Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

改めてゾンビランド・サガ(スパクロ)とダークタワー3巻(上)の話

改めてスパクロコラボ

 


【スパロボxω】 ゾンビランドサガがスパロボ参戦?大張正己コラボ「サガ・ザ・グレート7」戦闘シーン

 

NOVA「前回は、これでもか、と言うほどの記事書き大暴投を起こしてしまって、書こうと思っていた記事内容の1割も書けなかったという始末」

晶華「書こうと思っていないのに、1万字も書いてしまったわけ?」

NOVA「凄いだろう」

009『まあ、雑談って時々そうなるよなあ。気が合う友人同士だと、話が妙に弾んでしまい、相乗効果で自分たちは一体、何の話をしているんだろうという盛り上がり方が』

NOVA「頭が変な方向に活性化しちゃったってことだろうけど、思いがけず『鬼滅の刃』に話が転がるとはビックリだ」

晶華「教え子相手に、そんな話をいきなりする塾の先生の方がビックリよ」

NOVA「試験が終わった中学生相手の個人指導だからできたんだよ。歴史とかそっち系の話から外れてしまった流れがある。九州で昔は石炭がどうこうからズレたとか……なお、鬼滅の作者の吾峠さんは福岡県の出身で、鬼滅の英語タイトルはデーモン・スレイヤーで、ゴブスレと話をつなげることも可能」

晶華「確かに、ゴブリンだって小鬼だからつながるでしょうけど」

009『ところで、サガって嵯峨童子か何かか? もしかして、鬼の話につながるのか?』

NOVA「お前、嵯峨童子なんてマイナーキャラの名前を出しやがって。そいつは伝承の酒呑童子茨木童子じゃなくて、ダブルクロスのキャラの名前だぞ。平安京を舞台に、嵯峨天皇アーサー王伝説のサー・ガウェインのネーミングを混ぜたキャラ名。よく、そんな名前がとっさに出てくるな」

009『凄いだろう』

NOVA「俺と同じリアクションをしてるんじゃねえ。全く、我ながら、記憶ボックスの情報が整理できていないので、どのスイッチを押せば、何が飛び出して来るか分からない頭の構造をしてやがるな。自分じゃなければ『何の話に流れるんだよ』とツッコミ入れるところだ」

晶華「本当に何の話に流れるのよ。もう、NOVAちゃんに任せてられないわ。今から、私がアシスタントガールの権限で、話を仕切ります。ええと、『ゾンビランドサガ』とは2018年のアニメで、ゾンビとなって生き返った少女たちが佐賀県のご当地アイドルとして活動する作品で、ロボット物ではありません」


TVアニメ「ゾンビランドサガ」OPテーマ『徒花ネクロマンシー』

 

009『そんな非ロボット作品がどうしてスパロボに参戦するんだよ !?』

NOVA「今さらながらのツッコミだが、一言で言おう。スパクロとはそういうもんだ」

晶華「まあ、こういう背景事情もあるみたいね」


【スパクロ】なぜゾンビランドサガはスパロボに参戦することができたのか?サガ・ザ・グレート7とはなんなのか?【徹底解説】

 

009『平成もそうだが、あんたたちの令和もいろいろカオスなことになってるんだな』

NOVA「そのうち、『平成何ちゃらVS令和何ちゃら』って作品が誕生すると思うが、それまで頑張って令和を生き抜きたいぜ」

 

そしてダークタワーの続き

 

NOVA「で、次に書きたかったネタは、ダークタワーの続きだ」

009『ダークタワーとは?』

NOVA「スティーヴン・キングの小説だ」

晶華「前の感想はこの記事ね。9月末だから、続巻を読むのに2ヶ月少し。ずいぶん時間が掛かったんじゃない?」

NOVA「上巻だけで450ページほどで、単純に文量の問題もあるが、ラノベと違って、さくっとは読めないのと、他にもいろいろ読んでたからな。一応、俺が読んだのは角川版だけど、新潮版の表紙も味わい深いので貼っておこう」

