Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

続々・必殺仕事人本の話(竜の完結編)

最後の『最後の大仕事』話

 

NOVA「一記事で、政と竜の話が終わるかな、と思ったら、予想よりも長引いたので、竜の話を切り分けての完結編だ」

翔花「秀さんだけで二記事ぐらい書けるって言ってたけど、割愛したのよね」

NOVA「ああ、秀は最初の仕事人(79〜81年)と、新・仕事人〜Ⅳまで(81〜84年)と、映画の必殺3で復活してからの、まっしぐら(86年)と、激突(91年)で細かいキャラ付けが違っているので、いろいろ語ろうと思うと、ネタがたくさんあるんだよ。まあ、インタビュー本の主流は、最初の仕事人からⅣまでの5年間で、まっしぐら以降は触れられていないんだけどね」

晶華「撮影がきついから、と足抜けした秀さんがどうして帰って来たの?」

NOVA「役者としては必殺に限らず、舞台とかいろいろな仕事に触れたかったから、という理由もあって、必殺をやめる際にはプロデューサーさんとあれこれややこしく揉めたそうだけど、映画の撮影に際して、工藤栄一監督に来てくれ、と呼ばれて、その流れでまっしぐらにも出たらしい。工藤監督は、秀にとっても、政にとっても重要な恩人だったみたいで、どちらのインタビューでもいろいろ持ち上げてたほど」

翔花「どんな人?」

NOVA「仕事屋の最終話とか、からくり人の最終話とか、とにかくハードな作風に定評がある。映画の必殺3の予告編を見るだけで分かるだろう」

晶華「なるほど、からくり人を全滅させたり、組紐屋の竜さん他2名の仕事人を映画で殺した監督さんね」

NOVA「俺が必殺を見始めた時は、いわゆるバラエティ路線になっていて、この人は撮らなくなっていたんだが、映画の必殺3でハードな活劇スタイルに初めて触れて、ええって驚いて、後から集団抗争時代劇の名手という評価を聞く。必殺以外の代表作の一本が『十三人の刺客』だそうだ」

NOVA「2010年には、三池崇史監督の手でリメイク版が公開された、とも」

晶華「って、今回は組紐屋の竜さんの話のはずなのに、どんな話の転がし方をしているのよ!?」

NOVA「転がるものは仕方ないだろう。まあ、とにかく今は……前置き完」

 

組紐屋の竜の話

 

NOVA「さて、組紐屋の竜こと京本政樹さんだ。この人は、必殺仕事人だけでなく、90年代に雑誌連載記事から、こういう本を出すに至ったりして、特撮畑の活動を大いにしていたことで印象深いんだよな」

NOVA「あと、ウルトラマン・グレートの変身者ジャック・シンドーの日本語声の吹き替えをやったりもしていて、しかも、近年のグレートの声は関智一さんだ。俺の中では、京本さんと関さんが、特撮マニアタレントの2強だと思っている。まずは、俳優として世間で名が知られた後で特撮マニアだとカミングアウトされた京本さんが90年代初めに雑誌などでそのマニアぶりを披露、黒部さんや森次さん、宮内さん、伴さんなど多くの特撮ヒーロー役者と対談インタビュー記事を掲載したり、当時の70年代ヒーロー考証に先鞭を付けた形になる。

「その後、声優としてメジャーになった後の関智一さんが特撮怪人などのスーツに声を当てる仕事から、特撮マニア的な面をアピールするようになり、世紀が変わる辺りで特撮好き声優の先鞭をつけるようになった。俺の中では、京本さん→関さんに特撮マニア有名人のバトンが引き継がれたと思っている」

翔花「特撮好きの芸能人って今だと普通にいると思うけど?」

NOVA「その2人の凄いのは、自らが企画主導して、オリジナルヒーロー作品のスカルソルジャー(1992)やコスモX(2001)を制作して、主演まで務めたことにある。仕事以外の趣味でヒーロー好きを公言するのが、90年代はまだ憚られた時代だったしね(オタクバッシングも酷かった時期なので)」

晶華「特撮ヒーロー研究が大人の読み物として本格化したのが90年代と聞くんだけど?」

NOVA「91年の『ウルトラマン研究序説』以降、大人視点での特撮ヒーローの設定をリアルに考える研究本や、アニメ作品などにも波及した俗にいう謎本ブームが起こって、そこからインターネットで個人的な趣味研究サイトに発展する流れがあって、必殺関連の書籍もこんな書籍などにはお世話になったんだが」

