ニャンティコアからの進化
イースタ(翔花)「前回、仇の魔術師ストームシャドウを執念深く追っかけ回していたら、結局、逃げられちゃったけど、黒いヒスイを落としたので、よっしゃラッキー……からの続きです」
晶華「パラグラフ番号304からね。ここに来れるのは、マンティコア、ジン、グリフォン、スフィンクス、ペガサスの5種類だけ」
イースタ「空が飛べない水属性の3種と、パワー不足のハーピィさん、ヒポグリフさんは進化できずに、最終ダンジョンを目指さないといけないのね」
晶華「まあ、ヒドラさんや、フロスト・サラマンダーさんは元々、強いから、進化は必要ないとも言える。トリトンさんもそこそこ強い。問題はハーピィさんとヒポグリフさんね。最終進化のパラグラフ(371番)によると、進化先が示されていなくて、『ここに来る道順を知り得たはずがない』と切り捨てられてしまうんだけど、どこで脱落するのかしら?」
イースタ「それは後で確認するとして、今はニャンティコアから進化するわ」
晶華「進化先は、キマイラ、ワイバーン、イフリート、ドラゴニーの4つね」
イースタ「ドラゴンに一直線なのは、ドラゴニーっぽいわね」
晶華「一応、イフリート以外はドラゴンになれるわよ。キマイラからはレッドドラゴン、ワイバーンからはブラックドラゴン、ドラゴニーからはゴールドドラゴンになれる」
イースタ「一番強いのは?」
晶華「ゴールドドラゴンね。なお、NOVAちゃんメモによれば、初攻略はキマイラ→レッドドラゴンだったそうよ」
イースタ「昔と同じというのも芸がないので、わたしはドラゴニーからゴールドドラゴンを目指すわ」
ポンポコポン。
イースタの体はきらきらと輝きはじめた。体毛が金色のウロコに変化したのだ。同時に尻尾が長く伸び、立派なドラゴンの尾になる。イースタはドラゴンとライオンのあいのこ、ドラゴニーになったのだ!
●ドラゴニー:殺傷力9、防御力9、耐久力36
(特殊能力:吠える。戦闘の前に、恐ろしい声で相手を脅すことができる。1Dで3〜6が出たら、相手は恐怖のために最初の3ラウンドは攻撃ができない。1〜2だと効果なし)
イースタ「トゲビットはなくなったけど、ニャンティコアよりもパワーは上がったのね。ジャイアントのときで殺傷力8だったから、今のわたしは女巨人のときよりもパワフルだと。特殊能力は、確実性に欠けるけど、うまくハマれば、圧倒的に有利な状態で相手をひねり潰すことができる。まさに、レジェンドキングオージャーを目指せる黄金の竜獅子となったわけで」
晶華「ドラゴニーは、ライオン頭を持った小型の金竜というデザインで、昔のD&Dにいたらしいわ。レベル8モンスターね」
晶華「レベル6」
イースタ「意外と弱いのね」
晶華「エキスパートレベルのモンスターだからね。レッドドラゴンだって、レベル10の時代。後からコンパニオンルールになって、『今までのドラゴンは小型のスモール種だったのだ。真のドラゴンの能力はこれだ』と言って、レベル1.5倍のラージ種とか、レベル2倍のヒュージ種を出して来たけど」
イースタ「プレイヤーキャラがレベルアップすると、それに合わせて敵も強くしないといけなくて、インフレが加速する、と」
晶華「とにかく、ドラゴニーになったイースタは、ニャンティコアが黄金竜鎧を身につけたデザインにしましょう。軽装のコウモリ翼なネコ娘が、輝く竜鱗重装ネコ娘になった感じで」
イースタ「黄金聖闘士みたいなイメージね。天秤座の童虎さんみたいな方向性で、ネコ科の虎なのに技は竜という。あ、ドンブラ脳ならこっちか」
晶華「念のため、他の進化先のデータも載せておくわ」
●キマイラ:ライオン、ドラゴン、山羊の合成怪物。3つの首で3回攻撃ができる。データも各首で3つ分。
・ライオン頭:殺傷力5、防御力8、耐久力13
・山羊頭:殺傷力4、防御力7、耐久力9
・ドラゴン頭:殺傷力6、防御力10、耐久力18
(特殊能力:火炎放射。ドラゴン頭で噛みつく代わりに、炎を吐くことができる。ダメージは2D点。1日に3回まで使用可)
イースタ「3回攻撃は強いけど、データを3体分、管理するのは面倒そうね。やっぱりドラゴニーを選んで正解だったわ」
