Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

非・仕事人シリーズのヒロイン話(渡し人編)

今期最後の必殺懐古話(の予定だけど)

 

NOVA「さて、2月に入ったので、必殺話もそろそろ終わらないとな」

晶華「よく、ここまで語るネタがあるわね」

NOVA「むしろ、必殺ヒロインについて語るなら、仕事人以外の方がネタの宝庫だと思うな。仕事人は長らく密偵役のレギュラーだった加代さんや、中村主水の姑嫁のせんりつコンビ、それに山田五十鈴さんの枠が固定されているので、女性の殺し屋数が限られている。女性の裏稼業について語るなら、非・仕事人シリーズの方がネタが多いほどだ」

翔花「確か、仕事屋稼業から草笛光子さんの女元締めが始まって、1クール物のからくり人から山田五十鈴さんの女元締めが定着し、うらごろしから女性レギュラーの方が男性よりも多くなったって話を聞いたわ」

NOVA「元締め役だった草笛光子さんが中村主水と合流したのが商売人で、同じく山田五十鈴さんが主水と合流したのが仕事人。その後、第3の女元締めとして京マチ子さんが抜擢されたのが、必殺仕舞人のシリーズだ。旅芸人の一座が江戸以外で裏稼業を営む形式で、新からくり人以降の非・主水旅もの形式を受け継いでいるとも言える」

NOVA「歴史順に並べると、仕事人→仕舞人→新・仕事人→新・仕舞人→仕事人III……と続くわけで、最初の仕事人以降は、中村主水役の藤田まことさんのスケジュール空き期間を作るための非・主水シリーズが1クール分、仕事人の間に挟まる形で展開されるようになる。そして、どうしても仕事人中心で考えるなら、非・主水シリーズは場つなぎのための小品扱いされがちだが、『女性メインの裏稼業』『マンネリ化した仕事人に対して、いろいろなアイデアを試せる実験精神に富んだ佳作』『仕事人よりも奇抜な殺し技や演出』などで、シリーズの可能性を考える上では宝の山だと考えている」

晶華「仕舞人のテーマは『女の涙を晴らします』みたいね」

翔花「つまり、花粉症ガールと相性がいいってこと?」

NOVA「そして、この作品から歌手にして、女優にして、日本舞踏家の西崎みどり(現・西崎緑)さんが5作品の非・主水シリーズに連続出演して、マイ・ベスト必殺ヒロイン女優という道を歩むことになる」

晶華「あれ? 女仕事人の最高峰は何でも屋の加代こと鮎川いずみさんだと言ってなかった?」

NOVA「仕事人だけを考えるならそうなるが、昭和の必殺シリーズ全体を見ると、西崎みどりさんを抜きに語れない要素もいろいろあるんだよ。彼女のシリーズデビューは、第4作『暗闇仕留人』の主題歌、『旅愁』でまずは歌手としてのスタートだ。その時の彼女は弱冠14歳で、芸能活動は子役から始めて、作曲家・平尾昌晃先生の秘蔵っ子とも言われたそうだ」

NOVA「『暗闇仕留人』は1974年の作品だから、今年で50周年となる。そして、これまでの必殺シリーズが大体、殺しのシーンだとアップテンポのアクション曲が続いた中で、本作は『旅愁』アレンジのスローバラードの曲で、殺しのシーンが演出される。それと、主役の石坂浩二が演じるインテリ蘭学者・糸井貢の悩み多きドラマ、そして愛する妻を殺され、最終話で自身も非業の死を遂げた展開で、全体的に湿っぽいストーリーが特徴だけど、後期の仕事人にはなかなか見られない殺し屋の葛藤や悲劇的な末路、そして要所要所で挿入歌としても流される『旅愁』の演出などが相まって、歴代必殺シリーズの中でも人気の高い作品だ」

翔花「ふうん、話が遡ってる気がするけど、50周年記念なら納得ね」

NOVA「で、西崎さんはこの仕留人の最終話で、悪役の娘としてゲスト出演している。父親の悪業を知らない純朴な娘で、糸井貢が彼女の絵の先生として関わりのある関係だ。悪人と言えども、娘にとっては良き父親であり、また貢にとって大願とも言える開国派の役人だったために、殺しに迷いが生じた貢は返り討ちにされてしまうわけだな。

「また、父親を失った娘の悲劇も映し出して、遺体が海に流される貢と、自身の歌う主題歌をバックに孤独に巡礼の旅に出る西崎さんの姿で、話が終わる流れ。もう、『暗闇仕留人』で一話限りのゲスト出演とは言え、主題歌と合わせた西崎さん(弱冠14歳)のイメージが作品の雰囲気を引き立てたと言っても過言ではない。本当に、暗闇仕留人の最終話は、主水が初めて味わった仲間の死とも相まって、必殺マニアの間では大いに語り草となっている」

