論と言いつつ、雑談記事だな
NOVA「私的創作論で主人公について、いろいろ書こうと思いながら、何だか雑談が続いているなあ」
晶華「じっさいに雑談だし」
翔花「大体、論と名付けるんだったら、『問題提起と、本論と、結論』の構成が必要なんじゃない? 例えば、『主人公とは何か?』という定義付けから始まって、一応の結論を出して、次に別の問題を派生的に出して……と段取りを踏まえるものだと思うし」
NOVA「ほう。翔花にしては、知的なことを言うじゃないか?」
翔花「花粉症ガールの物語の主人公だからね。主人公として振る舞うにはどうすればいいかって、少しは考えます」
NOVA「ふむ。そして、お前にとって主人公らしさとは?」
翔花「問題や事件が発生したら、それを率先して解決して、世界に平和な日常を取り戻す。これこそが王道主人公ってものじゃない?」
NOVA「一理あるな。事件解決型のドラマでは、その事件を鮮やかに解決して、めでたしめでたしに持って行けるのが主人公か。ただ、主人公が自分の悩みに鬱屈してしまい、挙げ句の果てに暴走してしまって、副主人公やら、そのガールフレンドやら、主人公の妹の方が事件解決に寄与して、主人公? と疑問符付きの作品があってだな」
晶華「グレンダイザーUね」
NOVA「どう見ても、あの作品の主人公は兜甲児だよな。愛する者を失って終盤で主人公が暴走する作品だと『仮面ライダー01』があるが、この場合、主人公の暴走を止める不破さんみたいなキャラや、主人公の仇である滅との対決で終幕を飾った。形式上は、グレンダイザーUでは甲児くんが不破さんの立ち位置で、最後のガンダルを協力して倒すという見せ場はあったが、それでもデュークに或人社長ほどの共感はできなかったな」
翔花「どうして?」
NOVA「大きな理由は、ゼロワンの場合、イズというヒロインに視聴者はかなり感情移入していて、或人社長とのコミカルなパートナーシップに日常のハッピーを感じていた。だから、そのイズが破壊されたことによる或人の絶望と暴走にも感情移入できたわけだ」
翔花「愛する者を失っての絶望と暴走を描くにしても、そのキャラへの思い入れがないと、暴走する主人公の感情に共感できないってことね」
NOVA「恋愛ドラマと悲劇というのは、ギリシャの古典演劇とかシェークスピアとか古今の作劇論がいろいろあるわけだが、グレンダイザーUの場合、愛情劇の描き方に致命的な失敗がある」
晶華「失敗と断定するんだ」
NOVA「ああ。個人的な恋愛感情に溺れて(翻弄されて)、地球を守るスーパーロボット作品の主人公という立ち位置を放棄した点は、類似作品がいろいろ考えられるので後回しにして、仮に主人公の心情メロドラマが作品テーマで、ロボット活劇はサブテーマに過ぎないとしよう」
翔花「世界の平和よりも、個人の感情が大事。感情で世界を救うだと、セカイ系だっけ?」
NOVA「暴走ロボのグレンダイザーは、セカイ系に通じるギミックだが、愛がテーマで感情移入が必要な場合、我々は主人公とヒロインがいかに愛を育み、互いのパートナーシップでドラマを紡ぐかに期待する。例えば、悟くんといろはの先日の告白イベントは傑作快作として特筆に値する。恋愛感情を意識していない『みんな大好き』の友達愛的なヒロインと、その明るさに惚れて『サポート役を頑張って助けたい』と健気に立ち回るメガネ君の関係は、ほのぼの恋愛未満の2人が公式にどう進展するかを現在進行形で見せてくれる」
晶華「うん。悟くんは有能メガネね。ガヴのニエルブ兄さんといい、ニチアサメガネタイムが充実しているのはいいことよ」
NOVA「グレンダイザーUにはメガネキャラがメインにいないのが残念……って、そういう話じゃなくて、恋愛に至る感情を現在進行形で見せてくれるのが大事なのに、そういうものを全部、過去の回想シーンで謎解きみたいに示して、サプライズのネタにしちゃったのが、感情移入を思いきり阻害しているんだな」
翔花「ええと、ルビーナさんやテロンナさんのデュークに対する恋愛感情は、現在のドラマで紡がれたものではなくて、フリード星時代の思い出だけで見せられているってこと?」
NOVA「そう。過去の回想シーンは、恋愛の動機づけとしては悪くないんだけど、それを見せたから感情移入できるってものでもないんだよな。あくまで、そのキャラの内面描写であって、だったら今の気持ちはどうなんだ、とか、現在の関係性や未来の願望(妄想でもいい)が丁寧に描かれていないと、ドラマに感情移入できない。この今現在の人の関わりが丁寧に描かれていないのが、本作の恋愛劇に感情移入できない点だな」
晶華「だけど、立ち位置的に敵味方の関係なんだから、今の関わり方を描くのって難しくない? 1クールで尺が短いって問題はさておき」
NOVA「ナイーダの回は、わずか1話で成功したと思うのは、ストレートに原作を土台にしたからかな。ルビテロは、謎解きサプライズの錯綜感で引っ張りすぎたために、素直にキャラの心情が入って来なかった。恋愛ドラマをミステリー仕立てで見せようとしたのかもしれないけど、デュークが能動的に謎解きに努めるキャラじゃなかったからな。
「ミステリー仕立てだったら、『最初のダイザー暴走の際に死んだとされていたルビーナがどうして生存していたのか』とか*1、謎が解けて『なるほどな』と感じ入らせるものがあれば、ミステリー感覚で楽しむこともできたろうけど、そういうパズルのピースがしっかりハマるような整合性もなく、過去の呪縛に翻弄されまくったデュークさんがそういうのを全部断ち切って、旧作ファンの思い入れもいっしょに崩壊させたアニメ、という結論になる」
晶華「ひどい」
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