●ワイバーン:サソリの尾を持つ飛竜。
殺傷力7、防御力9、耐久力31
(特殊能力:毒針。通常攻撃の代わりに、尾の先端の殺傷力6の毒針で相手を刺すことができる。攻撃が命中すると1Dを振って、3〜6が出たら、相手は即死する。1〜2だと普通にダメージを与える)
●イフリート:炎の魔神。
殺傷力8、防御力9、耐久力45(魔法の武器でしか傷つかない)
(特殊能力:炎への変身。3ラウンドのあいだ、体を炎の柱に変えることができる。その間は、殺傷力を10にできる。1戦闘に1回だけ使える)
晶華「イフリートさんの最終進化は、本作最強の耐久力99を誇るデーモンさんだけど、そっちに進化するとエンディングが故郷の地獄に帰っちゃうのよね。戦いでは強くても、ハッピーとは言いにくいエンディングってことで」
他の進化系譜
晶華「マンティコア以外からの進化だけど、ジンからはイフリートに進化。グリフォンかスフィンクスなら、キマイラ、ロック、ドラゴニー。ペガサスなら、ロックとナイトメアってところね」
イースタ「マンティコア、グリフォン、スフィンクスの共通点はライオンだから、キマイラとドラゴニーに進化するのは分かる。イフリートは、マンティコアの顔がライオンじゃなくて、恐ろしい容貌の老人だから、魔神につながるのかな。ワイバーンは、マンティコアのサソリの尻尾つながりよね。逆に、マンティコアからロックに進めないのは、コウモリ羽に共通点がないから。鳥の翼を持つグリフォン、スフィンクス、ペガサスだから、鳥の王のロックに進化できる。そしてナイトメアは地獄生まれの悪夢を呼ぶ黒い馬ってことで」
●ロック:殺傷力9、防御力10、耐久力54
(特殊能力:はばたき。通常攻撃の代わりに、大きな翼ではばたいて、敵を吹き飛ばすことができる。2Dで相手の耐久力の半分より大きな目が出たら、相手は吹き飛ばされて出目の数だけダメージを受ける。耐久力24以上の相手には通用しない)
●ナイトメア:殺傷力7、防御力12、耐久力32
(特殊能力:有毒の蒸気。戦闘前に1Dを振って、3〜6なら幻覚作用のある蒸気で相手を包み込んで、殺傷力と防御力を1点ずつ減らす。1〜2だと効果なし)
晶華「結局、新しい進化先は6種類ってことね。そのうちドラゴンになれるのは、キマイラ、ワイバーン、ドラゴニー、ナイトメアの4種ってことで」
イースタ「黒い馬がどうしてドラゴンになれるのよ?」
晶華「蒸気ガスを吐くグリーンドラゴンになるのよ。特殊能力つながりってことね。あと、小説のドラゴンランスだと、緑竜がエルフ王を悪夢の世界に閉じ込めていたから、そういう物語的連想もあったのかもしれない」
イースタ「まあ、いいわ。イフリートさんはデーモンになるってことで、ロックさんの最終進化先は?」
晶華「フェニックスよ」
イースタ「なるほど、納得」
晶華「それじゃあ、変身進化が終わったので、すぐに北へ向かうわよ。もう少し洞窟を調べて、巨大アリ3匹と遊んでもいいけど」
イースタ「アリとたわむれる趣味はないので、先へ進むわ」
氷の塔の眠れる美少女
晶華「火山地帯から飛び出し、氷に覆われた平原の上を飛行します。夕暮れが近くなり、空を流れる雲と同様、地上は不吉な血の色に染まっています。すぐに天候が悪化して、吹雪になりそうな予感を感じました」
イースタ「だったら、どこか避難できる場所を探した方がいいわね」
晶華「眼下を見下ろすと、夕日にきらめく何かに気付きました」
イースタ「何かって何? 近づいて見るけど」
晶華「高度を下げて観察すると、それは氷でできた大きな塔ですね。着陸して調べますか? 調べるなら379へ。無視するなら380へ」
イースタ「それって、パラグラフが1番しか違わないわね」
晶華「ええ。この選択肢の作りは、あからさまに正解の379番を選ばせようとしているみたいね。仮に380番を選んでも、そのページの隣にあるイラスト(379番)が氷づけの全裸美女で、そっちが気になって読んでしまうもの」
イースタ「噂の全裸美女キター。彼女が本作の運命のヒロイン?」
晶華「表紙絵のピンク髪少女よ」
イースタ「ヒロインに惹きつけられるように、氷の塔に着陸します」