晶華「なかなかハードな話みたいね」

NOVA「時代背景が、ウルトラマンレオと同じく石油ショックで陰鬱世相の真っ只中だからな。仕置人のテーマが晴らせぬ恨みを晴らす怒りを強調しているのに対し、仕留人は主人公に殺しの虚しさを語らせている。そこから主水の本格的な『稼業としての殺し』に続くのが仕置屋稼業で、黒船が来た世相を巻き戻すなどの背景リセットを行いつつも、1人の殺し屋としてのドラマは継続されて、必殺マニアの研究ネタとなっていくわけだけど、それはさておき、その後の西崎みどりさんだ」

翔花「今回のメインヒロインは、西崎みどりさん?」

NOVA「ああ。俺が必殺シリーズで初めて、『萌え』という感情を意識した女優さんが西崎さんということになるな。当時は、そういう概念がなかったけど、とにかく西崎さんは清楚な美人のお姉さんという形で、『渡し人』で初めて見たときから必殺女優として注目していたんだ」

晶華「NOVAちゃんの必殺初恋ヒロインってこと?」

NOVA「まあ、当時はそういう意識はなかったけどな。ただ、後から振り返ると、西崎さんという女優にして歌手の声や演技に惹かれていたのは事実だと思う。後に『仕切人』で山本陽一演じる日増(通称スキゾー)というキャラとコンビで、火薬を使った殺しの前の陽動役を担当する形で、言わば順之助と加代コンビみたいな形の役回りを担当するんだが、順之助にとって加代が保護者的なおばさんだったのが、スキゾーにとっての西崎さん(役名はお清)は『おねぇと呼んで、スキスキと求愛する対象』だったわけで、この加代との扱いの違いは何だろうと思っていたんだが、役者の年齢が当時24歳ということか、と後年納得した」

翔花「加代さんに比べて、若いってことね」

NOVA「加代さんも美人女優で、それでも三田村さんより2歳上、西崎さんよりは9歳上ということになるのか。まあ、年齢差が9歳なら、加代さんがおばさんで、西崎さんはおねぇ扱いってことも納得かな。とりあえず、西崎さんと同年齢の有名女性だと、大場久美子山本百合子鶴ひろみ浅野ゆう子麻倉未稀、美保純、涼風真世黒木瞳石田えりなどなどとなって、俺の世代だと憧れても不思議じゃないわけか。まあ、俺にとっての当時のアイドルは中森明菜で、もう5歳年下になるんだが」

晶華「その世代だと、誰がいるの? NOVAちゃんのツボは?」

NOVA「佐久間レイ小林靖子さくらももこブルック・シールズ緒方恵美沢口靖子河合その子松本伊代、渡辺典子、大谷育江橋本潮柏原芳恵……と言ったところか。まあ、アイドルとしてファンになったというわけじゃなく、80年代に露出が高くて印象的だった歌手とか女優、それと90年代以降にクリエイターとして作品を楽しんだ女性に分かれているか。もう少し後になると、南野陽子が出て来るし、俺と同じ年齢の必殺女優は、剣劇人の工藤夕貴ということになる。まあ、当時は自分と同じ年齢=女優としては幼いというイメージで、TVに出る芸能人として憧れの対象になるのは5歳から10歳ぐらい上ということになるか。

「まあ、俺が初めて惚れた映画の登場人物の1人は、『メカゴジラの逆襲』に出てきたサイボーグ少女役の藍とも子さんと記憶するんだが、役者に惚れたというよりも役柄に惚れたという形だな。仕事人IIIでも順之助主役回で、被害者のお姉さん役で出ているので、悲劇女優に感情移入してしまう気質はあるらしい」

晶華「涙に惚れやすいのかもね」

NOVA「否定しない」

 

改めて西崎みどりさんの話(三途の川の渡し人)

 

NOVA「何だか、80年代のアイドル話に突入しそうな感じだけど、実のところ、俺の80年代の興味の対象は、特撮、ゴジラ、必殺、TRPGで、ヒロイン萌えという感覚は割と希薄だったと思うな。特撮ヒロインだと、当時、ゴーグルピンクの大川めぐみや、ダイナピンクの萩原佐代子宇宙刑事アニーの森永奈緒美などが旬だったろうけど、俺がそういうヒロインに関心を持つようになったのは90年代になってからで少々奥手だったのだと思う」

NOVA「まあ、80年代だと、コミックのウイングマンのウイングガールズには惚れていたと思うが、好きなのは、セイギピンクの桃子ちゃんと、メガネを外した時のギャップ萌えが好みの布沢久美子さん、それと敵女幹部のドクター・ヴィムだな」

晶華「って、どうして、そっちに寄り道脱線するのよ!? 必殺話を展開するんじゃないの?」

NOVA「ああ、頭の中に83年〜85年のヒロイン回路があって、そこに収納されている情報がダダ漏れになっている感じだな。ええと、時代劇に的を絞って……」

翔花「いまいち、的がそれている感じね。わたしに任せて。83年と言えば……これね」

NOVA「おお、それだ。必殺渡し人は、俺が初めて見た非・主水の必殺シリーズで、仕事人IIIと仕事人Ⅳの間に入る。俺としては、仕事人IIIロスで、これじゃない感はあったんだが、力仕事何でも屋の看板を掲げている大吉さんのレントゲン殺しと、彼の妻、お沢役として支えた西崎みどりさんと、高峰三枝子さん演じる蘭方女医・鳴滝忍姉さんの闇夜に光る指輪殺しで印象的な作品と言える」

