Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

必殺シリーズ50周年記念日

1972年9月2日

 

NOVA「その日、『必殺仕掛人』がスタートしたんだな」

009『おお、50周年か。そりゃあ、必殺ファンとしては祭りだな』

NOVA「まあ、俺は1971年生まれだから、仕掛人はリアルタイムで見ているはずがないんだけどな。初仕掛人朝日放送が夕方に再放送したのを見たときで、最初に仕掛人の殺しのテーマを聞いたのは1983年の『必殺渡し人』だ」

NOVA「この殺しのテーマは、中村雅俊さんの歌う主題歌『瞬間の愛』をアレンジした格好いい曲なんだが、使用回数が5話まででレアな曲、6話から仕掛人テーマに変わった。一応、このテーマは『仕掛人』の後、『新からくり人』『仕舞人』に引き継がれた流れがあって、それらの作品は珍しく殺しのテーマが主題歌アレンジじゃないという作品だった」

009『まあ、それを言ったら「仕置人」や「仕事屋稼業」もそうだし、最初の「仕事人」も途中で「新仕置人の出陣テーマ」に変わったし、「まっしぐら」「剣劇人」「激突」「2009」は主題歌アレンジじゃないわけで』

NOVA「仕置人は、主題歌がバラード調だったので、殺しのシーンのトリを飾ることもあったけどな。活劇シーンがアップテンポで、締めの殺しをバラード風味で情緒たっぷりに描写するのは、仕事人の中村主水で定着したが、実は仕置人にその萌芽があったという」

009『助け人は主題歌がアップテンポの「望郷の旅」で、仕留人はバラード調の「旅愁」。そして殺しのテーマのムードが作品カラーをも決めてしまう、と』

NOVA「そして5作めの仕事屋は、仕置人の後を継ぐアップテンポとバラードの組み合わせだな。アップテンポは挿入歌『夜空の慕情』が担当し、バラードは主題歌の『さすらいの唄』が担当するナイスな選曲だ」

NOVA「この殺しのテーマは最初、歌詞なしで聞いたとき、非常に明るく軽いノリに感じたんだな。仕事屋という作品も当初は素人殺し屋の博打打ち(ギャンブラー)のコンビ、半兵衛と政吉が、情で仕事を依頼する『いささか頼りない女元締め・おせい』にスカウトされて、これまでにない素人集団の殺し屋物語なわけだ。だけど、半兵衛の演じ手がプロの仕掛人・藤枝梅安を演じた緒方拳さんなので、表と裏の使い分けが非常に見事。素人がプロの殺し屋に成長するドラマをきちんと貫いたわけだな」

009『仕掛人よりも、仕事屋を重視する記事かよ』

NOVA「仕掛人は基本的に最初からプロ集団だからな。プロがプロとしてこなす裏稼業だから、そこにはキャラの成長が描かれていないんだ。当初は、辻斬り浪人の西村左内が裏稼業にスカウトされた素人で、潔癖な侍の世界とは異なる裏稼業の非情な掟に接して悲痛な想いをこぼす話もあったけど、選曲や演出も含めて試行錯誤が伺われた作風。その後の必殺は、情に溺れがちな素人(だけど殺しの腕は立つ)と、クールで非情かつ合理的に割り切ったプロとのせめぎ合いを描いたりしながら、数々の殺し屋ドラマを紡いでいく。

「しかし、まあ、仕事屋以前の殺し屋チームは男性社会、元締めやチームリーダーは男だったのが、仕事屋で初の女元締めが登場。作風がギャンブルというテーマで、娯楽方面に転んだと思ったら、最後まで見ると、女の情愛と男のハードボイルドが織り成すドラマとして完結し、『夜空の慕情』の歌詞と上手くリンクするという。これは最終回のヒロイン、お春の心情を歌った歌と解釈できて、すごく味わい深いわけだな」

 

必殺シリーズとハードボイルド

 

NOVA「本来、必殺シリーズは70年代のハードボイルドを濃縮した殺し屋の物語だ。時代としては、ルパン3世の最初のアニメ版とタイミングが重なってくる。悪党の物語を、TVという大衆向きのドラマに合わせるように、多少の勧善懲悪要素を加味したり、主人公たちに『日常のコミカルな顔』や『家族や仲間思いの善人要素』を演出しつつも、いざという時には非情に切り捨てる側面を示したりもする。それこそ、強くなければ生きられない、優しくなければ生きている価値がない、の世界。タフな厳しさと、甘い人情のせめぎ合いが大人のドラマとして味わい深いわけだ」

