Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

非・仕事人シリーズのヒロイン話2(仕切人、橋掛人から仕舞人へ)

再放送で追っかけて

 

NOVA「さて、83年に『仕事人III』の途中から必殺シリーズを見始めて、『渡し人』を経てから『仕事人Ⅳ』に至った俺。その後、時系列順に『仕切人』以降も喜んで追いかけたファンだったが、それとは別に、『シリーズがあるなら、旧作も何とかチェックしたい』というマニアの入り口に入るわけだ」

晶華「全作品網羅なんて考えるのが、ただのファンとマニアの違いらしいわね」

NOVA「受け身に与えられた、もしくは目についた作品をただ消費するだけの一過性なただの好きがファンで、それが積極的に追いかけて、シリーズコンプリートとか、レアアイテム見っけとか、作品論を語り始めるとか、愛好家の話を喜んで拝聴するとか、自分で喜んで小道具を作ったり映像編集したり、まあ道はそれぞれだが、とにかく過剰な心意気で作品を追いかけて、一家言ぶてるほどの執着を持つに至った愛好家がマニアだもんな」

翔花「NOVAちゃんの中でのファンとマニアの違いね」

NOVA「まあ、マニアにもいろいろなレベルがあるが、1983年だとまだレンタルビデオ業界も発展しておらず、そもそも必殺シリーズのビデオ商品なんて物も、その段階では存在しなかったはずだし、俺がビデオで必殺シリーズを追いかけるようになったのは、平成に入って大学生になってからの話だ。よって、それまでの必殺旧作追っかけの手段はTVの再放送に限られる。俺の記憶では、初めて見た必殺旧作は日曜の昼に地元ローカルのサンテレビの再放送でやっていた『必殺商売人』となる」

NOVA「で、商売人については、まだ必殺初心者の頃に再放送で見たわけだが、その内容をよく理解しておらず、後年(2009年)に再び再放送で見た話がここからになる」

NOVA「2009年の過去記事読んで、ついでに仕事人2009の昔書いた過去記事なんかを読むのも一興だなあ、なんて思ってるわけだけど、実は必殺シリーズの歴史懐古は昔、いろいろ書いているんだよね」

翔花「わたしたちが2018年に誕生して、ここのブログがNOVAちゃんと花粉症ガールのお喋りモードになる前から、NOVAちゃんは必殺追っかけを続けていた、と」

NOVA「だから、去年が俺の必殺追っかけ歴40周年だってことだよ。で、必殺シリーズの歴史を時系列順に語っても、今さら芸がないと考えているわけだから、テーマ別に記事書きして、今回は『女の仕事人ほかの裏稼業』で語り尽くそうとしているわけだな。棗さん登場記念でもあるし、小五郎の引退ということで、シリーズ継続が危ぶまれている中での総括とか、俺視点での必殺追っかけ史みたいなものも混ぜている次第だ」

晶華「時系列順なら、『うらごろし』→『仕事人』→『仕舞人』に続くところを、『渡し人』に行っちゃったのは、NOVAちゃん視点ってことね」

NOVA「そうだな。そして、サンテレビの再放送で『商売人』→『からくり人 富嶽百景殺し旅』→『暗闇仕留人』→『仕置屋稼業』ぐらいまでを追っかけつつ、『激闘編』時期の朝日放送の再放送で、『仕掛人』→『仕置人』→無印の『仕事人』などに続きつつ、87年にサンテレビで『うらごろし』も見たりしながら、少しずつ知識の穴を埋めて行ったわけだが」

翔花「再放送での追っかけは、地方ごとの放送タイミングに左右されるから、いつにどの番組をどの順番で見たかの感覚が、個々人ごとにズレて来るのね」

NOVA「同じ番組でも、中学時代に見たか、大人になってから見たかで感想が変わって来るものもありだからな。若いときに理解できなかったものが、10年後に味わいが分かるようになったり、誰か先達の感想に接して、そういう観点で見れば楽しめるのかあ、と開眼したりすることもあるから、作品に対して安易に駄作のレッテルは貼りたくないわけだよ。『自分にとっての傑作』は主張するけど、『自分にとっての駄作』を主張しても単に物を見る目がない(育っていない)だけ、というケースもあって、それは作品の罪ではなくて、自分が未熟なだけ(あるいはその作品を味わう素養の欠如)だからな」

晶華「でも、良い物と悪い物を峻別する目は必要よ」

NOVA「だから、評論家は良い物と悪い物の例を示しながら、良い物を教えてくれるのであれば建設的に学べるし、良い物の良さをろくに示すことなく、主観的な悪口をあたかも一般論のようにバラまくしか能のない輩は、話を聞くに値しないと俺は認識している。まあ、俺はせっかく作品を見るなら、楽しんで見たいわけだし、楽しめる要素を見出すことに喜びを感じる人間だからな」

翔花「だけど、楽しめない作品もあるでしょ?」

NOVA「まあ、好きなジャンルとか、作風とかもあるからなあ。それに、本当に美味しいものを食べた後だと、その味を繰り返し楽しみたいのに、他の同種の作品が見劣りするように思えて、その物足りなさの正体が何なのか探りたくもなる。そして、いろいろ追っかけているうちに自分の趣向を知って……別ジャンルにその要素を見出してセレンディピティを感じたり、自分が気付かなかった味わいを舌が肥えたから気付かされたり、逆に昔は好物だった濃い味付けがドギツく感じられて淡白な方向に好みが移ったり、作品論を語るにしても、料理を語るにしても、語り手の視点や感覚の変遷があったりする」

晶華「何だか難しいことを言ってるわね」

NOVA「簡単に言うと、夏の暑いときに食べるアイスクリームは美味しいが、冬の寒空の下で食べるアイスは美味しくいただけない。だけど、部屋の暖房がきいた場所で食べるなら、冬のアイスが季節外れなのに美味しく味わえたりもする。それを、単純に『冬にアイスを食べるなんてバカか?』と斬って捨てる人間に、アイス好きの人間は『冬アイスの美味しさが分からないなんて、可哀想な人間だ』なんて思ったりするわけだよ」

