Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

ダークタワー2巻(上)読了

1巻に続いて

 

NOVA「今回も読書感想記事だ」

晶華「妖精郷のリプレイは?」

NOVA「別所の『魔神ハンター』がミッション途中だからな。それが一段落すれば、こちらに切り替わる予定だ」

晶華「でも、ゲームのプレイ途中でも小説は読めるのね」

NOVA「飯とデザートは別腹って感覚だな。とりあえず、こちらでは、あと1回、スパクロ記事を書いてから、妖精郷に戻る予定だ。キーワードは異世界転移ということになる。何だか今のタイミングは、俺の周りでは異世界転移の物語がいろいろとブームになっている。ライダーも、小説も、アナログゲームも、デジタルゲームも、異世界転移だらけで、ここまでタイミングよく噛み合うのも珍しい」

晶華「では、前の続きね。確か、荒廃した異世界を旅するガンスリンガーのローランドさんが現代アメリカのニューヨークに行く話だと聞いたけど」

NOVA「とは言え、小説が発表されたのが1987年だから、厳密には30年前のアメリカだけどな。俺が高校生で、TRPGにハマって本格的に小説を書き始めた時期でもある。前年から始まったロードスリプレイの影響でD&Dの赤箱や青箱を買ったり、邦訳されたドラゴンランス小説を読んだり、それとは別に仮面ライダーBLACKを見たり、いろいろと思い出深い年だ」

晶華「その時期のアメリカって何があるの?」

NOVA「映画で俺の見たヒット作は『トップガン』と『プラトーン』『リーサル・ウェポン』かな。ただし、その年ではなく、後でTV放送された時にだけど。厳密には、『トップガン』や『プラトーン』は86年に全米公開で、日本公開が87年。当時は日本公開が本国よりも遅れるのが当たり前だった。

「他に87年の洋画だと、『悪魔の毒々モンスター』『ザ・フライ』『エルム街の悪夢2』『デッドリー・フレンド』『スタートレック4』『ZOMBIO/死霊のしたたり』『エンドア/魔空の妖精』『クリッター』『ヘルレイザー』『スタンド・バイ・ミー』『リトルショップ・オブ・ホラーズ』『アメリカン忍者』『キングソロモンの秘宝2』『プレデター』『プロジェクトA2』『ロストボーイ』『レジェンド/光と闇の伝説』『死霊のはらわた2』『フロム・ビヨンド』『レッドソニア』『バトルランナー』『ドラキュリアン』『スーパーマン4』『バタリアン2』なんかをTV放送やレンタルビデオで後年に視聴した記憶がある。

「ただし、この時期はまだ年に何本も映画を見る金も習慣もなかったので、リアルタイムに劇場で見た映画は『必殺4』だけなんだがな。千葉真一VS中村主水深作欣二監督映画を見逃しちゃ、必殺マニアとは言えまい」


必殺4テーマ曲「大殺陣」

 

晶華「だけど、87年のアメリカを語って、と言われて、洋画のタイトルをずらずら出して来るのがNOVAちゃんよね。しかも、SFとかホラーとかファンタジーばかり」

NOVA「スティーブン・キング原作だと、『スタンド・バイ・ミー』と『バトルランナー』ということになるな。87年時点だと、あまり意識していなかったけど。当時はルーカスやスピルバーグ、キャメロンなどの映画監督や、ハリソン・フォードやスタローン、シャワルツェネッガーなどの役者には興味あったけど、原作者が誰かはあまり気にしておらず、後年レンタルビデオの裏面パッケージでキングの名前を知り、一部の小説を読むようになった。やはり、俺がキングを意識するようになったのは平成初期ということだ。高校時代までは『ゴジラ』と『必殺』以外の映画を見に行く習慣はなかったわけだし」

晶華「まあ、いいわ。それで、異世界のローランドさんが87年のアメリカにやって来て、一騒動って物語ね」

NOVA「いや、俺も読む前はそういう話かな、と思っていたんだけど、実際はだいぶ違う感じだった。ローランドはほとんどニューヨークには行かなくて、意識だけを87年の現代人エディ・ディーンの肉体に飛ばすんだ。つまり、異世界転移というよりは、エディが異世界からの霊的交信を受け取り、自分が陥った逆境を乗り越える顛末が2巻の上巻で描かれる。言わば、ローランドは電王におけるモモタロスみたいな立ち位置だったんだよ」

晶華「ああ、肉体は来れずに、心だけがニューヨークに来たわけね」

NOVA「まあ、最後のクライマックスバトルのシーンだけ、ローランドもニューヨークに現れ、エディとのコンビで、マフィアと銃撃戦を行うんだけどな。それまでは肉体が死にかけた状態で、意志の力だけでエディを支援することになる。よくある異世界転移ものというよりは、憑依ものだったわけだ。ローランド視点と、エディ視点と、彼らに関わった人物の主に三つの視点で、この怪異現象を描写し、最後はエディがローランドの世界に連れて行かれて、上巻終わりという流れ」

