震災の日に思うこと
本日1月17日は、阪神・淡路大震災の日ということで、いろいろと感じ入るものがありますが、24年という歳月に「あ、今年であの時の倍の年齢になるや」とも思ったり。
自分は1971年2月生まれなので、あの時は24才。で、それから24年かあ。
平成の終わりってだけでも割と感無量なのに、歳月をあれこれ振り返ると、いろいろ頑張ってきた自分と、足踏みしてきた自分と、迷走してきた自分と、それでも一途に貫いてきた自分の全てがその時その時で蘇ってきたりもして、まあ、それでも、まだまだ歩み続けないといけないし、歩み続けたいとも思っているし、よし、この機にまた頑張ろうか、とも思える自分がいる。
自分にとっての震災の日ってのは、厳しい天災に翻弄されて苦労と不安に苛まれもしたけれど、負けるもんか、としっかり出来ることを果たして、よし頑張るぞ、と向き合う決意を改める日でもあったりします。
何だかんだ言って、生きているんだし、生きているなら、したいこと、できること、やらないといけないことを自分らしくやってやるぜ、って気持ちは失いたくないな、とも。そのために人生まだまだ楽しみたいし、できれば自分と一緒に楽しんでくれる人を楽しませたいとか、ハッピーを広げるようなお花畑文章でも書きつづりたいですな。まあ、時々、毒の花も混ざったりするけれど。
ともあれ、生きている、生かされているってことを改めて感じながら、生きている意味なんかをふと真面目に見つめ直す本日でした。
市原悦子さんへの追悼
そして、本題です。
最近は、花粉症ガールとの会話記事ばかりで、追悼も会話モードで書こうかな、と思ってみたのですが、どうにもうまく書けない。やはり、こういう内容は、一人しみじみと語るスタイルじゃないと、おふざけのようにも受け取られかねない、と感じて反省。
で、世間では『家政婦を見た』とか『まんが日本昔ばなし』とかが取り上げられがちですが、自分的にはやはり必殺シリーズにおける『うらごろし』のおばさんで、追悼BGMもこうなるわけですな。
この人は、1936年生まれで、必殺出演は78年だから、42才の頃ですか。
日本昔ばなしが少し早い75年スタートなので、39才の時から。
家政婦のドラマシリーズは、83年からスタートで47才のとき。あ、そのタイミングが今の自分の年齢ですか。
で、女優さんとしては、やはりあの声が一番の特徴ですな。優しくて、人の良い声で、ゆったりとした物静かさ、情感に溢れている。声質は高いので、一歩間違えたら耳障りなキーキー声になるかもしれないのを、話し方のトーンで包み込むような優しさを感じさせる。だけど、昔ばなしのナレーション調で、素朴ながら、どこか遠くから響くような一歩距離をとった風情がある。
自分の年齢だと、まず昔ばなしで声を知って、そして高校時代に、うらごろしの再放送で、「この人の豹変演技(優しい人畜無害なおばさんが、天罰を執行する殺し屋モードに切り替わる)」に接して、コミカル日常→一転シリアスに切り替わるギャップの心地よさを覚え、後から「ああ、これは仕事人時代の主水の演出の原点かあ」と納得。
で、家政婦は、うらごろしのおばさんのイメージで見ていましたからね。
この闇を抱えているのに、日常ではそれを一切見せない穏やかなおばさんのイメージが、ある種のホラーというか、ハードボイルドヒロインというか、ギャップ萌えを感じさせた女優さんだったり。
いや、萌えという言葉は、若い女の子に向けられるべき感情かもしれませんし、市原さんは自分がすでに物心がついたときには、昔ばなしのおばさんだったから、萌えには当たらない、という意見もあるのですが、それでも、自分の中では萌えるんですよ。この人の声に。
と言うのも……
太陽の王子と、氷の悪魔の妹
1968年公開の『太陽の王子 ホルスの大冒険』のヒロインであるヒルダの声が、市原さんなんですね。
しかも、この作品は高畑勲初監督作品にして、宮崎駿監督の関わった初めてのアニメということで、言わば「スタジオジブリの原点」とも言える作品。
すなわち、市原悦子さんの演じるヒルダは、カリオストロのクラリスや、コナンのラナ、ラピュタのシータの原点に当たるヒロインなんですな。そりゃ、萌えないはずがない。
そして、このヒルダというキャラの設定も、「主人公ホルスと敵対関係にある悪魔グルンワルドの妹」ということで、悪女と心優しい少女の二面性を備えて揺れ動く。まあ、この時期から「うらごろしのおばさんに通じるギャップ萌え」の萌芽があったわけですな。
なお、市原さんのヒロインとしては、幼い頃の自分が萌えたキャラに、67年の劇場版『サイボーグ009 怪獣戦争』という作品に登場したヘレナがおりまして、TVで流れたときに可愛いなと思ったりしましたね。
【昭和劇場版】サイボーグ009+サイボーグ009 怪獣戦争+サイボーグ009 超銀河伝説 予告編
で、やっぱり、このヘレナ。正体はブラックゴーストの女スパイサイボーグ0010だったりして、悪女と心優しい少女の二面性で揺れ動く薄幸のヒロインだったりします。市原さんのヒロインって、どうしてそうなるのかな、と考えてみると、やはり独特の声質と演技力を買われたのかも。
市原さんの声って、基本が優しく静かなので、若い時分は守ってあげたいヒロインの役に向いていたんだと思います。この点は、後のラナ(コナン)やフィオリーナ(母をたずねて三千里)を演じた信澤三惠子さんにも言えて、陽性ではないけど、静かで染み入る、それでいて意志の強さを内包した声ですね。クラリスやナウシカの島本須美さんにも通じる声質? まあ、市原さんの声はもう少し高いかな。
で、市原さんの場合、若い時から劇団女優として磨かれた芸もお持ちだったんでしょうね。だから後年、声による善悪の二面性の演じ分けもできたわけで、そういう芸達者ぶりがあればこそ、日本昔ばなしの多数のキャラ演技も可能だったのだろう、と考えます。
家政婦以降は、「かわいらしい天然毒舌キャラ」とも呼ばれるようになったらしいですが、自分的には嫌味ったらしくなく、毒舌キャラを演じられる才能から学べたらいいなあ、と思っています。やはり、毒舌がユーモアにつながる芸には憧れますし、毒を振りまくだけだと嫌われますからね。愛される毒の花ってのが、自分的には一つの理想萌えヒロインの類型かな、とも。
そういうわけで、自分はヘレナとヒルダの声に萌えを感じたわけで、その点では市原悦子さんを「善悪二面性のギャップ演技にも、ぞくぞくさせられた萌えヒロイン声の女優さん、声優さんでした」と述べて、追悼の言葉にしたいと思います。
そして、2012年以来、この人は東山必殺のナレーションを担当していたわけで、2017年の野際陽子さんや、昨年の菅井きんさんに次いで、必殺ゆかりの大物女優さんの逝去が続く中で、次回の必殺がいろいろと刷新する時期に来ているんじゃないかなあ、と感じます。
仕事人2019はどうなるか未定だけど(2018は昨年正月に放送)、自分はこの辺りで、大きく切り替わって欲しいと思いつつ、故人に対しては偲ぶ想いを表明します。
(当記事完)