翔花「NOVAちゃんは冬アイス派?」

NOVA「いや、俺は夏冬関係なく、『食べたいときにアイスを食べる派』だ。アイスマニアじゃないので、自分から積極的にアイスを求める人間じゃないけど、アイス好きな人間を否定しないし、他人がアイスを美味しく食べているのにバカにするような輩は無粋だと思っている。ただ、世の中には自分が好まないことに対して、どうしようもなく攻撃的でバカにする人種がいるってことだ。こんなものが流行するなんて世も末だ。世の中を良くするために、私が間違った風潮を正さねば……と強烈な使命感に駆られがちな人とかな」

晶華「もはや、必殺話じゃないわね」

 

NOVA「おっと、『エセ評論家を斬る』みたいな話の流れになってしまったな。とにかく、軌道修正すると、中学時代に分からなかった商売人の良さは、大人になって多くのマニアな先輩諸兄の言論を土台に、少しは自分でも感じられるようになった。ただ、それには仕事屋稼業でのおせいさんの話の前提が必要だったし、夫婦の殺し屋という人情の機微が読みとれるほどの人生経験が必要だし、男女の仲のハッピーエンドで終わらないほろ苦さを受容する出会いと別離の人生経験も必要かもしれないし、作品を受け止められるタイミングがあると思うんだ」

晶華「だから、NOVAちゃん個人は、傑作・駄作の見極めはマニアほど慎重に、ってことね」

NOVA「時代が変われば、かつては駄作呼ばわりされたものが再評価されることもあるからな。ともあれ、前回、語っていた『渡し人』だけど、『商売人』がテーマとして掲げた夫婦というものを発展させて、殺し屋夫婦は幸せになれないという路線を見せたのがベテラン惣太で、被害者としての洗礼を経て殺し屋の世界に足を踏み入れた大吉夫妻は、新たに幸せになれる80年代の方向性を示したとも言える」

翔花「ああ、夫婦をテーマに『商売人』→『渡し人』につながるわけね」

NOVA「間にいろいろな作品を挟んだから気づくのに時間がかかったけど、自分にとっては、『渡し人』と再放送の『商売人』が同タイミングで視聴していたわけだよ。でも、今までこの両作は、自分の中ではつながっていなかった。ここに来て初めて、夫婦裏稼業の末路ってテーマで考えたときにつながったってことだ。両作を最初に見てから40年を経て、ようやくな」

 

西崎みどりの追っかけ史

 

NOVA「で、渡し人で最初に知った西崎さんの話に戻ると、その作品だけだと大吉の奥さんのお沢さんというイメージしかなかったんだけど、その後、割とすぐに『暗闇仕留人』を見て、主題歌歌手の名前に西崎みどりの名前を見て、さらに殺し屋の名前が同じレントゲンで殺す『村雨の大吉』と出て、俺の中では渡し人→仕留人のリンクができた。その後に、仕置屋稼業の捨三を見て、え? あんた、大吉さん? 何で中村主水の手下をやってるの? なんて再放送ゆえの時系列逆の感想を抱いていた」

晶華「時系列どおりだと、仕置屋稼業の8年後が渡し人だから、リアルタイムで見ていた人は『とうとう密偵役の捨三さんが、必殺技を持つ殺し屋に出世かあ』って感じ入ったそうね」

NOVA「何でも、渡辺篤史さんは、昔、共演していた藤田さんが推薦したことで渡し人になったらしい。ともあれ、知ってる役者さんや歌手さんが関係してくると、作品への親近感も湧くってもので、俺の中で西崎みどりさんは、渡し人→仕留人とつながってくる。その後、仕事人Ⅳ時期の映画のパンフレットで必殺シリーズの歴代作品リストがあったから、これでようやくシリーズの概要が分かるようになったわけだ。それまでは、商売人と仕留人の前後関係も分かっていなかったし」

晶華「そんなの、ネットで調べるとすぐに分かることじゃない?」

NOVA「83年は、そんなIT情報社会じゃねえ。当時、ゴジラ映画の旧作追っかけなんかも始めていたんだが、ゴジラやウルトラ、仮面ライダーなんかは子ども向きのガイドブックがあって、子どもながら作品時系列なんかは簡単に学べたんだが、必殺シリーズの子供向けガイドブックなんてなかったからな」

翔花「今でも、子供向きのガイドブックはないと思う」

NOVA「当時、ケイブンシャの大百科に、必殺シリーズはないかなあ、とチェックした思い出もあるが、結局、俺が必殺関連の書籍資料を買うようになったのは90年代になってからだな。あと、CD音源とかを買い集めたりしたのも90年代。で、それまでは劇場映画のパンフレットと、レギュラー放送および再放送だけで必殺欲を満たしていたわけだ」

晶華「NOVAちゃんにとって、必殺追っかけは、ゴジラ映画の追っかけと同じくらいのタイミングと」

NOVA「シリーズ作品のタイトル順を暗記するのはマニアとして基本だろう? 『ゴジラ』→『ゴジラの逆襲』→『キングコング対ゴジラ』→……『メカゴジラの逆襲』まで全15作品(当時)のタイトルを覚えるのと同じ感覚で、『必殺仕掛人』→『必殺仕置人』→『助け人走る』→……『必殺仕事人Ⅳ』までの作品タイトルを21作品覚えていたなあ。テストには出なかったけど」

翔花「そんなことを覚えるぐらいなら、もっと勉強したら良かったのに」

NOVA「勉強もしたさ。徳川15代将軍の名前ぐらいは覚えたし、百人一首も全部暗記したが、さすがに歴代天皇の名前を全部覚える試みは挫折した」

晶華「歴代天皇って何人いるの?」

NOVA「宮内庁が公式に発表しているので、令和の今上天皇までで126代だな。まあ、途中で南北朝北朝側を数字に含めていなかったり(正統なのは南朝という立場)、皇極天皇斉明天皇孝謙天皇称徳天皇一人二役(言葉が適切かは知らんが)で、言ってみれば、仮面ライダーBLACKとRXみたいなものだと認識しているし」

