今回はクライマックス(になる予定)
マークス(ケイPマーク1)「今回の記事タイトルは本当ですか?」
GM(NOVA)「まあ、君たちのプレイ次第だな。あと、余計な寄り道脱線をしなければ、今回で救出できるはず」
サイバ(009)「余計な寄り道脱線をしなければ……という仮定が、なかなか怪しいんだが」
ミリィ(晶華)「NOVAちゃんの余計な寄り道脱線率って、どれぐらいかしら? 2Dを振って5以下ぐらいと想定して、30%ぐらい?」
GM「試しに振ってみよう。(コロコロ)よし、9が出た。寄り道脱線をせずに済んだぞ」
サイバ「いや、そういう無駄な判定をしている時点で、寄り道脱線だから」
GM「とりあえず、今回の記事でエマ救出までたどり着けなかったら、次回のタイトルが『エマ・ショーカ救出・完結編』になるか『真のエマ・ショーカ救出』になるだけだから。とにかく、救出に向けて話を進めようって意気込みを示した記事タイトルってことで」
前回の妖精郷は
GM「とうとう【火柱の塔】の攻略を果たしたんだったな」
ミリィ「空が飛べたら割と楽なんだけど、飛べないと危険な罠がいっぱい仕掛けられていて、飛行能力がいかに大事か実感したわ」
サイバ「ソーサラーのレベル6呪文【レビテーション】が普通に考えれば、最初の空中浮遊手段かな」
GM「いや、飛行能力を最初に持つのは竜人種族のリルドラケンだな。フェアリーガーデンは、リルドラケンが仲間にいれば、有効な局面は多い。他にも飛行可能な種族はいくつか見られるが、リルドラケンは基本ルールに載っているからな」
マークス「それとエンハンサー5レベル以上で習得できる練技【ワイドウィング】が、魔法よりも便利ですね」
ミリィ「そう考えると、1レベルで飛べるドルイド呪文の【ウイングフライヤー】って強力よね」
サイバ「種族特徴を除けば、それが一番早い飛行手段となるな。まあ、ペガサスライダーだったら、MPとか使用制限なく自在に飛行能力を活用できるんだが」
ミリィ「でも、ペガサスだってタダじゃないんだから。1回のミッションのレンタル料金が2000Gもするから、金欠妖精郷では気軽に扱えないの。今回のミッションはクライマックスなスペシャル回という形で、なけなしのお金を奮発してペガサスを頑張って借りたわけだし、せっかく借りたものは有効活用しないと」
サイバ「で、【火柱の塔】を攻略したんだから、一度おもてなし亭に戻って、ニョッキのミッション達成を報告して、成長タイムに移る手もあるんだが?」
ミリィ「でも、まだ十分なお金を稼げていないので、残り3160G分をゲットしないと、赤字なのよ。先に南の攻略を進めるわ」
マークス「では、このままエマお嬢さまが囚われている【白百合の谷】へ直行すると?」
サイバ「いやいや、塔攻略でそれなりに消耗しているだろう? 戦闘はあまりしなかったとは言え、運命変転も使ったし、MPも減っている。吸血鬼のところへ行くのは、一晩休んで万全の態勢を整えてからにしたい。〈透明薬〉の効果で気づかれないにしても、他にどんな危険な遭遇があるか分からないからな。大体、今から直接、向かえば夕方だ。吸血鬼を相手にするには、時間帯は朝か昼が望ましい。夕方は夜よりマシとは言え、決してベストな選択とは言えまい」
ミリィ「さすがはリオン様。吸血鬼対策の専門家みたいね」
サイバ「まあ、ファンタジー好きやホラー好きの基礎教養みたいなものだからな。空想小説の書き手で吸血鬼ものの習作をしたことがない人間はほとんどモグリみたいなものじゃないか、というぐらいメジャーな題材。さらにTRPG者だったら、吸血鬼とゾンビのモンスターデータは最初にチェックして、『へえ、このゲームのヴァンパイアはこんな能力があるのか。ワクワク』と妄想にふけるのは基本的な嗜みじゃないか」
ミリィ「あたしも、一度は吸血花粉症ガールにされた女だから、闇属性にドキドキする気持ちは分からなくもないけど、今は光の妖精女王の後継者としてのプレイを優先するんだから。太陽サンサンの晶の字だって、NOVAちゃんからもらったんだし」
GM「いや、うちの妄想ブログも『吸血鬼メインの闇ブログ』にしようかというイメージ案もあったんだが、それだとヒーローのことを語りにくいし、若いときに暗黒ホラー好きをこじらせるのは厨二病とか、ハシカみたいなものだが、年を重ねて反社会的な過激さを売りにしても、傍目には痛々しいと思えてな。そういう裏街道は、別ブログにエッセンスを投げ入れた。やはり、メインは熱血王道、光あれだと思うんだよね。もちろん、冷静なクールさも魅力なんだけど、クールが輝くのはどんな時だと思う?」
