Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

続・必殺仕事人本の話(政・竜編)

今回は84年以降

 

NOVA「さて、年末放送からの流れと、先週に発売された仕事人インタビュー本のネタも交えて、俺個人の必殺愛や蘊蓄を語る記事の続きだ」

翔花「もう、飽きちゃったよ」

NOVA「俺は飽きてないから、まだ続く」

晶華「私としては、さっさと妖精女王ズの続きをして欲しいけど、NOVAちゃんが必殺こじらせ脳から脱却しないと、必殺妖精稼業になっちゃいそうなので、とりあえずは必殺成分を吐き出してしまわないといけないのよね」

NOVA「必殺妖精稼業か。悪くない企画だな。で、表の稼業は花屋か? 花の枝で首を刺すのだと本家とかぶるから、ここは蔓による絞殺技がいいかもな」

晶華「はいはい、絞殺技も、花弁カッターもなしね。よけいな寄り道はしないと、さっさと必殺を語り尽くして、年末からの宿題を片付けましょう。黙って聞いてあげるから」

NOVA「いや、一人語りだけじゃ寂しいから、適度なリアクションをお願いしたいんだが。そのためのアシスタントガールだろう?」

翔花「花屋さんの話なら聞いてあげるわ。スカイライダーさんから、花屋、そして鍛冶屋に転職して、必殺を卒業してから改めて時代劇に開眼したという村上弘明さんね」

NOVA「89年の『月影兵庫』が契機と言ってるな、村上さんは。俺は月影兵庫を見ていなくて、その後の『付き馬屋おえん』を疑似必殺と思って見ていたわけだが」

晶華「また、知らない時代劇に脱線しようとしてる〜」

NOVA「今、村上さんの月影兵庫と、付き馬屋の動画を探してみたが、マイナー過ぎて見つからない。仕方ないので、必殺亜種として名高い『影同心』を紹介だ」

NOVA「東映の必殺コピーとして、『必殺必中仕事屋稼業』の移動した番組枠の後釜を狙った作品が作られた。それが影同心だ。東映の時代劇YouTubeで第1話と2話がアップされているので、必殺の歴史マニアはチェックしてもいいだろう。朝日放送の故・山内久志プロデューサー(必殺の生みの親とされる御仁の一人)を激怒させて、対抗馬として本家・中村主水を基軸とした長期シリーズ化の火付けを担った作品と言われる」

晶華「??? どうして、花屋の政さんの話をしようという時に、影同心なんてパクリ作品の話をするの?」

NOVA「いや、それがな。花屋の政の殺し技が、影同心IIの香月尼(演・浜木綿子)の殺し技のコピーなんだ。中村主水の設定をパクられたから、9年経って、花屋の政の技でパクリ返す。それぐらい経てば時効だろうということだな。花屋の政を語るには、影同心IIの存在は欠かせない、と俺は思ってるぜ」

翔花「つまり、殺し道具に花を使ったのは、影同心IIという前例があったわけね」

NOVA「なお、必殺シリーズ影同心の対決は、一部地域で仮面ライダーの放送枠を乗っ取ったゴレンジャー誕生と同じ1975年のネットチェンジ(腸捻転解消)というトピックと同じ背景だから、やはり仮面ライダーの村上さんと全く無縁の話じゃないってことだな」

晶華「無理やり、話をつなげているだけじゃない?」

NOVA「つながる物は仕方ないだろう?」

晶華「そうやって、都合よくつなげるから、寄り道脱線脳って言われるのよ」

翔花「とにかく、帰って来れなくなる前に、花屋の政さんの話に行くわよ。花だけに、花粉症ガールが仕切らせてもらうわ」

 

花屋(鍛冶屋)の政の話

 

翔花「さて、村上弘明さんと言えば、デビュー作がスカイライダーで、その後、仕事人になって、90年以降も現代劇・時代劇問わず、大活躍している役者さんって聞いてるけど」