翔花「え? 皇極天皇さんがクライシス帝国か何かに襲われて、キングストーンの力でパワーアップしたの?」

NOVA「そんな話じゃないが、とりあえず、それらはいずれも女性天皇で、退位した後の再即位というややこしい経緯があるわけだが、念のため、女性天皇はこれまで有名な推古天皇持統天皇などを始め6人(8代)いる」

晶華「すると、歴代女性天皇を語る記事が書けそうね」

翔花「そのついでに、女性天皇で戦隊も結成できそう。女天戦隊クイーンオージャーとか。コウギョクイーンとコウケンクイーンはそれぞれフォームチェンジして、サイメイフォームとショウトクフォームになるって感じで」

NOVA「さすがに、皇家をネタにして特撮ヒーローとかゲームのキャラにはしにくいんじゃないか。FATEとかでも、半分伝説のヤマトタケルぐらいしかいないだろうし。ともあれ、女性天皇に関する問題は、話がややこしくなりそうなので、これ以上は踏み込まないようにして、今、語るべきは『渡し人』→『仕留人』に続いて、俺の西崎みどりさん遍歴が『仕切人』に続くわけだ」

 

必殺仕切人の話

 

NOVA「さて、『仕事人Ⅳ』の次に、84年夏の終わりから年末まで放送された『必殺仕切人』は、非・主水シリーズの中でも最も豪勢なキャスト数を誇るド派手な作品だ。前作ラストで夕日の海に消えた秀さんを中心に、仕事人チームは解散。しかし、江戸に残った三味線屋勇次がそのまま続投し、新たな殺し屋チーム(メンバー総勢7人、殺し屋5人+サポーター2人)で、その数的な豪華さは激闘編と並んでシリーズ最多だ。激闘編がメンバー全員揃う回が2話しかないのに対し、仕切人は途中で高橋悦史演じる虎田龍之介が江戸を離れて、しばらく出ない時期があったものの、それでも1〜5話と17話、18話がフルメンバーで活動していて、激闘編以上に派手な殺しのショーが展開された作品だ。ある意味、仕事人とは別に、後期必殺の象徴的な作品だと思っている」

晶華「主役は、三味線屋の勇次さんね」

NOVA「いや、俺的には京マチ子さん演じる占い師のお国が主役だと思っているが。京マチ子さんは仕舞人の主役の女性リーダー坂東京山役から、共演者の高橋悦司さんとのチームで、仕切人の新人として参入。三味線屋の勇次は、彼らを襲う悪の刺客役として、小野寺昭演じる仕立て屋の新吉とともに登場。しかし、汚れ仕事を嫌う勇次と新吉は、お国たちを助けるために悪の元締めを裏切る流れになる。また、お国を守るために知人の髪結い勘平(演・芦屋雁之助)がベテラン仕切人として、勇次たちとお国の間を取りなす仲介役となる。その後、お国に従うお清(西崎みどりさん)と、順之助みたいに殺しの現場を目撃したスキゾーがメンバーに加入して、火薬を使った殺しのサポート役になる(屋敷の門を爆破して侵入経路を作ったり、大きな音で誘き出したりなどなど。直接、殺傷できる破壊力はあるけど、仕込みに手間を要するので実戦には向かない)」

翔花「ええと、メンバーの取り合わせが多すぎて、よく分からないんだけど?」

NOVA「まあ、必殺の殺し屋メンバーはレギュラーが大体3人で、そこにサポート役を入れると2人。殺し技は、刀、首筋に針とか刃物突き刺し、そしてレントゲンなどの肉体破壊系の3パターンが基本。で、そこに糸や紐による絞殺が加わったり、火薬系の技とか、飛び道具が後年、増えて来るわけだけど、仕切人は殺し技のオンパレードだな。キャラ別にリストアップしてみよう」

 

