パラグラフ1番(カーレ到着)
晶華「それでは、ディレクター役を務める粉杉晶華です」
クローディア(翔花)「主人公はわたし。リーブラ女神の加護を受けし聖勇者、かつてはガンドバッド王国の女王を務めた女戦士クローディア役の粉杉翔花です」
EJ(ジュニア)「そのクローディア様の愛剣、かつては伝説の村人上がりの異世界転生英雄ピップにも付き従った聖剣エクスカリバーJrことEJ。務めるは、セイリュウ・ジュニアですぅ」
009「サブディレクター役にして、解説役。たまにNPCなんかも担当するNOVA2009だ。平成NOVAのメモリで起動するケイPマーク3という出自はあるが、実質的に令和NOVAの代役ンだな。こっちの時代にもずいぶんと慣れたが、まさか戦隊シリーズの終結を見ることになろうとは……関智一さんがアカレンジャーに変身するなんて、2009年に言っても、誰も信じなかったろうな」*1
晶華「ナイン君、寄り道脱線回路が起動してるわよ」
009「おっと、失礼。しばらく引っ込んでいるので、話を進めてくれ」
晶華「では、始めます。『混沌の街カーレ。そこは、バクランドへの入り口だ』」

シャムタンティ丘陵の裾野には、城壁に囲まれて、広大なジャバジ川によって2つに分断された河港都市が広がっている。
クローディア「ここから、カーレの歴史や説明がいろいろ入るのね」
晶華「長いから、概要だけ語るわね。ジャバジ川とラムレ湖の間にある唯一の浅瀬に興った街だとされているけど、ラムレ湖とカーカバード海を行き交う漁船を狙う河賊たちの拠点が発展したとも言われている」
クローディア「悪徳都市ってことね。ジャバジ川を渡るには、ここを通らないといけないそうだけど、そんな危険を冒すぐらいなら、せめてジャバジ川を小船で渡してくれる人を雇えばいいのにって思うわ」
晶華「だけど、リーブラ様がどうしてもカーレを通れっておっしゃるのよ」
クローディア「それは……邪悪なスラング神殿を成敗しろって神託ね」
晶華「ゲームブックには、そんなことは書いていないけどね」
クローディア「だけど、正義と真実の神の使徒としては、悪意の神の信仰がはびこる街なんて、マンパンの大魔王と同じくらい許せないと思う。カーレにリーブラ信仰を広めれば、将来、ガンドバッド王国を再建する際にも助けになるはず。そう、これはわたしの将来の夢のための布石なのよ。カーレに正義と真実の素晴らしさを示すことがね」
EJ「さすがはクローディア様。カーレを支配下に置いて、その勢いでバクランドを攻略し、マンパン砦を攻め滅ぼしましょう」
クローディア「EJ。それをするには〈王の冠〉が必要よ。物事には何でも順番というものがある。今のわたしの武力では、街や砦の長を一騎討ちで倒すことはできても、大勢を相手どることは難しい。何しろ、遠くからドングリを投げつけられただけで、3点もダメージを負ってしまうもの。戦場だと、ドングリ以上の威力を持った石弓の矢や、魔法が雨あられと降ってくる。いかなる英雄と言えども、たった1人の剣で大軍を相手にするのは不可能よ」
晶華「……お姉ちゃんが猪突猛進じゃなくて、戦術的判断をきちんとしているなんて」
クローディア「こう見えても、元女王よ。昔、ロザリンちゃんから、いろいろ説教された記憶が残っているのよ。だから、このカーレを支配するためには、策を巡らせる必要があるのは分かる」
晶華「ええと、カーレを支配する必要はないんですけど? ここはただの通過地点なだけで……」
クローディア「ディレクターに聞くわ。カーレの領主は誰? 領主が悪い人なら、領主に反抗するレジスタンスのリーダーでもいい。とにかく、街の権力者にわたしの力を証明すれば、万事うまくいくと見たわ。群れは頭さえつぶせば、何とでもなるはず」
晶華「ええと、その理論は、お姉ちゃんにしては正しいことを言っていると思う。たぶん、ゲームが違えば、お姉ちゃんの方針は妥当かもしれない。だけど、もう少し、こっちの話を聞いてちょうだい」
クローディア「うん、カーレについての情報をもっと話して」
晶華「カーレは無法の街なの。街が発展するにつれて、バクランドやシャムタンティのならず者を惹き寄せて来たわ。邪悪な人殺し連中が押し寄せてきて、住人たちも身を守るために、さまざまな罠を仕掛けるようになった。罠の都と言われるのは、そのためね」
クローディア「すると、盗賊たちがはびこってそうね。街の顔役は盗賊ギルドかしら」
晶華「ブラックサンドなら、そうでしょうけど、あの街にはアズール卿って絶対的権力者がいる。だけど、カーレにはそういう領主みたいなトップが誰なのか、街の外からははっきり知られていないのね」
クローディア「え? トップが誰か分からない?」
晶華「王国とか、絶対的な権力者が君臨している街なら、自分が領主だと周囲にアピールしているのね。だけど、カーレは誰が支配者なのか、街の外には秘密というか、少なくとも公に宣伝してはいない。カーレの権力者を知るのは、街の住人たちか、外の国の密偵ぐらいなものね。シティガイドもないから、公開情報でもないのよ」
クローディア「ディレクターにも分からないってこと?」
晶華「ゲームブックで探すのに苦労したわ。知りたければ、お姉ちゃんも苦労して探してね」
クローディア「リーブラ様が真実を教えてくれないかしら?」
晶華「リーブラ様からは、『カーレの街には今、長がいません』との簡単な伝言が」
クローディア「長がいないなんて。本当に無法の街みたいね。長と交渉したり、打ち負かして、街の支配を乗っ取る作戦は通用しないことは分かった」
晶華「長がいたら、そうするつもりだったの?」
クローディア「ただの選択肢の一つよ。でも、領主のいない街とは思わなかったわ」
晶華(いないわけじゃないんだけど、今、街の外に用事で出かけているって話なのよね)
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