Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

妖精郷、真のエマ・ショーカ救出・完結編(SWフェアリーガーデン4ー5)

改めて、完結編の開始

 

サイバ(NOVA)「よし、気合いを入れて妖精郷の物語を完結させるぞ!」

GM(009)「GMの座を投げ捨てた、あんたが仕切るな。大体、妖精郷の物語はまだ完結しない。完結するのは、あくまでエマ救出のワンエピソードだけだ」

ミリィ(晶華)「お姉ちゃんの魂を封印したNPC少女、エマ・ショーカ・ローズワースを吸血鬼の闇の手から救出して、それから無事に現実世界に帰還するための〈転移の魔法陣〉を起動させて、みんなが無事に帰還できて、一応の物語は完結するのよね」

マークス(ケイPマーク1)「その通りです。何はともあれ、エマお嬢さまの救出こそが世界を救う勇者への道。そう、ヒロインの命がセカイに結びつくセカイ系の物語」

サイバ「セカイ系か。このぼく、サイバ☆リオンはそのジャンルを否定する」

GM「いや、いきなり否定するなよ。あんたが公式シナリオに継ぎ足した部分って、思いきりセカイ系なんですけど?」

サイバ「うむ、GMの立場を投げ捨てて、冷静に考えたとき、『うわ、今ごろセカイ系だ、恥ずかしい』ってクールに自己否定する気持ちが芽生えたのだ」

GM「恥ずかしがろうが、読者に厨二病親父だと嘲笑されようが、あんたがわざわざ作ったシナリオだ。最後まで付き合ってもらうぞ」

ミリィ「ところで、セカイ系って何、リオン様?」

サイバ「『エマ・ショーカを救わねば、世界が滅びる』あるいは『エマ・ショーカを殺さねば、世界が滅びる』という過酷な状況で、世界全体の命運がたった一人の少女の命、あるいは心の有り様で決定されるという物語ジャンルを称した表現だ」

ミリィ「それって普通よね」

サイバ「普通じゃないだろう? 少なくとも、俺、いや、ぼくが死んでも世界は続くし、ミリィが死んでも、世界は終わらない」

ミリィ「いいえ。あたしが死ねば、妖精郷の未来の女王がいなくなって、妖精郷の滅亡は確定よ。エマ・ショーカさんだって同じ。世界における重要人物の命は、そのまま世界の存亡に直結するわ」

サイバ「まあ、勇者とか神とか世界の命運に関する立ち位置にあるキャラクターの生死や、心の安定はかなり重要だよな。物語の語り部や主人公の命もかなり重要。主人公にとって、大切な恋人や友人の命も、世界の命運に影響するぐらいは重要度が高い。メタ的には、読者にとっての人気キャラがつまらない死に方をした結果、その後の物語が味気ないものになってしまい、読者離れを起こして打ち切られたら、物語の世界が滅亡したようなものだ」

ミリィ「大丈夫。クリエイティブな読者、あるいは未来のクリエイターの想いさえあれば、二次創作や30年後のリメイクなんかで世界が再構成され、蘇るから」

サイバ「まあ、メタ的視点は置いておくとして、セカイ系はそれだけでファンタジー、幻想物語の様相を呈する。幻想物語にも大別して2種があって、リアルな物と、非リアルな物。リアルに描かれた世界は、滅びるにしても段取りを追うんだ。魔神の大量出現とか、世界を滅ぼせる禁断の兵器や魔法の発動とか、ああ、これなら滅びても納得だねという過程を積み重ねる。

「だけど、非リアルなセカイ系だと『ヒロインの恋人が浮気したからといって、その怒りで、いきなり火山が爆発して地球が割れる』とか、『みんなにイジメられて、封じられた超能力が発動したから、地球が爆発する』とか、『娘が異星人の男の子どもをお腹に宿して、父親が絶対に許さんと叫んだら、その瞬間、イデが発動して宇宙が滅亡する』とか、この唐突感について来れるかどうかがポイントとなる」

ミリィ「イデって、伝説巨神さんよね。そんなことで宇宙は滅びちゃったの?」

サイバ「TV版はな。打ち切りで強引に終わったので、その辺の宇宙が滅びるまでの過程がもう少し丁寧に描かれたのが劇場版。一人一人のキャラの死に様もリアルにグロく悲劇的に描かれた末に、敵側の最終兵器と主役ロボ、母艦が相討ち的に爆発、そして人々の魂だけがあの世に飛ばされて、ようやく殺し合った人々が和解して、世界再生につながる。これが伝説巨神の物語で、そのエッセンスが新世紀のシン少年神話にも引き継がれたところがある……という話は、妖精郷の物語とは全く関係ない」

 

GM「全力全開で寄り道するなよ、サイバ☆リオン。思わず、聴き入ってしまったじゃないか。大体、妖精郷には、TVもないし、イデもないし、異星人もいない。違う世界の物語を、どうして語れるんだ?」

サイバ「……夢を見たんだ。そんな感じの異世界の物語をな。きっと、30日を過ぎて、妖精郷同化度が1点増えた影響だな。現実と空想の区別が付きにくくなっているということで一つ」

ミリィ「つまり、いつものNOVAちゃんね」

サイバ「いつもじゃねえ」

ミリィ「じゃあ、今、この時のNOVAちゃんね」

サイバ「……それは否定できない」

GM「とにかく! 君たちは冒険を始めて30日めの未明、もうすぐ世が明けて31日めの朝になろうという頃合いに、【風車の谷】の寝泊まりさせてもらっているビッツ夫妻の家で、不思議な夢を見て目覚めたんだ。その夢の内容について、仲間同士で話し合っているところから始まる」

ミリィ「やっと始まった」

 

夢か現実か、奇々怪々

 

GM「夢の内容は、こちらを参照」

whitenova.hatenablog.jp

マークス「エマお嬢さまが吸血鬼に噛まれてしまったんですね」

ミリィ「急いで救出に行かないと」

サイバ「はあ、ジョリーダ・グィネスかあ。闇の帷に包まれた可憐な女性がぼくの夢に現れるとは……」

GM「って、サイバ☆リオン。君は一体、何の夢を見ているんだ?」

サイバ「いや、エマさんの夢も見たんだけど、その後、さらに夢の中にグリージョダークネス、いや、ジョリーダ・グィネスというキャラが現れて、ぼくを誘惑したんだよ。そっちに上書きされて、目が覚めたら頭の中がボーッとなってる。これが恋というものか」