009『キングのダークタワーか。思い出した。90年代に出てたけど、その時は自分好みのファンタジーじゃない、と思って読まなかったな』

NOVA「途中で刊行が止まったから、読まなくて正解だな。2006年バージョンで一応、完結したが……」

009『気付いていなかったや』

NOVA「で、結局、2018年に映画化されるのを機に、2017年版が出て、ようやく興味を抱いて少しずつ読み進めているのが今なんだ」

009『面白いのか?』

NOVA「ラノベじゃないから、じっくり読むのに手間を要するというか、面白いシーンに至るまでに根気と想像力がいるな。じわじわと込み上げる面白さというか、読み終わったときはそれなりに達成感がある感じだ」

009『とりあえず、表紙を見たところ怪物列車が出るみたいだな』

NOVA「そいつは下巻の話で、上巻には伏線だけだ。1巻はダークタワーと黒衣の魔法使いを求めて、崩壊しかけた世界の荒野をさすらうガンスリンガーのローランドの物語で、彼の住む異世界に紛れ込んだ少年ジェイクと出会うものの、探索の途上で崖から落ちるジェイクを見殺しにしてしまい、仇敵の魔法使いと一応の決着をつけるまで。

「2巻は、魔法使いの遺したメッセージに従い、ローランドが旅の連れとなる運命の3人を、60年代と70年代と80年代のニューヨークから召喚する顛末。異世界人のローランドが、我々の世界に来て、いろいろ困惑したり、勘違いの解釈をしたり、暴れ回る流れが面白い。結果、80年代から召喚した麻薬の運び屋エディと、60年代から召喚した二重人格で両脚を事故で切断された黒人女性スザンナ(善人格のオデッタと悪人格のデッタが統合された)が仲間になり、70年代の殺人鬼ジャック・モートはローランドの手で制裁された」

009『って、運命の3人じゃなかったのかよ』

NOVA「運命は切り替わったんだ。この辺の異世界転移と時間軸の切り替わりが、今だとありふれている感じなんだけど、原作の書かれた80年代から90年代では、結構、斬新なアイデアだったと思うよ。で、3巻の上は、この新たな3人めの仲間ジェイク少年をもう一度、取り戻す話なんだ」

009『ジェイクって死んだんじゃなかったのか?』

NOVA「ええと、時間軸を追って説明すると、殺人鬼のモートが70年代のニューヨークで、ジェイク少年を交通事故に見せかけて殺害。その事故によって、ジェイクは異世界転移してしまい、そこでローランドに遭遇して1巻の最後にまた死んじゃう」

晶華「ジェイク君、気の毒ね」

NOVA「で、2巻で、ジャック・モートがジェイクを殺すのを、ローランドが阻止したことで、ジェイクは生存したんだけど、二つの可能性が発生してしまう。ローランドにとっては、自分がジェイクを見殺しにした記憶と、そもそもジェイクに会わなかった記憶が入り混じって、錯乱。一方のジェイクも自分が死んだ記憶と、生きている記憶が混じって、錯乱。要するに、時間軸を変えてしまったことで、その関係者の心が発狂してしまう危機に陥ってしまったんだ。時間の修復作用とは、かくも恐ろしいってことだよ」

晶華「つまり、主人公のローランドさんの頭がおかしくなったので、主人公がエディさんに交代ってこと?」

NOVA「視点キャラ的にはそうだな。上巻は全部で3章で、1章めはエディを中心にした異世界舞台の物語。エディとスザンナがローランドを師匠に銃の技を学びながら、ロボット熊を倒したり、古代のメカテクノロジーの驚異(キングのファンタジー世界は、古代のメカSF要素の残滓が残っていて、そこにアメリカ西部劇とヨーロッパ中世の要素が結合した形を経て、人類文明崩壊後にミュータントがはびこる混ぜこぜ乱世と化している)に遭遇したりしながら、ローランドの狂気の原因を探る話。その中で、エディは不思議な霊感に導かれ、ジェイク少年との夢での交感を果たす」