晶華「あれ? 主役の中村雅俊さんは?」

NOVA「主題歌歌手だったり、70年代から当時の人気俳優にして歌手なんだけど、彼の演じる惣太の扱いがいまいち地味で、ドラマの中心にはあまりいなかったんだよな。『鏡』と呼ばれた凄腕の渡し人で、鏡の中に仕込んだ針で相手の首筋を刺す。その際に、相手の死に顔を鏡で見せるような演出なんだけど、当時の俺は首筋刺しだとダイナミックなアクションの秀を至高だと思っているから、惣太の静かな殺しが地味に見えて仕方なかった。さらに、中村雅俊の主題歌アレンジの躍動感あふれる殺しのテーマ曲とも演出が合わなかったしな」

翔花「静かな曲の方が似合う技ということね」

NOVA「でも、トリのバラード殺しは、チームリーダーの忍姉さんが持って行ったし、彼女は出陣前の入浴シーンとか、静かなのに演出が凝っている。指輪をかざすと光を放ち、その後手をサッと振り払うと首がスパッと切れる。その後、傷口がカマイタチのようにパックリ開く小道具ギミックまで凝っていて、『カマイタチの忍』という仇名も、ただの『鏡』よりも印象的に映った。やはり、元締めのアクションの方が格好いいと思われたら、前座にされた主役としては見せ場が弱いということになる」

晶華「前座2号は大吉さんね」

NOVA「渡し人を見た時期の必殺初心者だった俺は、演じる渡辺篤史さんがかつて仕置屋稼業や仕業人の捨三として主水さんの子分みたいな密偵役とは知らなかったんだが、とにかくアクション役としてよく動く役回りだった。仕事人で秀が担当していた屋根裏に忍び込んでの諜報活動や、水中戦なんかはこの人の担当で、しかも役者の体格からは想像できない怪力設定。仕留人の大吉や、仕置屋稼業の印玄みたいな、ガッチリした体型のいわゆる怪力坊主と違って、渡辺篤史さんはパワー系でもなく、また色男とか素早そうな風貌でもなく、生真面目な下っ端という感じの脇役役者だったんだが、渡し人の本編では実直そうで堅物なのにドラマの中心人物として機能していた」

晶華「どういうこと?」

NOVA「渡し人第1話では、カタギだった彼が渡し人として殺しの世界に足を踏み入れる話だ。忍姉さんと惣太は、かつて渡し人だった過去を持ち、言わば先輩格。そして、大吉は初心者として悪人に対して涙し、情を爆発させる純朴な少年みたいなキャラクター。

「また、ヒロインの西崎さん演じるお沢は第1話の被害者として、大吉に助けられるんだけど、悪人に拉致されて厳しい拷問で危うく殺されそうになる。結局、殺されたのは一緒に拉致された大吉の年老いたおっかさんで、大吉はお沢と母親の仇討ちのために悪人退治に向かおうとして、忍姉さんと惣太に制止される。彼らの裏稼業の素顔を知った大吉は、自分も仲間に入れてくれと懇願し、その持ち前の怪力でアクティブなレントゲン殺しを見せるわけだ」

翔花「なるほど。それでお沢さんは?」

NOVA「第1話の拷問で命は取り留めたけど、記憶を失ってしまう。だけど、大吉の人の良さに救われて彼の妻になるわけだ。つまり、渡し人は純朴なおじさんが可哀想な目にあったけど、ヒーロー的な活躍をして、可愛い嫁さんをもらう大人のファンタジーなわけだよ」

晶華「主役の惣太さんは?」

NOVA「中村雅俊さんは当時のイケメン俳優で、70年代半ばから青春ドラマの主人公を演じていた。80年代に入ると、渋い大人のお兄さんって感じで、渡し人の惣太も鏡研ぎの仕事をしながら、仕事相手の奥さま方にキャーキャーモテる役どころ。だけど彼は既婚者で、妻のお直を演じるのが喜劇系女優の藤山直美さん。

「よって組み合わせとしては、イケメン惣太とコメディエンヌ系のお直、堅物地味系の大吉と清楚な美女のお沢という夫婦の組み合わせとなる。まあ、美男美女の組み合わせだとドラマとして面白くないというか、この定番を外した(でも、それなりにリアルな)キャスティングが渡し人の作風……になるのかな」

翔花「でも、登場人物の男性2人がどちらも既婚者というのは、大人のドラマって感じよね」

NOVA「そうだな。秀や勇次はどちらも独身の仕事人であるのに対し、渡し人はヒーロー役がどちらも既婚者で、当時の仕事人ブームとは明らかに違う客層を狙ったように見える。中学生の俺にとっては、アダルトな作風が見ていて気恥ずかしさを覚えたり、日常ドラマが長屋のご近所付き合いで、上司にいびられる主水とかそういうコメディ要素もなかったし、何を楽しんでいたかと言えば、大吉の『怪力演出とレントゲン殺し』と、お沢の西崎みどりさんの可愛さと、忍姉さんの凛々しさで、主役の中村雅俊の役柄が、役者の個性にはあまり合っていなかったと思いながら見ていたりする」