  1. お国:占いの筮竹で相手の首を刺す。「あなたのお命を占うております。……卦は凶」と言って、筮竹をばら撒き、相手が翻弄された隙に、瞬間移動のように背後に回り込み、「お命終わります」のセリフで首を刺す定番コンボで、毎回のトリを務めた。中村主水系のスローバラードはこの人の担当。
  2. 勇次:一応、主役だし、主題歌も歌っているけど、トリは飾らない中堅ポジション。お国がスケジュールの都合で出演できなかった回に、トリを飾ってバラード殺しを担ったこともあったけど、技の仕掛けが派手で、しかも勇次のキャラも目立ちたがりの派手な装束なので、地味なバラード殺しが似合わないキャラになっている。バラード殺しを務めるには、地味とか淑やかなキャラの見せる落ち着きからの豹変がポイントだと思うので、とにかく派手な殺し技の三味線屋だと持ち味を損なっているな、と思った。一方、アップテンポのアクション曲に乗った殺し技は、撮影スタッフの習熟も最高峰に達して、最も演出的な完成度を高めたので、適材適所ってものがあるなあ、と。
  3. 新吉:新登場の仕立て屋。性格は生真面目で、路線としては寡黙で温和ないい人。演じる小野寺昭さんが、柔和な貴公子タイプ(殿下)のキャラ付けの役者で、アクの強いメンバーの多い必殺シリーズでは地味系のキャラ。ただし、その地味さが殺しのシーンになると、抜群のステルス能力を発揮して、黒子の衣装と共に闇に潜んで、夜光塗料を塗ったまち針を投げて相手の胸にマーキングして、その後、物差しの中に仕込んだ刃で闇の中を駆け抜け、暗闇の中で光る針(相手の急所)にシャラーンッと突き刺す。必殺の名物を光と闇のコントラストとするなら、本作で一番、光と闇を活かした殺しのシーンで、派手さを追求した勇次とはまた違った芸術的な殺し技演出だったと思う。なお、最初に見たときは、まち針を投げて普通に首を刺した方が早くない? と思ったけど、服に針を刺すのと皮膚に針を刺すのでは、前者の方がはるかに楽だと自分で実験してみて、新吉の殺し技に納得した。一見地味だけど、新吉のステルスコンボ殺しは奥が深くて、通好みの技だと思います。
  4. 勘平:からくり人の常連で、劇場版の必殺第1作でも、瓦投げの政として結構、活躍してた芦屋雁之助さん。なお、この時には、からくり人の富嶽百景も視聴済みなので、頭蓋骨をパラパラ割る魚籠殺しの宇蔵さんとして、面白い殺し技キャラの一人に挙がってました。で、この勘平さん、最初は髪結の亭主ということで相手の髪を切って、それを振り回して壁に激突させる「有線誘導自滅技」的な演出で殺していましたが、どうも仕組みがよく分からないので、途中からもっとストレートにリングロープを張って、プロレスみたいにロープに振った反動で投げ飛ばしたり、蹴り入れたり、雁之助さんが凄く躍動感ある豪快アクションを見せていました。ちょっと、このタイプのアクションは時代劇じゃなかなか見られないよなあ、と思っていたら、後で女子プロレスラーの仕事人とかがスペシャルで登場したり、宮内洋さんがかつて助け人の島帰りの龍役でプロレス技殺しを披露していたことが分かったりする。あるいは、後にゲスト出演するキン肉マンの方向性かも。で、今の必殺に足りないのは、こういう肉弾戦だと思ったり。まあ、ゲストの殺しの的にこういう肉体派のファイターを用意して、この敵をどうやって倒すのか、とか、そういう話も見てみたい。
  5. 虎田龍之介:職業は元武士の今は小鳥屋。だけど、殺し技は鋼鉄製の長煙管で、相手の頭部や首に叩き込む。血を見るのは嫌いと言いつつ、相手の頭部に黒い風呂敷を被せて目くらましにするのが定番。確かに、カモフラージュなしに鋼鉄棒を頭部に叩き込むのはグロいよなあ。勘平さんとは異なるタイプの打撃技だけど、意外とこの手の技は必殺シリーズでは珍しい。切り技や刺し技など鋭利な刃物が多いので、鈍器による撲殺というケースは稀というか、実はバット殺しの元締め虎の親族なのかもしれない(苗字が虎田だし)。まあ、近年では故・瓦屋の陣八郎のメリケンサック(たがね)でおでこを割るのも近いのか。ともあれ、役者さんの頼り甲斐のある飄々とした大人演技も魅力的で、渋いキャラ。中村雅俊の渡し人・惣太も、こっち系のキャラの方が良かったのでは、と今さらながら思う。
  6. スキゾーとお清:順之助&加代の後継者だけど、西崎さんのお清が若いのと、スキゾーがいちいちラブオーラを発揮するので、ラブコメ必殺という新路線を開拓……しきれなかった感。やはり、真面目な大吉さんとの物語の後で、ナンパ小僧のスキゾーじゃなあ。清楚な陰ある人妻を演じた西崎さんが、今度は明るい茶屋のお姉さんを演じて、色気小僧を適度にいなすドラマが、仕切人の日常風景。まあ、当時はスキゾーの時代劇らしからぬストレートなナンパぶりが鬱陶しかったけど、スキゾーのアイデアマンぶりは後に時計屋の夢次に受け継がれます(劇場版での必殺5でも同じ山本陽一が演じていたし)。からくり屋の源太も、こういう路線なら良かったのかもしれないけど、彼は生真面目すぎた。恋愛脳のナンパ小僧なんてキャラは、80年代から90年代の若者像ってことかな。おっと、技は火薬と発火装置で、投石器よりも進化したエンジニア芸です。こういう秘密兵器を駆使する若者キャラは、今の必殺でも欲しいなあ。

 

仕切人から橋掛人へ

 

NOVA「そして、仕切人の次に、西崎さんは橋掛人の元締めキャラに出世した。前の元締め・暗闇の太助の娘で、裏稼業のことは何も知らない素人。当時25歳だった西崎さん演じるお光(春光尼)は、必殺シリーズ歴代最年少の元締めと言われている。まあ、役者としては仕舞人から数えて5作めだし、『旅愁』以来のシリーズ関わり方から考えると、一番長く付き合っている人なんだけどな」

晶華「あれ、メンバー中、一番長いのは津川雅彦さんじゃなかった? 調べると、最初の『必殺仕掛人』から悪役ゲストとして、初期7作品すべてに出演していたそうじゃない?」

NOVA「まあ、登場回数が7回なので、年季の割に出演回数は西崎さんに遠く及ばないけどな。西崎さんは殺し屋を演じているわけではないけど、サポーターとして5年連続1クールレギュラーを務め、とうとう元締めにまで達したわけだ。なお、元締の娘として父のやり残した13件の仕事を果たす元締め代理みたいな立ち位置だけど、これ以前の作品では、前の元締めの女房が次の元締めになるという傾向があったのが、ここで元締めの娘が後を継ぐというパターンが始まった」

翔花「元締の娘だけど素人のヒロインが、ベテランの橋掛人たちに助けられて、裏稼業に励む話ね」

NOVA「そして、そんな西崎さんのお光をサポートする2才年上の姉さん殺し屋が、萬田久子さん演じるおくらだ。夫の松役の斉藤清六とともに、瓦職人を営んでいる。斉藤清六は映画の必殺で、石亀という地中潜航能力を持った仕事人を演じていて、仕事人Ⅴの8話でも萬田さんといっしょにゲスト出演している。そして、萬田さんは同じ映画で芦屋雁之助さんが使った瓦投げを継承する形で、元締め格でない女殺し屋としてはジュディ・オング和田アキ子以来となる立ち位置を担った。雁之助さんの場合は男が瓦投げで、妻役の研ナオコさんが標的の位置を定めるサポート役だったが、橋掛人では男女の役割が入れ替わっている点も、女性優位な非・主水シリーズの特徴って感じだな」

晶華「もう一人の宅麻伸さんは、新吉って役名なのね」

NOVA「仕切人の小野寺昭さんと同じ名前だな。仕切人の新吉と、橋掛人の新吉、キャラ名が同じなので、混同するのも無理はない。宅麻伸さんの新吉は吹き矢が武器で、職業は鳥を捕まえる鳥刺しというもの。なお、映画の必殺にも、新吉というキャラがいたり、毒を塗った小鳥のくちばしで殺す半吉(演・赤塚不二夫)というキャラがいて、名前かぶりや技かぶりがややこしい」

