娘召喚に必要なもの
NOVA「よし、誕生日ケーキの準備ができたので、いよいよ翔花召喚の儀を開始する」
晶華「シーさん、生贄になる覚悟はできたかしら?」
シロ「ちょっと待てよ。生贄って何だ? 邪神か何かでも召喚する気か?」
NOVA「邪神ではないけど、将来の神霊候補なのは間違いないからな。その強大な花粉症パワーに耐えられなければ、地獄のような苦沙味と、怒涛のような鼻水に見舞われ、悲痛の涙をこぼし、頭が錯乱することにもなりかねん」
シロ「どれだけ花粉症が恐ろしいことになっているんですか!?」
NOVA「大丈夫。君だって獣の皇子として、ガイア様に認められた身。その身に宿した小宇宙(コスモ)を高め、セブンセンシズに目覚めて、黄金聖闘士の域にまで達したとき、花粉にも負けない力を発揮できるはずだ」
シロ「それって、ずいぶんとハードルが高くないですか?」
NOVA「案ずることはない。耐えられそうになければ、儀式を中断するだけだ。すべては君と翔花の絆にかかっている」
シロ「ボクと翔花の絆……つまり、この儀式に失敗したとき、ボクと翔花の縁もそれまでということですね」
晶華「無理はしなくてもいいのよ。お姉ちゃんとの絆よりも、自分の命を優先するのが普通なんだから」
シロ「フッ、アッキー。このボクの忍びとしての矜持をナメんなよ。ボクの命なんて、心に宿した想いに比べれば安いものだ。翔花のためなら、この命、捨てたって惜しくはない」
NOVA「バカ者! そんな覚悟では、儀式を行うわけにはいかん。翔花のことは諦めて、ケーキを食べるぞ」
シロ「ニャッ!? ボクの覚悟の何が悪いと言うんですか?」
晶華「簡単に命を投げ捨てちゃ、ダメってことよ。限界は越えないためにある、というのがキラメイジャーの精神。どんなに苦しくても、耐えて、生き延びて、自分の役割を全うする。これこそが覚悟ってものよ。シーさんが自分のために命を落としたら、お姉ちゃんが哀しく思う。お姉ちゃんを泣かせるような弱さだったら、儀式には臨めない。花粉症ガールは涙もろいんだから、それを受け止めるパートナーは涙を凌駕する笑顔でキラキラ輝いていかないといけないの。せっかくのハッピーな誕生日なのに、命を捨てたりしたら本末転倒でしょ?」
シロ「ハッ、そういうことか。地獄のようなクシャミと鼻水と涙目に苛まれていても、それをマスクとメガネで覆い隠し、青空のような笑顔で、サムズアップするクウガの精神。ボクに足りないのはそれだったか」
NOVA「覚悟とは仏教用語で、迷いを脱し、真理を悟って覚知すること。安易に命を投げ出して事足れりとするものに非ず。困難から逃げず、最後まで諦めず、死中に活を見出すことこそ真の覚悟と知れ」
シロ「分かりました。死にそうになったら、助けて下さい」
NOVA「うむ。無理はするな。その上で、しっかり翔花の魂を受け止めろ」
シロ「はい。目覚めろ、その魂ですね」
【仮面ライダーアギトMAD】~BELIEVE YOURSELF~
召喚の儀式
晶華「で、依代の覚悟が定まったところで、今回の儀式には何を使うの?」
NOVA「まずは、何よりもこれだな」
