上巻に続いて
NOVA「下巻も読み終えた」
晶華「妖精郷のリプレイは?」
NOVA「書くさ。だけど、その前にこの記事と、スパクロ記事を書きたいな、と。スパクロは10月5日が5周年で、そろそろ25章も大詰めだし、いろいろ書きたいネタもあるからなあ。妖精郷リプレイ再開は、この記事の2つ後の予定ということで」
晶華「セイバーでマッスル妖精が登場したのを見たときは、まるでマッスル太郎さんと妖精郷のコラボみたいと感じたわ」
NOVA「肉弾戦に強い妖精だと、フェアリーガーデンにも大地の上位妖精タイタンなんてのがいてな、打撃力2D+19の拳で2回攻撃し、さらに同じダメージの蹴りを浴びせ、それに加えて土の魔力撃でダメージを+23するというレベル17妖精だ。HPが上半身119で、下半身148の上、防護点21という実に恐ろしい仕様だったりする」
晶華「決して敵に回したくはないわね」
NOVA「逆に、こういう上位妖精を召喚できるようになれば、実に心強いけどな。フェアリーガーデンのラスボスと戦うためには、こういう上位妖精と契約することが必須条件なんじゃないかなあ、と思われ」
晶華「そこまで成長するのがいつになるかはともかく、今はダークタワーの感想に集中しましょう」
二重人格な女
NOVA「で、上巻で麻薬の運び屋エディ・ディーンを旅の仲間にしたガンスリンガーのローランドが、第2の仲間のヒロインを仲間にするのが下巻の話なんだが、これがまあエディの時よりも大変なんだな」
晶華「ええと、二重人格で車椅子の黒人女性よね」
NOVA「そう。表の人格はオデッタ・ホームズ。資産家の娘で、60年代アメリカの公民権運動を頑張っている上品なお嬢さまって感じだな。彼女はエディにとってのヒロインになるわけで、彼女の人格が出ているときは、ほぼメロドラマ的な展開となる。それはいい」
晶華「もう一つの人格が問題あるの?」
NOVA「問題だらけだ。裏人格の名はデッタ・ウォーカー。後書きなどで知った前情報では、万引きの常習犯で白人を憎んでいるとのことだったけど、実際に本編を読んでみると下品で醜悪で狡猾で、狂った悪魔、鬼婆、ええとジョジョ第3部に出てくるエンヤ婆さんを初めとする敵女スタンド使いを連想するといい。美人キャラが怒りで表情が崩れて、『このビチグソが〜』と醜悪に罵るのが、まだマシに思えるぐらい、読んでいて怖気立つような、人によっては吐き気を催すほどの文章表現だ」
晶華「そんなに酷いの?」
NOVA「デッタ・ウォーカーのセリフをそのまま引用すると、当ブログが18禁になるぐらい下品なエロネタを連発して、呆然としてしまうキャラだな。ジョジョ第4部の山岸由花子さんの暴走闇人格がまだ可愛いと思えるぐらい、一欠片の萌えも感じられない狂女と化して、ローランドとエディをとことん追いつめる敵役になる。とにかく、2人めの仲間は女性キャラかあ、萌え要素に期待できるかな、と思った俺の希望を木っ端微塵に破壊したヒドインがデッタ・ウォーカーだと言っておく」
晶華「だけど、NOVAちゃんって悪女萌え属性があったはずなんだけど」
NOVA「悪女にも、気品とか可愛げとか艶っぽさとか、そういう要素が伴わないと萌え対象にはならないと思うぞ。もしくは冷酷非情だけど組織に忠実だとか、ヤンデレ愛とか、美しさを伴う魔性とか、悪にも何らかの美学があって欲しいわけだが、ええと、エクソシストの映画に出てきた悪魔憑きの少女リーガンに萌えられるならデッタ・ウォーカーもいけるかもしれない」
NOVA「まあ、スティーブン・キングの描く女性キャラに萌えを期待する方が間違っていたのかなあ、と思いつつ、俺的には『セイラムズ・ロット』の吸血鬼化したスーザンの描写に萌えたりもしたわけで」
晶華「それはたぶん、NOVAちゃんが女吸血鬼に萌えがちということもあると思う。その癖、私が吸血鬼化した時には血をくれなかったし……」
NOVA「今、そのネタを持ち出すか?」
晶華「もうすぐハロウィンだしね」
NOVA「まあ、いい。とにかく、俺は吸血鬼だけでなく、狼女とか、ゾンビ女とか、いろいろと魔物娘にも萌えられるんだけど、デッタ・ウォーカーにはちっとも萌えを感じられなかった。それは何故かと考えた挙句、結局、彼女は二重人格で、悪魔的な性格にも関わらず、人外ではなくて人間なんだよな。描写がいかに魔物的で、足が事故で切断されているため、蛇のように這いずり回る動きを見せようとも、幽霊とか妖怪ではなくて、醜悪な性質の人間でしかないんだ」
晶華「ええと、足がないの?」
NOVA「ないんだよ。だから普段は車椅子で、ローランドやエディが車椅子を押していく形になる。異世界に行ったら、足が回復するのかと思ったら、そんなこともなく、このまま冒険を続けるのは大変だなあと思ったり、とにかくダークタワーは肉体的にも精神的にも障害のある者たちの冒険ストーリーということになる」