サイバ「その知識や観察眼で、誰かをサポートしている時だな。たまにクールを誤解して、偉そうに周りをバカにしている批評家ぶりだけマネする人間もいるが、バカにする=クールじゃない。それはただのイヤな奴だ。クールがバカにするのは、『短絡的な行動スタイルや、感情だけで後先読まずに突き進む熱血バカな未熟さ』であって、それに対して『もっと考えろ。直観だけで突き進むな。いろいろと分析して、自分の目的を達成するための最適解をつかみとれ。感情に流されずに自制しろ』ってことを示すのがクールキャラの真骨頂だな」
ミリィ「それはつまり、クールキャラが『ろくに考えてない。気分屋で、思い込みだけで突き進む。きちんと客観的に分析できていない。自分の目的を見失って、今とるべき最適解が分かっていない。感情に流されて、自制できていない。安易に極論に走る』という言動を見せたら、クールキャラとして成立していないってことよね」
マークス「そういうのは『クールぶったバカ』ってことですね」
GM「真にクールな人間って、多面的に物を見ることができるから、安易に過激な結論は出さないんだよな(物語上、敵役クールは除く。思考スタイルや言動が一見クールでも、行動動機自体がクールじゃない、誰かの感情バイアスに囚われたケースは数多い)。これが正しい、これしかないという短絡的な思い込みは、まともな精神状態なら判断基準にはしない。そういうのは作劇上、熱血バカの役割なので。
「もちろん、味方のクールキャラは熱血主人公に対するアンチテーゼとして、主人公の欠点を指摘する問題提起役として機能するのが普通で、それを受けて主人公側が自分の弱点を改善しようと努力したり、弱点を長所に変える逆転の発想を武器に成果を上げたりして、クールキャラが主人公を見直すまでがワンセット」
ミリィ「『ほう。バカだと思っていたが、バカなりに考えるところはあるじゃないか。見直したぞ』と上から目線で、主人公を認めたりするのよね」
GM「ただ、ここで大事なのは、クールキャラ自身も『口先だけでなく、きちんとした実力を示すこと』と、主人公が『あいつは言い方がムカつくが、間違ったことは言っていない』と受け入れる度量があることだな。
「主人公は、周囲に刺激されて成長するのが基本の役割なので、主人公がクールキャラに感情的に腹を立てても、その言い分そのものは吸収しないと、あるいは、その言い分の上を行くアイデアを示さないと、悪口や皮肉の応酬だけではクールキャラも生きないし、ただのイヤな奴のまんまだ。結局は、主人公がクールキャラを立てることも作劇では必要になるし、クールキャラも主人公を立てることで、通じ合える関係が大事ってことだな」
サイバ「一番ダメなのは、クールなキャラが相手をバカにするだけで、相手を理解していないことか」
GM「現実では、よくいるんだけどな。『分かってないのにバカにする』って似非クールな輩が。クールキャラがバカにするのは『主人公の分かってなさ』であって、主人公が分かっている姿を示したり、自分とは別のアプローチで解決方法を見出したりした時に、『ほう。なかなかやるな』と前言撤回することも辞さないんだ。でも、分かっていないのにバカにする人間は、そもそも相手を分かろうともしていないので、自分のやり方だけが絶対で、他のやり方でもがき、右往左往している人間の努力、奮闘を見ない。極端に視野が狭いのに、他人をバカにする人間、他人の懸命さを嘲笑う人間は、クールではなく、底意地が悪いだけの性根が腐った野郎でしかない」
マークス「でも、それって、横道脱線ですよね」
GM「……本当だ。ええと、こういうのは、何て言うのかな?」
ミリィ「フッ、それこそ正に『短絡的な行動スタイルや、感情だけで後先読まずに突き進む熱血バカな未熟さ』ね」
GM「つまり、俺って、熱血主人公?」
サイバ「GMが主人公になってどうするんだ? もっとクールダウンしろよ」
GM「クールぶったバカの実例を示したところで、目的達成の最適解をプレイヤーにも示してもらおうか」
サイバ「答えは簡単。前回、〈ダレス写本〉を手に入れたんだから、それをディーラに届ける。その後、夜に【風車の谷】で一晩眠って、翌朝、【白百合の谷】へ出発だ」
ミリィ「じゃあ、それで。よきにはからえ」
クライマックス前の幕間かい?