GM「勝手に、シナリオと関係ない恋に現を抜かしているんじゃない! GM泣かせの困ったちゃんプレイヤーかよ」

サイバ「いやいや。これはプレイヤー発言として言わせてもらうが、そのシナリオ、考えてみれば、ぼくが作ったわけだから、ぼくはストーリーを100%完璧に知っているんだよ」

GM「そんなことは、考えなくても分かるだろう」

サイバ「読者向きの説明って奴だ。いちいちツッコミ入れずに聞き流せよ。とにかく、サイバ☆リオンは今後の未来をあらかた知っている。きっと夢で神さまのお告げを感じたんだろう。想像力豊かな妄想作家には、たまによくある現象だ。クトゥルフ系の小説でもおなじみのパターン。現実は……神のお告げか、仏の慈悲か、恨みが呼んだか摩訶不思議」

GM「途中で、必殺うらごろしのナレーションを混ぜてるんじゃねえ」

サイバ「だから、それぐらい聞き流せ」

GM「ツッコミ入れられたくなかったら、いちいちボケるなよ。つまり、サイバ☆リオンは妖精郷同化度上昇の影響で、現実と妄想の区別のつかない一時的狂気な状態に陥っているので、クトゥルフ系のゲームにおける正気度判定に失敗したキャラのようになっているということだな」

サイバ「ああ。小説で言うなら、ドン・キホーテ状態だ。つまり、今のサイバ☆リオンは妄言連発マシーンになっていて、それは傍目にも明らか。だから、作戦を考える役には立たん、という扱いでよろしく頼む」

GM「使い魔のシャッテも呆れた表情で見ているよ」

サイバ「ああ、そうか。今から使い魔を新たに作り直して、ジョリーダちゃんと名付ければいいんだ」

GM「何だか気持ち悪いからやめろ」

ミリィ「とにかく、今のリオン様はジョリーダちゃん、ジョリーダちゃん……ってノートに百回書いているぐらい、心ここにあらずってことね」

マークス「恐るべきは、妖精郷同化度ってことでしょうか」

ミリィ「キャプテンさんは大丈夫なの?」

マークス「私はいつもの通りですよ。頭の中はエマお嬢さまのことばかりで、ああ、吸血鬼に噛まれてしまうなんて、心配だ。もしも、お嬢さまが牙を生やして、私の前に現れて、誘惑の視線で見つめてきたら……ハアハア、迷わず片膝ついて、忠誠を誓い、首筋を差し出して甘美な陶酔に浸ろうと考えるぐらい、正気です」

ミリィ「……こちらも信用ならないわね。もしかして、妖精郷同化度の影響を受けていないのって、あたしだけってこと?」

GM「エルフだからか、アラマユの魂の加護か、何らかの理由でミリィは平静を保っている。他の2人は……見ての通りだ」

ミリィ「いざとなれば、妖精郷から帰れなくなってもいいか、と思っていたけど、こんなリオン様を見ていたら、連れ帰って正気を取り戻してあげないといけないみたいね」

サイバ「もしも、サイバ☆リオンが正気なら、吸血鬼退治のために聖水買ったり、白木の杭とか準備万端整えようと主張するところだが、シナリオ製作者にとっては、そんなことをしても無駄だと分かっているので、サイバも余計なことをしないでミリィの判断に任せるつもりでいる」

ミリィ「本来のシナリオなら、〈妖精の透明薬〉があれば気づかれないってことよね。でも、改編版のストーリーによれば、敵はあたしたちが来るのを前もって察している様子が見られる。どうしてかしら?」

サイバ「神のお告げでも聞いたんだろう」

ミリィ「向こうも電波系ってこと?」 

GM「電波系言うな。ソード・ワールドの世界には、神さまだっていっぱいいるし、吸血鬼のディアナは不死神メティシエの神官だったりもするんだ」

ミリィ「敵の神さまがあたしたちの動向を見破っているということ?」

GM「夢という限られた情報じゃ、それ以上は推測できないと思う」

ミリィ「だったら、こちらも神さまならぬ上位妖精さまの力に頼ってみるわ。タイタン様に夢の内容について、ご意見を求めます」

GM「では、タイタンの意見という形で、情報を一つ。この妖精郷を作ったのは、闇の魔女なので、妖精郷同化度が上昇することは知らず知らずのうちに魔女の意識に心が蝕まれていくということではないか。特に、夢の世界は魔女の領域なので、魔女の想いに心がさらされやすい。つまり、暗黒の夢は魔女と心がリンクしたと推測される……と、シナリオに書いてある」

ミリィ「どっちのシナリオ? 原作? それともNOVAちゃんオリジナル?」

GM「魔女がアラマユの封印によって、眠りに就いているのは原作。眠りの世界で一部のキャラの心に働きかけているのも原作。それをプレイヤーキャラにも影響すると拡大解釈したのがオリジナルってところかな」

サイバ「そうか。つまり、その魔女の名前こそ我が女神ジョリーダちゃんということだな」

GM「そんな事実はない。魔女の名前は、プレイヤーも知ってるだろう? 何をボケてるんだ?」

サイバ「ああ、魔女の名前はこの本にも載っている」

ミリィ「え? 神さまなの?」

GM「そう。邪妖の女神として、『フェアリーガーデン』がバッドエンドで終わった際に邪神として昇格した後の設定が載っている。ただ、載っているのはエピソードだけで、特殊神聖魔法なんかは設定されていないんだが」

サイバ「魔女の名前を知ることは、魔女の復活にも関係してくるシナリオの重要事項なので、本当の名前を明かすわけにはいかない。だから、ぼくは仮称ジョリーダ様と呼ぶようにする」

ミリィ「ジョリーダちゃんがジョリーダ様に昇格してる? もしかして、リオン様は魔女に洗脳されちゃった?」

GM「そんなことはシナリオに書いていないんだが、ええと、サイバ☆リオン? 君はもしかして本気で悪堕ちプレイを目指しているわけではないだろうな?」

サイバ「それもまた一興……と言うのは無責任だが、要はプレイに危機感を演出するためのスパイスといったところか。大丈夫、ミリィが光を捨てない限りは、サイバ☆リオンの闇堕ちにも歯止めが掛かるさ」

ミリィ「言動があまりにも怪しいときには、リオン様を拘束しないといけないかもしれないわね」

サイバ「ああ、それは勘弁して欲しいな。実は昔、コンベンションで俺の作ったシナリオで、プレイヤーキャラの一人が闇の力に接触されるというシチュエーションを用意したことがあったんだ。俺としては、接触した闇の力から与えられる情報を利用して、敵の計画を突き止めるという大事な役割をそのキャラに委ねたつもりだったんだが、そのプレイヤーが割とノリノリで闇演技を披露した結果、他の仲間に警戒されて拘束されてしまった。