晶華「やっぱり、ここでも夢なのね」

009『異世界への召喚が、夢を通じてってのは海外ファンタジーの定番だからな』

NOVA「夢でメッセージを受け取って、そのお告げの通りにしたら、異世界への門が開くという流れ。で、2章はジェイクの物語。彼の家庭事情が改めて描かれ、自分が死んだ記憶と生きている今のギャップに悩まされながら、『本当の自分は異世界に行って、ローランドと出会わないといけないのではないか?』という妄想に苛まれてしまう。同時に、自分が狂ってしまったんじゃないか、という恐怖にも駆られて、まあ、その辺は俺も割と感情移入できてしまうわけだな」

009『確かに、空想癖に満ちた夢見がちな少年時代を過ごしたからな。そういう想像力を小説やゲームの世界で昇華したりしているんだけど、普通の人間は現実世界に足をつけながら、空想世界は遊びの範疇に留めておくのだろうさ』

NOVA「虚構と現実のどちらが真実か、と尋ねられたら、精神と肉体のどちらが真実か、という質問と同じで、結論はどちらも大切と言わざるを得ない。その辺のバランスをどう取るかは個人差もあるだろうし、キングの作品の多くは『現実の向こうに隠れている超現実や狂気の世界を肯定しつつ、そこからの脱出や解放でハッピーエンド、しかし逃れ得なくて闇に消えた人物もいる』という形になる」

009『他の人に見えないものが見えてしまう恐怖、というのは空想小説のテーマとして扱いやすいものな』

晶華「だけど、正体不明だとあまりにも怖いから、そこに名付けや契約などをして、空想的存在を味方にしたり、倒せる物語を構築したりして、精神的安定を図ることもある、と」

NOVA「他には、鈍感力を発揮して見ないふりをするとか、対処法はいろいろだけど、結局、ジェイク少年は悩みに悩んだ結果、異世界への扉を探すことを決意するわけだな。正直、そこに至るまでの過程がいろいろまどろっこしいんだ。リアルに丁寧に少年心理が描かれているんだが、キングの物語ではその丁寧さが読者を世界に引き込む手腕なんだが、90年代ならまだしも、今の時代だったらそこまで丁寧に段取りを追わなくても、よくあるパターンで、こちらとしては『もう、そんなのいいから、とっとと異世界転移しちゃえよ』って気になる」

晶華「異世界転移が今みたいにありふれていない時代の作品だからこそ、そこにリアリティを持ち込むために、少年に感情移入させようとしたわけね」

NOVA「うまく感情移入できれば、読むスピードも上がるんだけど、さすがに俺はもう少年に感情移入できる年ではなくなったのか、少年を心配する学校教師とか親の気持ちに目移りしてしまって、読むのに時間が掛かった次第」

009『なるほどな。視点キャラに感情移入しにくければ、さらっと読み流すか、それでも頑張って感情移入に努めながらじっくり読むか、の二択になるからな』

NOVA「あるいは、この小説は自分に合わないと見限って、読むのを断念するか、だ。人間関係にも近いかもしれない。自分に合わないと見切った人間を、それでも表面的にさらっとした付き合いに留めるか、頑張って感情移入に努めるか、完全に見限るかという選択肢」

晶華「相手が『自分に感情移入してくれ』と訴えて来たら?」

NOVA「感情移入に値するほどの面白さを示してくれたらいいんだけどな。後ろ向きで、半ば狂気に侵されて、いろいろとトラブルの元になる人間に感情移入してしまうと、自分の頭の方が引きずられておかしくなることを自覚したから、対処法は3つに分かれる。1つは、自分に合った距離感で付き合い、それ以上は入って来るな、と言明する。入って来るなら、俺の精神衛生上、俺の流儀に合わせろってことだな」

晶華「付き合うなら、それがルールね」

NOVA「2つは、感情移入してもいいが、だったら、そちらもこっちのやっていることに、きっちり踏み込んで、狂気を分かち合う姿勢を示せ。一方的に、狂気を押し付けてくるな。お前のつまらない狂気よりも、俺の芳醇な狂気の方が面白いぞ。交換条件で、他人の狂気を受け入れられないような器量の狭さなら、自分の狂気を引っ込めておけってことだな」