NOVA「村上さんのインタビューを見ると、スカイライダーも、必殺も、当初はあまり乗り気でなかったという話から始まることが多くて、ファンはがっかりするんだよな。これがライダー先輩にして必殺先輩でもある宮内さんや、相棒仕事人の京本さんだと、ノリノリで役を演じた様子がリップサービスも交えて、ファンの聞きたい話をしてくれるんだけど、村上さんは歯に絹着せず、当初は『事務所が勝手に入れてきたオーディションにやむなく出たら、通った』的な話からスタートするわけで」

晶華「村上さん本人は、別に特撮ファンでも、時代劇ファンでもなかった、と?」

NOVA「あまり、他人に媚びを売るようなことが苦手らしい。無骨で、反骨精神で生きて来たのが、藤田さんに『あいつは礼儀知らずだ』と怒られたり、それでも松竹の櫻井プロデューサーからは『昔の役者みたいな気風が見込まれて、役者の礼儀を仕込まれたり』とか、いろいろなエピソードを今回、語ってくれて、昔の失礼な発言を詫びたりもしていたな」

翔花「失礼な発言?」

NOVA「月影兵庫をやってた時に必殺のファンクラブ『とらの会』の同人誌でインタビューされた際に、『脚本がダメだった』的な暴言を吐いたのを、今回、改めて指摘されたんだな。それを聞いて、『そんなことを言ってましたか。ダメですねぇ(笑)。たぶん、どなたかの受け売りで、つい口に出てしまったんでしょうね。若気の至りです! 脚本家のみなさんも時間に追われさぞ大変だったと思います。作家の方には尊敬の念しかありませんよ』という応答で、前言撤回したのが印象的」

晶華「昔は礼儀知らずだったのを、今になって回顧して反省してるってわけ?」

NOVA「割と、村上さんは昔の失敗譚とか反省エピソードを率直に語られる感じで、生真面目なキャラクターなんだろうなあ。で、前任者の秀に反発して、自分らしさを模索していたら、工藤栄一監督に『お前は体が大きいし、もっとワイルドさを売りにした方がいい。花屋じゃなくて、鍛冶屋やれ』と言われたりしながら、激闘編で転職したとのこと」

翔花「最初の花屋は誰が選んだのよ?」

NOVA「朝日側の山内プロデューサーだそうだ。松竹側の櫻井プロデューサーに抜擢された村上さんに初めて会ったときに、『君を見たら、花のイメージが浮かんだ。だから花屋で行こう』と即決して、当の村上さんが『こんなパパッと決めちゃっていいんだ』と驚いたとのこと」

晶華「花のイメージって、そういう役者さんだったの?」

NOVA「俺には、よく分からん。むしろ、『花屋の政』という役名と殺し技を最初に知ったとき、京本政樹さんの方が自分の役はこれだと勘違いしたらしい。まあ、政樹さんだし、ずっと秀の後継者は自分だというイメージを持っていたそうだから、三味線屋の後継者だと知って、あれ? と思ったとか。おまけに、竜(リュウ)という名前をタツと読んでいたそうだし」

翔花「って、京本さんの話に行っちゃってるけど?」

NOVA「こう言っちゃ何だが、村上さんよりも京本さんの方が記事ネタが膨らむんだよな。村上さんのインタビュー記事は、ご本人の性格が生真面目すぎるのと、ファンに媚びるというかリップサービスができないのと、過去のキャラに対する執着が少ないというか過ぎたことはあまり語りたがらない役者気質があって、ライダーの筑波洋にしても仕事人の政にしても、あの時はまだまだ未熟だったというトーンで語るからねえ」