「最終決戦では、その拘束から解放されて、仲間と共闘して闇の力から抜け出す流れをフォローしようとGMの立場から頑張ったんだが、俺の誘導が悪かったせいか、仲間たちは最後までその子を信用せず、その子のキャラは拘束されたまま、戦力を欠いた状態でも何とかラスボスを倒して、その子も闇から解放されてめでたしめでたし……だったんだけど、ラスボスとの戦いに参加できなかったその子には悪いことをしたなあ、と今でも思っている。テストプレイでは、うまく行ったし、同じシナリオを使った他の人の卓でも問題は生じなかったんだが、自分が演出した卓だけ事故を起こした感じだな。もっとGMの演出意図をぶっちゃけるなり、無理やり、その子が拘束から解放されるように仕向けるなりすればよかったのか、時々思い出して反省してる」

GM「ああ、アースドーンか。異界の魔物ホラーが人に憑依して、侵攻を企むという世界観のTRPGだった」

ミリィ「何、その牙狼みたいな設定は?」

サイバ「いや、牙狼のイメージソースの一つだとも思うよ。雨宮監督は当時、ゲーム関連の仕事をいろいろしていて、ご本人直接ではないけど、雨宮さんの弟子筋と聞いているラプターズというチームが雑誌記事のイラストを担当してもらっていたんだが、アースドーンの設定は、牙狼の世界設定に一部取り込まれていると、自分は見ている。もちろん、雨宮さんの筆絵による独特の世界観や、和風演出など、アースドーンとは関係ないものも多いけど、俺個人も翻訳の手伝いで関わったゲームに間接的に雨宮さんが影響を受けたと思うと、ずいぶん嬉しさを覚えていたもんだ」

ミリィ「アースドーン。あまり聞かない名ね」

サイバ「近未来サイバーファンタジーRPGシャドウランは有名なんだが、その世界観の過去の時代を舞台とした超古代の異色ファンタジーRPGといったところか。これがメジャーになれば、俺もプロとして違う人生があったかもしれないけど、TRPG冬の時代に埋没した黒歴史的なゲームになったわけで。でも、本棚にはきちんと保管してある」

GMアースドーンとはまた懐かしい思い出を聞かせてもらったな。ともあれ、サイバ☆リオンは闇堕ちと正気の間のプレイを狙っているけど、決して進んで魔女の手下になろうと狙っているわけじゃないんだな」

サイバ「プレイ意図は、闇に苛まれながら光に返り咲く方向性だ。だから、拘束しないでね」

GM「その辺は上手くロールプレイしてくれ。プレイ意図を先にぶっちゃけて、自分は悪意を抱いていませんということを明言しておくのも、人間関係で余計な不信を招かないテクニックだからな」

 

光と闇の境界線

 

ミリィ「何だかいろいろ複雑な状況だけど、リオン様もキャプテンさんも魔女の影響で言動が怪しくて、あたし一人だけがアラマユ様の加護で正気を保っているということね」

GM「君が最後の希望だ」

ミリィ「朝になって【白百合の谷】に出発するわ」

サイバ「あっ、ゴーレムのバージルを作る宣言をしておくぞ。MPはシャッテの分で7点使って、自前で1点消費」

GM「さて、出発前に一応、2Dを振ってくれ」

ミリィ「キャー、ピンゾロが出たわ。どんな事故が発生したの?」

GM「大丈夫。判定じゃないから、経験点も得られないけど。ダイス目7以上で村人が君たちにお仕事を依頼するんだけど、君たちの重い雰囲気を読んだのか、余計な仕事は頼んで来ない」

ミリィ「ああ。ここでちょっとした依頼を受注すると、お金がもらえるってことね」

GM「今だと、700ガメルの報酬なんだけど、これって一人700なのか、全員で合計700なのか明記されていないんだよな。前はどういう風に処理したっけ?」

サイバ「村での依頼は、ずいぶん前の話だけど全員で200ガメルだった。でも、妖精郷の現金収入の少なさを配慮すると、一人頭にして勘定する方がプレイヤーフレンドリーだと思うな。さすがに7レベルキャラが全員で700ガメルの端金で仕事したいとは思えない。3人合わせて2100ガメルなら、ミッションのついでのお使いに寄り道してもいいかな、と思える」

GM「200ガメルと600ガメルはちょっとした差だけど、700と2100だと差額が結構なことになるもんな」

サイバ「ルールブックによれば、7レベル冒険者の依頼料の相場は1人当たり4000〜5000ガメルなんだな。妖精郷はそれに比べると、あまりにも収入が低すぎるわけで、だったら収入が得られる機会には少しでも多めにする方が、バランスが良くなると判断する」

GM「だったら以降は、村での依頼報酬は1人頭で計算しよう」

ミリィ「だけど、今回は依頼なしということで。では、いよいよ救出対象のいる現地へ向かいます。ランダムイベントは(コロコロ)5が出たわ」

GM「じゃあ、何かが起こったな。イベント番号は……5か。空から小妖精が笑いながら降りてきて、光の粉を浴びせてくる。2Dを振れ」

ミリィ「6」

GM「頭がくるくると回って、同じエリアの別パラグラフに転移させられる」

ミリィ「はい?」

GM「到着したのは、未踏の地【砂に埋もれた街】だ」

ミリィ「こんなところで、時間を費やしている場合じゃないのに」

GM「全くだ。ええと、イベントリストを見て、GM判断で適当に決めるけどいいかな?」

サイバ「ルールはあくまで指針だ。プレイヤーが楽しめるなら、それがベストだ」

GM「じゃあ、お言葉に甘えて」

謎の声『おおい、助けてくれ』

サイバ「むっ、ぼくを呼ぶその声は、もしかしてジョリーダちゃん?」

マークス「いえいえ、私を呼ぶそのお声は、麗しきエマお嬢さまに決まっています」

GM「どっちでもねえよ。ただの砂に埋もれたお手伝い妖精ブラウニーだ。さっさと助けて、★2つと、おまけのブラウニー1体をゲットして、次に行けよ」

サイバ「GM、投げやりは良くないと思うぞ。とにかく、謎の美女ジョリーダちゃんに期待して助け出したら、ただのブラウニーだったので、ふう、とため息をつきながら、自分のジョリーダちゃんへの想いをポエムにつづる」

ミリィ「そういうリオン様を見て、ふう、とため息をつきながら、ブラウニーにおもてなし亭が復活したことを伝えて、ドリアさんのところに帰るように告げるわ。あ、それと鍛治猫ニョッキさんの仕事は片付けたから、というメッセージを持って帰ってね」