晶華「そりゃ、お姉ちゃんが封印されているのは妖精郷だから、そのワンダーライドブックは必要よね」
NOVA「さらに触媒として、これを用意した」
晶華「何で、そんなゲームが必要になるのよ?」
NOVA「妖精郷のNPC、エマは白百合の谷の吸血鬼の呪いで、眠っているような状態にあるんだ。つまり、翔花の魂は夢の世界に囚われている。だったら、夢の世界から現実の世界につなげるための触媒として、ドラクエ6ほどふさわしいゲームはないのではないか?」
晶華「つまり、NOVAちゃんがドラクエ6の話をしていたのって、このための準備だったということ?」
NOVA「まあな」
晶華「すると、ドラクエビルダーズ2で、農業にハマっていたのも?」
NOVA「まあ、それはただプレイしたかっただけだがな。しかし、まさか、ビルダーズ2がハーゴンの創り出した幻の世界で、ドラクエ6ともつながってくるとは、プレイ前には思いもしなかった」
晶華「とにかく、夢の世界に囚われたお姉ちゃんの魂を呼び起こす触媒には、ドラクエ6を使う、と」
NOVA「あとは、呪文を補強する祝詞はこれで行くことにした」
晶華「ええと、これは妖精郷つながり?」
NOVA「それだけじゃない。秘密戦隊ゴレンジャー、ジャッカー電撃隊の後に続く、幻のスーパー戦隊3作品めの立ち位置にある作品だ」
晶華「いや、これがスーパー戦隊ってことはないでしょ?」
NOVA「だけど、ジャッカーの後番組であることは間違いない事実だ。原作も石ノ森さんだし」
晶華「だったら、バトルフィーバーさんはどういうつながりなのよ?」
NOVA「バトルフィーバーの前番組は、これだ」
NOVA「つまり、コン・バトラーV→ボルテスV→ダイモス→バトルフィーバーJという番組の流れが、歴史上事実として確かにある」
晶華「すると、スーパー戦隊の系譜には、コン・バトラーVもあったわけ?」
NOVA「もちろん、アニメと実写特撮という違いはあるけど、TVを見ている者としては、ダイモスの後番組としてバトルフィーバーJが始まったのは、サンディベルの後に宇宙刑事ギャバンが始まったのに比べれば、受け入れやすかったはず」
晶華「TV局の都合で、いろいろと番組枠が飛ばされたりするのね」
NOVA「最近では、シンカリオンも続編がずいぶんと違う局や放送時間帯に飛ばされたものだなあ、と思う」
シロ「あのう、新星さま? さっきから儀式が始まるのを今か今かと待っているんですけど、何で関係ない話をしているんですか?」
NOVA「おっと済まない。世界を越えて魂を召喚するためには、次元の境界線を不安定にしなければいけないんだが、そういう混沌状態を作るためには、今と異なる時間の物語の空気を醸成しないといけないんだ。これはただの無駄話と思わないでくれ」
晶華「もっともらしく言い訳しているけど、いつもの寄り道脱線話だから、さっさと儀式を始めましょ。結局、必要なのはフェアリーガーデンと、ドラクエ6と、透明ドリちゃんのEDテーマってことでOK?」
NOVA「あと、これだ」
【機界戦隊ゼンカイジャー】ひみつ全開ファイル②全界合体!ジュラガオーン!