晶華「ああ、そりゃあ、ファンから見たらイヤだよねえ。未熟時代のそのキャラを格好いいと思って応援しているんだから、そこを否定されても、気持ちを逆撫でされちゃう」

NOVA「それで、特撮ファンの中では、『村上弘明は過去の役柄を恥じている。特撮愛がない』などというネガティブな風潮があったんだけど、最近は村上さんも『筑波洋の仮面ライダーは自分のデビュー作で、大事な作品』とライダー関係のインタビューでポジティブ発言するようになったし、『恥じているのは自分の未熟な演技であって、作品そのものを恥じていたわけではない』と説明している。今回の政関連のインタビューでも、『仮面ライダーで慣れたアクションが役に立った』というアピールもしているし、年を重ねた後で、いろいろ達観して語れるようになったんだなあ、この人と感じるようになった」

翔花「何だか年上相手に偉そうね、NOVAちゃん」

NOVA「だって、俺が最初に見た仮面ライダーは幼少期のストロンガーだけど、俺が初めて最初から最後まで作品を見たライダーは、村上さんのスカイライダーだからな。それに、俺が初めて最初から最後まで追っかけた仕事人も、政と竜ということになる。秀や勇次、順之助はIIIの途中から見たので、作品を見始めたときにはもうキャラが成立していたけど、Vは最初のスペシャル『意外伝』、いや、その前の夏の舞台『必殺まつり』がTV放送されて初お披露目されたときから見ていたから、政と竜が自分にとっての初の新仕事人として、最初から最後まで見届けたことになる。俺が必殺ファンとして成熟するのと同時に、キャラが育って行ったわけで、政と竜は重要なキャラなんだよ。昔からのファンとして、役者の成長を喜びたい気持ちを表してるだけさ」

翔花「つまり、わたしにとってのドンブラってことね。見始めたのは、キラメイジャーの途中からだけど、最初から今まで追いかけ続けているのはドンブラだし」

NOVA「むっ、そうか。俺にとっての政と竜が、お前にとってのドンブラか。そりゃあ、大事だな」

翔花「大事でしょ?」

NOVA「だったら、政と竜の話をもっと聞いてくれるな」

翔花「分かったわ。仕切り役は、NOVAちゃんに返す。わたしじゃ、そこまで政さんや竜さんについて、語れないしね」

 

NOVA「それにしても、秀にしても、政にしても、最初は役者が時代劇が嫌いだったんだな。かつらをかぶるのが嫌で嫌で仕方なかった、と、どちらも話している。そうしたら、櫻井プロデューサーから『君はかつらをかぶらなくていい。時代劇の所作も学ばなくていいから、現代人が江戸時代にタイムスリップしたような感覚で演じたらいい』などと指導されたらしい、村上さん。三田村さんも、櫻井さんから『欲しいのは現代の若者の感性を持ったキャラだから』と言われて役を受けたそうで、たぶん必殺じゃなければ、この世界に入ることはなかったんじゃないかなあ」

晶華「確かに、秀さんや政さんは、時代劇のキャラじゃない髪型だもんね。そうか、役者の要望と、それを受け入れる自由な現場の裁量から、ああなったと」

NOVA「まあ、必殺仕事人Vの前のスペシャル版『意外伝』自体、そういう時空を越えたタイムスリップの話だからなあ」

NOVA「あと、秀さんの髪型にしても、その前に火野正平さんの正八の長髪の例があるし、そもそも前番組が時代劇の常識を越えた『うらごろし』だったわけだから、中村敦夫の先生や、和田アキ子の若があの普通の現代人の髪型で許されるなら、秀さんの髪の毛が許容されるのも当然だろう」
 
晶華「まあ、時代劇にレントゲンって時点で、いろいろツッコめるシリーズだからね」
 
NOVA「これは個人の主観だが、三田村さんは必殺のあと、90年代に家光とか影十八とか夢一座七変化って時代劇タイトルで主演を務めて、かつらも付けているんだな。そして、役柄はともかく、かつらがあまり似合わない風貌なんだ。一方、村上さんはかつらを付けても様になる風貌で、時代劇役者としては村上さんの方が重厚感あって絵になるのかな、と思う」