GM「念のため、このイベントはレベル7ではもう発生しないはずだったんだけど、ブラウニー集めも冒険目的の一つだからな。GM裁量で、ここではレベルと関係なく自動的にブラウニーに出会えるようにした。後は、ここでアイテム集めできるけど?」

サイバ「素材集めか。ビルダーとしては、そういうチャンスを逃すわけにはいかない」

GM「探索の目標値は13だから」

サイバ「よし、出目8でぴったり13が出た」

ミリィ「あたしも成功したわ」

マークス「私もです」

GM「ほう、では何をゲットしたか、各人で表を振ってくれ」

 

 その結果、〈魔力を帯びた骨〉(250G)が2個、〈象牙〉(500G)を獲得する。あと、ここで初めて探索したときに★2個をゲットしたということで。

 

ミリィ「臨時収入1000Gね。これで、目標金額は残り2160G」

サイバ「まだ、お金のことを言っているのか?」

ミリィ「幻の女に現を抜かしている人に言われたくないわ。それより、早く目的地に行かないと、暗くなっちゃう。(コロコロ)よし、今度は問題なく、【白百合の谷】に到着したわ」

GM「朝に村を出発し、昼に砂の街で、時刻は夕方だ。正に光と闇の境界線になる黄昏時だね」

 

 白百合姫との暗黒会話

 

GM「いろいろと寄り道を重ねた君たちは、とうとうクライマックスの地、【白百合の谷】に到着した」

ミリィ「早速、〈妖精の透明薬〉を使って、と」

GM「ちょっと待って。まずはイベントの確認だ。透明薬を使うタイミングは、こちらで指定する」

ミリィ「ゲーム的ね」

GM「ゲームだからな。プレイヤーの自由意志も大事だけど、GMの裁定能力に応じて欲しいときは、そう明言する方が事故は起こらなくて済む。(コロコロ)ああ、このイベントか。バトルじゃなくて幸いだ。時間を浪費しなくて済む」

ミリィ「何が起こるの?」

GM「前にここに来たときに起こったイベント『百合が見せる夢』だ。詳しくは、こちらの記事を参照」

サイバ「目標値20の精神抵抗判定に失敗すると眠ってしまうという奴か。あの時は、みんな耐えられなくて、あえなくも眠ってしまったんだったな」

マークス「私が『誘惑の吸血』を受けてしまったんですね」

ミリィ「透明薬があっても、この百合の香りは防ぐことはできない。だけど、目標値20なんて、上手く抵抗できるのかしら? あたしの精神抵抗基準値は10よ」

サイバ「ぼくも10だな」

マークス「私は8ですが……しかし、私にはレンジャー5レベルで習得できる特技《サバイバビリティ》がある。自然環境下ではいかなる抵抗判定も1日1回自動成功できる。ここは自然環境ですよね」

GM「まちがいなく自然環境だな」

ミリィ「一応、あたしもダイスだけ振るわ。(コロコロ)8で失敗」

サイバ「本当なら、【カウンターマジック】で成功率を高めてから、ダイスを振るべきなんだがな。(コロコロ)5で失敗。キャプテン、起こしてくれ」

マークス「ミリィさん、リオンさん、こんなところで眠っていては、エマお嬢さまを助けに行けません。活を入れて起こします」

ミリィ「お早う。助かったわ」

サイバ「ああ、ジョリーダちゃん、行かないで〜。はっ、夢か」

マークス「ジョリーダちゃんは、ここにいません。ここにいるのはエマお嬢さま。みなさん、幻に騙されてはいけませんよ!」

ミリィ「何だか、キャプテンさんが輝いて見えるわ」

マークス「当然です。エマお嬢さまのために頑張ってきた、この私の一世一代の見せ場がここにあるわけで、腑抜けてる場合ではありません」

GM「では、君たちは百合の催眠効果をキャプテン・マークスの不屈の精神、忠義心のおかげで突破した。さあ、ここで『透明薬を使いますか?』の選択肢が出る」

ミリィ「NOを選べば?」

GM「奥に進むと、女吸血鬼のディアナ・ラフィーダと遭遇する」

ミリィ「YESだと?」

GM「ディアナ・ラフィーダの監視の目をすり抜けて、エマ・ショーカのところへ行き着いて、そのまま密やかに脱出できる。あるいは、さらに奥へ進んで、メティシエ神殿に侵入することもできる」

ミリィ「侵入する必要があるのかしら?」

GM「君たちが既に知っているはずの情報だが、この地には〈闇の水晶塔〉があるらしいんだな。そこで〈闇精鉱〉を使うと、闇の力の封印が解放される仕組みだ」

サイバ「妖精郷には、地水火風光闇の各属性に対応する水晶塔が各地に点在していて、光の力は既に解放している」

ミリィ「闇の力なんて、解放しない方がいいと思うんだけど」

サイバ「一応、〈闇精鉱〉は持っているので、解放しようと思えば解放できるんだよな」

ミリィ「まさか、リオン様は闇を解放しようと思っているわけじゃないでしょうね」

サイバ「どうかな。力を解放したら何が起こるか見てみたいとは思わないかね?」

ミリィ「思わない。いくら全力全開が世の流れとは言え、世界には解放してはいけない力というものがあるんだから、好奇心のために無闇に危険を冒すのはバカというものよ」

サイバ「……そうだな。ぼくも好き好んで世界を滅ぼしたいとは思わない。世界が滅んでしまったら、ぼくの小説を読んでくれる人もいなくなるからね。では、この〈闇精鉱〉は使わないということで」

マークス「ならば、エマお嬢さまの救出に専念しましょう」

ミリィ「透明薬を使います」

GM「すると、途中で邪魔されることなく進むことができる。やがて、以前に訪れたように、または夢で見たように、小川のほとりにエマ・ショーカがいるのが見えた」

マークス「お嬢さま、と静かに声をかけて、近づきます。何かの反応はありますか?」

GM「少女は特に反応を見せない。どうも声を掛けられただけじゃ、君たちの存在に気づいてもいないみたいだね」

マークス「首筋を見て、牙の跡がないか確認します。あの夢がただの夢だとは思えないのですが」

GM「少女の姿勢は、しゃがみ込んで、うつむいているので、首筋を確認しようと思えば、直接触れて体を持ち上げないと無理だね」

マークス「危険な匂いは心のセンサーで感じますが、体を持ち上げないと救出もできないので、ゆっくりと体を持ち上げます」

GM「すると、触れられたエマはようやく君を認識したかのように、顔を上げ、笑みを浮かべる」

エマ『待っていたわ、マー君

マークス「お嬢さまですか。助けに来ました」

エマ『ええ、これからも助けてくれるわね。共にディアナ様に仕えましょう』

GM「そのとき、マークスは気づく。親愛なるお嬢さまの首筋には、夢で見たことが本当であったかのような二つの噛み跡の穴が穿たれていることに。そして彼女は女主人に声をかけた」