009『この場合の狂気というのは、作家としての過剰な想像力や変人ぶりを意味しているわけだな』

NOVA「マニアックとかフリークって、そういうことだろう。多くの創作家は、自分の中の狂気を自覚していると思うがな。空想の作品世界を創造するほどの狂気を。もちろん、その狂気はそのままだとカオスなんだけど、そこに整合性を与え、読者が楽しめるだけのエンタメ性を構築するまでが作家の仕事で、自分の中の狂気を適切に料理できない者の作る作品は、読んでてつまらない。

「狂気は、自分の中から吹き荒れる想念と言い換えてもいいが、それにどんな方向性を与えて、普通の人が受け入れられる形に構築するか、あるいは一部の共感できる人に伝わればいい、と狭い客層を狙うかは作家の自由。ただ、作家自身の技量が未熟だと、自分の狂気をろくに分析できていないので、他人に分かりやすく伝えることもド下手。それでも、断片だけでも伝わって、そこに共感した読者を得ることもあれば、断片をつなげると矛盾だらけで感情移入をさえぎり、読者に呆れられるものもある」

晶華「つまり、NOVAちゃんの言う作家性とは、自分の中の狂気をうまく大衆向けに加工する技術ってことね」

NOVA「スティーヴン・キングの小説を読むと、つくづくそう感じるよ。だからこそ、彼の小説は、ホラー映画の題材として、時代を越えて、人々の人気を獲得するんだなあ。実に、狂気をエンタメに昇華する技術に長けている。その意味では面白いことは間違い無いんだけど、そこに引きずり込まれると、下手したら現実に帰って来れなくなる危うさを秘めている。そうなってしまったら、俺の場合、仕事に差し支えるからなあ(苦笑)。上手くバランスをとりながら読み進める必要があるんだ。学生時代みたいに、作家の狂気の世界に没入できるといいんだがなあ」

009『つまり、創作というのは、狂気と現実のせめぎ合いということか』

NOVA「もちろん、作品ジャンルにもよるけどな。空想科学ファンタジーではない、よりリアルな社会や人間生活を描いた作品もあるけれど、その場合でも社会の不条理や人間の愛情などの中に狂気の断片が散りばめられ、そこをどう解決、解消するか、それとも過剰に暴走してしまうか、などがドラマツルギーとなる。多くの読者は、自分が狂うのは避けたいけれど、他人の物狂う姿をエンタメとして消化して楽しむ。そして、その狂い方に没入できなければ、つまらない作品だと切り捨てるんだな。だから、作家は自分の中の狂気をうまくコントロールして、読者に提示しないといけない。狂気そのものをぶつけようとしてはいけないんだ」

晶華「それをやっちゃうと、どうなるの?」

NOVA「ただの気狂いとして、世間からは受け入れられない。まあ、芸術として爆発させたり、ロック音楽として叫び声を上げたり、いろいろな狂気の表現スタイルもあって、文章以外にもいろいろなパフォーマンスはあるんだけど、作家の能力って突き詰めると、自分の内面のカオス、狂気を作品として面白く、ダイナミックに、あるいは静謐に味わえるものとして、情緒を揺さぶり、琴線に触れ、共感させる加工技術なんだと考えるよ」

 

二つの世界の交錯

 

NOVA「話を戻そう。1章はエディの物語として、ローランドの狂気を外から観察する物語。2章はジェイクの物語として、自分の中の狂気を内面から観察する物語、と定義できる。そして、その二つがうまくつながるのが3巻の上巻最後の3章ということになる。エディとジェイクの二人の想いがつながって、ジェイクがローランドの世界に召喚されるまでを描くわけだ」

晶華「ローランドさんは何をするの?」

NOVA「時々、エディを励ますぐらい。そう、この3巻上は、1巻と2巻の主人公だったローランドがほとんど何もしないから、そこまでの感情移入が断たれてしまうのも難点なんだな。エディの目から見たローランドは、むかつく親父キャラで、それでも狂いかけている。ローランドが完全に狂ってしまえば、ローランドによって召喚された自分たちはどうなるんだって話だな」