晶華「そういう比べ方はどうなの?」

NOVA「まあ、昔から秀と政は比較されて来たし、その後の芸能界での仕事を見ると、三田村さんはゴジラ映画にもガメラ映画にも出演されて、特撮俳優入りを果たして、歌手だったり、舞台だったり、旅番組のホストだったり、いろいろ器用にこなしている。一方で村上さんは特撮俳優からスタートしたけど、その後は時代劇と2時間ドラマの出演が多く、俳優業一本でどっしり構えてらっしゃる。

「秀と政は、必殺3の映画で初共演したけど、その後の共演に際しては、秀は軽い身のこなしで天井から飛び降りる技巧派として、政は床下から畳を破って現れるパワー系キャラとして再解釈されている。また、秀は元々、沖雅也さんの棺桶の錠をモデルにしたキャラとして設定されたけど、三田村さんは緒形拳さんの方を敬愛して技の一部を継承したことを喜んでたし、村上さんの方が棺桶の錠の武器(組み立て式の手槍)を継承して、この辺のキャラの変遷が面白いと思ったり」

翔花「何だかんだ言って、2人とも芸能活動を続けているのが凄いよね」

NOVA「俺的には、どちらもタイプは違えど、昔から好きな役者さんだからな。器用でMC(番組司会)もこなせる三田村さんと、無骨ながら一本気のある役者として大成した感のある村上さんの両方を、元・必殺役者としての思い出とともに、応援していきたいわけだ」

 

政と竜の関係性

 

NOVA「さて、政と秀の関係性に次いで、同時期加入の仕事人コンビである政と竜だが、役者の村上さんと京本さんは、共演当時はそれほど仲が良くなかったらしい」

晶華「え、そうなの?」

NOVA「これが、例えば、秀と勇次と順之助の関係性は、番組中のドラマでも描かれているんだな。最初に、秀が主水さんや左門さんに厳しく鉄拳制裁を受けたりしながら、未熟な若者仕事人から一人前に成長するドラマが、無印・仕事人。続いて、新・仕事人で勇次が加入する際、秀VS勇次の対決劇も描かれるわけだ。新加入のメンバーが登場すると、その力量を見るために小競り合いを行うのが前期シリーズからの伝統で、梅安VS左内、主水VS貢、半兵衛VS政吉、主水VS市松、主水VS剣之介、鉄VS己代松、主水VS新次、主水VS左門……という対立からの腕を認めての仲間入りシーンが、緊迫感をもって描かれていたわけだ」

翔花「秀VS勇次って、どっちが勝ったの?」

NOVA「元々は、怪しげな三味線屋母子を加代が探ったのがきっかけだな。それに気付いた勇次の糸が加代に襲いかかったところに、秀が助っ人に現れ、両者対決に至る。接近戦に持ち込めば、おそらく秀が勝ってたろうが、勇次の糸が秀の手に絡みつき、その動きを巧みに翻弄して近づけさせない。糸に振り回されて地面に倒されつつ、反撃の隙をうかがう秀だけど、そこに現れたおりくさんが『よしなよ、勇さん。どうやら御同業のようだ』と制止して、緊迫感が取り除かれる。『こちらには関わるな』と警告の上で立ち去る三味線屋母子だけど、その後で共通の殺しの的が発生したことで、共闘する流れになって長く続くチームが成立する流れだ」

晶華「その後、Ⅲで順之助くんが加入する、と」

NOVA「殺しを目撃した未成年を掟に従って殺そうとする勇次と秀だけど、どうも順之助が幸運に守られているっぽく、いろいろと間が悪くて殺し損ねているうちに、主水とおりくさんの方が何だか情が移ってしまって、『人間らしい情を持った、涙を流せる仲間がいた方がいい』という主水さんの気の抜けた変な理屈で、勇次と秀の不満も交えながら何とか加入。で、当初は順之助の並外れた未熟さにしばしば翻弄される仕事人チームだけど、やがて彼の蘭学知識や発明家の才が仕事の助けになる局面も出てきて、エンジニア的才覚を持った参謀格として機能したりもするわけだ」