翔花「芦屋雁之助さんの瓦屋の政さんと、花屋(鍛冶屋)の政さんのケースもあるしね」

NOVA「なお、仕事人Ⅲの30話には、『百花の竜』というゲスト仕事人キャラもいてややこしいんだが、当ブログ的には、それよりもサブタイトルが注目だな」

晶華「『スギの花粉症に苦しんだのは主水』って、何よこれ?」

NOVA「花粉症という言葉が、この時期に一般的に定着しているのが分かる根拠だな。まあ、俺が発症したのは90年代に入ってからなんだが、それはともかく、橋掛人の当時の印象は仕切人に比べて殺し屋の数も減ったし、何だか地味な印象になったなあ、と。BGMや主題歌も仕事人Vと同じだし、初見の時点で、津川雅彦さんの必殺シリーズでのキャラ付けがよく分かっていなかったので、『主水と同じようなコントをして空回りしているおじさん』としか思ってなかった」

翔花「主水さんと同じようなコント?」

NOVA「主水さんは、嫁姑にイビられてトホホとなるコントなんだけど、津川さんの柳次は娘のお咲と、若い後妻のお紺の不仲に悩まされるパパというキャラで、両手に花というか、殺し屋が子どもを持つことの是非を論じていた時期とは大違いの作風というのが、それだけで分かる」

晶華「確かに元締めの娘とか、夫婦仕事人とか、家族持ちが多いよね、橋掛人チームって」

NOVA「劇中では唯一の一匹狼キャラだった宅麻伸さんも、俺にとってはゴジラ1984沢口靖子の兄役として印象深かったし、今、語るなら、ウルトラマントリガーとつながるもんな。とにかく、橋掛人は仕切人よりも地味だけど、この段階では役者もそれぞれ馴染みがあるし、主題歌&BGMに手抜き感を覚えていたけど、考えてみれば、前作の仕事人Vが2クールで終わったので、新しい歌と曲を作る余裕がなかったのかもしれないし、西崎さんの挿入歌の『戻り道』と柳次の殺しのシーンのバラードが好みだったし(後に仕業人の出陣テーマの流用と知ったわけだけど)、そこから棗のテーマや殺し技との関連付けで、橋掛人を思い出したわけだし、何だかんだ言って、当時の俺には楽しめた作品だったと思うよ」

 

あんた この結果をどう思う?

 

NOVA「で、橋掛人から9年、時を遡ると、BGMと西崎みどりつながりで仕業人に行き着くわけだ」

晶華「仕業人って、どういう作品?」

NOVA「前作の仕置屋稼業が比較的陽性の作風で、耽美な市松と豪快かつコミカルな印玄の屋根落としに比べて、殺し技も地味だし、貧相だし、結末も救いがないし、もう歴代主水シリーズ、いや、全必殺シリーズの中で最もハードシリアスかつ貧乏くさいマニアックな作品だ」

翔花「何、そのけなし方は?」

NOVA「中学時代の俺が見ていたら、拒否反応を起こしていたかもしれん。何しろ、チームメンバーの関係が非常に殺伐としていて、それだけでも陰鬱な作品だ。そして、このメンバー間のギスギス感を踏襲したのが2009の初期だったと思う」

晶華「小五郎さんのシリーズって、仕事人と言いつつ、仕業人だったわけ?」

NOVA「チームメンバーの仲の悪さとドラマの雰囲気が、仕事人以前の前期必殺のハード感覚を志向していたってことだな。まあ、仕業人を見たときは大人になっていて、それなりに作品の雰囲気も先に知っていたから、覚悟ありで見ていたので、ガーンとショックを感じなかったけど、ドラマ展開の面白さが分からず、派手で痛快なアクションだけを求めていた80年代の時期だと、作風に付いて行けていなかったと思う。とにかく、主役とヒロインが無惨に斬殺される最終回は本当に救いがなくて、ドラマ面でも中村主水に裏稼業引退を決意させるほどの衝撃作だからな」

晶華「主役は中村敦夫さんの赤井剣之介さんと、ヒロインは中尾ミエさんのお歌さんね」

NOVA「愛し合っていた裏稼業夫婦が殺される幕引きだったのが76年で、そういうハードさとは無縁だったのが85年だったわけだ」

 

そして仕舞人

 

NOVA「で、西崎みどりさんの登場した必殺作品で、俺が最後に見ることができたのが新・仕舞人だ。『仕舞人』は夕方の再放送で見た記憶があるが、その後、『新・仕舞人』にはつながらず、時を置いて『仕業人』を見た後で『新・仕舞人』を見る機会があったということだな。再放送のされやすさから見て、長すぎる無印以外の仕事人シリーズが再放送率が高く、続いて商売人以前の主水シリーズ、そして非・主水シリーズの1クールものが一番、再放送されにくいと思っている。『渡し人』はレギュラー放送で見たっきりだしな。まあ、現在は地上波再放送以外の視聴手段が充実しているので、見ようと思えば普通に見られる時代だがな」

晶華「で、本記事を仕舞人で締めくくる理由は?」

NOVA「ヒロイン話だろう? 歴代必殺で一番、ヒロインというか女性キャラにスポットを当てた作品だからさ。主人公の坂東京山は、歴代の女元締めでも最もアクションシーンが豊富で、和田アキ子の若を除けば、最強の女殺し屋じゃないだろうか。渡し人以降のトリを飾る殺し屋はバラード殺しが定着したが、この人は『荒野の果てに』のアップテンポのアクション曲でアクティブな柔術で相手を投げ飛ばしたりしながら、かんざしで刺す。かんざし刺しだと、秀が有名だが、殺しのシーンで秀に準じるアクションで、しかも忍者みたいな黒ずくめで戦うわけだ」