晶華「自分たちの世界に帰ったらいいんじゃないの?」

NOVA「そういうことも時々、考えるんだけど、エディも、スザンナも、自分の世界でそれぞれ問題を抱えていたから、ローランドの世界の方に順応してしまったんだな。エディは兄ヘンリーの奴隷みたいな幼少期を過ごし、その結果、麻薬の運び屋に身を落として、マフィアのトラブルに巻き込まれたのをローランドに救われる。兄ヘンリーがマフィアに殺されてしまったため、それまでの人生の束縛が絶たれてしまうんだ。特に、これと言って生きる目的もなかったのを、ローランドから『お前にはガンスリンガーの才能がある。お前の力が必要だ。探索を手伝って欲しい』と言われ、文句を言いつつも、旅の同行者になった。

「スザンナは、60年代アメリカの黒人解放運動に支援活動をしているオデッタと、二重人格の凶暴性を持ったデッタとして、警察沙汰になりかけたところをローランドに助けられる。まあ、デッタの人格が、人さらいのローランドたちに抵抗して、いろいろ暴れるんだけど、オデッタとデッタの人格がうまく統合して、スザンナとなって、エディと結ばれる」

晶華「それって、アストとダイアンナ・ジャッキーちゃんの話にならない?」

NOVA「本当だ。自分では、そういうつもりはなかったけど、結果的に、スティーヴン・キングの話をパクったような形になっているよ。今、気付いた」

009『まあ、自分でも無意識のうちに、読んでいる本に影響されてしまうのは、よくある話だからなあ』

NOVA「どちらかと言えば、あの二人の結婚は、その時期にイベントがあったスパクロのこの作品の影響が大きいんだけどな」


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晶華「とにかく、エディさんとスザンナさんは、ローランドさんの異世界で結ばれちゃったから、自分たちの世界に帰るよりも異世界で探索行に付き合う方が幸せだと感じているわけね」

NOVA「元の世界に戻っても、それぞれの時代が20年ズレているし、スザンナから見れば、黒人娘の自分と白人のエディは結ばれる関係じゃない。一方のエディは、現実世界では底辺の犯罪者に過ぎないけど、ローランドに付き合うことでガンスリンガーとしての矜持と、愛する伴侶を得られた形だ。だから、苦労してもローランドに従おうって気持ちになる」

晶華「で、ジェイク少年は?」

NOVA「両親のお仕着せで名門の私学に入った小学生なんだけど、そろそろ反抗期に入りかけの10代初めで、束縛からの解放を望んでいるような描かれ方だ。真面目な優等生が敷かれたレールから逸脱する流れと、異世界絡みの狂気が入り混じって、本当の自分は何だろう? って少年時代のアイデンティティー形成の物語になっている感じもあるな。異世界に通じる扉を探し求めて、学校の授業を抜け出して、70年代のニューヨークの街を、なけなしのお小遣いを使いながら散策する過程が描かれ、そして、とある幽霊屋敷にたどり着く。そこに導いてくれたのは、70年代の不良少年だったヘンリーと弟のエディというリンクがあったりするわけだ」

晶華「ああ。80年代の大人になったエディさんは異世界にいるけど、それとは別に70年代の少年エディさんがジェイク君の水先案内人になるわけね。何だかややこしい」

NOVA「エディは兄といっしょに、幽霊が出るという噂の屋敷に行くんだけど、結局、屋敷の薄気味悪さにビビって、引き返すことに。そんなエディを夢で見た自分の導き手と確信したジェイクは、ここに異世界の扉があるはず、と幽霊屋敷に踏み込むのが上巻のクライマックスだな」