翔花「戦闘力はないけど、知恵と裏技的な特殊技能でチームに貢献するのが順之助くんってこと?」

NOVA「新加入の順之助の扱いにいろいろと四苦八苦しながら、ようやく一定の型にハマったのがⅣで、秀がさらに幼女を育てるお兄さん役となり、どんどん人情劇が加速するようになって、当初のハードボイルド感覚が消え去って行く。一応、勇次が幼女を育てる秀を、自分とおっかさんの関係に似てるからと言って感情移入して、完全にチーム内での緊張感が欠如してしまった構造だけど、マニアックじゃない多くの視聴者はその路線を受け入れる反面、マニアは堕落と批判した。そして、役者の中では視聴者の知らないところで、いろいろ不満が募っていたらしい」

晶華「どういうこと?」

NOVA「映画も公開されて、必殺人気がピークに達していたんだけど、ストーリーのマンネリ化と撮影での拘束時間の多さに主水さんが不満を表明し、秀も同調。秀は元々、新・仕事人で終わる予定だったのが、上から延長を要請されて、そこまで何とか続けて来たものの、過酷な撮影に限界になっていたらしい。一方、勇次は主水さんの役が美味しいので、自分も主役をしたいとの意見表明で、そこから仕切人の企画に移るんだけど、秀・勇次の人気を受け継ぐ新たな仕事人の構築が練られて、心機一転の仕事人Ⅴに帰結する」

翔花「主水さんと加代さん、順之助くんが続投で、新加入が政さんと竜さんね」

NOVA「あと、おりくさんも続投だけど、個人的には勇次がいなくなったのに、おりくさんが残留する意味はあまり感じなかったな。じっさい、全26話の中で、11話めが最後の登場になった形だし(映画には出演したけど)。

「ともあれ、政と竜の同時加入はいいんだけど、この両キャラの関係性がバディとしても、はっきり描かれないまま終わったんだな。コンビ仕事人として主水たちの前に現れたんだけど、2人がどういう出会い方をしたとか、互いにどう思っているのかとか、その辺の人間関係が一切謎。コンビとしての距離感が付かず離れずで、これが例えば、秀と勇次だったら、勇次が年上の先輩でクール担当な兄貴分。ついでに、勇次は三味線の師匠として主水の嫁姑の稽古もしていたので、主水との間で仕事以外の日常ドラマも成立する関係。そして、情に流されがちな秀を時に諌めたり、サポートする役目も勇次が担当することもあり、つなぎ役の加代がいなくてもチームとしての関係が維持できる。

「一方で、政と竜は新入りだから既存チームとの関係は未構築としても、共につるんでいる2人の関係もほぼ描かれていなくて、仲がいいのか悪いのかすら、その回によって描写がちぐはぐで、ドラマ上の接点が欠落している。それぞれの過去編は描かれているけど。父親の仇である育ての母・お京(演じるは後に渡辺小五郎の姑となった故・野際陽子さん)との因縁の対決を経た政は、勇次とおりくさんの関係のアンチテーゼだし、組紐屋の竜は抜け忍としての過去を清算する話があった。ただ、個々のキャラではなく、この新人コンビの関係性を掘り下げる回がない。もしかしたら、終盤で作られる可能性はあったのかもしれないけど、映画撮影中に京本さんが足の怪我をしたから、2人のキャラを十分に描ききる前に番組を終わらせるしかなくなったのかもしれないな」

晶華「1年間放送の新・仕事人。3クール前後のIIIやⅣに比べて、Ⅴは2クールしかないもんね。別に人気がなくて打ち切られたわけじゃないのでしょ?」

NOVA「第2次仕事人ブームと呼ばれるぐらいは人気があったんだけど、政・竜コンビにとってのさらなる不幸は、続く激闘編の最中に、京本さんの事務所移籍問題があって出番が激減した上に、劇場版を以てシリーズ降板することになったことだな。よって、政と竜の関係性が掘り下げられることもなく、政一人だけが残留した挙句、次の旋風編や風雲龍虎編でも主水さんが舞台の仕事で忙しくなって、メインキャラとしての政の重要性が高くなったにも関わらず、政と他のメインキャラの絡みが描かれるでもなく、むしろ新キャラの銀平や影太郎の描写に比重が乗せられた結果、政というキャラの扱いが悪く、地味になって行ったな、と」

