適当にあしらいながら、昼行灯を決め込む形だ」

晶華「そういうのって友だちと言えるの?」

NOVA「元々、小五郎ってキャラがベタベタした友だち関係に興味はないけど、要領はいいので、そつなく受け応えはしているんだよ。変に感情移入することは避けながらな」

シロ「だけど、この回で結城さんの不幸に直面して、小五郎さんが思わず感情を露わにするわけですね」

NOVA「もしかしたら、前に殉職した同僚、大河原さんの死が頭をよぎったのかもしれない。少なくとも、脚本家の寺田さんは意識したろうな。自分が要領よく災いを避けながら振る舞っている裏で、不器用な同僚が悪の手で殺された。もっと、何かしてやれたのではないかとか、仕方ないと割り切りつつも、小五郎の人情スイッチが作動したわけだ」

リトル「人情スイッチですかぁ」

NOVA「ただし、小五郎の人情スイッチは殺人暴走回路に直結している。その理由は2年後に判明するわけだけど、とにかく小五郎の情緒は実は大変危なっかしいトラウマに苛まれていたわけだ。だから、ここで起動した人情スイッチの副作用が、次作に後を引くことになり、プロフェッショナルでいられなくなった小五郎の姿が見られることになる」

 

NOVA「次に、ゲスト悪人の鬼頭進之介と結城新之助の幼なじみ関係が挙げられる。鬼頭を演じるのは、当時ジュウオウジャーで主人公のおじさんを演じた寺島進さんだが、キャラは全然違うなあ。鬼頭は冷酷な殺人鬼となっており、そのことを知らない結城さんに一方的に絡まれて(人の良すぎる結城さんは、小五郎や鬼頭の内面の闇に全く気づかない)、冷ややかに策にはめて殺害してしまう。ここでも描かれているのは、善意で友情を信じた結果の悲劇だ」

晶華「でも、それって相手が単に悪い奴ってだけじゃないの?」

NOVA「まあ、単純に考えればそうだな。しかし、ここで不思議な話の展開がある。この冷酷な殺人鬼に対して、今だ未熟な隆が挑むことになるんだ。作劇上の意味が全くないし、分不相応な対決カードと当時は思ったものさ」

シロ「そこで隆が奇跡の力に覚醒して逆転勝利とか?」

NOVA「必殺で、そういう奇跡の力はなかなか発動しない。ここでは、仲間の涼次が援護することで、隆が相手の隙を突くことができて逆転勝利を果たすわけだ」

リトル「連携による友情パワーって奴ですかぁ?」

NOVA「いや、ここで隆は自分が涼次にフォローしてもらったことに気づかずに、そこにいた涼次に食って掛かるんだ。『見ていたのなら助けて下さいよ』って。この話で、隆は理屈先行型で仲間に嫌味たらしいツッコミをし続け、最後の最後までギスギスした関係で終わってしまう。つまり、純情な新人キャラが素直に育つ物語を否定し、仲間意識が芽生えないまま(涼次の持つ仲間想いの人情を理解しないまま)、次作に持ち越される形になる。この話だけを見れば、相当に後味の悪い回だったと言える。当時の感想ツイートはこちら

晶華「普通に褒めてるじゃない」

NOVA「そりゃ、褒めるさ。俺は基本的にツイートでいちいち愚痴や不満を呟いたりしない。何だかんだ言って、視聴直後の充実感はあるからな。ただ、後からじっくり考えると、スッキリしないものはあったということだよ。そういう不満が吹き荒れたのが2018年のツイート

 

2018年の仕事人(チーム崩壊からの再生)

 

NOVA「この回は単独で見ると、これ以上にないほどのグダグダ作品なんだ。2016の方は、『小五郎を軸とした、晴らせぬ恨みを晴らす王道仕事人の物語』という意味では十分、必殺のお約束を守った物語だった。助けてくれた涼次に文句をいう隆も、『要するに、こいつは鈍感な素人だから何も分かってない奴なんだ』と切り捨てることで、気にしないでいられた。結城さんの悲劇がキツいほど、心情的には悪人をスッキリ倒してくれる物語に満足できる。グダグダ考えるのは後回しでいい、というのがリアルタイムのツイートなんだ」

晶華「で、今ごろグダグダ考えているわけね」

NOVA「回顧記事って、そういうものだろう?」

晶華「でも、2018年の仕事人は、そんな必殺見た直後はハッピータイムな必殺マニアなNOVAちゃんでも擁護しにくいほどの駄作だった」

NOVA「まあ、駄作だな。そこは否定しないよ」

シロ「否定しないんですか?」

NOVA「だって、中村主水の出る出る詐欺だし、小五郎がいつもの冷静冷酷殺人マシーンぶりを切り捨てて敵に翻弄されるだけのブレブレキャラになってしまったし、クライマックスの殺しのシーンがほぼ同士討ちのグダグダ展開で美しくないし、ラスボスが見捨てられた女の怒りを買った内紛劇で自滅的に終わるし、必殺の物語ですらないよ、これって作品。どこを褒めたらいい?」

