第2巻の冒険の始まり
翔花「2月に入ったので、そろそろクローディアの冒険を続けようと思います」

ジュニア「へえ、それがクローディアさんのイラスト完成バージョンですかぁ。剣を2本も持っているんですねぇ」
翔花「本当は3本持っているはずなんだけど、イラストにした場合って3本めをどこに装備したらいいかって結構、困るのよね。きっと、賢い人には見えないようになっているのよ」
009「そのネタは、普通、バカには見えないって言うところじゃないか?」
翔花「だったら、賢明なる読者の方に失礼でしょ。わたしはバカだから見えていることにして、読者の方が見えていなくても、それは問題ないって納得してもらう。ないものをあるように空気を読んで振る舞ってくれる想像力こそ、賢明さの証ってことで納得して」
晶華「それはともかく、マント留めに使ってる天秤ブローチが、女神リーブラの聖印ね」
翔花「うん。クローディアは厳密には聖職者じゃないけれど、神に選ばれた聖勇者ってことで、準聖職者って感じ。魔法は使えないけど、ささやかながら神の恩恵は行使できるってゲーム設定ね」
009「冒険中に1回だけだがな。このカーレだと、リーブラ信仰は一般的に行われていない。というのも、リーブラの司る『正義と真実』がこのカーレでは尊重されていないからだ。代わりに2柱の神の神殿があって、1つは優雅さの女神コーガ。旧訳ではクーガと呼ばれていたな」
翔花「昔の訳語だと、こちらっぽいわね」
009「現在の公式設定では『ネコを象徴とする女神』なんだが、旧訳ではそういう設定が曖昧だったからか、男性口調っぽく訳されているな。リーブラから見れば、妹の〈平和を司る女神〉ウスレルの娘、ということで姪に当たる」
翔花「すると、リーブラ様の方が格上ってことね」
009「カーレの物語の中では、そういう反映がされていないけどな。だけど、当ブログのプレイでは、コーガがリーブラを伯母さまと敬意をもって振る舞うのもありか、と」
翔花「こっちは、リーブラ様の姪御ちゃんって感じに振る舞えばいいのよね」
晶華「いや、神さま相手にちゃん付けはどうかと思うけど?」
翔花「だけど、わたしはいつもヒノキちゃんって言ってるし、神霊候補だったら、ちゃん付けありじゃない?」
009「いや、神霊候補だからこそ、そういう礼儀は守った方がいいんじゃないか、と思うんだが」
翔花「コーガちゃんとか、コーちゃんとかは不敬ってことか。そもそもプレイヤーは神霊候補だけど、クローディアは違うんだった。だったら、コーガさまって恭しく接するのがロールプレイってことね。で、もう1つの神さまは?」
009「悪意の神スラングだ」
翔花「それって敵の邪神じゃない!」
009「カーレでは、その邪神の神殿が堂々と建てられている。悪党が集まる街らしくて、住民たちにも『悪をもって悪を制す。他人の悪意に気づけなければ、生き残れない。悪意こそ身を守る武器であり、知恵である』といった感じで、悪意を正当なる狡猾さ、罠を仕掛ける一方で、他人の罠を見抜くための聡明さと説明している。住人たちには割と好評だ」
翔花「リーブラ様に仕える者としては、見過ごしにできないわね。その神殿に乗り込んで、成敗するのがゲームの目的かしら」
009「いや、武力での成敗はできない。対決シーンはあるけど、知恵比べという形になる。負けたら、リーブラ信仰を捨てて、スラングの教えを学ぶことになる」
翔花「それって、改宗ルール? スラング信者になったら、どうなるの?」
009「リーブラの恩恵は2度と得られなくなる」
翔花「スラングの恩恵は?」
009「TRPGのルールだと、相手に呪いをかけられるけど、ゲームブックには特にないな。いずれにせよ、スラング司祭との知恵比べに負けたら、厳密にはカーレから脱出不能になって、攻略失敗になるわけで、頑張って知恵を働かせてくれ」
晶華「ロガーン信徒のロザリンにとっては、別の意味でライバルっぽいわね。ロガーン様の策略に掛かれば、スラングの悪意など物の数ではない、とか言えばいいのね」