晶華「氷の塔の中に封じ込められている人間の若い美女。モンスターの基準で見れば、ひどく不細工らしいですが」
イースタ「それは昭和のモンスター価値観よ。人間とモンスターの関係がアップデートされた令和の時代は、人間の美少女はモンスターにとっても美少女ってことで」
晶華「氷の中で閉じ込められて、凍死しているように見えますが」
イースタ「助け出したいんですけど。氷から出して、火山で温めたら復活できるかも?」
晶華「イースタが氷を割って中の少女を助け出そうとしたら、それを邪魔するように番人が動き出します。氷の剣を振り上げた氷の彫像です。ただ、イラストで持っているのは、斧なんですけど」
イースタ「斧でも剣でもどっちでもいいわ。未来の花嫁候補を助けようとするのに、邪魔する奴は粉砕してくれる。バトルよ」
晶華「7点ダメージを受けたけれど、イースタは氷の彫像を叩き壊しました」
イースタ「残り耐久点は29点。さあ、氷の中から将来の嫁を救出するわ」
晶華「あなたがハーピィかヒポグリフなら、パワー不足で氷が割れないのね。なるほど、だから最終進化ができないわけか」
イースタ「それって、彼女が最終進化の鍵ってこと?」
晶華「その通りよ。だけど、ドラゴニーのパワーだったら、氷を割って少女を助けることができるわ。1Dのダメージを受けるけどね。(コロコロ)1点で許してあげる」
イースタ「残り28点。では、彼女を火山に運びます」
晶華「その必要はないわ。様子を見ていると、娘の体にしだいに血の気が戻り、やがて息を吹き返すから。悪夢にうなされているかのように小さくうめいたかと思うと、まぶたが震え、大きな青い目が開きました」
イースタ「描写が細かいわね」
晶華「作者が力を入れてるシーンだからね。最初、彼女は見慣れないイースタの姿に怯えを見せたものの、自分を氷の中から助けてくれたのだと知ると、態度を改めてサティンと自己紹介します」
サティンの話
サティン『ありがとうございます。私はこの国の王女で、サティンと申します。父、クリガーは偉大な王だったのですが、半年前、卑劣な魔法使いにだまされ、毒を盛られて殺されてしまいました。
『私も呪いをかけられ、このような姿に変えられ、氷の中に閉じこめられてしまいました。この呪いを解くことができるのは、勇敢な若者のキスだけなのです』
晶華「ここで選択肢は、『彼女にキスする』『黒いヒスイについて聞いてみる』『ストームシャドウの弱点を尋ねる』の3つです」
イースタ「ここでキスするのは……セクハラよね」
晶華「セクハラが新語・流行語大賞に選ばれたのは1989年、つまり平成元年のことよ」
イースタ「つまり、昭和にはセクハラって言葉はなかった?」
晶華「だから、本書の表紙や挿絵が問題になることもなかったかも。今の時代だったら、もしかすると出版差し止めになるかもね。サティンとハーピィの挿し絵が、胸を露出しているので青少年が読むのに相応しくないとか」
イースタ「でも、ケンタウロスさんやミノタウロスさんだって上半身裸よ。マッチョな男は胸をさらしても大丈夫なの?」
晶華「ちなみにイラストレーターさんは女性なので、別に男がイヤらしいとかじゃなくて、昭和の価値観で『可愛い系のモンスターイラスト』を描いただけ。なお、ウォーロック誌での連載当時の挿し絵は、硬派なモンスター絵だったのが、単行本収録に際してファンシーな萌え絵に切り替えられました。まだ、ゲーム界にも萌えという概念が定着していなかったので、このイラストは賛否両論だった、とNOVAちゃんは言ってます」
イースタ「今だと当たり前のアニメ絵、または少女マンガ絵なのにね。ちょっと絵柄は古いかもしれないけど」
晶華「当時のゲームブックやファンタジーは、写実的な洋画っぽいイラストが主流だったから、ディフォルメされた可愛い系のイラストが定着したのは平成に入ってからじゃないかなあ」
イースタ「ところで、セクハラキスを無理やり敢行すると?」
晶華「パラグラフ353番で、サティンは狂ったように抵抗します(苦笑)。『いや! やめて! あなたでは呪いを解くことができません!』 それでも強引にキスすることになるのですが、フロスト・サラマンダーなら、もう一度、相手が凍りついて情報を得ることができなくなってしまいます」