翔花「90年代の研究活動の経験があればこそ、世紀明けからサイト作りを始めて、今のブログにも通じているわけね」

NOVA「そうだな。ある意味、自分なりにマニアックな研究活動をしている趣味人としての一つのモデルケースが当時の京本政樹さんでもあったわけだし、役者としてだけでなく、ヒーロー研究家として敬意を表している次第」

晶華「まあ、ヒーロー研究家としての京本さんや、特撮俳優としての京本さんではなく、組紐屋の竜としての京本さんを語る記事でしょ、これは?」

 

NOVA「京本さんは、まず必殺との出会いの話から入る。『必殺仕置屋稼業』(1975)の沖雅也さんが演じた市松に、お姉さんがハマっていたけど自分はチラ見する程度で、当時はさほどでもなかったそうだ」

NOVA「その後、79年に俳優としてスカウトされて、いきなり大河ドラマ草燃える』で、藤岡弘、さん演じる三浦義村の四男役で出演。まあ、OPキャストには挙がっていないみたいだけど」

NOVA「それから、81年に長寿時代劇の銭形平次大川橋蔵版。66〜84年)の788話から魚屋善太という役名で登場している。その前の回で、森田健作さん演じる同心が殉職して、その後釜同心として登場した森次晃嗣さんと同時キャスティングだ」

翔花「え? それって、仮面ライダー1号の息子役としてデビューして、ウルトラセブンと共に名門時代劇にレギュラー出演ってこと?」

NOVA「後のことを考えると、そういう縁ってあるんだなあ、と思う。で、京本さんは大川橋蔵さんを時代劇の先生と呼んでいるんだが、橋蔵さんからいろいろ学ぶうちに必殺シリーズの話も聞いて、改めて興味を抱くようになったらしい。で、その時期に見たのが、『新・仕事人』で秀と勇次が活躍していた。そして、東映との撮影方法の違い(光の当て方など)に興味を惹かれて、機会があれば出てみたいと思ったそうだ」

晶華「81年から出たい、と」

NOVA「そして、82年頃に役者の伝手を通じて、出演希望をプロデューサーの方にアピールしてもらったらしいんだけど、秀と勇次のブームの真っ最中だから、空回りに終わって、そうしているうちに順之助のひかる一平に先を越されて、当時抱いていた『最年少仕事人の願望』が砕かれてしまった、と」

翔花「京本さんにとっては、順之助くんがライバルだった、と。意外な話ね」

NOVA「で、次に83年に出たのが、深作欣二監督の『里見八犬伝』になる」

NOVA「原作では主役格の八犬士の1人め、美剣士の犬塚信乃役に抜擢。まあ、映画では真田広之さんの犬江親兵衛が主人公で、八犬士のリーダーの犬山道節を千葉真一さんが演じたり、志穂美悦子さん、大葉健二さんなど錚々たるメンツだな。今、見ると、犬村大角役の寺田農さんの名前も見て、おおってなった」

翔花「宇宙刑事ギャバンさんとも共演かあ。出る作品ごとに、特撮ヒーローが付いて来る感じ」

NOVA「役者として顔見知りだから、後でヒーロー研究の対談に乗って来てくれたんだな。で、『里見八犬伝』の信乃役を見た必殺の山内プロデューサーが声をかけてくれ、必殺の前に出演依頼されたのが84年のこの作品だ」

NOVA「京本さんは役者と同時に、シンガーソングライターにもなりたいと活動していたので、この番組のエンディング主題歌で歌手デビューしたことになる」

晶華「確かに多芸な人ね」

NOVA「こんな感じの紆余曲折の流れを語って、ようやく組紐屋の竜の話に到着するわけだ。で、本人は秀の後継キャラのつもりでいたら、勇次の後継キャラになった。理由は2つあって、『前は勇次が年上で、秀が年下だったけど、今度は逆にしてみる』というのと、『時代劇の経験が豊富で、かつらがよく似合う』とのこと。まあ、村上さんの話と総合すると、村上さんがかつらを嫌がったから、というのが大きそうだけど」

翔花「で、組紐屋の竜に至った、と」

NOVA「それで、京本さんは自分であれこれキャライメージを作り上げるんだな。政が割と自己主張せずにキャラ作りを上や現場スタッフにお任せするタイプなのに対し、京本さんは最初からクリエイティブで、『自分のキャラは沖雅也さんを参考にします』とプロデューサー氏に言ったら、『どの沖雅也だ?』と言われて、戸惑ったとか」