009「とにかく、TRPGだと、複数の神が設定されていると、大きな街では複数の神殿があるんだな。日本のコンピューターゲームだと、街の教会は一つだけで治療施設の役割を果たすが、TRPGに基づいた街だと、神殿も複数あるのがリアルということになる。ぼくが初めてそういうゲームを知ったのはAD&Dの『プール・オブ・レイディアンス』だったが、秩序の神、中立の神、混沌の神などそれぞれの神殿の特徴があるし、邪悪神殿の場合は、表向きこそ立派な建物でも、地下で怪しげな儀式が行われて、とかイベントに関係してくるケースもある」
翔花「都市冒険だと、人の悪意と戦わなければいけないってことね。わたし自身が悪意に染まらないようにしないと」
009「リーブラ神の使徒らしく、頑張ってくれ」
今回は準備編なので
翔花「キャラクターシートを用意します。『シャムタンティ丘陵』をクリアしたデータを使えばいいのね」
●女戦士クローディア(7日め、カーレの攻略始め)
・技術点11(剣ボーナス+1、腕輪+2で合計14)
・体力点21
・運点13
・金貨11枚
・食料3食
・所持品:背負い袋、普通の剣(マイナス1)、普通の剣、上質の幅広の剣+1(精霊EJが宿っている)、ボンバの実(食事による体力回復効果が倍増する)、ラグナーの剣術熟達の腕輪(攻撃力+2)、カーレの門の鍵(12)
・手がかり:VIKの呪文で、ヴィックを呼べる
フランカー(カーレの79番)
翔花「手がかりに書いてあった『盲目の元守護者と自由の鍵』については、今作ではもう使わない情報なので、消しておきました。では、さっそくパラグラフ1番を」
009「いや、今回は準備編なので、冒険は次回から。今回は作品の背景説明を先にしておく」
ジュニア「歴史のお勉強って奴ですねぇ」
晶華「やれやれ。ナイン君はNOVAちゃんのメモリを使ってるから、いろいろ蘊蓄語りしたくて仕方ないみたいね」
009「コンパーニュの令和NOVAと違って、寄り道脱線は禁じ手とする。あくまで、カーレに関する話題だ。カーレの原作が発表されたのは1984年。FFゲームブックでは、初の都市冒険である5巻め『盗賊都市』(リビングストン作)が前年に出て、それと対になるジャクソン版の都市冒険だ。一方、リビングストンは罠だらけのカーレを意識したのか、6巻めに『死の罠の地下迷宮』を発表した。つまり、このカーレは『盗賊都市』と『死の罠の地下迷宮』のエッセンスを宿した作品と言える」
晶華「『死の罠の地下迷宮』はリビングストンさんが殺意に目覚めたと語られる難易度の高さで有名ね。迷宮を脱出するためのキーアイテムとなる宝石集めが攻略のポイントだけど、出てくる敵の技術点が結構高いので、強いキャラが知恵を振り絞って、かつ何度も死にながら正解ルートを見つけないとクリアできないゲーム。バトルとトラップの2段重ねの鬼畜度。戦わなければ生き残れない」
009「リビングストンさんの代表作とも言われ、その後、3作の続編が描かれた。『迷宮探検競技』『死の軍団』『ブラッド島の地下迷宮』だ」
翔花「もう、それだけで、カーレの話じゃなくなってると思うけど(ジト目)」
009「おっと。こんな『死の罠の地下迷宮』に興味のある読者は、こちらの攻略記事を読んでもいい」
翔花「だから、そっちに進むと寄り道脱線しちゃうでしょう」
009「おっと。同じ寄り道脱線なら、都市冒険つながりの『盗賊都市』の方がお勧めか?」
翔花「だから、今はカーレに専念したいの。他の冒険の話は、また別の機会にでも」
009「とにかく、タイタン世界では、アランシアのポート・ブラックサンド、旧世界のカーレ、クール大陸のアリオン市が代表的な都市とされているが、カーレだけはシティガイドのサプリメントがないんだな。実は三都の中でも一番地味な扱いを受けていて、登場作品が少ないのがカーレだったりする。
「数少ないカーレのトピックと言えば、その昔、山本弘さんが『タイタンふたたび』のリプレイで『盗賊都市ふたたび』という話を書いたんだが、その中にはポート・ブラックサンドだけでなく、カーレでのイベント(危険な宿屋とか、倒すのに銀の武器が必要な死霊とか)もちゃっかり出している。実質的に『盗賊都市ふたたびwithカーレ』なんだな」
晶華「つまり、カーレの資料って、ゲームブック自体か、D20あるいはAFFシナリオしかない、と」
009「たとえば、ポート・ブラックサンドの領主と言えば?」
晶華「あの馬車に乗った人ね」