009『でも、そこから殺しの美学って言葉に発展したりもするんだな』

NOVA「それで完成した主題歌がこれだろう」

NOVA「時代背景的に、必殺シリーズと、仮面ライダーと、最初のルパン3世アニメは空気感が似ているところがあって、その空気をハードボイルドという言葉で語ることもできるんだが、完全なハードボイルドだと孤独でニヒルで『あっしには関わりないことでござんす』の木枯し紋次郎の世界観だ。

必殺仕掛人は、木枯し紋次郎に対する時代劇として作られ、殺し屋チームという枠を生み出した。池波正太郎の原作は、藤枝梅安という一人の殺し屋の物語で、チームはあくまで背景でしかないのに対し、TVドラマの必殺シリーズは梅安と左内と元締め・半右衛門の3人を中核にしたチームドラマとして構築された」

009『主人公が読者に話しかけるスタイルの1人称小説なら、ロンリーヒーローも成立しやすいけど、毎週放送のドラマとして安定させるにはレギュラー役者のチーム構成が重宝されるもんな』

NOVA「それぞれの個性や才能、技術を持ったチームドラマというのは、その後、合体ロボットや戦隊ヒーローなどで定番化していくわけだが、70年代半ばは同時に『今とは違う形のフェミニズム、女性の社会進出』がドラマ作りのポイントになる」

009『ルパン3世における峰不二子だな』

NOVA「男と対等に渡り合える、自立した女スパイ、時には自分の欲望のために仲間を裏切ったりもする悪女だけど、持ち前の美貌と優秀さ、そしてルパンの懐深さのおかげで存在を許されるキャラだな」

009『それって酷い言い草じゃないか?』

NOVA「いや、冷静に見て、不二子のやっていることって、ゲゲゲの鬼太郎ネズミ男と大差ないんだよ。自分の欲望のために主人公を利用したり、悪役と手を組んで主人公を陥れたりすることもあるが、まあ悪役に切り捨てられたり、悪役の酷さを途中で見限ったりしながら、主人公にすり寄って、最後は寄りを戻して腐れ縁を続ける。違いは小汚いおっさんか、可愛い女性かという点だ」

009『可愛さは正義ってことか?』

NOVA「正義かどうかはともかく、『女性の愛嬌は七難隠す』って言葉もあって、一方、男は度胸が尊ばれるのが昭和イズムだな。この時代の価値観としては、『男は逆境に対してもへこたれず、恐れずに立ち向かう』『愛するものを守るために、自分を捨てても構わないとする漢気』というのがあって、一方の女性は『内助の功』『良妻賢母』という古い価値観から『職場の花』『紅一点』『男の活躍を支えるサポーター』的な立ち位置がドラマで求められるようになる」

009『戦う女ヒロインが成立するのは、「キューティー・ハニー」(73年)からか?』

NOVA「いや、その前に『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)の白鳥のジュンがいる。フィクション番組における女性の社会進出というテーマは、ウルトラなどの防衛チームの女性隊員辺りから語れるが、TVドラマの枠で考えるなら『2枚め主人公』『おっちょこちょいな後輩』『健気で可愛い女性』という3本柱があって、これでウルトラQは成立する。

「女性キャラは主人公を立てつつ、ドジな後輩を下に見ることで、可もなく不可もないポジションを確立する。そのうち主人公が親しみやすいおっちょこちょい要素を獲得すると、それにツッコミ入れる真面目な委員長ヒロイン、ヒステリックに手が出るとツンデレ暴力ヒロインの枠に発展して、まあ、その典型がマジンガーZの弓さやかさんだ」