翔花「へえ。演じる京マチ子さんはアクション女優だったの?」

NOVA「いや、銀幕女優として最盛期だった50年代や60年代は『OSK(大阪松竹歌劇団)』仕込みの舞い踊りなどでアクションも披露していたが、さすがに仕舞人時代は50代も後半だからな。坂東京山のアクションも、一部は代役吹き替えかもと思っている。ただ、京山の使う合気道指導に、無名時代のスティーブン・セガールが就いていて、本格的なアクション志向だったのも事実だろう。前座の男優2人以上に、よく動くトリの女元締めというのも必殺では坂東京山ぐらいだろう」

晶華「そんなに凄いんだ、坂東京山って」

NOVA「俺は先に仕切人のお国を見ていたから、静のイメージで見ていたが、坂東京山は動のイメージだったからな。役柄としても、世知に長けた座長の京山と、大奥出身の世間知らずなお国で対照的なんだが、仕切人→仕舞人の順番で見ると、京マチ子さん凄えってなるわけだよ。本当に、歴代最強女元締めの称号はこの人のものだ」

翔花「西崎みどりさんは?」

NOVA「武闘派じゃないからな。どちらかと言えば、この人は昔ながらの正統派ヒロインなんだ。初期に悪党に捕まって、ひどい目に合わされたりするのを主人公たちに助けられる、お姫さまの役どころ。それで結婚したのが渡し人だし、若い少年に絡まれるのが仕切人で、健気に父親の遺した仕事を完了させるために後を継ぐのが橋掛人。背景は違えど、女優としての役柄は若いヒロインお姉さんで、守ってあげたい系のお嬢さま、戦闘力は皆無の日常系キャラだ」

晶華「西崎さんも、もっとアクションすれば良かったのにね」

NOVA「そういう西崎さんが見たければ、RXの31話と32話がお勧めだ。赤いライダースーツを着て、クライシス帝国の追っ手から逃げながら気丈に戦ってみせるシーンがあって、31話の最後に崖落ちする。32話では行方不明の状態で、高畑淳子さんのマリバロンが妖術で西崎さんに変身して、暗躍する悪女演技も見せてくれたりするので、俺のツボを上手く突いてくれた。もちろん、本物の西崎さんは生きていて、ピュアな力でマリバロンの正体を暴くんだが、惜しむらくは敵に洗脳されなかったことだな」

翔花「改造されたり、変身したりすると最高なんだけどね」

NOVA「まあ、本放送のときは西崎さんだって気付いていなくて、最近調べるまで、この回のことも忘れていたんだ。で、今ごろ、え? RXに西崎さん出ていたの? って必殺および特撮マニアとして恥ずかしい気持ちに駆られている。今さらながらの発見に、見落としていた宝石を見つけたような喜ばしい気分だ」

晶華「恥ずかしいとか、喜ばしいとか、まるで恋してるような心の動きね」

NOVA「というか、別に俺はファンのように、あるいは熱狂的なストーカーのように、女優・西崎みどりを追いかけていたわけじゃなくて、必殺シリーズという作品で掘り下げていたら、実は思いがけず西崎さんが特撮にも無縁ではないと分かって、ますます親近感が深まったってところだからな。遠い世界の存在だと思っていた人が、ブログでゴジラ映画のことを書いているのを見て、え? ゴジラファンだったの? って驚いてみたり。まるで、今上天皇陛下がウルトラセブンのファンだったと知って、つながった感を覚えたのと似たような感覚?」

翔花「それだけ、ゴジラウルトラセブンが広く知れ渡っているってことよ」

NOVA「自分の好きなものを、雲の上のような存在だと思っていた人も好きだって聞くと、何だか自分がふわーと天に浮かぶような気持ちにならないか?」

翔花「わたしは普段から、割と天に浮かぶような気持ちになっているので、そう特別なことには思えないけど?」

晶華「そんなことよりも、仕舞人の話の続きよ」

NOVA「おお、仕舞人といえば、坂東京山が凄いって話だが、西崎さんの役名は『おはな』だな。前にお花と漢字表記したが、正確にはひらがな表記だ。なお、京山一座の踊り子たちのリーダー格で、他の踊り子の名前は、おまつ、さくら、きく、ぼたん、うめ、はぎと言うそうな」

翔花「まるで、カクレンジャーの『花のくノ一組』ね」

NOVA「そっちは、サクラ、アヤメ、スイレン、ラン、ユリだから、桜しか被っていない。そして、さくらと言えば、西崎さんが子役時代に『変身忍者嵐』の37話で演じたくノ一少女の役名だ」

晶華「うわ、嵐に寄り道しそう」

 

NOVA「せっかくだから、どんな役どころなのか調べてみた。俺は嵐をレンタルビデオで何話か断片的に見たぐらいで、それも前半から西洋妖怪編の始まりをチラッと見たぐらいの記憶しかない。その知識は、もっぱら書籍資料によるものだ」

翔花「つまり、詳しくはないってこと?」

NOVA「知ってるし、作品を見たことはあるし、概要を語れもするが、作品マニアと比べると、穴だらけの知識で浅いと言わざるを得ない。とりわけ、兄の月の輪と合体した後の新たな必殺技ガンビーム(39話以降)はどんなビジュアルか見たこともない」

晶華「そんな時のためのネットじゃない?」

NOVA「ガンビームのシーンを探してみたが見つからなかった。でも、そのうち東映特撮YouTubeで配信されるだろうと思っていたら、現在、配信中だということが今さっき分かったよ。東映時代劇YouTubeで。まさか、そっちかよ〜と、これまたセレンディピティを感じた気分だ。今週は11話で、毎週1話ずつ配信だから、西崎さんゲスト出演の37話まで、あと半年もかかる計算だが、ちょっと追いかけたくなった次第だ。まさか、特撮ではなく、時代劇で配信されるとは盲点だったぜ」

翔花「配信されているのを知って、嵐の話題に寄り道したんじゃないんだ」

NOVA「逆だよ。西崎さんをブログ記事の話題にする→嵐でのゲスト出演をする→気になって調べたら、配信情報を知る、の順番だ」

NOVA「ともあれ、前期ヒロインのカスミが32話で降板し、38話で終盤のヒロイン姉妹カゲリ&ツユハが出演するまでは、レギュラーヒロインがいない時期があったんだな。それで、33話から37話はゲスト以外のヒロイン抜きで展開して、西崎さんのさくらもその回のみ、カスミと似たような役回りを担当した形だな。敵に捕まったけど、自前の縄抜けの術で脱出し、ハヤテをフォローして敵と戦うサポートヒロインのお仕事を果たした形。悲劇にはならず」