エマ『ディアナ様、彼らが来ました。姿はまだはっきりとは見えませんが、ルーンフォークは私の側に。あとの2人も近くにいるようです。魔法使いは分かりませんが、私の魂の分身は存在を感じられる。いかがいたしましょうか?』

ミリィ「透明薬があっても、あたしたちの存在は相手に感知されてしまう。これがNOVAちゃんのオリジナル展開なのね。ちょっとズルくない?」

サイバ「ここでディアナ・ラフィーダとの会話交渉シーンにしたかったからね。ただ、こっそり救出するだけじゃ、ちっともドラマになりやしない」

ミリィ「透明薬の意味がないじゃない?」

サイバ「まあね。でも、透明薬なしだと、ここに来ようという気にならないからな」

GM「とにかく、辺りを覆う霧の一箇所が濃密さを増すと、以前に会った緑衣の貴婦人ディアナ・ラフィーダが姿を現す。エマは嬉しそうに主人のところに駆け寄り、君たちの方を指差して見せる」

ディアナ『お役目ご苦労。ヴァンパイアには見えない姿も、まだ染まりきってないハーフなあなたなら、見つけられると思ったわ。さて、外からのお客さま。かくれんぼの時間はもう終わって、少しお話ししませんこと? 前も言ったように、わたくしはあなた方を手折るつもりはありません。たとえ、あなた方がわたくしの提案を裏切り、こそこそ動き回ったとしても、まだまだ交渉の余地はあると考えますもの』

ミリィ「こっちにはないわ。エマさんを吸血鬼に変えておいて、どう友好的に話し合えると思うの?」

ディアナ『簡単よ。あなた達がこっち側に来ればいい。確か、カシュミーラと言ったかしらね。あなたとエマが光の力に祝福されていたのは分かっていましたが、まさかアラマユの魂を受け継ぐ二人だったとは。運命とはかくも美しく劇的なもの。そう、古からの因果がもう一度巡りに巡って、過ちを正す機会を与えるなんて、神の采配と言ったところかしらね。わたくしが仕える不死神メティシエ様と、そして未来において邪妖の女神と称されるであろうネアン様の望まれるままに』

サイバ「邪妖の女神ネアンだと? そこまでネタをバラして、シナリオは大丈夫なのか?」

GM「名前の一部だけだから、まだ解放はされないだろう。あと4文字を見つけ出さなければいけないんだし、ジョリーダなんて変な名前で呼ばれるよりはマシだ」

サイバ「ジョリーダの何が悪いんだ?」

GM「いいとか悪いとかじゃないんだよ。フェアリーガーデンの物語に、勝手に変なキャラ名を押しつけるな。読者が混乱するだろうが」

サイバ「俺のフェアリーガーデンには、ジョリーダちゃんがいるんだよ!」

GM「ぼくのフェアリーガーデンにはいない。今は、ぼくがGMだ。ジョリーダは君の妄想の中にのみ存在する。こう裁定させてもらう」

サイバ「くっ。正論ゆえに、下手に反論をすると自分がただのわがまま君になってしまう。分かった。魔女の名前はネアン。ぼくのジョリーダちゃんは、フェアリーガーデンの魔女じゃなかったんだ」

GM「分かってもらえて何よりだ」

サイバ「帰るぞ、ミリィ。こいつらがジョリーダちゃんに関係ないならば、これ以上ここにいる意味がない」

ミリィ「ちょっと、リオン様。あたしたちの目的はエマさんの救出であって、ジョリーダちゃんはただの妄想よ」

GM「そもそも、あんたの書いたシナリオにも、ジョリーダちゃんのことなんて何も書いてないしな」

サイバ「そりゃ、そうだ。ジョリーダちゃんは、ぼくが妖精郷のエマ救出シナリオを書き足した後で、突発的に生まれたキャラだからな。ほんの昨日、生まれたばかりだ」

GM「そんなポッと出のキャラと、エマ・ショーカのどっちが大事なんだよ?」

サイバ「愚問だな。エマ・ショーカの方が大事に決まっているだろう」

GM「だったら、どうしてエマを放って帰るなんて妄言を口にするんだよ?」

サイバ「分かんねえだろうなあ」

GM「分かんねえよ」

サイバ「俺にも分かんねえ。衝動的な感情の発露は、理屈で説明できねえんだよ。恋ってそういうもんだろう?」

GM「あんたは自分が創ったキャラに恋するのかよ?」

サイバ「いわゆるピグマリオンだな。とにかく、こういう精神状態でGMができないのは明らかだが、プレイヤーでも大差ないのは分かった。サイバはしばらく黙ってます。頑張れ、ミリィ。後のことは君に任せた」

ミリィ「ちょ、ちょっと、リオン様? 一体、この状況をどうしろって言うのよ?」

 

ディアナ『カシュミーラさん、あなたはアラマユさんの魂を受け継ぐ者。では、ネアン様のことは覚えてらっしゃるのかしら?』

ミリィ「そんな名前、初めて聞いたわ。アラマユさんの昔の親友の魔女がネアンという名前で、未来に邪妖の女神になるということね」

ディアナ『メティシエ様は、わたくしに世界の未来の可能性をいろいろと啓示してくれました。その中には、あなた方以外の冒険者がネアン様の策にはまって復活の手助けをした世界もあれば、冒険者が個人的な目的を果たして妖精郷から去って行った世界、復活したネアン様を倒して妖精郷をラクシアの地上に降臨させた世界、志半ばに冒険者が全滅した世界、さらにネアン様に誘惑された冒険者が闇に身を堕として我らの同志となった世界もある。ただ、それらの多くの世界の可能性の中で、アラマユさんの魂が転生し、ネアン様の前に現れる世界は見たことがなかったわ』

ミリィ「つまり、このあたしは特別な存在ということ?」

ディアナ『少なくとも、わたくしが神より受けた啓示の中ではね。また、エマという少女は多くの冒険者の世界では、ただの自然好きなマギテックの少女でしかなく、アラマユさんに縁ある娘ではなかった。その意味で、あなた方2人だけが特別な魂を持って、この今の世界線の妖精郷に現れたということになる。そんなあなたたち2人が、ネアン様の手助けをして同志になるのなら、かつて親友のアラマユに裏切られて、封印されて、名もなき魔女の汚名を着せられた可哀想なネアン様にとって、何よりも慰めになる。ネアン様は慈悲深き方よ。アラマユさんが自分に恭順するなら、過去の過ちは全て水に流して、共に永遠の命を享受しようとおっしゃっている。すでにアラマユさんの半分はわたくしの手の内。あとはあなたが同意してくれれば、この妖精郷は闇の王国と化し、ハッピーな世界と変わる』