晶華「中村雅俊さんの個性って?」

NOVA「元・青春スターが渋い大人に脱却する過渡期だと思うが、雅俊さんって陽性キャラの方向性なのに、惣太は元・殺し屋だったのが結婚したことで引退して、それから大吉とお沢の事件を機に復帰したという設定。そして、自分が殺し屋だから、妻のお直を抱くことに躊躇するけど、お直の方はイケメン惣太の浮気を疑ったり、仲睦まじい大吉&お沢の夫婦を羨んだり、何だかややこしい夫婦模様が日常的に描かれている。そういうドラマを中学生が見ても楽しめるわけがない。

「要するに、渡し人の惣太はハードボイルドな元・殺し屋の主人公なんだけど、こういう屈折したキャラは中村雅俊さんには似合わなかったと思う。で、中学生の自分にはもっとストレートな直情漢で、やや陰のある(不幸な境遇の)ヒロインと、だけど微笑ましいイチャラブ的なシーンを見せる大吉さんの方が分かりやすいし、殺し技も新鮮だし、よほど主人公に見えていたわけだな」

 

晶華「って、渡し人の作品感想になってる? このままだと渡し人の話だけで終わってしまう?」

NOVA「本記事のテーマで言うなら、『西崎みどりさんが中学生の俺視点でも、可愛らしいお姉さんとして映った』で結論づけられるんだけど、俺にとっての初・みどりさんは人妻だったというところからスタートしたんだな。で、第一話で酷い拷問にあって、他のシリーズなら死んでいても不思議ではないゲストヒロインみたいな扱いだったお沢さんだけど、大吉さんの愛と、蘭方女医の忍先生の治療で生き延びて、だけど記憶喪失となる。

「これが違う作品なら、瀕死の重傷を負ったお沢さんが、忍先生の改造手術でサイボーグとなって、悪人たちに復讐を果たすという展開も考えられたが、渡し人でそういう妄想をしたのは多分、俺ぐらいだろうと思うので、ここでは事実のみを語っておくと、お沢さんの代わりに悪党を始末したのが大吉と、彼をサポートする元・殺し屋の女医さんと、兄貴分の陰あるイケメンスターという形。このキャラ配置自体は今でも悪くないとは思うけど、まあ、当時の流行とかと比べて、いろいろチグハグな作品なんだよな」

翔花「NOVAちゃんの話も、ちょっとチグハグじゃない? ヒロイン話のはずが、本当に渡し人という作品の思い出語りになってるよ」

NOVA「渡し人について語る機会はそうそうあるものでもないので、開き直ってこのまま行くことにした。ところで実は、『必殺渡し人』という作品は、必殺シリーズ数ある中で、役者的には最も系譜が分かりにくい作品なんだ。忍姉さんの高峰三枝子さんは、草笛光子山田五十鈴京マチ子の流れに位置する『往年の銀幕大女優が元締め格の女殺し屋に扮した』って形なんだけど、他の人と違って、他の作品に再登場して来ないここだけの人。さらに主演の中村雅俊もそう。実は本作で渡し人の新入りとされる大吉&お沢の方が、役者はいずれも殺し屋チームのメンバーを経験しているという経歴の持ち主。まあ、役者関連の系譜は、当時、必殺素人だった俺にはまだ分かっていなかったわけだが、後から知識を得たら、余計にこの渡し人だけがシリーズの中でも浮いた存在というか、独特の存在感を持った系譜外れの作品となる」

晶華「それを言ったら、仕舞人もそうじゃないの? レギュラー全員が必殺初出演の人たちばかりだけど。過去5作にゲスト出演してる西崎みどりさんを除いて」

NOVA「今、改めて調べると、子役時代に『変身忍者・嵐』にもくノ一役でゲスト出演していたんだな。さらに、『仮面ライダーBLACK RX』にも2話だけゲスト出演してる? 俺の中で西崎みどりさんの評価がさらに上がった」

晶華「知らなかったわけ?」

NOVA「この記事を書くために、西崎さんのことをwikipediaで調べるまで、知る由もなかったよ。しかも、最近、オフィシャルブログがあるのを知って、覗いてみたら、こんな記事があったりして」

NOVA「そうか。歌手とか、必殺女優という認識しかなかった西崎さんだが、実は特撮経験者でもあったわけだな。しかも、子役時代(12才)にくノ一とは、カスミ役の林寛子さんと同世代の人ってことになる」

晶華「必殺渡し人の話をしていて、変身忍者に寄り道してしまうブログも珍しいわね」

NOVA「うむ。これもセレンディピティって奴だな。俺自身も、どうしてこういうつながり方をしてしまっているのか書いていて不可解なんだが、分かっていることただ一つ。必殺ヒロイン話は今回で終わりそうにないってことだ。まさか、西崎みどりさんがこれほど奥の深いヒロインだったとは、思いもよらず」

 

渡し人のストーリー展開と変遷

 