晶華「怪人に殺されることもなく、操られることもなかったわけね」

 

NOVA「で、嵐から仕舞人に戻ってくると、やはり西崎さんの役回りは本職の舞踊での採用だと思うんだな。お沢やお清、お光では見せなかった、踊り子のまとめ役として当初は裏稼業ではない一般人。仕舞人の6話で、裏稼業を知って殺されずに仲間に引き入れられる流れ。

「とにかく、仕舞人という作品は、華やかな表稼業と、割とハードな殺しのアクションのギャップが仕事人とはまた違った雰囲気で、新しいスタイルを作り出そうとした佳作という評価になるな。流れとしては、新からくり人からの旅の一座ものの形式なんだけど、チーム全員が家族のように仲良しで、からくり人の時は高野長英(蘭兵衛)や唐十郎のような部外者的な助っ人キャラが混じって、異物ゆえの緊迫感を示してもいたが、仕舞人は京山一座に参入した男衆(ベテランの晋松と、新人の直次郎)のどちらもムードメーカー的に馴染んで、メンバー感のギスギスはほぼない」

翔花「仲良し率の高い仕舞人チームってことね」

NOVA「仕事人だと、何でも屋の加代が走り回ることでチームが維持できているという人間関係だったけど、仕舞人は表稼業での人間関係が旅の興行一座という背景で維持できているから、表では他人のフリをするのが定番の仕事人に比べても、日常ドラマとか役者の演技力が活かされやすいし、その中で直次郎の表と裏のギャップが印象的だったな」

晶華「ええと、仮面ライダーカブト加賀美陸を演じた本田博太郎さんね」

NOVA「怪演俳優とも言われるが、熱血、クール、コミカル、シリアス、善人、悪役など多彩な役柄を違和感なく演じ分けられるんだな。つまり、本田博太郎さんだから、こういうキャラだろうな、というパターン予想が当てはまりにくいわけで、平成ガメラの斉藤審議官が本田さんだと知ったときは驚いた。え、この人、こんなクールメガネも演じられたんだって感じ」

晶華「クールメガネ? それは見たい」

晶華「全然クールメガネじゃない!」

NOVA「1980年のたのきん出演の人気学園ドラマの主演教師といえば、武田鉄矢金八先生が金字塔だったんだけど、それに匹敵する人気学園ドラマで主演してたのが本田さんだ。で、その後に直次郎だぞ。役の振れ幅が凄いし、直次郎本人も普段のコミカル陽性モードのテンションの高さと、裏の殺しの鬼気迫るテンション高い居合斬りのギャップが激しくて、表と裏の演じ分けの差では、中村主水にも匹敵するんじゃないかと思われる」

翔花「それほどまで?」

NOVA「この人主演の必殺シリーズがないのが残念なくらいだが、格好いい主役というよりは、脇に置いて主役を食えるという意味で、潮健児さんの系譜の名バイプレイヤーなんだろうな。何にせよ、仕舞人は演じ手の演技力の高さが評価される作品でもあって、華やかさとシリアスさの共存した良作でもある。後の作品の派手さはないので埋没しがちだが、前期のシリアスさと後期の人情路線を上手くブレンドしたミッシングリンクに当たる作品。で、この作品を踏まえると、渡し人の背景も後から分かったわけだ」

晶華「どういうこと?」

NOVA「キャラ配置で、惣太は晋松の後継者で、大吉は直次郎の後継者だって分かる。で、晋松のいいところは、表の飄々とした気さくな兄貴分らしさと、裏の壮絶な過去のドラマがあって、その壮絶さは人前であまり見せないんだ。ところが、惣太はそういう過去が大して描かれることなく、キャラの背景が見えて来ない。主演なのに、妻のお直との現在の距離の取り方しかドラマがなくて、殺し屋としての過去とか、お直との出会いによって裏稼業を引退したとか、そういうエピソードが設定として語られるだけ。つまり、仕舞人では描かれた『殺し屋が裏稼業に足を踏み入れた理由』が、渡し人の惣太では描かれずじまいだったことになる(大吉は1話で、忍は第1話と最終話で背景が描かれている)」

翔花「どうして?」

NOVA「さあ。まあ、渡し人は作風としてシリアスな方向性だと思うけど、脚本がその回の事件を描くのに手一杯で、レギュラーキャラメインのドラマを描く方向に気が回らなかったんじゃないかな。これが脇役なら、主役のドラマを優先したということで二の次にされても納得なんだが、渡し人の主演は中村雅俊のはずだったのに、鳴滝忍、大吉&お沢に比べて、惣太の扱いの悪さが今ごろ気になった」

晶華「今まで、気にしてなかったのに?」

NOVA「渡し人について、ここまで考えることはなかった。まあ、仕舞人と渡し人の作劇の違いをつなげて考えて見えてきた部分だな。ともあれ、妻を捨てて逃げた惣太は『殺し屋は家庭を持って幸せになってはいけない』という旧来(70年代)の価値観の象徴だし、妻と一緒に仲良く逃げた名前どおりのハッピー大吉は『殺し屋だって夫婦や親子の家族関係を構築してOK』という80年代の契機になる、と」

翔花「でも、最初のからくり人は全滅したけど、子供は残したわよね」

NOVA「山田五十鈴さんの娘がジュディ・オングで、芦屋雁之助さんの息子が間寛平という設定だったな、からくり人。最終回では、殺し屋のサポート役だった2人だけが生き延びて、からくり人の伝承を後世に伝え残したという締めくくりだったかな」

晶華「最後に裏稼業を知った夫婦仲良くとか、親子仲良く幸せに、って話は、渡し人が最初?」

NOVA「仕切人では、芦屋雁之助さんがひし美ゆり子さんと夫婦役だったが、雁之助さんが明けの明星とともに星に帰るエンドにはならずに、自分の偽者を倒して江戸に残ったな。それが雁之助さんの最後の必殺出演だった」