イースタ「つまり、フロスト・サラマンダーさんは彼女にキスをすると、攻略に支障が生じると」
晶華「他の種族だと、何も起こりませんが、サティンは主人公の抱擁をふりほどいて、悲しそうな顔をしますね」
イースタ「やっぱり、嫌がる少女に無理やりキスを奪うのは禁じ手ってことね」
サティン『やはりだめです。私の呪いを解くことができるのは、私の同族の男だけ……それも勇敢な戦士でなくてはならないのです。あの悪しき魔法使いを倒せるような……』
イースタ「ええと、男じゃないとダメなの? イースタじゃ無理?」
晶華「本作の主役モンスターは男性であることを想定していますね」
イースタ「途中の進化先に、メデューサやハーピィやスフィンクスだっているのに?」
晶華「まあ、一時的に女性モンスター化したりはしますが、作者の意図としては、男性視点でしょう。ゴブリンが女の子だったり、タヌキになったりすることは想定していなかったはず。そういうのが許されるのは、令和のアップデートされた価値観なので。いわゆる多様性とか、LGBTとか、そんな世界に私たちは生きている」
イースタ「だったら、サティンのセリフから男って文字を消せばいいのね。『呪いを解くことができるのは、私を愛してくれる同族の者だけ』といった感じに」
晶華「そうね。大事なのは愛よ。男か女かは、この際、関係ない。相手を愛しく思い、嫌がることを強制しない、独り善がりじゃない真実の愛といたわりの気持ち。それこそが呪いを解き、奇跡さえ起こし、ババ様の盲いた瞳さえ開かせる、『その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つ黄金の精神』ってもの」
イースタ「……ということで、サティンの呪いを解けるのは、男性限定という古い昭和の価値観からアップデートしました。令和の今では、愛さえあれば女性のキスでも王女の呪いは解けるという方向で、プレイを進めます」
晶華「ゲーム的に大切なのは、男性か女性かじゃなくて、どんなモンスター種族かってことだし、ドラゴニーは半分ドラゴンだけど、純粋なドラゴンじゃないので呪いは解けないのです」
イースタ「あと1回、変身しないと真のハッピーエンドには届かないのね。では、黒いヒスイについて尋ねます」
晶華「その前に、ストームシャドウについて聞いて下さい。大事な情報が入手できるので」
イースタ「だったら、先にストームシャドウの弱点を尋ねます。質問の順番を間違えると、情報が欠落するってことね。忠告ありがとう」
晶華「私だって完全攻略を目指したいからね。とにかく、ストームシャドウについて尋ねると、サティンは『私は知りません。ですが、母が気になることを言ってました』と言います」
イースタ「気になること?」
晶華「『今のストームシャドウは、ストームシャドウではない』という話です」
イースタ「どういうこと?」
晶華「サティンにも、よく分かりません。サティンの母親なら、もっと詳しい話を教えてくれるだろう、ということで、『サティンの母親に会ったら、パラグラフ番号に80を加えよ』という情報が入手できます」
イースタ「パラグラフ・ジャンプって奴ね」
晶華「この情報がないと、真の物語背景が分からないままの不完全攻略になっちゃうのよね。なお、雑誌連載時の最終章は他と同じ100パラグラフだけど、単行本収録時に加筆されて150パラグラフになりました。その際、フリント関連のエピソードと、ストームシャドウの真実が追加されたようです。連載段階では、モンスターが人間に仇討ちして終わるだけですが、単行本で加筆されることでモンスターと人間の共存可能性について掘り下げる物語に昇格したわけです。連載分だと迫害された者の復讐で終わっていたのが、単行本では迫害した側(人間)の反省とか理想的な未来への模索まで描かれていて、そういう作者の若き日の優しさにNOVAちゃんは感じ入ったみたいですね」
イースタ「それは、本作をクリアしてから、わたしも考えることにするわ。令和の価値観でも、感じ入れるなら時代を超えた傑作と思えるかもね。今でも、楽しいゲームだとは思ってるけど」