晶華「沖雅也さんのキャラって、そんなにいるの?」

NOVA「3人いる。仕置人の棺桶の錠はワイルドな空手使いで、豪快なアクションを売りにする。仕置屋の市松は物静かな耽美系クールで、京本さんが参考にしたのがこちら。あと、からくり人に唐十郎というキャラがいて、見た目は市松の方に近いが、職業は板前で仕込み釣竿を武器として、遠距離戦もこなせる」

翔花「京本さんは、まだそこまで必殺シリーズには詳しくなかったってことね」

NOVA「シリーズの歴史をきちんと勉強したのは、足を骨折して寝ていた時らしい。それまでは昔チラ見した時の記憶とイメージだけでしかなくて、『必殺仕置屋稼業』をきちんと見たのは、病院のベッドの上。その際、映像資料を製作主任のスタッフに用意してもらって、今でも非常に感謝してるそうだ。以降の竜の演技の参考になったらしい」

晶華「何だかんだ言って、研究熱心なのね」

NOVA「で、小道具さんや衣装部の人を巻き込んで、竜の特徴的な専用かつらをデザインして作ってもらったり、勇次のキャラと区別するために彼が身に着けたことのない赤と黒の殺しの衣装を選んで、細かい小物は自分で用意して仕立てたり、予備としてブルーの衣装を用意したり、とにかく派手なビジュアルを用意したら、最初は『あんたの自由にしていい』と許可したプロデューサー氏が、『いや、いくら何でもやり過ぎや。あんた、仕事人が暗闇の中で、あんなキラキラして、どうするねん? もう衣装部に言っておいたから、黒の衣装に着替えて』と言われたそうで」

翔花「だから、地味になったの?」

NOVA「黒は選んだんだけど、帯を銀色にして、裏地を赤にして、金の鈴を着物にプリントして、衣装部の人とアイデアを出し合いながら、竜のキャラ立てを考えて行ったらしい。で、黒もサテン地だから、照明が当たると少し光る。それを見てプロデューサー氏が『あんた、派手にするなと言ったのに……まぁ、しゃあないか』と渋々認めざるを得なかったとか」

NOVA「三味線屋の勇次もそうだけど、京本さんも自己プロデュースに余念のない人で、殺し技の演出とか、役柄の演技プランとか事細かに語って、いかに組紐屋の竜というキャラを作り上げて行ったかの話をたっぷりしていた。同じ絞殺技でも、勇次が下から上に吊り上げる技なのに対し、自分は上から下に引き上げて吊り下ろすようにしたとか、その結果、屋根に一人で待機するシーンが多くて、撮影現場では寂しいと思ったとか、自分はお喋りなキャラだけど竜は寡黙なキャラとして通したいと思ったから、竜のセリフも政に割り当ててもらったりしたとか、政の村上さんは『京本さんはあの年でニヒルな竜のキャラを作り上げていて、セリフもなく所作だけで表現していて凄いな、自分にあの演技はできないなと思った』と言ったそうだし、それは大川橋蔵さんの指導の賜物らしい」

NOVA「銭形平次の弟子が組紐屋の竜? というとイメージが重ならないんだけど、橋蔵さんの若い日の貴公子侍イメージが竜に受け継がれたんだと言われると納得する。あと、面白い対談と思ったのがこれ」

晶華「確かに、京本さんの素は、役柄と違って陽性のお喋りキャラみたいね」

NOVA「生粋の関西人だから、その辺も個人的に親近感だな。で、役者としての活動以外でも、激闘編の音楽を大谷和夫さんとのコンビで担当していたり(クレジットは平尾さんになってるけど)、主題歌『女は海』の作詞・作曲をしていたり、役柄以外でも作品作りに貢献しているわけだな。そういう話をいろいろ語って……時間が尽きた」

翔花「え?」

NOVA「今回のインタビュー本で、京本さんは竜の誕生経緯から始まって、いろいろ語っているんだけど、激闘編や劇場版・必殺3の撮影秘話など、まだまだ語りたいことがいろいろあって、次のインタビューで書き残して欲しい、という形で締めくくっているんだ。その機会があれば、俺も読みたいし、ひかる一平インタビューとか、伊吹吾郎さんとか、柴俊夫さんとか、来ないかなあって思っている」

(当記事 完)