009『そういう構図のヒロインだと、主人公の鬼太郎、おっちょこちょいな3枚めのネズミ男、その天敵のネコ娘という形もあるな』

NOVA「まあ、キャラの属性をあれこれ考えるのはドラマ演出を考える基本だと思うし、ハードボイルドのドラマだと主人公をドジキャラに設定すると、ギャグになってしまうので、主人公の弟分などにコミカルな役割を当てることになる。そして、ギャグに対してツッコミ入れるのがヒロインの役割で、それを主人公がなだめることで人間関係は崩れずに維持される。なだめ役ポジションは、ヒロインの父親の博士とか、2枚めの先輩キャラとかいろいろあるが、置いておいて、必殺に話を戻そう」

009『どこまで話が寄り道して転がるか、気になっていたぞ』

NOVA「いや、実は必殺シリーズの女性キャラの話につなげたかったんだが、基本的に時代劇の女性って被害者枠が圧倒的に多いんだな。殺されるゲストヒロインとか、愛するものが殺されて頼み人になるヒロインとか、『女を酷い目に合わせる悪い奴に罰を与える構図』を成立させるために、まあ、毎回と言っていいほど女性が酷い目に合う(まあ、男も酷い目に合うんだけど、女性ほどスポットが当たりにくい)。

「まあ、たまにそのパターンを逆手にとって、被害者だと思われた女性が実は事件の黒幕という悪女パターンもあったりするんだが。清楚可憐に見えた女性ゲストが突然、悪い笑みを浮かべて汚れ役に転じる二面性がツボにハマったりするんだが、裏稼業のレギュラー女性キャラはそこまで極端な変化を見せにくい。やはり、レギュラーに求められるの親しみやすさだからな」

009『クールなイヤミキャラを前面に出した市松も、子どもには優しいとか、殺し屋としての有能さを示してチームに欠かせないポジションを確立していたわけだし』

NOVA「そして、仕掛人だが女性の裏稼業レギュラーがいないんだな。準レギュラーはいて、元締め・音羽屋半右衛門の妻おくらを演じた中村玉緒さんと、梅安の馴染みの芸者おぎんを演じた野川由美子さん、そして一応のレギュラーである西村左内の妻・美代を演じた松本留美さん。ただ、この中で裏稼業を知っているのは中村玉緒さんだけで、他は男性殺し屋の日常を彩る程度の役どころ」

009『最も野川さんは、鉄砲玉のおきんや芸者お吉の役で、序盤の殺し屋チームの女密偵役で活躍するんだな』

NOVA「『桃太郎侍』とか『長七郎江戸日記』などでもお馴染みの時代劇江戸っ子ヒロインって印象だな」

NOVA「さて、70年代初頭のTVドラマにおけるハードボイルド活劇において、男の非情さを成立させるには、代わりに情緒部分を担当してくれる女性キャラが必要と考える。と言うのも、非情を旨とする男をただの悪党ではなく、主人公として視聴者に受け入れられる存在にするには、『主人公の感じる怒りを代弁する仲間』が必要で、怒りもなく冷徹に殺しや悪党退治を行うだけの殺人機械はドラマのヒーローにはふさわしくないからだな」

009『チームの中に、ストレートに怒りの感情を燃え上がらせるキャラや、世の中の理不尽に愚痴や涙をこぼせる未成熟キャラがいてこそ、ドラマに感情移入ができる。だけど、プロの殺し屋はそういう感情に身を焦がして暴走することを戒めて、ドライに身を処する姿を示すことが大事ということか』

NOVA「そういう冷静な参謀格もいてこそのチームだな。だから、情に走りがちな女子どもという役割がいて、決定権を持つチームリーダーがいて、逆張りしがちなクールガイがいて、縁の下の力持ち的な(しばしば大食漢でコミカル担当な)大らかなムードメーカーが意見をぶつける仲間をなだめるわけで」

009『クールな女性キャラが定番化するのはいつぐらいかな?』

NOVA「戦隊だと、84年のバイオマンからで、ヒロイン2人体制になってからだと思う。ところで、必殺だと75年の『必殺必中仕事屋稼業』で初の女元締めであり、自らも殺しを行うこともあるおせいがシリーズの女性史の転機に当たるキャラ……という風に話をつなげようとした」

 

必殺必中仕事屋稼業と鎌倉殿

 

NOVA「初期の必殺主題歌は、男性ボーカルだと『恋を失い、孤独を受け入れた男が一人で旅立つ強さ(未練を断ち切る歌詞)』なのに対し、女性ボーカルだと『好きな男を思い焦がれる切ない女の愛情』を歌い上げる歌詞が多い。この歌詞の変遷から時代の流れを考察することも可能だが、俺的に感じ入ったのは、劇中で殺しのBGMだと思っていた曲に実は歌詞があったことを後で知った『荒野の果てに』と『夜空の慕情』だな」