晶華「正に酷評ね」

NOVA「一番笑ったのが、序盤で空中宙返りをする隆がいるんだが、そんな身軽なキャラじゃなかったはずなのに。しかも、その結果、着地時に足を滑らせて、頭を打って、記憶喪失。5才になったわけだ」

晶華「NOVAちゃん、それ、違う話が混ざっていると思う」

NOVA「まあ、5才のキラキラ話は、リーダーが記憶喪失の娘のことを信じて、キラメキを取り戻させた話だったけど、この2018年の話は、小五郎さんが過去のトラウマに苛まれてしまって、全く機能しなくなってしまったからねえ。記憶喪失の隆が、自爆テロを仕掛ける悪集団に洗脳されて敵に回り、いつもの晴らせぬ恨みを晴らす仕事人チームがほぼ崩壊状態」

シロ「そこを救ったのが、中村主水の影ですね」

リトル「役者さんは亡くなったはずなのにぃ?」

NOVA「いろいろな素材を合成させて、何とか仕上げたようだけど、ファンとしてはこういうのを見せられても、あまり嬉しくないんだよなあ。結局、中村主水頼みかいって感じがして。俺は中村主水が好きだけど、小五郎をあまりそこに縛りつけて欲しくないし、中村主水とは違う新しい魅力的な仕事人キャラも見せて欲しいわけで、中村主水というキャラを空虚な宣伝アドバルーンに使った作品作りをして欲しくないんだよ。それをするぐらいなら、村上弘明さんなど現役の旧作出演者を元締め格として新たな仕事人チームを結成するとか、主水さん以外のキャラにもスポットを当てて欲しいな、と」

 

晶華「では、単独で考えずに、前作2016の続きとして考えたら?」

NOVA「序盤、小五郎がこれまでにないほど説教魔になっているな。今だに新人の隆に当たり散らす。2009当初の源太に対する脅迫が蘇ったようだ。そのことが隆の記憶喪失の遠因になったりもする」

晶華「何だか小五郎さんがチーム崩壊の疫病神になっている感じじゃない」

NOVA「もう、この回の小五郎さんはやたらと情緒不安定でヒステリック気味なんだよな。そりゃ、中村主水も心配になって、化けて出てくるわ」

シロ「前作で同僚の結城さんの死が尾を引いているんじゃないですか」

NOVA「その割に、新しい同僚の住之江さんの名前をいつまでも覚えないんだけどな(ただのギャグネタだけど)。とにかく、小五郎さんはこの回で、村の庄屋の子だったのが幼少時に両親を惨殺されて、一人生き残ったトラウマを持つことが判明。それが今回の自爆テロの主犯だったラスボスということで、過去の因縁をあれこれ断ち切る流れなんだけど、自分の面倒を見るのが精一杯で、チーム崩壊の危機に何もできない、気に掛けないチームリーダー失格の烙印を、俺が押した」

晶華「いやいや。勝手に押さないでよ」

NOVA「押してもいいじゃないか。実際、チームリーダーとして描かれていないんだから。小五郎は壊れ、記憶喪失の隆を仲間に引き戻すべく、一番奮闘したのが涼次で、それを見かねて手を貸したのが陣八郎。この涼次と陣八郎のタッグが、記憶がないと妙に戦闘力が高まった隆を説得する過程がクライマックスなんだけど、ここで『殺し屋チームの結束』が強まった感は、2016との対比で非常に美化される。仲間意識に乏しく、小五郎からは叱責されていた隆が、敵に洗脳され、そして涼次の命がけの説得で正気を取り戻す。これはどう考えても、チームリーダーは小五郎ではなく、涼次だろう。俺は現仕事人チームのリーダーの座は誰がふさわしいか投票できるなら、間違いなく涼次に一票を投じるよ。もしも、必殺マニア度に応じた投票権利が与えられるなら、50票ぐらい投票しても許されるはずだ」

シロ「とにかく、前作では友情や仲間意識を否定していた物語が、中村主水や涼次の仲間を想う絆によって、完全な崩壊に至らずに再生する話、といったところですか」

NOVA「本来の必殺の王道話ではないかもしれないけど、チーム崩壊の危機という意味では、レギュラー放送の最終回にも匹敵するほどの緊迫感はあったと思う」

リトル「何だかんだ言って、褒めているみたいですぅ」

NOVA「まあ、どんな駄作と当時は思っても、後からでも褒めるところを見つけて納得するのが、俺のマニアの心意気って奴だからな。作風的に好き嫌いはあるにしても、駄目なものは駄目なものなりに、その作品の持つ意義を分析するぐらいはしておかないと、ただの感情論であって批評とは言えない」