ミリィ「それは……あたしにとってハッピーとは思えない」

ディアナ『どうして? 親友同士が昔の関係に戻れて、永遠の命を共に過ごし、好きな妖精たちに囲まれて暮らせるのよ』

ミリィ「魔女が神さまに転生するときは、妖精郷の全ての生きる者や妖精たちが犠牲になると聞いたわ」

ディアナ『犠牲ねえ。確かに生命と魔力を吸いつくされて無惨な屍に変わることを犠牲と言う者もいるかもしれないわね。しかし、死はそれで終わるわけではない。メティシエ様のお力さえあれば、死を乗り越えて亡者として蘇ることもできる。妖精たちもネアン様の御慈悲で亡邪妖精として仕えるの。いいえ、邪という響きが良くないかもしれないわね。亡影妖精(ファントムフェアリー)とでも呼ぶべきかしら』

ミリィ「言葉を変えても、意味は同じよ。あなたたちの作る影の世界に、あたしは魅力を感じない。あたしは闇ではなくて光を愛するの。自然と命を愛するの。アラマユ様ならきっと、不死の永遠よりも自然な寿命を受け入れるだろうし、エマ・ショーカさんだってアステリア神官として、メティシエ信仰には与しないはず。それをあなたが歪めたの。彼女を元に戻して!」

ディアナ『いいわよ』

ミリィ「え、いいの?」

ディアナ『説得を素直に受け入れて、同志になってくれるなら幸いと思ってたけど、アラマユさんの魂を受け継ぐ者がそう簡単に寝返るとも思っていませんでしたから。では、提案その2。あなた達の持つ〈闇精鉱〉を渡し、その後、あなたは速やかにエマさんを連れて、妖精郷を去り、二度とこの世界に足を踏み入れないこと。要するに、この地から手を引き、わたくしどものネアン様復活の邪魔をするなということね。協力できないなら関わるな。むやみに敵対することなく、袂を分かつ。これもまた賢明な判断よ』

ミリィ「ずいぶんと気前がいい条件だと思うけど。吸血鬼にされたエマさんは、どうすればいいの?」

ディアナ『まだ半分だけなので、この妖精郷から離れれば、闇の力の影響も最低限で抑えられると言ったところかしら。もちろん、あの娘がここにいたいと言うなら、無理やり帰らせるのも無粋だと思うけど。わたくしはたとえ相手が自分より弱者であろうと、無理やり力づくで何かを押し付けることはしたくないのよ。そういう流儀ってものでね。わたくしがわたくしに課したルールみたいなもの。さあ、どうするか、決めるのは、あ・な・た・よ』

ミリィ「最初の提案は、闇堕ち暗黒街道を突き進む。提案2は、自分たちの目的だけを叶えて、後は見ぬふりを決め込む中立ルートってことね。だけど、提案2って、あたしたちが嘘をついて、妖精郷から出て行った後で、こっそり帰って来ても、バレなきゃ平気よね」

ディアナ『もちろん、メティシエ神の名にかけて、誓約を立ててもらうわ。再び妖精郷に戻ってきたとき、アンデッドになるという誓約をね』

ミリィ「そんなことってできるの?」

サイバ「ルールに厳密に従うなら、できない。旧版のソード・ワールドには、神の前で誓約する呪文ギアスがあったんだが、2.0の神聖魔法には見当たらないんだよな。つまり、プレイヤーキャラクターが使えないということなんだろうが、一応、神殿のような施設で高位の神官が使える儀式呪文の形なら可能、と独自に考えた。シナリオに必要なら、特別ルールを作って対処するのも、GMには許されるわけで」

ミリィ「う〜ん、この2つの提案って、ゲームのシナリオというよりも、今後のストーリーの方向性をあたしに決めさせるための方便って感じよね。〈闇精鉱〉が欲しければ、力づくで奪うことだって簡単にできるのに、そうしないのも何だかストーリーのためのご都合主義って感じで、リアリティがあるように思えないし」

サイバ「パッと見はそういう感想をされても仕方ない気もする。だけど、ここで気づいて欲しいのは、ディアナがミリィに自分の意志で選択して欲しいと狙っていることなんだ。これはメフィストフェレスに代表される知的な悪魔の常套手段なんだよね。自ら選択し、契約させることで堕落への道に誘うという巧妙な仕掛けと思って欲しい」

ミリィ「提案1はともかく、提案2を相手が申し出すメリットは何?」

サイバ「〈闇精鉱〉を自ら差し出すことは、闇の勢力への部分的恭順を意味する。そして、一つの契約を了承すれば、次はもっと闇に近づく契約を提案することで、次第にミリィが闇への抵抗がなくなっていくように仕向けるわけで」

ミリィ「ずいぶんと気の長いことを考えるのね」

サイバ「吸血鬼は永遠の命だからね。お気に入りの獲物が堕落して、自分たちの導きに知らず知らずのうちに従うことをゲームのように楽しむ、悪魔のような意図を隠し持っていると考えて欲しい」

ミリィ「ずいぶんとイヤらしいシナリオね」

サイバ「NPCの思考スタイルとか動機とかはシナリオに記述していることも多いけど、プレイヤーがそういうことを気にする知的プレイが好きなら、GMが説明することもあるし、もっと単純なプレイスタイルが好きなら、そもそも相手の提案の裏を考えることもしないだろうね」

ミリィ「NOVAちゃんの考えるシナリオって面倒すぎ!」

サイバ「市販シナリオなら、もっと簡単なものにしたけど、ついつい凝ったシナリオにしようと思って、自分でも運用しにくいシチュエーションを頭の中のイメージだけで組み上げて、テストプレイでうまくいかないことが判明することもあるな。それに懲りて、簡単なシナリオにしてみたら、今度は単純すぎてつまらないって言われるし。凝りすぎてもダメ、単純すぎてもダメ。程々の段階というのはなかなか難しい」

ミリィ「とにかく、仕掛けは分かったわ。相手の提案のどちらに乗ってもダメ。だから、自分が堕落しないよう、光の道を進めるような考えを示せってことね。でも、バトルでは勝てないから口八丁で」

 