ミリィ「最後に無理やり『カイ』を付けたわね」
GM「『クライマックス前の幕間』とサブタイトルを考えてから、カイがないのに気がついて、苦し紛れの文尾だな。だけど『○○かい?』は便利なので、これさえあれば、ネタ切れを心配する必要はないだろう。うん、ちょっとした新発見だな」
サイバ「話を進めるぞ。ここから【鳥籠の木】には直通ルートが設定されていないので、移動判定だな。今回はぼくが振ろう。(コロコロ)よし、無駄に6ゾロで成功」
GM「この辺は、道がごちゃごちゃで訳が分かりにくいよな」
ミリィ「大丈夫。NOVAちゃんの思考回路はもっとごちゃごちゃだから」
GM「否定はしないが、それでも一定の秩序はあるんだぜ。どんな秩序か説明すると、寄り道脱線が加速するからクールに話を断ち切るが、使命を果たして〈ダレス写本〉を持って来てくれたサイバに、ディーラの長が感謝の言葉を述べる」
ディーラの長『さすがは小説家。約束をきちんと守ってくれました。これはほんのお礼の★3つです』
ミリィ「★だけ? ここはドーンと3160G分のアイテムをくれたりしない?」
GM「くれたりしない」
ミリィ「チッ。あたしが妖精郷に来た、そもそもの目的は『導入1:妖精の財宝を手に入れろ』なのよ。謎の解明をしたいリオン様や、エマさん救出をしたいキャプテンさんと違って、お宝入手が最初の動機なのよね。それなのに、妖精郷じゃちっとも稼げやしない」
GM「確かにな。シナリオによれば、妖精郷で10万ガメル以上のアイテムを持ち帰ることが導入1のクリア条件となっている。いつの間にか、『女王になること』に話がすり替わっているが、それは妖精郷の究極の宝が全ての妖精を操る〈妖精王の冠〉とされているから」
ミリィ「つまり、シナリオに忠実なら、あたしは少しでも多くのお宝を持って、ラクシアに帰ることを目指さないといけないのね。でも、今のあたしの目的は妖精女王の後継者になることだから、シナリオ目的を変えないといけないような気もする」
GM「なお、10万ガメルを稼ぐ一番手っ取り早い裏技的方法は、ルーンフォーク5人のパーティーで冒険を始めればいい。グラタンが〈妖精のメガネ〉を5つ渡してくれ、メガネの値段が一つ2万ガメルなので」
ミリィ「おお。それじゃあ、ルーンフォーク5人でメガネンジャーを結成すればいいってことね」
サイバ「機界人間4人だとゼンカイジャーだけどな」
GM「ただし、妖精郷からアイテムをラクシアに持ち帰るには、魔法効果のある温泉でアイテムを『外の世界に持ち帰り可能』にしないといけないんだ。さもなくば、妖精郷で入手したアイテムは、ラクシアには持ち越せず、初期装備のままで帰らないといけない」
ミリィ「それって、お宝入手エンドを果たすには、温泉を起動しないといけないってことね」
GM「まあ、今回はエマ救出エンドを目指しているので、その辺の処理は割愛させてもらうつもりだけどな。何にせよ、ミリィは騎獣にお金を費やしているので、10万ガメル稼ごうぜって動機とは相性が悪いし、その辺はシナリオ目的の方をアレンジする必要があるだろうね。目的は『アラマユの後継者になること』でいいんじゃないかな」
ミリィ「お金ではなくて、アラマユブランドの品物にこだわれってことね。女怪盗3姉妹のキャッツアイが、父親ハインツ関係の美術品にこだわったみたいに」
GM「ずいぶんとマニアックなネタだな。そんな娘に育てた覚えは……山ほどあるので、ツッコミを入れてもムダか。ともあれ、プレイヤーキャラが、アラマユの魂の片割れという設定は、元のシナリオにはなくて、当リプレイのオリジナル設定だからな。それに合わせた物語改編は、必要に応じて行うってことで。そして、ディーラはお金ではなく、情報でお礼をくれるんだけど、渡せる情報はもう渡したからなあ。一応、妖精郷で何か知りたい謎が出てきたときに、ディーラの書物をいつでも調べに来る権限は与えよう」