翔花「でも、お沢さんって記憶喪失になったんでしょう?」

NOVA「第1話で記憶喪失になった彼女が、第3話で記憶を取り戻す。『闘将ダイモス』なんかでも見たパターンだな」

晶華「今度は、そっちに話をつなげる?」

NOVA「つながってしまった。そうなると、大吉は竜崎一矢とつながって来るんだが、確かに一矢は烈風正拳突きで敵の体内を貫くし、大吉も必殺技は相手の体内を指先で貫くレントゲン殺しだな。やはり、真の主役は大吉じゃないか。渡し人をアニメでリメイクすると、大吉の声は神谷明さん、いや後継者の宮野真守さんにするといいと思うぞ」

翔花「渡し人のアニメリメイクなんて考えるのは、必殺マニア数ある中でもNOVAちゃんぐらいだと思う」

NOVA「とにかく、記憶を取り戻したお沢さんは、夫の大吉が自分のせいで母親を失い、殺し屋稼業になったことを悟り、ショックを受けるんだが、渡し人の正体を知られると殺すのが掟だということで、裏世界の大元締めに拉致されることになる。なお、俺が『元締め』という言葉を初めて知ったのは、この回だと思う。何しろサブタイトルが『大元締めの前で渡します』だからな」

晶華「囚われのヒロインを助けるために、悪の組織の大元締めと決着をつける話ね」

NOVA「リアルタイムで見た中学時代は、そういう話に展開すると思っていたんだが、少し違った。クライマックスの戦闘では、大元締めの側近が裏切って大元締めを殺そうとしていたのに気づいた渡し人の3人が、その側近を3人がかりで三途の川に渡すんだ。大吉に腸をつかまれ、惣太の鏡針で手のひらを貫かれ、忍姉さんの光る指輪(個人的にウルトラリングみたいだと思ってたり)で首を斬られて絶命する側近。2人の連携で殺された悪人は時々見たが、3人がかりで殺された悪人は、必殺シリーズでもこの回でしか見たことがないと思う」

翔花「で、元締めの命を救ったから、お沢さんは解放される、と?」

NOVA「それだけじゃなくて、元締めは忍姉さんたちのチームの腕前を讃えるとともに、自分がとらえていたお沢さんが、殺されるかもしれない局面で泣き言や命乞いをすることもなく覚悟完了した風情でいたことに感服し、これほど度胸が座っているなら渡し人の仲間として加えても十分に務まるだろうとお墨付きを与えて、めでたしめでたし、だ。これで渡し人のチームは完成し、安定路線に入るかなあ、と思いきや、何だか演出面で路線変更が生じてバタバタすることに。たった13話しかないのに、作風がコロコロ変わった感のあるのが渡し人で、試行錯誤が甚だしい作品と思われ」

晶華「何が変わったの?」

NOVA「5話までは、殺しのテーマが中村雅俊の主題歌アレンジだったんだが、6話から仕掛人の『荒野の果てに』アレンジの曲に変わる。俺にとっては、初めて聞いた形だな」

NOVA「『荒野の果てに』は現在でこそ、必殺シリーズを代表する曲として多用され、劇場版以降は仕事人のテーマにもなっているが、元々は『仕掛人』『新からくり人』『仕舞人』『新・仕舞人』そして『渡し人』の後半といった非・主水シリーズに殺しのテーマとして流用された形。ただ、『荒野の果てに』が流用されると、本来の主題歌アレンジの新曲、殺しのテーマが作られなくなるので、不幸な目にあったのが『新からくり人』の『惜雪』と、『仕舞人』の『風の旅人』。で、『渡し人』の『瞬間の愛』は殺しのテーマアレンジがされたんだが、たった5話でしか使われなかったために、歌い手の中村雅俊は自分の歌った曲アレンジで殺しができなくなったという残念なめに。バラードアレンジされた方は忍姉さんが変わらず使ってくれているんだけど、この音楽的な路線変更がどうして行われたのかは不思議だなあ、と」

翔花「理由は分からないの?」

NOVA「推測はできる。渡し人のBGMは、平尾昌晃クレジットになっているけど、新曲は中村啓二郎の作曲なので、音楽面で平尾外しが途中でトラブったのかもしれない。だから、出陣曲と殺しのテーマは平尾BGMに置き換える形で話がついたのじゃないかなあ。

「まあ、その後の仕切人は再び中村啓二郎BGMで、渡し人BGMの延長で出陣テーマと殺しのテーマが作られ、いろいろと豪勢な作品になっている感だ。音楽だけでなく、ストーリー面でも独自性の強い派手なお祭り感覚の仕切人ワールドは後期の非・主水シリーズで最高傑作と思っているし、渡し人はその分、地味さが引き立つ過渡期の作品だな、と。まあ、俺にとっては初めて第1話から最後まで見た必殺作品ということで思い出は深いんだけどな」

 