009『幽霊屋敷かあ。オカルトRPGの格好の舞台だな。いろいろ懐かしい思い出があるぞ』

NOVA「今でも、そういう系のゲームはいろいろあるだろうな」

アークライト ミステリーハウス ~幽霊屋敷の探検~ 完全日本語版

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NOVA「ともあれ、町外れにある幽霊屋敷というのは、現代ホラー作品の旗手だったキングの定番の舞台設定でもあるから、当然、幽霊屋敷には魔物が潜んでいて、ジェイク少年は襲撃されてピンチになるわけだ」

晶華「そこをローランドさんが颯爽と駆けつけて、少年の危機を助け出すのね」

NOVA「そうだな。最後の最後だけ、格好良く仕事して、自分自身の狂気からも解放されるのが今巻のローランドの役割。だが、その前に、エディの仕事がいくつかある」

009『異世界の門を開くことか?』

NOVA「当たり。エディとスザンナのときは、異世界のどこでもドアが自然に用意されていたんだ。そして、第3の扉もジャック・モート用に準備されていたんだけど、彼を殺して、運命を変えてしまったために、ジェイクを呼び出すための扉と鍵は自前で作らないといけない。そこで、エディがひらめキングの力を発動して、扉と鍵を自作してしまうんだ」

晶華「え? ひらめキングってキラメイレッドの充瑠くん?」

NOVA「まあ、ここではスティーヴン・キングの小説だから、ひらめキングという用語で問題ないだろう。10月25日放送のキラメイジャー29話では、王さま召喚のために、充瑠くんが鍵穴のない扉に自分で鍵穴を描くことで試練を乗り越える。その話の元ネタっぽい描写を、たまたま偶然、ダークタワー小説に発見した気分なんだ」

晶華「ええと、鍵穴を描いたってこと?」

NOVA「鍵は、自分のインスピレーションのままに木を彫刻して作った。召喚の舞台は、旅の中でたどり着いたストーンヘンジの中で、そこの地面に扉を描いた。そして、最後に鍵穴を描いて、扉が開くわけだ。このシーンで、俺は一番、笑ったんだ。どう見ても、キラメイジャーだなって」

晶華「今年のタイミングで、ダークタワーを読んでいなければ、思いつかない発想ね」

009『大体、元ネタかどうかは、脚本家の人がそう明言しなければ断定できないだろう? たまたま、自分の知っている作品で似た要素が登場したからって、パクリとか元ネタとか、外から安易に決めつけるのは危険だが』

NOVA「そりゃそうだ。ここで大事なのは、物語の作り手としては話の整合性だな。充瑠は絵描きキャラで、これまで自分の絵で多くの奇跡を見せて来たから、鍵穴のない扉に絵で描いて召喚扉を完成させても違和感はない。他のキャラは、未完成の扉に片っ端から強引に飛び込んで、自分の分身に襲われるという失敗を繰り返して、絵描きの才と知恵を持つ主人公だけが試練を乗り越える。その際に必要な鍵は、王さまと交信した夢のイメージと『マブシーナ姫の涙による物品生成能力』で構築し、決してご都合主義じゃない。これまでのストーリーの段取りをしっかり踏まえた必然的な解決方法だったんだな」

晶華「なるほど。キラメイジャーとしての物語をしっかり構築した上での、延長線上で『鍵穴を描く』というシーンを見せたから、ダークタワーの該当シーンを単純にパクったとは言えないわけね」

NOVA「物語の必然性なく、唐突にそういう解決法を示したのであれば、整合性のないツギハギって奴で、パクリと罵られても文句は言えないんだろうけど(もちろん、本当にパクったかどうかは作者にしか分からない)、しっかり段取りを構築した上で、自分の知ってる知識(当然、先人の示したアイデア含む)を自分の作品世界に合う形ではめ込むことまでパクリ呼ばわりされたんじゃ、クリエイターは何も勉強するな、と言っているに等しい。先人のアイデアで効果的なものは使う、ただ使う際に不自然にならないように、その必然性まで含めて、物語背景や設定、伏線としてしっかり構築する。そこまで読み込んだ上で、やはり、これはパクリだろう、と断定できるならいいが、大抵はそこまで分析せず、自分の直感、思いつきで言っているに過ぎないからな。自分で自分の暴言の是非を証明できないわけだ」