晶華「でも、アメリカのヒーロー物って、車椅子のキャラが司令塔だったりすることもよくあるみたいね」
NOVA「ああ、アクション担当とは別に、そういうハンディキャップドな枠もあるみたいで、日本だとせいぜい片足が不自由な松葉杖キャラぐらいかな。まあ、昔、時代劇で『おしどり右京』という車椅子というか乳母車的な台車に乗った侍主人公がアクションを繰り広げる作品もあるにはあったが」
晶華「盲目の座頭市さんとか、隻眼隻手の丹下左膳さんとか、時代劇だと不具な有名主役剣士も多かったみたいだけど、最近はそういう要素を前面に出すのって、放送コードに引っ掛かるのかな」
NOVA「アメリカの場合は、逆にそういうキャラを出すことを求められたりもするようで、日本とは放送事情が異なることも多いみたいだな。TVに出すことを差別だと見なして規制する文化と、逆に出さないことを差別だと見なして解放する文化。まあ、逆に無理やり出そうとして、原作改変する向きもあるようだが。ダークタワーも映画ではそういうアレンジのされ方をした」
晶華「どういうこと?」
NOVA「ローランドを演じるのが黒人俳優なんだな。一方、原作ではデッタ・ウォーカーがローランドを『白人の悪党』呼ばわりしていて、まあ明確なキャラ改変と言える(もっとも、映画にはオデッタ/デッタが登場せず、60年代の黒人差別に対する公民権運動を背景にはしていないけど)。とにかく、ダークタワー2巻は、麻薬や黒人差別など、アメリカの抱えた病み=闇を浮き彫りにしたファンタジーと見なすことも可能で、オデッタ/デッタはその差別問題を象徴したキャラであるため、単純に萌えキャラを期待した俺が間違っていたということになるわけだ」
晶華「で、そういう女性にローランドさんが憑依しちゃうわけね」
NOVA「ほんの短い間だけな。エディの時ほど長く憑依したわけじゃなくて、ローランドの世界に『万引きが露見してピンチのデッタ』を強引に引きずり込むだけで、憑依タイム終了。三重人格での内面ドラマという期待した展開はなしで、ストーリーのメインは、異世界におけるオデッタとエディのラブロマンス場面と、デッタによる『白人の悪党2人組に対する過剰な反抗作戦』の二つの軸から成る。しかも、オデッタが表に出ているシーンよりも、デッタがホラー映画の敵役モンスターみたいに振る舞っているシーンの方が多いくらいだ」
晶華「でも、ただの人間だったら、ローランドさんの敵じゃないでしょう?」
NOVA「ローランドはまたロブスターの毒が再発して(薬の効果は一時的なもので、改めて補充しないといけない)、肉体的にはほぼ役立たず。頼れるのはエディだけなんだけど、オデッタに恋愛モードに入ってしまい、デッタ人格に切り替わっても本気で戦えないという始末」
晶華「つまり、凶暴なデッタさんに対して、ローランドさんとエディさんは抵抗できないと?」
NOVA「まあ、仲間になることを期待して召喚したら、とんでもない化け物だということが判明して、いろいろとピンチになる流れだな。そこで、いろいろあって、第3の男の扉に突入するわけだよ」
第3の男
晶華「3人めの仲間って、ジェイク少年よね」
NOVA「この時点では違った。その男の名はジャック・モート。無差別殺人愛好者の公認会計士という設定だ。舞台は1977年のニューヨーク。ちょうどモートがジェイク少年を後ろからドンと突き飛ばして、交通事故死させようとしたタイミングで、ローランドが憑依して、ジェイク少年が死亡→異世界転移しないように、歴史を改変してしまうんだ」
晶華「ええと、ジェイク少年は助かった?」
NOVA「彼のその後は3巻で描かれることになる。で、ローランドはモートの体を自由に操って、ニューヨークで欲しいもの(十分な量の弾薬と、毒消しの補充分)を入手しようとする。そして、この殺人鬼の3人めをどうやって旅の仲間に引き入れたらいいのか、と葛藤しての結論。『こんな邪悪な男は仲間にはできない。タロットで予言された3人めとは、実は自分自身のことなんだ』と無理やりなご都合主義解釈をして、モートの体でやりたい放題暴れて目的達成した後は、用済みとばかりに地下鉄列車に飛び込んで自殺に追い込む」
晶華「それって酷くない?」
NOVA「酷いよな。モートの立場になってみれば、こいつは吉良吉影みたいなキャラなんだ。ただし、キラークイーンみたいなスタンド能力を持たない一般の殺人鬼。ただ、ローランドにとって許せなかったのは、ジェイク少年の殺害未遂(ローランドが妨害しなければ、実際に殺害していた)だけでなく、オデッタ/デッタの人格分裂(頭部に落とされたレンガがきっかけ)と、さらに地下鉄事故による両足切断の原因がモートによるものだということだ。