晶華「とにかく、渡し人は途中からメインBGMが変わって、イメージが変わった、と」

NOVA「さらに、レギュラーキャストが一人、置き換わった。まあ、渡し人メンバーではない端役で、銀平ってキャラがいたんだが……」

翔花「夜鶴の銀平?」

NOVA「それは3年後に爆死する旋風編のキャラで別人だ。渡し人に出演した方の銀平は、高杉俊介さん、つまり仮面ライダースーパー1だ。必殺シリーズには、スカイライダーの前にスーパー1が出演していたんだよ。ただ、当時は俺もまだ役者の名前に無頓着だったし、そもそも銀平の役柄がヒーローとは全く異なるし(惣太に絡むオカマっぽい一般人)、ヒーロー俳優によく分からん役柄を押しつけたと思ったら、7話で突然いなくなって、8話からは大塚吾郎さんの演じる金次ってキャラに置き換わった。どうも、渡し人という作品は中村雅俊さんといい、高杉俊介さんといい、アクションできそうなイケメン俳優の無駄遣いをしていた気がする。その結果、俺にとっては渡辺篤史さんを実質的なヒーロー認定することになったわけで」

晶華「渡し人の制作裏事情も、分からないことだらけって感じね」

NOVA「役者は明るい系の人たちを取り揃えたいたんだと思うけど、コメディに振りきらずに、ハードボイルドでアダルトな物語を展開しようとして、上手くまとまらなかった感じだな。仕舞人が華やかな旅の一座の表の顔と、ハード風味の殺しのギャップで割と成功した作風なのに対し、渡し人は女性レギュラーの長屋が舞台の世帯じみた日常(女医がメインなのに医療ドラマという形にも展開せず)、イケメンにコメディアン(表の顔)とハードボイルド(裏の顔)の両方を演じさせようとして失敗し、ヤング向きに突き進んだ仕事人IIIの路線に逆行するかのようにアダルト演出をしようとしたけど、最初は不幸な被害者役だったけど最終的に幸せつかんだ大吉夫婦と、役者は陽性なのにストーリーの都合で寂しい夫婦のドラマに帰結した惣太夫婦の末路に、何だか割り切れなさを覚えつつ、気持ちは仕事人Ⅳキター、ワクワクもんだ〜と思ってた中1の秋だったなあ、と」

翔花「83年当時のNOVAちゃんは、渡し人という作品をきちんと評価できるほど目が肥えていなかったってことね」

NOVA「後から背景をあれこれ知ってから、シリーズの中での立ち位置がつかめるってこともあるわけさ」

 

殺し屋夫婦の末路

 

NOVA「まあ、渡し人はヤング向きに流れた仕事人IIIの反動で、大人、それも男女の情愛で夫婦ドラマを見せようとしたわけだが、殺し屋ドラマでそういうテーマは受け入れられなかったというか、まあ、いろいろ。ただ、夫婦というテーマで、シリーズの系譜を考えるきっかけにはなるな」

晶華「必殺で夫婦だと、中村主水さんとか渡辺小五郎さんね」

NOVA「第一作の仕掛人も、元締め夫婦と、浪人の西村左内の夫婦の姿があって、前者は夫の裏稼業を知っていて、後者は知らない。そして、左内さんは妻子を養うための金を目当てに、仕掛人になったという経緯がある。従来の王道剣客主人公キャラが左内さんで、一方の仕掛人ならではの代表的殺し屋が緒形拳さんの藤枝梅安。表の顔は享楽的な遊び人で食道楽だけど、凄腕の針医者でもあり、庶民に安いお金で治療を施したりもする。そして、その金は仕掛人としての裏稼業で得ているという設定だ」

翔花「仕掛人って儲かるの?」

NOVA「後のシリーズ作品よりも、遥かに儲かるな。梅安さんは原作でも元締めから50両以上の大金を相場として得ているし、必殺シリーズの殺し屋組織としては、仕掛人音羽屋さんが一番安定している感だ。まあ、シリーズにおける殺し料の変遷は、それだけで記事書きできるネタだが、ここでは左内さんが辻斬りで人を殺しているところを元締めにスカウトされて、仕掛人の世界について視聴者とともに学習していく序盤エピソードから始まる。で、生真面目な左内さんが妻子には黙って、道場で剣術指南していると言い訳しながら、生活費を工面する姿が描かれたりしつつ、たまに奥さんから疑われつつも、梅安さんや密偵のフォローで取りなされ、大禍なく最後は仕掛人組織の解散を受けて、家族を連れて旅立つエンディングだ」

晶華「悲劇にはならないの?」

NOVA「殺し屋の悲劇は、悪女の妹殺しをした梅安さんや、ゲストの仕掛人と心を通わせつつも敵対したことで生じる葛藤とか、それぐらい。まあ、総じて殺し屋ドラマとしての崩壊に至るのは、その先のシリーズだな」

翔花「2作めは仕置人で、夫婦持ちは中村主水さんね」

NOVA「良妻賢母的な左内さんの奥さんに比べて、主水さんは嫁姑にいびられるという芸風を確保して、時代劇主人公としては格好悪い日常生活で斬新だったわけだな。まあ、家族があまり裏稼業のドラマに関わることもなく、次に助け人。ここでは、中谷一郎さんの辻平内が離婚した妻から毎月の生活費をせびられるという、日常では情けない男という点で中村主水を踏襲している要素がある。一方、主役の剣豪、中山文十郎は妻子持ちではないが、可愛い妹がいて、当初は裏稼業も秘密だったんだけど、中盤過ぎて殺し屋としての正体がバレてからの兄妹の葛藤とかが描かれたりもする」