翔花「花屋から鍛冶屋になったから地味になったってこと?」

NOVA「そう見えなくもないが、結局はレギュラー役者との共演シーンが削られて行ったことだな。主役回でゲストとの絡みはあっても、役者のスケジュールの都合で、仲間とはアジトでのお金の分配シーンでしか顔を合わさない脚本が量産され、それでも激闘編までは加代との関係性で出番は作られていたけど、旋風編以降のお玉は新キャラとの絡みがメインで、政と絡むキャラが古馴染みの主水のみ。で、その主水さんが舞台の仕事で忙しいとなれば、本当にレギュラーと絡むシーンが激減するわけだ」

晶華「そりゃ、シリーズが終了するのも納得よね」

NOVA「仕事人の後期の何が悪いかと言えば、マンネリ化したストーリー云々を言われるけど、レギュラーキャラ同士(仕事人の内輪の仲間同士)の関係性を描いた話が作れなくなったことが大きいと思う。その回のメインキャラが日常でゲストキャラと知り合い、その悲劇に接して依頼を引き受けて、アジトで初めて仲間と顔を合わせ、ろくに会話するでもなく殺しに向かい、殺しのシーンでも連携しない個々の見せ場だけの演出。とにかく、レギュラーキャラが絡まないような話作りで、馴染みキャラの日常交流がない。これじゃあ、表の顔と裏の顔を演じ分けるどころじゃない。表の顔がろくに描かれていないわけだから」

翔花「どうして、そんなことに?」

NOVA「裏事情は、役者のスケジュール調整の問題だろうけど、必殺が人気シリーズになったことで、役者が忙しくなったり、話題作りのために人気役者をキャスティングして、ドラマを描くために役者を集めるのではなく、役者の都合に合わせるようにドラマをパーツごとに細分化して、ゲストメインでレギュラー陣を絡めなかったというのがある。

「ドラマ内だと、実は非主水シリーズの方がその辺は上手くやっていて、1クールだから役者のスケジュールにも大きな負担はなく、レギュラーがうまく絡めるように設定を作っている。簡単に言えば、同じ長屋や隣近所に住む表付き合いのあるチームだったり(渡し人)、それぞれ別チームの殺し屋が合流したり(仕切人)、関係性のできた若手既存チームにベテランが加わったり(橋掛人)、いろいろなパターンを示しつつ、キャラごとの仲間意識と距離感を上手く描き分けている。表付き合いや裏付き合いの描き方は作品それぞれだけど、そもそも付き合いを描いていないのが、昭和の仕事人の終盤だからなあ。

「まあ、小五郎シリーズの過剰なまでのギスギス感も空気は悪かったけど、それでもドラマの空気は醸成していたから。レギュラー仕事人同士の人間関係に何もないのが問題で、それでも鍛冶屋の政はレギュラー放送が終了した後のスペシャル版の方が、余裕をもってキャラが描かれた分は救いがあったなあ、と。それがあればこそ、村上さんも時代劇役者としての経験が積める契機になったのだろうとも思うし」

 

NOVA「そして、政と竜の関係性だと、村上さん曰く、『京本くんが降板することになってから、仲間意識が生まれた。花屋時代は、いい意味でしのぎを削っていたから、ツルんで一緒に食事にいくような間柄でもなかった』とか。

「あと、これは京本さんの昔の特撮ホビー雑誌での発言だけど、『村上くんに仮面ライダーの話を聞いたら、何だこいつは? という目で見られて、距離を置かれた』とか、マジメで固い非オタク気質の村上さんと、マニアックな京本さんのキャラの違いを如実に表したエピソードがあったり」