GM「おい、サイバ☆リオン。あんたはどうしてシナリオのネタバレをするんだ? このシナリオは、ミリィへの挑戦として作ったんだろう?」

サイバ「その通り。だが、それはプレイヤーの晶華が熟練者だった場合を想定して作った。確かに晶華は学習能力が高く、生まれて3年にしては大した成長を示してくれた。俺も晶華なら、これぐらいの状況を独力で切り抜けてくれるだろう、という前提で、高度なシナリオを作ったわけだ」

GM「確かにな。このストーリー展開は、ゲームのシナリオにしては分かりにくい。プレイヤーのストーリーテリング能力に委ねる部分が大きすぎる」

サイバ「だから、俺が必要に応じてフォローに回ることにしたんだ。GMはプレイヤーの敵ではないが、ロールプレイの立場によっては敵キャラを演じる場面もあって、敵キャラでありながらプレイヤーにアドバイスするのはなかなか困難だ。だから、そんな時に頼りになるのは、GMの意図を解説して、初心者を誘導フォローしてくれる熟練プレイヤーの存在」

GM「つまり、このシナリオは晶華ちゃんのレベルを高く見積もって作ったけど、実際の運用においては、プレイ中の反応を見て、適宜修正を図る必要があった。適度なヒントや、シナリオ意図などを明示しながら、晶華ちゃんが物語の主人公として立派に振る舞えるよう、熟練プレイヤーとして導く役割を己に課したというのか、Shiny NOVAは」

サイバ「そう、一見狂って、こいつはダメだと思わせながら、実は深い計算の元にストーリーを紡ぐフォローをする神ロールプレイ……を目指したんだが、成功したかどうかは読者の判断に任せる。まあ、世の中には、こうしたらいいよ、それは望ましくないな、と手取り足取りヒントを与えて、優しく誘導しても、一向に相手の意図を解せず、独り善がりに振る舞うエゴの塊のような甘えん坊がいるので、どれだけ綿密な対応をしてもままならないことも特殊ケースとして学んだが、少なくとも、うちの娘は適切なヒントとフォローがあれば、主役として立派に務めてくれる。だろう、晶華?」

ミリィ「まったくNOVAちゃんったら、いちいちやることがまどろっこしいんだから。プレイヤーにどう振る舞って欲しいかなんて、こっそりハンドアウト(手書きのメモ)を渡してやれば済むことを、いちいち大袈裟に騒ぎ立てる必要がある?」

サイバ「こっそりハンドアウトじゃ、それを読んでいない他のプレイヤーには伝わらないだろう? それに、こっそりハンドアウトにも限界はある。プレイヤーの読解能力が低すぎて、ハンドアウトに書いてあることすら正しく読み取れないケースを俺はこの10年の間に経験したからな。ところで、さっきから発言しないキャプテンはどうなっているんだ?」

マークス「あっ、お気遣いなく。私は半分吸血鬼化したエマお嬢さまの誘惑視線にさらされて、心ここにあらず状態で固まっていますので。内心では人知れず、本当にこのまま闇堕ちしてもいいのか、それともお嬢さまの心の光を取り戻すべく克己心を発動すべきか葛藤しておりますが、エマお嬢さまの命令には逆らえないわけで。この状況、下手をしたらパーティー同士の内紛状態に発展しかねませんよ。どう収拾をつけるんです?」

サイバ「そりゃ、この状況をまとめるのが主人公の役割ってものだろう?」

 

妖精女王の光輝解放

 

GM「プレイヤーのメタ発言は、これで終わりだな。ここからはキャラロールプレイ全開で行って欲しい」

ミリィ「分かったわ。だったら、あたしはディアナさんにこう言います。確かにあなたの提案には心惹かれるものがある。力づくで強引に事を進めないのは、非常に知的なセンスを感じて、正に貴婦人かくあれかしってところね。相手があたしでなければ、その説得は成功していたかもしれない。だけど、あなたはあたしの望みを本当には理解していない。あなたの提案では、あたしの心は満たされないの。あなたはあたしの本当に望むものを叶えてくれるのかしら?」

ディアナ『あなたの本当に望むもの? 妖精郷の女王の地位かしら? 妖精郷の創造者にして、真の女王はネアン様。だけど、ネアン様が神になった暁には、神の代行者として、あなたが亡影妖精郷(ファントムフェアリーガーデン、FFG)の女王として君臨する未来も提供できるわ』

ミリィ「それって、邪神の傀儡として永遠の下僕になれってことよね。あたしが欲しいものは、もっと自由で、人々が心から笑って暮らせる明るい世界で、亡者だらけの鬱屈した闇じゃない。あたしの心を満たすのは輝きよ。そして、あたしがこの妖精郷に求める当初の理由は……恥ずかしながら10万ガメルなのよ」

ディアナ『10万ガメル? 金?』

ミリィ「そう、あたしの冒険目的は、この妖精郷で総額10万ガメル相当のアイテムをゲットしないと本当の意味では終わらないの。あなたはあたしに10万ガメルを提供できるのかしら? 10万ガメルをくれるなら、おとなしくこの妖精郷を後にして、ラクシアで気軽な冒険者稼業を続けるわ。さあ、あたしに10万ガメルをよこしなさい」

GM「ディアナは、ミリィの要望に戸惑いの表情を隠せない。『あの高貴な、ネアン様の親友として語られたアラマユさんの魂を受け継ぐ者が、金銭目的なんて浅ましい。そんなの美しくない……』って呆然と呟く」

ミリィ「あなたみたいな、お高く止まっている人には分からないようね。人は理想だけで生きているわけじゃない。先立つものはお金。お金の価値は芸術とは縁遠いものじゃない。素晴らしい芸術を生み出すにも、相応のお金が必要。確かに芸術家にとって大切なのは、想像し創造する心だけど、心はそれだけで成り立っているわけじゃない。物だって大事。お金だって大事。全てが満たされてこそ、人は幸せに生きていける。世の中にはこれしかない、なんて偏った見方しかできないようでは、地水火風光闇の6つの妖精力の織りなす多様な世界の本質はつかめない。あなたたちは闇に心酔する。あたしは別に光だけに心酔しているわけじゃない。あたしが心酔するのは、多様な世界の全てよ。お金だって人の生み出した光の一部、決して捨てたものじゃない」

GM「『あなたの浅ましさには、がっかりしたわ。俗物もいいところよ』とディアナは、わなわなと震える。なお、ヴァンパイアリリィを倒して得られる戦利品は、穢れた香灰(1万ガメル)が自動獲得できて、ダイス目次第で最高額のユリの紋章の飾り(1万6000ガメル)が手に入るというデータだ」