晶華「何で、全界合体ジュラガオーンなのよ」
NOVA「ちょっとした言霊の応用だな。シロ君は獣の皇子だから、百獣パワーを秘めたガオーンに関わりが深い」
シロ「確かに、それは説得力が少なからずあります。しかし、翔花は花の巫女なので、恐竜パワーのジュランとは何の関わりもないはず」
NOVA「そう、ゼンカイジュランと翔花は何のつながりもない。しかし、ジュランというネーミングは花にもつながってくるんだよ」
NOVA「つまり、翔花召喚のためには、全開桜ジュラガオーン🌸と叫べば、花粉症ガール翔花の魂が、妖精たちの夢の世界から引き寄せられて、プリンスシーサーのシロ君の体に宿ることになるという理屈だ」
晶華「いくら何でも、そんなバカな理屈が……」
NOVA「疑う前に叫んでみろ。全開桜ジュラガオーン🌸」
晶華「何だかよく分からないけど叫んでみる。全開桜ジュラガオーン🌸」
シロ「うっ!?」
晶華「え!? 何、シーさんの体が光り輝いて……」
爆誕! 花粉症シーサー
???「ここはどこ? 私は誰? 私は花粉症シーサー、粉杉シロ花だニャー」
晶華「ヘッ!? シーさん? それとも……」
シロ花「あ、アキちゃん、お久しぶりだニャー。それとNOVAちゃん、おはようニャン♪」
NOVA「お早うじゃねえよ。お前、翔花で合ってるよな」
シロ花「うん、確かに翔花でもあるけど、シロちゃんの体に入ったことで、魂が不思議な化学変化を起こして、花獣合体、花粉症シーサーの粉杉シロ花に覚醒したニャー」
NOVA「まさか、こんなことになるとはな。分離はできるのか?」
シロ花「一時的なものだから大丈夫ニャン。それより、何で私をシロちゃんの体を使ってまで、召喚したのニャ? また、何か変な悪霊が現れたのかニャ?」
NOVA「いや、今日はお前の誕生日だからな。祝ってやりたいと思っただけだ」
シロ花「誕生日!? 何年の?」
NOVA「2021年3月27日だ。キラメイジャーが終わって、45番めのスーパー戦隊ゼンカイジャーが始まっている。そしてプリキュア世界では常夏だ」
シロ花「3月なのに夏!? やっぱり、私がいない間に世の中おかしなことになっているニャー。これも粉杉ノヴァ彦の仕業なのかニャ?」
NOVA「詳しい話はじっくりしてやりたいが、まずはこれだけを言わせてくれ、翔花。ハッピーバースデー🎊」
シロ花「うん、ありがとうだニャー。じゃあ、私からもアキちゃんに、誕生日おめでとう。それとNOVAちゃんも、私の記憶が間違ってなければ、先月に50歳にニャッたんだよね。遅ればせニャがら、誕生日おめでとうニャのだ♪」
NOVA「……お前、そのネコ口調はどうしても必要なのか? 何だか無性に聞いててムズムズするんだが……」
晶華「うん、何だかマネキネコ邪面の呪いを受けたみたい」
シロ花「マネキネコ邪面? 何それだニャ?」
NOVA「話せばやたらとカオスで可愛くて、クリエイター的にドラマチックで長くなるが、分かりやすくまとめるなら、キラメイジャーがキラメイニャーになるシャイニーにしてワンダー極まりない伝説回の一つだ」
晶華「NOVAちゃん、その説明じゃ分からないと思う」
シロ花「ふうん、そういうことニャ。大体、分かったニャン」
晶華「ウソ? 今の説明で分かるなんて!?」
シロ花「いえ、説明じゃにゃくて、私の心の中のシロちゃんの記憶が教えてくれたのニャ。シロちゃんの記憶で、私が妖精郷に封印されていた間に何があったかの情報補完もバッチリにゃん。これで復帰後は時間のズレに悩まされず、令和の状況にすぐに順応できそうだニャン」
NOVA「そいつは前みたいに、トラブらなくて済みそうだ」
シロ花「とりあえず、今の状態じゃ長くいられそうにニャいので、用事を済ませたら、さっさと妖精郷の封印状態に戻らにゃいといけニャいみたい。だけど、にゃるべく早く助けに来てニャ」
NOVA「ああ、ゴールデンウィークのみどりの日を目標に、お前を解放してやるつもりだ。それはともかく、誕生日ケーキを食べる余裕ぐらいはあるんだろう?」
シロ花「うん、それぐらいなら何とかニャるニャー」
晶華「じゃあ、いっしょにケーキ食べよ♪」
こうして、シロちゃんと融合した粉杉翔花改めシロ花と、妹の晶華は久しぶりの姉妹談義に花を咲かせるのだった。
ハッピーバースデーで、めでたしめでたし。
いろいろカオスな展開でも、終わりよければ全て良きかな。
(当記事 完)