晶華「京本さんは、必殺を降板してから、特撮方面への愛着をカミングアウトして、自分がオリジナルの特撮ヒーロー作品を監督・主演しちゃう程だもんね」

NOVA「そこで、スカルソルジャーのキャラクターデザインをした雨宮監督との関係で、牙狼に誘われた話とか、うちのブログ的には、京本さんの方がネタが多いわけだが、次の記事に回した方が良さそうだな」

晶華「ええ? まだ続くの?」

NOVA「京本さんは、三田村さんとは別方面で、いろいろと器用だからなあ。そう言えば、村上さん曰く、京本さんの初印象が『メイクに驚いた。役者はこんな風に化粧しないといけないのか……とは、さすがに思わなかったけど(苦笑)』と笑いネタにしてる。で、京本さん以外に、結髪さんやメイクのスタッフさんからも『鏡を見てチェックせなあかんで』とアドバイスされたので、いちおう手鏡を持つようになって、身だしなみに気を使うようになったらしいけど、その後に別の現場スタッフさんのインタビュー記事があって、話がつながるのが面白い」

翔花「どんな風に?」

NOVA「花屋の政は現場的に不評だったんだな。理由は毎回、得物の花枝を折って、殺しの武器にするんだけど、その花の準備があって、撮影用の小道具として花屋さんに注文するのが手間。プロデューサーさんのアイデアはいいんだけど、現場に苦労が乗しかかる。『今回はこんな花で』と脚本に書かれていたりするのを、『今はまだ時期的に咲いていないので、違うので間に合わせておいた』的な話もあって、鍛冶屋になってから肩の荷が降りたとも。現場のおっちゃん曰く、『花を愛する花屋が、毎回、人様の家の枝を折って行くな』というツッコミがあって、当時のファンとしても『花泥棒の政』とかネタにしてたし、

「ついでに現場のおっちゃんたち曰く、『京本みたいな派手なチャラチャラした奴が出てきて、村上の方はまだまともかと思って見てたら、人前で鏡見て髪とか弄るようになって、こいつも今どきの若者でナルシストかよ、とガッカリした』といった話で、村上さんが良かれと思った身だしなみが、別の視点では不評だったということが判明して、立ち位置変われば評価も変わる様が面白いな、と」

晶華「まあ、人前で鏡を見て髪をいじるのは、あからさま過ぎてダメってことかな」

NOVA「それについては、加代さんも不評で、動き回るキャラだから、髪の乱れとか化粧落ちとかも激しいようで、シーンの撮影後はすぐに整えないといけないから絶えず身だしなみに時間をとられたらしい。その結果、加代のシーンは撮影時間が思いの外に時間を食ったそうで、『嬢ちゃん、頼むから早よしいや』みたいなことを現場のおっちゃんは思っていたと」

翔花「スタッフの声を拾い集めると、撮影時の不平不満もいろいろ出るってことか」

NOVA「役者だけじゃなくて、プロデューサーや監督への悪口もあって、そういう暴露本だと思って読んでも面白い。まあ、昔話ってことなので、笑いネタにできる時効だから語れるんだろうな。こういうのを読むと、人の評価は一面だけでは分からないと思うし、いろいろな声を総合して見えて来るものもある。例えば、京本さんはファッションにも細かくて、『秀は飾り職人らしく、自作のブレスレットを付けている。それに対抗して、政はカメラマンの石原興さんのアイデアで、月か何かをデザインしたペンダントを付けさせていたんだけど、村上さんがその辺に無頓着なので、しょっちゅう付け忘れて、ペンダントはどうした? と指摘したりもした』とのこと」

晶華「政さんが割と天然で、京本さんが細かいってこと?」

NOVA「コミュニケーションは年下の京本さんの方が主導して、寡黙な村上さんが後手に回るぐらいの関係性だったみたいだね。とにかく、生真面目な村上さんと、マニアックで濃い、そして細かい京本さんの気質がよく現れたインタビューだと思う。で、本当に京本さんネタが多いので、記事は次回に続く、だ」

(当記事 完)