晶華「じゃあ、ダークタワーにおける鍵穴を描くことには、どんな必然があるの?」

NOVA「まず、召喚の扉が文字どおりドアの形をしている🚪ことは、2巻で示されているな。これを見て『どこでもドアかよ』とツッコミ入れたが、似たタイミングで、セイバーでも『どこでもドア』ネタを出していたから、タイムリーだなあ、と笑った」

009『召喚といえば、もっと魔法陣みたいなのを描いて、厳かなのを想像するけどな』

NOVA「だけど、机の引き出しがタイムマシンになっていたり、クローゼットを開いたら異世界に通じていたり、TVのモニターやタブレット異世界に通じていたり、ゴミ箱の中に異世界の魔物が潜んでいたり、いろいろなパターンがあるから、次元の扉がどこでもドアに似ているのも普通にありなんだな。日本人にとっては、非常に安易かつ陳腐に思わせるぐらいイメージを定着させたわけだから、ドラえもんは偉大だよ。まあ、扉を開いたら異世界、というパターンは前例もあるだろうから、独創的なアイデアとは言わないが、誰にでも通じるように定着させた功績は大きいんだろうな」

晶華「だけど、エディさんがどこでもドアを描いたから、いつでも召喚できるって安易な話じゃないのよね」

NOVA「だから、ストーンヘンジなんだな。このストーンヘンジは1巻にも似たような場所が登場していて、要するに魔力の溜まり場なんだ。だから、魔物だって出てくるし、召喚の魔法陣を描いても機能する。舞台設定としてはバッチリだ。シリーズが続くと、前の話で出てきた要素は作者が自由に使えるし、シリーズを追いかけている読者も、それを喜ぶ。『ああ、あの時の話ね。納得』と読者に思わせたら勝ちだ。作者が忘れていたり、読者が忘れていたら、そういうのは成立しないけど、熱心な読者は遡って読むからなあ。ネットだと、そこまで遡る読者は稀だけど、遡った方がいいよってシーンは、作者がリンクを張ることで、伏線だと示すのが親切ってものかな」

晶華「まあ、やり過ぎて、いちいち遡らないと分からないような、ややこしい話ばかり書くのは、読者に不親切だけどね」

NOVA「気を付けます。ともあれ、この場面で、エディがいきなり扉ではなく、魔法陣なんて描いたら不自然だろう。魔法の研究もしていない人間が、唐突に魔法陣を描いてみせたら、その知識はどこから得たんだ? って話になる。エディが扉を描いたのは簡単。自分がそういう扉から召喚され、スザンナの召喚も見ているのだから、魔力ある場所で扉を描けば召喚できるだろうって発想になるのは当たり前。そして、鍵も自作したし、最後に鍵穴が足りないことに気づいて、慌てて描く。アイデアを形にするための必然で物語を動かす。キングはその辺の段取りが非常に丁寧なんだ。だから、劇中、何で? と感じた部分には、いろいろと理由がある。だから、深読みにも耐えられる話だし、しっかり読み解ければイメージの構築の勉強にもなるんだ」

009『読み解く価値があるってことだな』

NOVA「もちろん、自分一人で読み解ける部分には限りがあるけどね。だから、解説文とかが手掛かりになるんだけど、面白いと思ったのは『Draw』という英単語の説明だな。これは『絵を描く』という意味と『何かを引き出す』というダブルミーニングがある。カードゲームをする人間は、カードを引くことをドローするって言うけど、この場合のドローは『魔力を引き出す』『召喚用のモンスターやアイテムを準備する』という意味も内包している。つまり、ドローと召喚には、そういう言葉のリンクがあるんだ」