サイバ「それって、どんな謎でも答えを調べられるってことか?」
GM「どこに行けば、その謎が解けそうか分かるヒントみたいなものをくれるってことかな。ぶっちゃけ、物語が行きづまった時にGMが誘導しやすくするための場所。答えはあげないけど、答えに通じる何かが示されるかも」
ミリィ「要するに、次の行き先に迷ったら、アドバイスしてくれるってことね。どうしても必要なら利用させてもらうわ」
サイバ「一応、ディーラに話を通しておくと、君たちが先日捕まえていたフィットチーネなんだが、ダレスの友人らしいんだな。だから〈ダレス写本〉の礼としては、ぼくたちと同様に、フィットチーネ、それからおもてなし亭のケットシーたちにも書物の閲覧許可をお願いしたい。妖精郷の平和を守るためには、各人がバラバラに行動するよりも、みんなで協力した方がいいと思うから」
ミリィ「そうね。あたしが女王になった暁には、この地を王家の歴史資料保管図書館として、公式に盛り立てることを約束します」
ディーラの長『それはありがたい申し出ですが、私どもは趣味で本集めしているだけなので、公式の役所に任じられて、あれこれ責任を押し付けられるのは勘弁して欲しいのですが』
ミリィ「趣味活動はこれまでどおり、自由に続けていいわよ。その代わり、閉鎖的に引き篭もるよりも、読書好きや知識が必要な者に広く門戸を開いてくれると嬉しいなって。まあ、本泥棒か、それとも真に調べものをしたい有用な人材かは、きちんと見分けないといけないけど」
サイバ「その辺の交渉担当できる人材がいればいいんだけどな」
マークス「これから向かう【風車の谷】で探すのはいかがでしょう? 『リオン戦記』マニアのビッツ夫妻辺りが有為な人材を推薦してくれるかもしれないし」
サイバ「そうだな。将来の王国統治のためには、各地の有志に目をつけて、業務提携とか信頼関係の構築をしていて損はないからな」
ミリィ「王国に害なす異物の排除も考えておかないとね」
GM「それは、冒険の旅を通じて少しずつ対処してくれ。30日めの夜になるけど、休息のために村に行くのでいいな」
ミリィ「ランダムイベントは特になし。【風車の谷】に着いた。かくかくしかじかでいろいろ説明して、それから、あたしは寝る。グースカピーヒャラ。はい、よく寝た。お早う。じゃあ、【白百合の谷】に出発。〈透明薬〉使って、こっそり忍び込んで、人も知らず、世も知らず、影となりて救出成功。はい、これにて一件コンプリート。妖精郷は日本晴れ。めでたしめでたし、当記事 完」
GM「おい、流れるようにクロックアップして、話を終わらせるな。いくら何でもダイジェスト過ぎるだろう。それで終わっていいなら、プレイ抜きであらすじだけ語って、ああ、面白かったでまとめてもいいが、何の感動もなしでいいのか? いや、良くない。読者の皆さんも、クライマックスはきちんと燃える物語を堪能したいはずだ」
ミリィ「じゃあ、時間を巻き戻して、どこからやり直す?」
GM「グースカピーヒャラから」
ミリィ「よりによって、そこから?」
GM「そりゃそうだ。その夜、妖精郷探索の30日めが過ぎて、君たちの妖精郷同化度がまた一つ進行する。そんな中で、ほの暗い魔力に導かれるように夢を見るわけだ」
白い百合の花の香りと霧が濃密に漂う世界にて
流れる小川の辺りに朦朧としゃがみ込む少女が一人。
心ここにあらずといった風情で虚ろな瞳が見開かれ
近づく影をガラス玉のように映し出す。
「妖精神に愛されし運命の娘よ」影は妖しき女性の声でささやいた。
「アラマユの魂の光を受け継ぎしそなたを、私は穢すことができない。さもなくば、常闇の世界に迎え入れようものを。大神殿に封じられし妹シーラの代わりに、そなたを新たな妹として愛でることが叶うならば僥倖」
影はいつしか緑のドレスを纏った貴婦人の姿をとっていた。