翔花「ニカデマスさん?」
009「何でだよ!」
翔花「わたしは『盗賊都市』をプレイしたことがないもん。『暗黒の三つの顔』で街に行ったことはあるけど」
009「そんなFF素人がソーサリーをプレイするんだからな」
ジュニア「でも、時空魔術師さまも確か、『火吹山の魔法使い』をプレイする前にソーサリーをプレイしたのだから、『盗賊都市』の前にカーレをプレイしても問題ないのではぁ?」
009「あ、ああ。言われてみれば、確かにそうだな。おまけに日本語版が翻訳されたのは、カーレが85年8月で、盗賊都市が85年10月だから、リアルタイムでゲームブックを追っていた日本人ファンは、アズール卿を知る前に、先にカーレを冒険していたりもするのか。さらに、今、調べると『魔法使いの丘』の発売が85年の7月12日で、『運命の森』が同年7月25日。ほぼ同じタイミングだが、リアルタイムの刊行順だと、日本ではこうなるようだ(赤字が東京創元社で、いずれもSJ作品。紫字は社会思想社のSJ作品)」
- 火吹山の魔法使い(FF1巻、84年12月)
- バルサスの要塞(FF2巻、85年4月)
- 魔法使いの丘(ソーサリー1巻、85年7月)
- 運命の森(FF3巻、85年7月)
- 城砦都市カーレ(ソーサリー2巻、85年8月)
- 七匹の大蛇(ソーサリー3巻、85年9月)
- さまよえる宇宙船(FF4巻、85年9月)
- 王たちの冠(ソーサリー4巻、85年10月)
- 盗賊都市(FF5巻、85年10月)
- 死のワナの地下迷宮(FF6巻、85年11月)
- SJのファイティング・ファンタジー(RPG、85年12月)
- トカゲ王の島(FF7巻、85年12月)
009「ええと、改めて並べると、この85年のスティーブ・ジャクソン推しが何だか凄いことになっているんだが。12巻あるうちの『運命の森』『盗賊都市』『死のワナの地下迷宮』『トカゲ王の島』の4冊を除く、8冊分がジャクソンの作品で、この時期はリビングストンの倍のペースで一気にジャクソンの名前を盛り上げてる。
「まあ、これは社会思想社の後追いの東京創元社が、本国ではその年に完結したばかりのソーサリー4作を月刊ペースで次々と翻訳刊行した勢いのせいだが(本国では、ソーサリーは83年から85年まで2年かけて、じっくり展開された)。そりゃあ、当時の日本ではジャクソンの方がゲームブック界のスターになるわな」
晶華「つまり、昭和ソーサリーが異常なペースで出版されたってこと?」
009「日本のFF翻訳ペースは、イギリスの1〜2年遅れが基本なんだが、ソーサリーだけはそういう常識というか、慣例を覆したんだな。なお、85年の時点で、本国のFFは12巻『宇宙の暗殺者』から18巻『電脳破壊作戦』まで進めていて、『トカゲ王の島』は84年の6本中の2本めだ。86年は社会思想社のFF出版ペースは隔月刊になるが、ゲームブックブームのピークと言われている87年は年間10冊で、9月と12月を除いて、社会思想社も月刊ペースになっている。
「これは、おそらくジャクソン最後のゲームブックと言われた24巻『モンスター誕生』(88年3月)を少しでも早く出そうと刊行を急いだか、東京創元社を始めとする和製ゲームブックの活況に刺激されたのだろうと考えるが、結果的に80年代のゲームブックブームは、ジャクソンの作品が火を付けて、ジャクソンがゲームブック作者の引退宣言をした後で、緩やかな減退傾向を見せて、90年代を迎えたときにはひっそり終わるという流れだった」
翔花「つまり、スティーブ・ジャクソンさんが時代の花形スターだったわけね」
009「出版社のジャクソン推しが、今の目で見ると、あまりにも露骨なんだよな。だから、ジャクソンさんが派手な打ち上げ花火で、リビングストンさんがその後も末長く燃え続けるロウソクか線香みたいなイメージだが、日本のゲームブック業界はその後のリビングストンをフォローすることなく、一度、幕を閉じた形になる」
ジュニア「日本のFFゲームブックが91年で終わった後も、本国では95年まで続いたんですねぇ」
009「出版ペースは平均して、年3冊ペースで続きながら、その間に10周年を迎えたり、ザゴール小説を出して盛り上がったり、インターネットが定着する前の日本では観測されにくいFF祭りがあったんだな。50巻を越える勢いで」