ミリィ「つまり、合計2万6000ガメルということね。あたしの夢には程遠い。やはり、あたしの大望を実現するには、もっと大物を倒せるように己を磨く必要がある。安易に闇に尻尾を振って、わーい、女王だあ、と喜んでみても、自分の実力が伴わなければ全ては虚しい。やはり、お金も実力もコツコツ真面目に冒険して、人々の笑顔のために働いて、みんなの輝きのために動いてこそ、自分も輝ける。あたしは自分の身の丈にあった輝きを追い求める。あなたたち闇の世界の住人とは、根本的な価値観が違うの」

ディアナ『確かにそのようね。あなたのような下賎な価値観の持ち主が、ネアン様の親友だったとは信じ難い』

ミリィ「それはアラマユさんの話であって、あたしじゃない。あたしの名前はカシュミーラ・ミルモワール。未来の妖精女王を目指す者であって、過去の女王その人じゃない。過去の幻想にあたしを、そしてエマさんを縛りつけないで。それに、エマさん。あなたにも言いたいことがある」

エマ『何?』

ミリィ「あなたの中には、勇者の光がある。そう、アラマユさんの魂だけじゃない。妖精神アステリアの聖騎士としての光はあなたのもの。そして、その心の奥には、花粉症ガール粉杉翔花の魂だって眠っている。だから、今こそ目覚める時よ。吸血鬼の呪縛なんて、花粉症ガールだったら断ち切れる。あたしだって、そうだったんだから。あたしのお姉ちゃんだったら、闇に負けるはずがない」

サイバ「その時、不思議なことが起こった。カシュミーラの揺るぎない心の光が、エマ・ショーカの中に封じられた魂を共鳴させ、彼女の全身が淡い緑の清浄な輝きを発する」

GM「おい、勝手に話を進めるな」

サイバ「だって、シナリオに書いてあるだろう。ミリィが闇の誘惑に打ち勝ったとき、エマ・ショーカの光も蘇るって」

GM「そりゃ、書いてあるが、あんたに仕切られると、GMとしてのぼくの立場が……」

サイバ「おっと、そいつは悪かったな。だったら、ぼくはサイバ☆リオンとしてのロールプレイをさせてもらう。『あの光? 闇の中から蘇る一筋の光明? もしかして、ぼくの求めるジョリーダちゃんは彼女の中に?』」

GM「いや、エマ・ショーカまでジョリーダちゃんにしているんじゃないよ」

サイバ「すると、その時、エマ・ショーカの放つ光に連動するかのように、ぼくの右手の紋章が光のパワーで輝くんだ」

GM「右手の紋章って何だよ? サイバ☆リオンにそんな物はないだろう」

サイバ「あるぞ。深智魔法で、自分で描いた紋章が。こちらの記事を参照」

GM「ああ、確かに自分で描いた。うわあ、自分の言ったことだから、否定できない。分かった、その不思議なことは認めよう。【白い巨塔】で解放された妖精郷の光の力が、サイバ☆リオンの想いに連動して、眩い紋章の光を発する🔱」

マークス「みんながそれぞれの心の光を示している? ならば、忠義の騎士である私、キャプテン・マークスがいつまでも呆けているわけにはいかない。エマお嬢さま、貴方が闇に堕ちるなら共に私も同行しようと思っていたこともありましたが、それが過ちであることが分かりました。貴方は闇に対して、心の奥底で抗っていたのですね。その光が何よりの証拠。その精神世界の戦いに気づかず、自らも闇堕ちを願うなど一生の不覚。忠義の騎士としては一言でもこう言うべきであった。『お嬢さま、闇の力に負けないで下さい』と。たとえ、どんな闇がお嬢さまの身を汚そうとも、心の光は決して消すことはできない。そう、私もミリィさんの、リオンさんの、そしてエマお嬢さまの光を受けて、輝きを放つとき」

GM「おお。これでシナリオフラグが立った」

ミリィ「シナリオフラグ?」

GM「3人のプレイヤーキャラクター全員が、闇に負けない光をロールプレイで演出したときに、ミリィとエマの二人の中に秘められたアラマユの魂が目覚めるって」

ミリィ「そんなことが書いてあったの?」

サイバ「書いたんだよ。ただ、こればかりはプレイヤーにシナリオ攻略の方法として、直接言うわけにはいかなかった。今から『闇に負けない光をロールプレイして下さい』って演技指導していたら、ゲームとしてあまりにも白々しいだろう? そんなことをはっきり言わなくても、ノリが良くて、空気が読めて、ヒーロー魂の何たるかが分かっているプレイヤーなら、周囲に感化されて、自然に言葉が、ロールプレイが生成されるはずだ。

「現に、そう言うナラティブなロールプレイで、数値データを重視しない傾向のTRPGシステムもそれなりにある。気心の知れた、と言うのは、こういうストーリーパターンなんかも理解して共有できる、お約束のノリを楽しめることを意味する。そういう関係性が成立していれば、作品鑑賞のツボなんかも互いに押し合えるさ。人の個性は大事だけど、最低限の良識は解した上で、話を通じ合わせた上での各々の個性だ。良識を踏まえない個性は社会の害悪にしかならない。まあ、何が良識かという共通見解のすり合わせは行う必要もあるし、いたずらに硬直化してもいけないけれど、その世界やジャンルでの良識、コモン・センスを備えた者同士だと、良い会話や良いテーブルトークができて楽しく有意義な時間が過ごせると俺は考えるな」

GM「とにかく、シナリオライターの意図どおり、みんなが自分の心の光を言葉に発したことで、妖精女王アラマユが目覚める。続きは次回だ」

ミリィ「ええ? こんな良いところで、話を切るの?」

GM「ずいぶん長くなったからな」

サイバ「2万字越え。クライマックスとしては質量ともに十分だ、と自負する」

ミリィ「質はともかく、量は頑張ったと思う。蘊蓄や説教が多いのはたまに傷だけど」

サイバ「その分、笑えるネタも盛り込んだ……つもりだがな。実際に笑えるかは、読者個人のセンス次第で、こちらが押し付けることはできないけれど」

GM「万人向けの創作は難しくて、どうしても書き手と読み手のセンスの噛み合い方に左右されるからね。好きなものを詰め込んだところで、その好きなものを好まない読み手には響かない。逆に、好きなもので通じ合える読み手を楽しませる作品なら、それは読み手にとって傑作だし、創り手は自分の好きが世の中の好きに連動したり、時代の空気に噛み合わせたり、長く作品を作り続けて信頼を得たり、いろいろな形で良い刺激を与えることができれば、当たりなのかな、と思う」

(当記事 完)