青白い肌に、赤く燦く双眸、口元からこぼれる白い牙は、吸血鬼の証。
ふと、女吸血鬼は空を見上げた。
超人的な感覚が何かを察知したようだ。
「そう。いよいよ、ここに来るのね。それならば、迎える準備をしないと。フフッ、そなたにも手伝ってもらおうかしら。魂を穢すことは能わずとも、その身のみを傀儡のごとく操ることはできよう」
差し込む月光を反射して、鋭く光る牙。
少女の喉笛に一瞬で喰らいつき、流れる鮮血が二筋。
甘美な痛みに無意識ながら漏れるうめき声。
闇のとばりが二人の女性の姿を包み込んだ。
GM「という夢を君たちは見た」
ミリィ「ちょ、ちょっと、NOVAちゃん? もしかして、お姉ちゃんが吸血鬼に噛まれちゃったわけ?」
マークス「翔花ママ、いや、エマお嬢さまをそんな目に合わせるなんて、マスターは鬼か!?」
サイバ「シナリオにそんなことが書いてあるのか?」
GM「いいや。ここから先のシナリオは、俺がオリジナルでかなり改変した。フェアリーガーデンの原作シナリオでは、エマ・ローズワースが吸血鬼のディアナ・ラフィーダに噛まれるような描写はない。しかし、吸血鬼に囚われたヒロインが血を吸われ、闇堕ちの危機に陥る展開は吸血鬼映画の常識だろう? だから、ここはシナリオを改変してでも、危機感を煽る展開にすることが正解なんだ。何しろクライマックスなんだからな」
サイバ「だが、そのキャラクターはあんたのもう一人の娘の魂を宿しているんじゃないのか? ぼくたちはエマ・ショーカを救うことで、粉杉翔花を取り戻すための冒険をしているんじゃないのか? それなのに、どうして自分の娘に闇堕ちの危険を味合わせるんだよ?」
GM「そりゃ、原作シナリオに一部不満だからだよ。吸血鬼が出ているのに、何で吸血シーンが描かれないのかって。俺がGMだったら、そういうシーンが大好物だからな。俺の半分はダーク寄りで、吸血鬼化しそうな娘にドキドキハラハラして、ゴシックホラーの耽美なシーンを描きたくて仕方なかったりする」
ミリィ「だったら、あたしが吸血鬼化したときに大人しく血を吸われておきなさいよ」
GM「いや、だから俺の中のもう半分が抵抗したんだよ。まるで、ギルの笛に抵抗するキカイダー・ジローのように不完全な良心回路が闇堕ちを良しとしない。だけど、GMとしてはプレイヤーに緊迫感を持たせて、クライマックスを盛り上げるのも大切な仕事だ。この光と闇の両面のジレンマで内心もだえつつも、かたやNPCの娘をピンチに追い込んで、かたやプレイヤーの君たちに頑張って助け出して欲しいと願う親心。そんな俺の心の闇を、君たちの光で浄化してもらいたい」
サイバ「全く、令和の光Shiny NOVAが聞いて呆れる。やっぱり、あんたは相変わらず、心の中に闇を飼っていたんだな」
GM「強すぎる光は、強すぎる闇と表裏一体なんだ。創造の陰に破壊あり。光と闇の果てしないバトルが20世紀の昭和時代から続く俺のファンタジー。だが、俺は君たちプレイヤーを信じてる。さあ、GMの闇に打ち勝ってくれ」
サイバ「どうやら、本気でGMはぼくたちに過酷な試練を突きつけてきたようだな。娘を助けるための出来レースにならないよう、本気でクライマックスを描くための大仕掛けを」
ミリィ「お姉ちゃんを助けるためには、今の最低最悪のダークNOVAちゃんの邪念を太陽サンサンのヒーロー精神で浄化しないといけないようね」
マークス「エマお嬢さまを助けるために、邪悪なGMをワイルドに粉砕します」
こうして、プレイヤーの心に火を付けることに、とりあえずは成功したゲームマスターNOVAだった。
果たして、シナリオ改変してまで用意したクライマックス展開は、どのような結末を迎えるのか。
一行はエマ・ショーカを無事に救出することができるのだろうか。
その答えは、GMとプレイヤーの掛け合いに委ねられている。
(次回、エマ・ショーカ救出・完結編に続く)