晶華「確か、50巻で終わらせるために、ザゴールさんを復活させたら、その売れ行きが凄いことになって、まだまだ行けるということで、予定よりも3年延命したそうね」
009「その日本のファンの多くには知られざる時期の作品概要も、このファンブック的歴史書には、記されているそうで、来月末の出版がいよいよ待ち遠しいわけだよ」
翔花「ということは、日本(語で出版された)初の野外冒険ゲームブックが『魔法使いの丘』で、日本初の都市冒険ゲームブックが『城砦都市カーレ』というのが、リアルタイムの日本人ゲームブッカーの感覚ってことになるわけね」
009「ああ。こういう後からの考察って、どうしても原典の歴史に注目が当たるが、翻訳出版のタイミングのズレで、日本では違った受け止め方ができるわけだな。『魔法使いの丘』の次に『運命の森』を、『カーレ』の後に『盗賊都市』をプレイする日本人がいても、それが当時は普通だったのかも」
晶華「でも、NOVAちゃんのゲームブックとの出会いは、86年4月とのことだから、意識したときはもうFFは10巻ぐらいまで売っていた、と」
009「『地獄の館』が新刊として出ていた記憶はある。もしも、NOVAがもっと早くFFの存在に気付いていたとしても、高校受験の勉強に励んでいたから、すぐに手を出せなかったろうな。ブレナンのゲームブックに出会ったのが、高校の校内出版コーナーで、登下校時の電車で読む本という目的で、面白そうな小説を探して出会ったわけだから。
「その後も下校途中の駅から商店街を抜ける際の、ほぼ毎日の書店寄り道をくり返す中で、ゲームブックコーナーが目当てになったり、流行りのパソコン雑誌の立ち読みだったりでロードスのリプレイに出会ったり、高校時代だからこその運命の出会いってのがあったんだよ」
ジュニア「運命の出会いっていうのが、本屋っていうのが、時空魔術師さまらしいですねぇ」
009「今みたいにネット検索できる時代じゃなかったからな。口コミでなければ、新聞か雑誌の広告か、それとも本屋の店頭で見かけるのが学生にとっての情報源だろう。FFゲームブックには、そういう思い出も込みで懐かしむことができる」
晶華「その辺の感覚は、令和時代の少女の私たちには分からないけど、同時代を生きた歴史を語りたいって気持ちは分かるかも」
翔花「でも、こんな表紙の本をよく買いたいと思ったものね」

『城砦都市カーレ』の思い出
009「下水道に巣食うスライムイーター(肥食らい、汚物食らい)な。こいつがどうして2巻の表紙に採用されたかは謎だが、少なくとも1巻じゃなくて良かったぜ。1巻のマンティコアは、ソーサリーのシリーズ全体の顔としても通用する気品や美しさ、雄々しさがあって、本屋で見かけてもジャケット買いができると思う。そして1巻が面白かったから、続けて2巻以降も購入という動機になる。しかし、仮にスライムイーターが1巻の表紙だったとしたら……ソーサリーが売れることはなかったのではないだろうか?」
翔花「こいつがラスボスなの?」
009「いや、違う。むしろ、カーレの下水道は一種のトラップだ。『盗賊都市』の下水道は、攻略のために入る必要はあるが、カーレの下水道は運が悪いときに落とされるところであって、順調に攻略できれば、中に入らなくてもクリアできる。言わば、寄り道脱線転覆事故なのがカーレの下水道だ」
翔花「……別に下水道に入らなくてもいいのね」
009「ああ、誰も強要はしない」
翔花「良かった。下水道の探検を強制されるようなゲームだったら、好き好んでプレイしたくないもん」
晶華「だけど、私は下水道に落ちて、キャーーーーッと悲鳴を上げて、ふぇ〜ん(涙目)なお姉ちゃんのプレイが見てみたい」
翔花「アキちゃん、人の不幸を期待するのは性格が曲がっているわよ」
晶華「だって、私もそういう道を辿ったりしたのよ。先達は、後に続く者が同じ苦労を経験して、大きく成長する姿を望んでいるの」
翔花「自分の苦労を味わって欲しくない、と慈悲の心で助け船を出すのが、立派な先達ってものじゃないの?」