晶華「ウルトラシリーズもそうだけど、身内にヒーローとかの正体がバレると、大体、元の日常が送れなくなって話が終わってしまうのよね」

NOVA「殺し屋の場合は、なおさらだな。まあ、助け人の場合は前半が陽性の作風で、後半が奉行所に正体がバレて、その状況で殺し屋稼業を隠れながら続けて行くかというハードボイルドな葛藤が描かれるわけだな。密偵役が途中で奉行所の拷問で死ぬ(その回で、彼の妻も登場して夫の末路への悲しさと諦念を示したり)とか、連続ドラマとして仲間の加入やら人間関係の変遷とか描かれていくうちに、『悲痛大解散』と『解散大始末』の2つの最終回的な解散話が劇的なドラマを飾る作品だ。でも、男女の恋愛ドラマの起結として見ると、主役の文十郎と、密偵役の利吉はそれぞれ好きな女性を連れて、旅に出る終わり方で、レギュラーキャラの悲恋エンドではない」

晶華「ハードな要素もあるけど、一応はハッピーエンドの体裁を整えたわけね」

NOVA「そして、主人公の死というバッドエンドを迎えた初の必殺が、前述の仕留人だ。物語途中で、殺し屋組織の抗争劇で愛妻を失い、以降は殺し屋の夫と愛する妻にハッピーエンドはないという先鞭をつけた。

「5作めの仕事屋稼業で、主人公の半兵衛さんが所帯持ちで、最終話の1話前に殺し屋の正体が妻のお春(演・中尾ミエ)にバレてしまう。愛する夫が殺し屋だと知って、お春は半兵衛を厳しくなじって、完全に拒絶してしまうんだな。それまで仲睦まじい溺愛ぶりを示していたヒロインだけに、この拒絶ぶりが痛ましく、仕事屋最終回はチームの崩壊もさることながら、男女夫婦の別離をハードボイルドに描いた傑作だ」

翔花「NOVAちゃんは、仕事屋稼業を高く評価する、と」

NOVA「中村主水では描けない、殺し屋の日常の完全崩壊をシリアスに描いた傑作だからな。最後、忠実な従者の利助と、息子の政吉を失った女元締め・おせいが自害しようとするのを半兵衛さんは押し留め、『俺たちは生き残っちまったんだ。だったら俺たちを庇って死んだ仲間の分まで、無様に生き抜いて行きましょうや。女将(おかみ)さん、いや、おせいさん、お達者で』と言い残し、捕り物の追っ手の目を引きつけ、行く当てのない逃避行を決断する」

翔花「お春さんを残して?」

NOVA「そう。この殺し屋の正体バレからの冷たい態度、だけど、それでも彼女は半兵衛さんへの想いを捨てきれずに、受け入れてやり直そうと思い直すんだな。一方の半兵衛さんも、お春さんを愛する気持ちは捨てきれず、だからこそ、望みのない逃避行に連れて行くことはできない。最後の仕事料だけを彼女に残し、一人で荒野に旅立つ。愛する妻を残して、さすらう旅を選んだ殺し屋は、シリーズの中でも半兵衛と渡し人の惣太だけだ」

NOVA「必殺シリーズは、ゲストキャラのほのかな恋愛劇とか、それが悪人に壊される悲劇を描いて、そのせつない恨みを晴らすドラマ展開が多いんだが、主人公たちは天誅を加える側なので恋愛絡みの情に巻き込まれると、裏稼業に支障が出るから、原則として色恋とは距離を置こうとするわけだな」

晶華「だけど、たまに若手の仕事人なんかが恋心を抱く話もあるわけね」

NOVA「ゲストヒロインに惚れられたり、逆に相思相愛になることがあっても、その想いが踏みにじられて晴らせぬ恨みを……となる話もあるが、基本は知り合いの男女の仲睦まじい恋愛模様を応援していたら悪人に踏みにじられて……というパターンだ。要は、ゲストキャラとの人間関係でバリエーションが構築される作劇なんだけど、3作めの助け人以降はレギュラー同士の人間関係や恋愛劇も展開されて、それが最終回付近で殺し屋が悲劇の当事者として裏稼業の報いを受ける末路に帰結することが多い」

翔花「後期の仕事人には、そういう殺し屋としての悲劇の末路がなくなった?」

NOVA「人気レギュラーキャラの続投とかを考えると、そう簡単にTV放送で殺せないし、アイドルだから恋愛関係のイザコザは御法度ということもあって、惚れられるのはありだけど自分から惚れるのはなしとか、ドラマ作りの制約もあったのだろう。で、仕事人Ⅳ以降は劇場版で恋愛絡みの濃密なドラマやキャラの死を描く形になり、レギュラー放送のTVではそこまで濃い内容の主人公ドラマは描かなくなったのだな、と思う」