翔花「次が橋掛人で、殺し屋夫婦の悲劇は発生せず、と」

 

旧作と現・仕事人の女性観の変遷

 

NOVA「もう、80年代では、ホームコメディの方向性を重いドラマで崩したくなかった感じだな。ただ、今までの小五郎シリーズでは、小五郎以外の男女関係は全て配偶者の女性の死で抹消されている。涼次にとっての玉櫛、陣八郎にとってのお宮、知念のリュウにとってのおつうなど、全て呆気なく殺されて仕事人の裏稼業の肥やしになっている。過去を辿れば、からくり屋の源太も惚れた女の薫の死が仕事人になった理由で、その最期は母親を偽る浅野ゆう子に急所を刺されて相討ちに持ち込む壮絶なものだった。こと男女関係においては、小五郎シリーズではストイックなまでに70年代の価値観に逆戻りし、仕事人夫婦や仕事人親子のドラマ作りを許さない作風に遡っているな」

晶華「小五郎さんのシリーズは、部分的に過去の仕事人要素と、それ以前の70年代要素を取り入れて、ハードな作劇とバラエティ感覚のチャンポンで来ていると思うけど」

NOVA「意外と80年代の陽性ハッピーエンドな雰囲気とか、派手なアクション要素は踏襲できていないんだよな。一口に必殺のイメージと言っても、ゴジラと同じように作品数が多いので、その時代ごとの流れとか、視聴者の好みもまちまちだし、ただ、意外に思ったのは、2007以降の現シリーズのテレビ朝日プロデューサーの内山聖子さんが女性であるのに、今の仕事人からは女性主導のドラマ要素が感じられない」

翔花「だって、女性だったら、女性が主演よりも、イケメン男性を見たがるものじゃない?」

NOVA「だから、男性レギュラーキャラに付いてくる女は、みんな消されるのか? まあ、作り手の感覚としては、昭和の必殺は朝日放送が主導で、今の必殺はテレビ朝日が主導という違いがある」

翔花「朝日放送と、テレビ朝日ってどう違うの?」

NOVA「朝日放送は関西で、テレビ朝日は東京だ。つまり、昔の必殺は関西人主導で作っていて、今の仕事人は東京メインで作っているんだよ。まあ、ジャニーズの件と、吉本の件で今のテレビ業界のタレント界隈はいろいろ再編成が為されている頃合いで、作品制作もいろいろキャスティングなんかでバタバタしていると思うんだが、そういう裏事情はさておき、今後の仕事人に俺が求めるのは以下の3点だ」

 

  1. アクション要素の増加:悪人があっさり殺されるのではなく、しっかり抵抗して、仕事人に相応の危機を感じさせて欲しい。2023年末の最後の小五郎のシーンは、相手が凄腕の仕事人で危機を感じさせて良かった。予算的に人数揃えての大活劇は難しくても、今回の敵の強敵はこれだ的な演出で、ピンチの仕事人が危地を切り抜ける的なクライマックスがあれば嬉しい。
  2. 女仕事人の活躍:棗さんの登場で風向きが変わった……のかな? こればかりは次作を見ないと何とも言えないけど、今まで紅一点だった和久井映見さんの演技が目立たずに、元締めではなく殺しの受け付け係でしかなくなっていた現状に、女優同士の芝居があれば、華やかさが増すかなあ、と。なお、和久井さんは俺と同世代の女優さん(50代)で、松下奈緒さんはまだ30代後半。小五郎の嫁の中越典子さんは少し上の40代になってますな。そろそろ役者の世代交代も必要じゃないかなあ、なんて思いつつ、一つのシリーズで15年も続けると、役柄にも相応の成長が欲しいというのは、知念のリュウだけじゃないのかも。
  3. 日常でのレギュラーキャラの関わり:これは役者のスケジュールの問題が一番大きい。週一のレギュラー放送で、殺しのシーンしか出番がないキャラがいて、演技として絡みの少ない取り合わせがあるのはやむを得ないけど、表の顔での人間関係と、裏稼業での関わりと、そういうギャップが裏と表を描いたドラマを引き立たせるというか、その辺はやはり涼次役の松岡さんがアクティブに動いて、実質的なムードメーカーになっている。今後は棗に積極的に絡むのか、それとも棗はお菊さんとの関わりで、涼次はリュウのお守りを続けるのか、とにかくレギュラーキャラの絡みも丁寧に描いて欲しいな、と。どちらかと言えば、ゲストとの絡みばかりで、チーム内ではすきま風が吹きまくりの演出は好みではありません。10年以上も同じチームで仕事しているんだから、相応の信頼感があってもいいはずだし。あっ、でも新入りの登場で生じる緊迫感は歓迎です。

 

NOVA「あとは、必殺名物の奇抜な殺し技だけど、朝日放送の故・山内久司プロデューサーがそういうのが大好きで、どんどんアイデアを出してくる人だったみたいで、逆に今のプロデューサーさんには、そういうことにあまり興味がないから、リュウの殺し技が地味でつまらなく見えるのかなあ、とか思ったり、棗の糸殺しも過去の文脈からは悪くないんだけど、お笑い芸人を駆使したツッコミ要素の高い殺し技ショーもたまには見たいなあ、と」

晶華「じゃあ、NOVAちゃんも考えてよ」

NOVA「俺がか? そうだな。職業が下駄屋で、下駄の足に仕込んだ刃で蹴り殺すってのはどうだ?」

翔花「下駄を履いた足でアクションするって大変じゃない?」

NOVA「だったら、下駄の鼻緒で吊り殺すというのは?」

晶華「どれだけ長い鼻緒なのよ?」

NOVA「鋼鉄製の下駄が飛んでくる」

翔花「飛んできて相手の頭に当たって倒した後に、回収するのが大変そうね」

NOVA「まあ、ともあれ、シリーズが中断されずに、こうして話題にできるだけで嬉しいので、来年の正月にはまた『仕事人2025』の話ができることを希望している」

(当記事 完)