晶華「そんな気持ちも3割ぐらいはあるかもしれないけど、自分と同じ苦労をして想いを分かち合いたい気持ちが7割ってところね。とにかく、お姉ちゃんのクローディアが下水道でスライムイーターと戦っている姿を、私は楽しみにしている。実現したら、グロックさんにイラストを描いてもらいましょう。読者の人も、きっと応援してくれるはず」
翔花「読者さんまで、悪の道に引きずり込まないで。とにかく、EJに頼んで、下水道に落ちないルートを選んでもらうから」
ジュニア「ええっ? 何だか責任重大じゃないですかぁ。シナリオをしっかり読み込まないとぉ」
晶華「下水道がIFルートになるか、正規ルートになるかが要注目ね」
009「さて、スライムイーターの正体を誤解していたカーレ後書きの安田解説だけど、その瑕疵を凌駕するほどの素晴らしいゲームブックおよびファンタジーRPGの入門解説になっている。当然、既刊の『火吹山の魔法使い』や『バルサスの要塞』の紹介もされていて、さらにその源流のD&Dはもちろんのこと、T&Tのソロアドベンチャーのことを85年の時点で紹介している」
晶華「T&Tって、翻訳されたのは87年の終わり頃って話だけど、その2年前にはすでにチェック済みってことね」
009「ゲームブックの源流の一つということになるが、そこから逆に、ゲームブックからTRPGへの導線につなげるアイデアになるわけだから、後から振り返ってもニヤリとできるわけだよ。T&Tは後年、『イギリスのウォーロック誌(83年〜86年)が、日本版ウォーロックを86年末に出版した途端、わずか13号で終わったのを受けて、ゲームブックだけではネタが足りないのを苦肉の策で、雑誌の日本オリジナル展開の切り札として投入した』と語られがちだけど、そういう付け焼き刃的な登用ではなくて、2年前からすでに出版元のフライング・バッファロー社を非常にユニークなゲーム会社として持ち上げているんだな。
「さらに、87年に発売された『ウィザードリィ4』について、モンスター側が人間に逆襲するゲームとして紹介し、同じ発想で先に出版されていたT&Tのルールヴァリエーション『モンスター、モンスター』を紹介しているんだよ」
翔花「え? 87年のゲームを85年のゲームブックの解説で紹介しているの? 時間軸がおかしくない?」
009「実は、『ウィザードリィ4』が発売元から予告宣伝されたのが85年だったんだけど(前作の3が発売されたのは83年)、開発が遅れて、87年まで延期になったらしい。つまり、このタイミングで安田社長が『ウィザードリィ4』の名前を出した時点で、非常に情報が早いことの証明になっているんだ。何せ、まだ発売されていないゲームのネタを、前情報だけで語って、それをT&Tにつなげて来るんだから。ここで書かれた記事ネタが、日本で形を結ぶのが2年後ということで、当時の安田社長(まだSNE結成前で、社長でもないけど)は2年先を見据えて、ゲームブックの解説記事を書いていたことになる」
ジュニア「ちょっとした予言者ばりの先見の明ですねぇ」
009「自分が企画を立てている作品なら、開発を始めてから商品として出るのが1〜2年後というのは普通に分かるんだが、当時の安田氏はクリエイターではなくて、翻訳者にして海外ゲームの紹介者。83年ごろからSFマガジンやログイン誌で海外ゲームの紹介記事を書いてきて、84年にはSFRPGの『トラベラー』の翻訳や、エルリックサーガの1巻『メルニボネの皇子』の翻訳を発表するなど、その道の先達になっていたわけだけど、NOVAが氏の名前を最初に意識したのは、やはりゲームブックの解説記事がきっかけ。そして、近くの新刊にこれが並んでいたわけだからなあ」

009「86年にゲームブックからTRPGの世界に飛び込んで行った人間としては、割とどこを見ても、安田均って名前が目に飛び込んで来るわけだよ。そのうえ、小説を読んでも、たびたび見かけることになるし」
009「で、NOVAにとっての初安田は、カーレの後書き解説になるんだなあ、と再確認しつつ、今も精力的にFFコレクションを企画主導してくれている奮闘ぶりに、改めて敬意を表明しつつ」
009「もしかすると、NOVAが一生のうちで一番読んだ文章は、安田均さんが手掛けた関連物かもしれない、とふと思う。今も、FFコレクションの後書き解説とかワクワクして読んでるし、この辺はもはやファンってレベルを通り越して、ちょっとしたバイブルになっているのかも」