晶華「ああ、重い話は劇場版に回して、TVシリーズはお馴染みのパターンで同工異曲の作品を展開する、と」

NOVA「まあ、夜鶴の銀平という役者のスケジュールの都合なんかで唐突に殺されて退場ってケースもあるけどな。そこにはサプライズがあっても、計画的に構築されたドラマがない。渡し人の惣太にしても、やりたいことは仕事屋の半兵衛さんみたいなハードボイルドドラマの方向性を狙ったんだろうって後から分かったんだけど、それなら『殺し屋としての正体が妻にバレて、そこから進展する人間ドラマを描いて……』という段取りが必要なんだろうし、それをする間もなく惣太はお直に何も言わずに一人、去って行った」

翔花「え? 何も言わずに?」

NOVA「そう、最終回で渡し人チームは裏稼業がお上にバレて、解散して江戸を出て旅に出る後期必殺のパターンの終わり方を迎えるんだが、実質主役の鳴滝忍先生は『ラスボスが自分と同じかまいたちの技を使う、昔の医者修行を共にした恋人の男性』との因縁晴らしで、ドラマが帰結する。大吉は脇役だけど、チーム解散したら、妻のお沢と仲良く旅に出る、ちょっとした新婚旅行ハッピーエンドだな。実はこれ、裏稼業夫婦が最後にハッピーエンドを迎える必殺シリーズ初のケースだ。70年代と違って、殺し屋夫婦も幸せになれるドラマが80年代には作られるようになって、その時代を越えた延長線上に『スパイXファミリー』があるんじゃないかとも思っている」

晶華「え? 必殺シリーズの延長上に人気アニメの『スパイXファミリー』が来るの?」

NOVA「作劇じゃなくて、設定要素の一部だな。殺し屋ヒロインがスパイの夫と秘密を抱えた疑似家族となって、読心能力を持った幼女の娘が両親の秘密に接しながら、家族関係の維持のために奮闘するアクションありのホームコメディってのは、『秘密を抱えた疑似家族が、心を通わせる本当の家族になる過程を描いた話』としても面白いし、『秘密X家族』のカップリングで誤解が生じてトラブル発生って小さなドラマと、スパイや殺し屋、超能力者といった裏組織を交えた家族のピンチを乗り越える大きなドラマは、作風こそ必殺とは全く違うけど、昭和の後期必殺のバラエティ方向の必殺の終着点が『剣劇人』で、あれも元気少女の疑似家族のドラマだったことを考えると、令和の新時代の必殺に取り入れる要素があるんじゃないかなあ、と思ったり」

翔花「それが必殺と呼べるものかは知らないけどね」

NOVA「まあ、話は飛んだけど、中村雅俊の惣太は、『殺し屋が人並みの幸せを持っていいのだろうか』と悩むキャラとして設定された旧来のハードボイルド系キャラなんだな。ただ、その横で事件の被害者から殺し屋に昇格した大吉・お沢夫妻がいて、ドラマ的にはそちらに焦点が当たったり、見せ場が多いんだ。すると、惣太が割を食うような作劇で、しかもトリを飾るのが大御所女優の鳴滝忍で、ベテラン兄貴分の惣太がただの下働きになってしまう。

「で、惣太最大の見せ場があるとしたら、妻に殺し屋の正体がバレて、互いの愛情の強さ、もしくは破局を確認するドラマがあれば、どっちに転んでも主役としてのドラマの決着に至ったんだろうけど、結局お直に何も言わずに一人取り残して逃げちゃった」

晶華「一緒に連れて逃げたら良かったのに」

NOVA「大吉・お沢夫婦の幸せそうなエンディングを見ると、中学時代の俺もそう思ったさ。まあ、忍先生が大家をやってる長屋のご近所付き合いで、お直だけが裏稼業を知らずにいるという設定なので、チーム解散する際に一人だけ取り残されるのは仕方ないと言えば仕方ないんだが、彼女は『上方出身で、愛する惣太に連れられて江戸に来た』という設定なんだ。だったら、惣太が『ちょっと上方に里帰りしようか』とか適当に言い訳して、一緒に江戸を離れることもできたんだろうと思うが、そういうハッピーな展開をせず、最後まで喜劇女優の藤山直美さんを『夫だけでなく、親しく付き合ってきた忍先生や、大吉夫妻の知人がみんな一夜のうちに消え去って、一人取り残されるイジメのような構図』で話が締めくくられる」

翔花「夫だけでなく、知人がみんないなくなるって辛いわね」

NOVA「渡し人は基本的に人情ドラマとして展開していたんだけど、最終回で主役の惣太が一番、薄情なことをして、中途半端なハードボイルド劇(殺し屋の悲劇)を見せたつもりなんだけど、一番辛い目にあったのが殺し屋じゃない一般人の妻という終わり方で、中学生的には何だかなあ、と納得できないラストだった。まあ、お沢さんが幸せならそれでいいか、と大吉ハッピーエンドで良し、と自分なりに受け止めてはいたんだがな」

 

翔花「結局、渡し人の話で終わっちゃったね」

NOVA「この後は、仕舞人→新・仕舞人のお花と、そこから通じる仕切人のお清、そして夫婦殺し屋として壮絶な最期を遂げた仕業人の剣之介・お歌の話を、西崎みどりさんメインで語るつもりだ」

(当記事 完)