晶華「もう少し詳しくお願い」

NOVA「ああ、頭の中で異世界からの電波を受けとったヤクの運び屋エディと、幽霊みたいなローランドの物語を語るとしよう」

 

ローランドの窮状

 

NOVA「まず、1巻のラストで、ジェイク少年を犠牲にしながらローランドはついに黒衣の男に追いつくんだけど、相手の幻術に翻弄されながら、ローランドの単純な世界観では理解し難い宇宙の真実を強引に見せられて、半ば発狂状態になる。まあ、現代人の視点では宇宙創世のビッグバンとか、原子や素粒子などのミクロの世界を映像で描写されても(実際の描写では文章だけど)、普通に理解できるんだろうけど、中世の騎士程度の認識しか持たないローランドには訳の分からない戯言を無理やり脳裏に焼きつけられるようなものだからな」

晶華「黒衣の男さんは、ローランドさんにそういう真実を突きつけて、何がしたいのかしら?」

NOVA「さあ。本人は、自分の目的のためにローランドを導いていると言っていたが、1巻では散々曖昧な情報だけ残した挙げ句、ミイラ状の遺体を残して消え去ったな」

晶華「え? 死んじゃったの?」

NOVA「死んだのか、そのように見せかけただけなのかは、現時点では分からない。なお、2巻の後書きによれば、黒衣の男との対峙の間に『300年の時が過ぎ去った』ということになっているらしい」

晶華「何それ? 浦島太郎みたいなもの?」

NOVA「肉体年齢36歳だけど、実年齢336歳のローランドが世界に一人取り残され、それでも世界の真実と救済の手掛かりとなる暗黒の塔ダークタワー)の探索を続ける決意を募らせるところで1巻は終了。だけど2巻の冒頭でロブスター🦞のような魔物に襲われ、窮地に陥るんだ」

ダークタワー II 運命の三人 上 (角川文庫)

晶華「表紙を見ると、ハサミを持った甲殻類がいっぱいね」

NOVA「そう。おまけにローランドが意識を取り戻したときは波打ち際で、荒野の旅の果てに初めて海というものを見た感動に震えるのも束の間、頼りとすべき銃の弾薬がずぶ濡れになってしまい、その多くが不発弾になってしまっていることに気づく。そういうハンデを抱えた状態で、ロブスターの襲撃にあって、鋭利なハサミで右手の人差し指と中指、そして右足の親指を切断されてしまうという憂き目に」

晶華「それって、治癒呪文か何かで治せないの?」

NOVA「そんな便利なものは、ローランドのいる〈中間世界(ミッドワールド)〉では確認されていない。ローランドは元々、二丁拳銃を使うので、左手のみのガンスリンガーとして今後はやって行かないといけないことを覚悟した。だけど、とにかく銃弾が不発だったりして信用ならないので、自分を襲ったロブスターに対しては、拾った小岩で殴りつけて何とか撃退した。でも、ロブスターは群れがいるので、こいつは勝てないと踏んで、足を引きずり逃げ出すのが序盤の展開」

晶華「右手が使えない。銃弾の多くは不発。今後の冒険が思いやられるわ」

NOVA「おまけにロブスターのハサミには毒があったようで、ローランドは心身ふらふらになって死にそうになりながら、当面のミッション『毒消しを探せ』を果たさないといけなくなるわけだ。そんな過酷なミッションを遂行する助けとなるのが、世界をつなぐ『どこでもドア』だったりする」

晶華「え? 本当にどこでもドア? ブックゲートとか、転移門とか、そういう用語じゃなくて?」

NOVA「少なくとも、文章で描写される外見は、どこでもドアだ。浜辺に突然、脈絡もなく出現したドアに、ローランドも幻でも見ているのか、という気になったが、運命に導かれて、そっと開けてみると、この後の相棒となるエディの意識につながってしまうわけだな。とりあえず、ドアを使って異世界(87年のアメリカ)を覗き込むことになる」

晶華「それにしても、異世界へ行くギミックがどこでもドアというのは、何だか安易というか……」

NOVA「いや、俺も世界観の雰囲気台無しだろうと思ったんだけど、仮面ライダーセイバーでもタイミングよく、どこでもドアネタをやっていたもので、俺的に87年と2020年がつながってしまった感覚で笑えたんだ。たまたま偶然、自分が見ているTV番組と、読んでいる小説で似たようなネタが使われていると、その偶然に拍手したくなる」

晶華「おまけに魔神ハンターや私たちが巨大ガニと戦った直後に、ガンスリンガーさんがロブスターに襲われているというのもタイムリーよね」

NOVA「ピンチなところを別人格に切り替わって……という物語展開も、タイムリーな偶然に感じたし、最近配信されたシュシュトリアンのウルトラマン回で『バルタン星人が人に食われるロブスターの恨みを晴らすために、怪獣を暴れさせた』とか言ってるのを見て、ここでもつながっているのかよ、とますます笑えた」