晶華「SNEに入社した人にとっては、社長であるとともに、師匠みたいな人になるんじゃないかしら」
009「まあ、そう言ってもいいかもしれないな。ともあれ、FFゲームブックやAFFを語るうえでは、今の日本で一番重要な御仁であることは間違いないと思うわけで」
翔花「確かに、どのサプリを見ても、名前が載ってあるわね」
009「こちらは、最近、監修作業が終了したって、Xポストで公表したから、いよいよ製本印刷に移って行くんだろうなあ、とそれも待ち遠しい」
改めてゲームブックの歴史を追想し
009「実は、FFゲームブック元年(82年)は、宇宙刑事元年でもある」
晶華「それは奇妙な縁ね」
009「一方、1974年生まれのD&Dの方は、秘密戦隊ゴレンジャーの1年前なので、大体、同世代だ」
ジュニア「すると、戦隊からギャバンにバトンタッチするってことは、D&DからFFゲームブックにバトンタッチってことですかぁ?」
009「それは違う。が、D&DからFFゲームブックに大きなエッセンスが注がれたように、戦隊からギャバンにエッセンスが注がれたのも事実だ。主演役者とか作曲家とか脚本家とか、初期戦隊から宇宙刑事にシフトした面々は結構いる。
「ただし、これは海外の翻訳ゲームにありがちなんだが、海外事情と国内事情の両方で、中断しやすいんだな。FFの場合、40周年の歴史といっても、日本だと84年から91年の7年間と、AFF2版が翻訳刊行された2018年以降の8年間。そしてゼロ年代は創土社がソーサリーを刊行し始めた2003年から最後の萌えFF『サムライソード』が出た2009年までを一時復刻期とするならば、7年ほど足して、合計22年ほどだ。つまり、単純計算で18年ほどは日本で空白期間があるんだよな」
晶華「92年から95年の3年間が、日本にとっての知られざるFFの歴史ね。でも、イギリスでも96年から2001年まで空白期間があるみたいだけど、その辺はどう見なしたらいい?」
009「本国では空白期間も最大5年少しで、出版社を変えてすぐに復刻する伝統的な人気シリーズとなっているみたいだな。ウィザードブックスによる復刻期が、2002年から2012年まであったから、日本の一時復刻期よりも4年長い計算になる。そして、ゲームブック自体は2017年にスカラスティック社の時代になるまでは2回めの空白期間が5年ほどあるが、その穴はTRPGのAFF2版が2011年から展開開始したことで埋まっているので、日本のみの穴と認識。つまり、日本のFF史は本国に比べると、3+4+5で12年ほど少ない計算になるわけだ。この日本における空白の12年の間、イギリスのFFがどういう盛り上がりを見せたのかも知りたいわけさ」
翔花「日本語になっていない作品がどういう話なのかを説明してくれる歴史本は、興味深いわね。知られざる12年間が今、明かされるって感じ」
009「それでは、来月の歴史本を期待しながら、こっちはカーレを頑張るとしよう」
翔花「結局、寄り道脱線してたみたいだけど、これで満足した? 次回から、攻略記を本格的に進めていい?」
009「ああ、背景説明はこれで十分だろうね。カーレの冒険を頑張ってくれたまえ。ぼくは少し引っ込んでおくよ」
晶華「ディレクター役は、私だもんね。ナイン君は解説役ってことで」
009「NPCの役で呼ばれたら、参上するとしよう」
晶華「だったら、ヴィックさんとフランカーさんの役をお願い」
009「分かった。じゃあ、クローディアもしっかりVIKの呪文を見逃さないようにな」
翔花「VIKの名前を呼ぶと、ナイン君が助けてくれるってことね。では、カーレの冒険を始めます。パラグラフ1番は……」
(当記事 完。さあ、ページをめくりたまえ)




![ロードス島戦記 文庫セット (角川文庫―スニーカー文庫) [マーケットプレイスセット] ロードス島戦記 文庫セット (角川文庫―スニーカー文庫) [マーケットプレイスセット]](https://m.media-amazon.com/images/I/618K0bXBpIL._SL500_.jpg)