009『つまり、キングはカードゲームをプレイしていたのか?』

NOVA「いや、この3巻が発表されたのは91年。一方で、トレーディング・カードゲームの元祖と言うべきマジック・ザ・ギャザリングが発売されたのが93年。つまり、カードのドローと召喚は、キングが小説を書いていた時期には一般化されていない。あくまで、キングが言葉で提示したのは『絵を描く行為』と『何かを引っ張ってくる行為』の言葉の一致だ。こればかりは、言語性に依存する概念なので、日本語訳だけを読んでも伝わらないということから、訳者が解説してくれたんだろうけど、とにかく現在だと『絵と召喚の言霊的リンク』がカードゲームを通じて、ますます身近になっているなあ、と感じた次第。たぶん、エディが21世紀の価値観を持っていれば、ジェイクの召喚にカードゲームの概念を持ち込んでいたかもしれない」

晶華「エディさんが召喚の扉を描き、ローランドさんが扉を抜けてジェイク少年を助けに行ったのは分かった。で、スザンナさんは何をしていたの?」

NOVA「それは……年端も行かない娘の前では言えないなあ」

晶華「え、何?」

NOVA「ストーンヘンジは魔力が溜まっていて、夢魔が出現するんだよ。エディが絵を描くのを、その夢魔が邪魔しないよう、誰かが相手しないといけない。その夢魔の相手をする役割がスザンナに回ってきたんだが、まあ、それはアダルトな方向性で……後は察しろ」

晶華「要するにエロ方面のバトルってことね」

NOVA「ちっとも萌えなかったけどな。その場面では、デッタ・ウォーカーの人格に切り替わっていたから。どうも、彼女のキャラは両脚切断という不具なところもあって、人体欠損キャラに萌えを感じる特殊性癖じゃないと厳しいんじゃないかな。俺も片手や片目なら守備範囲だけど、両足欠損に萌えを感じろと言われてもキツい。せいぜい松葉杖までだろう」

晶華「まあ、NOVAちゃんは脚フェチを公言しているもんね。脚のないジオングみたいな女の子はダメってこと?」

NOVA「幽霊ならいいんだけどな……って、俺の性癖はどうでもいいんだよ」

009『それにしても、脚が欠落しているんじゃ、どうやって旅をしているんだ?』

NOVA「車椅子を使ったり、車椅子が通れないところはパーツに分解してから、パーツを運ぶ係と、スザンナを背負う係に分かれる。そして、敵と戦う際は、スザンナも地面に這いつくばって、転がったりしながら伏兵で銃を撃ったりするみたいだけど、まあ、他の作品に見られないキャラ性をしているよな。無理に萌えキャラのイメージを付与するなら、『アルプスの少女ハイジ』のクララになるか」

009『まあ、キングの女性キャラに萌えを感じるのは難しいかもな。どちらかと言うと、狂気のキャラが多いし。だけど、セイラムズ・ロットのスーザンは萌えのツボだっから、プレ・ラーリオスのヒロイン名に採用した』

NOVA「あれは、主人公が幼少期の幽霊屋敷にトラウマを持つ作家で、ヒロインがその作家のファンの女子学生。そこに引っ越しした吸血鬼が田舎町を毒牙に掛け、スーザンもその餌食になる。最終的に主人公は、愛する娘の心臓に杭を打ち、両親を殺された少年を連れて街を脱出して終わる話だけど、もしも主人公がスーザンの誘惑に乗っていたら……という妄想は、大学時代に抱いていたわけで」

晶華「でも、今は吸血鬼の誘惑に打ち勝ったわね」

NOVA「さすがに、ここを吸血NOVAのブログにするわけにはいかなかったからな。そういうブログにしてしまったら、光属性のヒーロー記事が書きにくくなってしまうじゃないか。闇堕ち推奨ブログにしたかったら、そうする手もあるが、俺は光も闇も等しく見据える境界線の方向性がいいんだ」

009『まあ、吸血鬼父娘の陽気な作品もあるんだけどな』

 

NOVA「ゾンビに始まり、吸血鬼に終わる。まあ、上手くオチが付いたような気がする」

009『だから、ぼくのサイバ☆リオンも「クリエイト・アンデッド」の呪文を使えるよう、解禁してください』

NOVA「それとこれとは、話が別だ。フェアリーガーデン、近日プレイ再開、と言って、つづく」

 

(当記事 完)