「デッタは邪悪だけど、オデッタという良心を持つので、二つの心がうまく統合すれば万事解決(しかもデッタの強さは、オデッタの優しさを補って冒険の旅を助けてくれる資質になる)と判断。一方で、モートに対しては『邪悪しかないので更生の余地なし』という判断なんだよ」
晶華「デッタさんは化け物風だけど、あくまで過剰な防衛行動(彼女の立場では、突然異世界に拉致されたことになり、悪党2人に報復しているだけ)なのに対し、モートさんは実際に人を楽しんで殺しているものね」
NOVA「で、ローランドの憑依したモートの会話のやりとりは、モートの頭の中から知識を検索しながらになるので、何だか機械風で、それに関わった警察官が後年、『ターミネーター』の映画を見て、『そうだ、あの男の行動はまさにこいつだ』と思い当たるシーンが示されて笑った。ええと、ターミネーター第一作が84年で、ダークタワー2巻の発表が87年で、モートのシーンが77年。つまり、ターミネーターのような殺人機械が77年のニューヨークで暴れていたようなイメージで、スティーブン・キングは書いているわけだな」
晶華「でも、ローランドさんの目的は殺人ではないのでしょう?」
NOVA「そうだな。単に銃砲店で弾薬を求めたり、ドラッグストアで抗生物質のケフレックスを求めただけなんだけど、ニューヨークの常識に欠けているので、いろいろと不審がられて、やむなく銃器で脅したりしながら、混乱が広がっていく流れ。それでも、ローランドは罪のないニューヨーク市民を殺害しないように心がけていて、むしろ警官たちが銃器を乱射して被害を拡大させたりするシーンがあって、こんがらがったアクション場面が展開される。この辺は、異星人に憑依された一般人が凶暴化して銃を乱射したりする『ヒドゥン』みたいな映画の雰囲気もあるな。そして、ローランドの非殺ぶりはむしろ『ターミネーター2』のイメージなんだけど、T2はこれが書かれた時点では未公開だからな」
晶華「ずいぶんと映画の引用があるのね」
NOVA「ローランド視点だと、映画引用はできないんだけど、ニューヨークの市民や警官視点だと嬉々として、そういう引用を出して来るな。そのパターンで最も笑ったのは、エディが映画『シャイニング』ネタを出してきたこと。いや、それって自分の書いた作品じゃん、キングさんって感じ。たぶん、キングがこの時点で最も感情移入しているキャラがエディじゃないかな、と。あと、小説家のキング自身が6巻では登場するらしいけど」
晶華「自分の小説で、自分が登場人物として登場するわけ」
NOVA「まあ、こういうお遊びも面白そうだ。前に紹介した童話風ファンタジー『ドラゴンの眼』の登場人物たち(トマスとデニス、魔術師フラッグ)がローランドの回想シーンでチラッと名前だけ出てきて、なるほど、これか、と感じたりも」
晶華「ところどころの引用が、分かる人には分かる小ネタってことね。で、ニューヨークの一角で大暴れしながら、ローランドさんは目的の弾薬と抗生物質を手に入れることに成功した、と」
NOVA「そして、最後の始末にモートを因果応報、地下鉄に飛び込ませて、自分はその瞬間にどこでもドアの向こうの自分の肉体に戻るわけだ。扉の向こうから、地下鉄に飛び込むモートの死の光景を突きつけられたオデッタ/デッタはそのタイミングで、精神融合が起こり、新たな3つめの人格スザンナ・ディーンとなって、晴れてエディの恋人にして旅の仲間となる。これで一応、めでたしめでたし、3巻に続く、と」
晶華「感想としては、どうだった?」
NOVA「オデッタ/デッタのシーンは、いろいろ読んでてうんざりだったけど、モートの体でローランドがニューヨークを散策する後半シーンは素直に面白かったな。スザンナについては、オデッタの優しさとデッタの強気さを持ち合わせたヒロインということで、萌え対象になるかどうかは3巻次第だが、それよりもローランドの過去編である4巻で詳細が描かれる昔の彼女スーザン・デルガドに期待している俺がいる。というか、スティーブン・キングのヒロインで一番可愛いと思っているのが『セイラムズ・ロット』のスーザン・ノートンだからな。同じ名前だけで期待したい気になるわけで」
晶華「ラーリオスのヒロイン名に採用したぐらいだしね」
NOVA「まあ、それはともかく、3巻はジェイクとの再会がテーマになりそうだけど、序盤で体長20メートルほどの巨大グマに襲われて、いきなりローランド一行がピンチになっていたりする」
晶華「体長20メートルって、ちょっとした怪獣映画じゃない」
NOVA「しかも、チラッと先の場面を見ると、そのクマの内部はメカ製らしくて、SFテクノロジーの要素が中間世界に現れるそうな」
晶華「魔動列車が出るらしいしね」
NOVA「どんな話になることやら」
(当記事 完)