009『ああ、「荒野の果てに」はBGMを渡し人で初めて聞いて、それから翌年の映画「THE必殺」のOPで流れたのがビックリだったな。しかも凄く格好いい歌詞で、痺れまくったわけで』

NOVA「ハードボイルド感覚満載で、ちょうど仮面ライダーWの主題歌歌手の歌ってるバージョンを見つけた」

009『仕事屋稼業に話進めたはずなのに、もう一度、「荒野の果てに」に戻してどうするんだよ?』

NOVA「では、さらに話を飛ばそう。仕事屋および商売人のおせいさん(草笛光子さん)と言えば、鎌倉殿で比企尼を演じたのは前回の記事で話した。そして、今後は『商売人VS仕事人』になるかな、と期待したら、まさかの仕事人・善児の死亡で、驚いている間に必殺シリーズ50周年を迎えて、どうしようか、と戸惑っている俺がいるってことで。ついでに、善児の殺しのシーンに必殺のBGMを入れているMAD動画がないかなあ、と期待しているが、誰も作っていないのか見つからずにいる」

009『何で鎌倉殿に話を飛ばすんだよ?』

NOVA「だって、必殺シリーズ50周年という佳節に公式が何か作品を発表するでもなく、今のこのタイミングで『仕事人の善児の死という、本家・必殺ですら久しく見せないハードな展開』を鑑賞できたのは、必殺ファンとして感じ入ったわけだよ。正に、人の命をいただくからは、いずれ私も地獄道だな」

NOVA「仕置屋の殺しのテーマも、主題歌のアレンジなんだけど、それまでのテーマが原曲を大きく変えていないのに対し、この曲はアレンジが結構大きい。俺が好きな殺し曲は『新・仕置人のあかね雲アレンジ』と『仕事人IIIの冬の花アレンジ』がダイナミックで原曲の改変ぶりの大きさ、格好良さで秀逸と思いつつ、それとは別に、哀愁アレンジは『序盤がゆったりしたバラード調でありながら、中盤からの勢いの付き方が不思議な高揚感を醸し出して、他にない転調の妙味を覚える』わけで」

009『仕置屋は市松の殺しに多用された女声スキャットが、殺しの美学を音楽面からも支えてくれていい感じなんだよな』

NOVA「その音楽ではないが、市松の殺しのシーンではこれも劇的な演出だ」

009『殺しの現場を女の子に見られたゆえの緊迫感か』

NOVA「善児の範頼殺しのシーンで、仕置屋のこのシーンも思い出したりしつつ、本家では『盲目ゆえに見られたうちには入らず、事なきを得る』のに対し、善児は目撃者の娘トウを自分の弟子として育てたことで、非情な殺人機械に情が芽生える。そして、その情ゆえにプロフェッショナルに徹しきれずに、頼家殺しで迷いが出て、返り討ちにあう。そこは仕留人の糸井貢にも思え、また重傷を負った善児を親の仇として、あるいは死に際の介錯ゆえかトウがとどめを刺す。もう、今の必殺では見られないようなハードな殺し屋ドラマを堪能できて、感じ入ったわけだ。江戸の仇を鎌倉で討つような達成感というか」

009『つまり、あんたの必殺脳が鎌倉殿のドラマをかつての黄金期の必殺シリーズを受け継ぐハード時代劇として認定したということだな』

NOVA「ああ、必殺鎌倉稼業の続きが楽しみだぜ。善児を失った仕事人の元締め、北条義時は、果たして比企尼の仕掛けた商売人の罠を乗り越えることができるか?」

NOVA「とりあえず、今回の記事はここまでにしておく。初期必殺のいろいろな曲と、現在の鎌倉殿をリンクさせた記事を書きたいという欲求は果たせたし、必殺シリーズ50周年は始まったばかりだからな。来年4月21日の中村主水登場50周年に向けて、また続きを書くこともあるだろう」

009『女仕事人の系譜で、トウについて書きたくもなるだろうしな』

(当記事 完)