晶華「つまり、この記事が2年前の仕事人スペシャルドラマに対するNOVAちゃんの総括ってことね」

NOVA「ああ、崩壊しかけた仕事人チームが、再生始動する話。寺田さん的には、2009最終話に次ぐ、スペシャルドラマの最終話にして、自分が作り上げた小五郎や涼次の物語の当面の決着回とも言える。最終回だったら、通常回みたいな定番話じゃなくても納得ってもんだ」

晶華「でも、まだ2019はあるわよ」

 

2019(安定した必殺王道話)

 

NOVA「2019の感想はこちらだな。今、読み返すと、陣八郎を甚八郎と誤記していることに気付いたので、赤面しながら直した」

晶華「自分のミスをきちんと気づいて、隠さないところがNOVAちゃんの個性よね」

NOVA「普通の人間はこういう時、何事もなかったかのような顔をして、いちいち自分のミスをさらさないと思うけどな。ただ、俺は『失敗から学ぶ男』『転んでもただでは起きない男』『自分の過ちさえ見つめ直して、ネタにする男』を自認しているからな。逆に、そうできる人間は共感と尊敬に値するし、失敗からいつまでも学べない者は割と軽蔑する。まあ、失敗が習い性になるケースもあるし、他人のミスはよほど酷いもの(作品やキャラのフォローなき悪口)でない限り、挙げ足取り的な指摘はしていないつもりだけど」

シロ「ミスかどうかはともかく、昔、駄作と認定していたものが、後年、視点を変えて再評価するケースもありますね」

NOVA「それが、過去を振り返ってみるってことだろう? 昔は気付かなかったことが、後から振り返って『なるほど、そうだったのか』と考えつける、自分の中でつながってくる瞬間ってのは、結構快感だぜ。それが自分の考えでつながったり、あるいは他人の見解を聞くことでつながる契機を与えてもらったり、まあ、きっかけはいろいろだけど、『2018年の作品は単独で見れば、必殺らしくない重苦しいだけの外れ回だけど、2016とセットで考えると、脚本家の中で一本の筋としてつながっているんじゃないか? もしかすると、寺田さんにとっては、それが小五郎と涼次のそれぞれのキャラの当座の最終回ではないか?』という発見につながったのは、今回、記事を書いた収穫に思える」

晶華「すると、2019の話は、最終回後の後日譚みたいなもの?」

NOVA「まあ、仕事人陣営に関しては、憑き物が落ちたようなスッキリした話になったな。敵側のどんでん返しも想定の範囲だし。ただし、ゲストの女性キャラを殺さずに生かしたままハッピーに終わらせたのは、この脚本家にしては、非常に珍しいことなので、ある意味、脚本家を蝕んでいた情念の闇みたいなものが解消されたのか、もう必殺というテーマで書きたいものは書き終わったのか、満足できたのか、いろいろ感じるところはある」

シロ「脚本家の真意とか、執筆裏事情なんてものは、インタビュー記事でもあればいいんですけどね」

NOVA「特撮ものだと割とそういう話も雑誌に掲載されるんだけど、少なくとも寺田敏雄さんの2000シリーズに寄せる想いなんてものは、俺は読んだことがないな。どこかの雑誌やサイトに載ってるよってことなら、是非教えてほしいものだ。旧作脚本家なら、すでに必殺マニアの諸先輩方が考察記事をいっぱい書いてあるけど、2000シリーズを総括した研究本はこれからって感じだしな」

晶華「NOVAちゃんが書けば?」

NOVA「今、書いているじゃないか。まあ、まだまとまりの悪い拙い記事だけどな。ここを叩き台にすれば、書けるかもしれないが、2000シリーズの本格的な研究本を作るには、ただの自分の記録と記憶の再構成じゃなくて、映像ソフトを購入したり、再鑑賞しないといけないだろうけど、そこまでする覚悟は今はないかな。ただ、今、平成2000シリーズを総括した必殺本が出れば、俺は喜んで買う」

リトル「2019の話はしないんですかぁ?」

NOVA「去年に記事書きしたわけだし、たぶん2020放送前に再放送すると思うんだよね。だから、それを見てから、2020とつなげて振り返ってみようかな、と思う。ともあれ、今回の期待は、長らく書いてきた脚本家が新しい人に替わるので、何を受け継いで、何を切り替えるのかということだな。寺田さんの情念を継承するのか、それとも新しい小五郎や涼次の姿を見せてくれるのか。そして、俺好みのチームとしての仕事人の姿を見せてくれるのか、などなど」

晶華「じゃあ、この記事もこれでお開きってことで」

 

NOVA「ああ。だけど、昨年の記事を読み直して、一つ課題ができた」

仕切り直しで、レギュラー陣に関する感想は、次回の記事に先送りするぞ

NOVA「昨年の記事の最後に、こんな感じで締めくくったんだけど、 そのまま忘れてしまっていたんだ。だから、改めて『レギュラー陣に関する感想考察』をこの期にしておこうかな、と。とりわけ、あまり深く考えることを拒んでいた隆について、この期に掘り下げておきたい」

(当記事 完)