晶華「ともあれ、サティンの話では、『母親が、魔法使いの魔法にかけられ、奴隷にされてしまった』とのこと」
イースタ「ヒロインの母親を奴隷に? それも今の時代に使っていい言葉じゃないでしょう。さすがは昭和の作品ね」
晶華「別にイヤらしい意味じゃないんだけどね」
イースタ「とにかく、サティンのお母さんに会ったら、大事な情報が手に入ることを覚えておくわ。何とか解放できないか、頑張ってみるつもりだし」
晶華「次に黒いヒスイだけど、サティンは『見た覚えはないけど、あるなら洞窟の奥の宝物庫だと思う』と言います。宝物庫に行くには、『左3回、右2回、左1回と曲がり、次に右1回、左2回、右3回と曲がり、最後に左へ曲がる』そうです」
イースタ「?????? ええと、よく分からなかったので、もう1回言って。メモをとるから」
晶華「パラグラフ383を覚えておくことね」
サティンの父親
晶華「情報を聞いたイースタはサティンを1人残して……」
イースタ「そんなことはしない。いっしょに連れて行く。せめて安全なところまで」
晶華「……分かりました。サティンを背に乗せて平原を横断します。人間というものは服を着るものだと、あなたは学んでいますが、サティンは寒空の下、裸でも平気のようです」
イースタ「普通の人間じゃないみたいね。氷への耐性が強いっぽい。でも、裸なのは気になるから、せめて防寒着でもあればいいと思うんだけど、とりあえず、寒さをしのげそうな避難所、洞窟みたいな場所を探します」
晶華「では、島を東西に横切る山腹地帯にさしかかったところで、手ごろな洞窟を見つけることができました。ちょうど天候も悪くなってきたので、そこで一晩休むことにします。耐久力を4点回復して下さい」
イースタ「残り32点」
晶華「翌朝、天気が回復したので、旅を続けることになります。ただし、サティンは危険なので、この洞窟に残して行くといいでしょう」
イースタ「GMがそう言うのなら。『また、後で迎えに来るから』と言い残して、飛び立ちます」
晶華「『ご武運を』と告げて、彼女はあなたを見送ります。サティンという荷物を下ろしたので、空の旅は前日より順調にはかどり、やがて前方に大きな雪山が見えて来ました。噂の大洞窟があるなら、そこだろうと見当をつけて、その山を目指すことにします」
イースタ「洞窟の入り口がないか、遠目で探しながら警戒の意識も強めます。魔法使いがいつ奇襲してくるか分からないし」
晶華「奇襲はありませんが、霧が発生して、知らず知らずのうちに深い谷間に迷いこんでしまいます」
イースタ「う〜ん、何かに誘いこまれたような?」
晶華「谷底には無数の白骨が散乱しています。人間だけでなく、ゴブリン、オーク、リザードマンなどの骨、さらにオーガーやジャイアントサイズまで見つかり、ここがまるで怪物(モンスター)の墓場のように思えますね」
イースタ「嫌な予感がするわね。もしかして、ストームシャドウの実験場か何か?」
晶華「特に目立ったのが、立派な翼を持ったドラゴンの骨格ですね」
イースタ「少し調べてみます」
晶華「すると、侵入者に気付いたように、ドラゴンの骨がガシャガシャと起き上がり、あなたに向かって歩いて来ます。おそらく、魔法使いの住居を守るよう、かりそめの生命を与えられているのでしょう」
イースタ「もしかして……パラグラフに80を加えてみます」
晶華「……外れです。サティンのお母さんではありません。お母さんではないのですが……」
イースタ「だったら、お父さん?」
晶華「それは……戦って試して下さい。骨の竜スケリトル・ドラゴンと」
●スケリトル・ドラゴン:殺傷力6、防御力9、耐久力23
・1ラウンド目
相手は魔法生物なので、特殊能力の「吠え声」が通じない。
イースタの攻撃。2点のダメージ。ドラゴン残り21点。
ドラゴンの攻撃。3点のダメージ。イースタ残り29点。
・2ラウンド目
イースタの攻撃。9点のダメージ。ドラゴン残り12点。
ドラゴンの攻撃。4点のダメージ。イースタ残り25点。
・3ラウンド目
イースタの攻撃。5点のダメージ。ドラゴン残り7点。
ドラゴンの攻撃。7点のダメージ。イースタ残り18点。
・4ラウンド目
イースタの攻撃。5点のダメージ。ドラゴン残り2点。
ドラゴンの攻撃。3点のダメージ。イースタ残り15点。
・5ラウンド目
イースタの攻撃。7点のダメージ。ドラゴンを撃退。
イースタ「ふう。17点もダメージを受けてしまったけど、何とか撃退できたわ。骨だけとは言え、さすがはドラゴン。手強い相手だったわね」
晶華「すると、骨の竜は崩れ去り、そこから赤く輝くぼんやりとした蒸気のようなものが立ち上りました。蒸気はたちまち、空中で大きな竜の姿となります。その目は二つの石炭のように赤々と燃えています。ドラゴンの幽霊のようですね」
イースタ「も、もしかして、サティンのお父さんですか!? ええと、幽霊には幽霊、わたしの体からもエアリアルの亡霊が立ち上りますよ」
晶華「エアリアルって、第1章でドワーフに殺されたダイアウルフでしょ。幽霊の格が違うわ」
イースタ「違いありません。エアリアルはそばに立つ幽霊(スタンド)として、イースタの成長進化とともに進化して、今では月光の魔狼(ムーン・フェンリル)として、覚醒したの」
晶華「勝手な話を作らないでよ」
イースタ「これはわたしの物語。そこに原作者がいたとしても、ゲームブックがシナリオだとしても、じっさいにプレイしているプレイヤーはわたし。そして、この場で会話TRPGの形をとっている以上、GM役のアキちゃんが対応すれば、ストーリーのアレンジはできる」
晶華「まあ、いいわ。ゲームのデータに関係しないなら、ストーリー上の演出はノッてあげる。ドラゴンの幽霊は、魔狼エアリアルを一瞥すると、それを召喚したと思しきイースタに敬意を示します。『そなたは力ある勇者なのだな。よくぞ我がしかばねを惨めな役目から解き放ってくれた。礼を言おう。我が名はクリガー。かつてはこの島を治めていたレッドドラゴンの王だった』」
イースタ「クリガーさん……ってことは、やっぱりサティンのお父さん!」
クリガー『娘を、サティンを知っているのか!?』
イースタ「かくかくしかじか、と状況説明します」
クリガー『……そうであったか。そなたの一族の仇、魔法使いのストームシャドウは我をもあざむき、毒を盛って暗殺したうえ、この島を乗っ取った。そればかりか、我がしかばねに魔法をかけて操り、洞窟を守る番犬代わりに使っていたのだ。何という屈辱!
『あの魔法使いにしかるべき罰を与えるまでは、昇天するわけにはいかぬ。我は幽霊となって地上にとどまり、復讐の機会を待っておったのだ。勇者よ、そなたに力を貸してやろう。我とその魔狼が一つになれば、そなたは奴の魔法から守られる。力を合わせて奴を倒そうではないか!』
イースタ「クリガーさんが、エアリアルと一つに!? すると、月光の魔狼竜、その名もキャリバーンと名付けていいかしら」
晶華「ここだけならね。他所に行って吹聴しなければ、サンライズさんも大目に見てくれるでしょ(たぶん)」
イースタ「わあい♪ ネタ元作品で、主役機がエアリアルからキャリバーンに変更したときは、ここでのプレイをどうしようかと思ったものだけど、何とか辻褄が合ったわね」
晶華「とにかく、クリガーの幽霊は、イースタと守護霊のエアリアルに近づいてきて、乗り移るかのように一つに融合しました。赤い霊気に包みこまれて、イースタは神秘的な力に包まれているのを感じました。このオーラバリアさえあれば、魔法使いの呪文から身を守ることができます」
イースタ「すごい。まるでZガンダムか何かのサイコフィールドみたいね」
晶華「ゲームブックの元ネタもそれでしょうね。とにかく、このバリアのおかげで、今後、数字の下に*の付いたパラグラフでは、30を引いて進むことができます」
イースタ「パラグラフ・ジャンプが多いわね」
晶華「最後の章だけあって、作者も力が入っている感じね。とにかく、これで最終ダンジョンに突入できるようになるわ。次はパラグラフ321番をセーブしておいて、今回はここまでよ」
イースタ「次で最終回になるかしら」
晶華「たぶんね。ただ、長引いた場合、あと2回かかると思う」
(当記事 完。つづきはこちら)