晶華「どこでもドアと、ロブスターと、人格の切り替わりが、このタイミングのツボってことなのね」

NOVA「ああ、こういう偶然のリンクがうまくハマると、他でもない今のタイミングで『ダークタワー』シリーズを読んでいることに良き運命を感じるわけだ。違う時期に読んでいても、ここまで上手くネタがつながるとは思えん」

晶華「まあ、NOVAちゃんだったら、別につながるネタを見つけ出して楽しむとは思うけど」

NOVA「で、エディの話に移るわけだな」

 

エディの窮地

 

NOVA「ローランドが意識をつないだエディ・ディーンが、彼の旅の道連れ1号になるわけだが(ジェイク少年は後に改めて3号になる予定)、兄ヘンリーの影響でヤク中になり、マフィアの下働きとしてヤクの運び屋として飛行機に乗っている場面からスタートする。

「ローランドはエディ視点で、見慣れないアメリカの風物をじっくり観察し、『以前にジェイク少年が語ってくれて、信じようとしなかった異世界というものがこれか』と初めて納得した。ローランドは頑なな現実主義者で、自分の目で見た物しか信じないタイプなんだな」

晶華「つまり、NOVAちゃんとは真逆なタイプね」

NOVA「俺は現実よりも空想の世界に重きを置くタイプだからな(きっぱり)。というか、現実を言葉や理屈で概念化して初めて受け入れるタイプと言うべきか。理屈が通れば納得するし、理屈で説明できない物事には懐疑的にもなる。ただ、その理屈が科学的とか合理的とは限らず、ファンタジー世界やホラー世界の幻想文学の理屈に依拠しているわけで、その範囲での辻褄合わせに腐心するタイプだ」

晶華「じゃあ、NOVAちゃんは幽霊を信じたりするの?」

NOVA「精霊は信じるけど、人間の魂が幽霊になるというのは、あまり信じていない。まあ、幽霊というのは魂そのものではなく、魂の残滓、残留思念が具象精霊化したものとか、細かい理屈は考えているが、自分の中では曖昧に処理しておきたい部分である。幽霊の真実はこうだ、と決めつけてしまうと他の説を受け入れ難くなるし、作品世界のイメージを広げるには柔軟に受け止めたいというのが本音だ。あと、魂の善性と悪性に分裂して、そのうち悪性が悪霊と化するという設定は、当ブログ創作の公式設定と考えてくれていい」

晶華「ああ、NOVAバースでは、魂って簡単に分裂しちゃうのね」

NOVA「俺自身の主観的世界観がそうなっているからな。だから、ローランドとエディの二視点の物語が、非常にツボにハマったわけだ。まあ、ローランドも、エディも、どちらも俺好みの感情移入しやすいキャラとは言えないけれど。何しろ、想像力の欠如したガンスリンガーと、兄に依存したヤクの売人(チンピラの若者)というコンビだからなあ」

晶華「とにかく、肉体的に死にかけているローランドさんが、エディさんの中に入るわけね」

NOVA「この辺は、ローランドが慎重で、エディの体に入って何ができるのかを時間を掛けて、じっくり丁寧に見極めようとするわけだ。そしてエディは緑色の目だけど、ローランドに意識が切り替わると青い目になったりする」

晶華「それは確かに電王さんっぽいわね」

NOVA「かたやエディの方は最初、意識のない自分自身の状態を『ヤクのやり過ぎで、おかしくなったのか? いや、まさか……』と動揺したりする。そして、ローランドの方はエディの肉体に憑依した後、エディの知識を探って自分の知識とすり合わせて、『この世界の毒消しを手に入れたいが、この世界の品物を自分の世界に持ち込めるのか?』など、いろいろ実験を試みるわけだ。その結果、『エディの現実世界→ローランドの中間世界への物品持ち込み』は可能だが、逆は無理ということが判明する」

晶華「ああ、だからローランドさんが体ごとアメリカへ行くのは無理なのね」

NOVA「最終的には、リンク先のエディが同意すれば可能だ、ということが分かったんだけどな。そこまで分かる前に、ずいぶんと時間が掛かるわけで。そしてエディ(ローランド)の不審な行動が、飛行機内のスチュワーデスの目に留まり、だんだん『エディがヤクの運び屋だ』ということが判明して、エディが逮捕される可能性が出てきた。エディの自由行動が封じられると、ローランドの死活問題になるので、やむなくローランドはエディに自分の存在を明かして、助力を申し出るんだが……」

晶華「普通は頭の中の声なんて、簡単には信じないわよね。NOVAちゃんならともかく……」

NOVA「俺だったら『小説のネタとして面白いから、信じてみる』タイプだからな。だけど、エディにとってみれば、『ヤクのやり過ぎによる幻聴か?』という反応だし。だけど、ローランドの鋭い目が『スチュワーデスたちの警戒している態度』をエディに納得させ、『運んでいるヤクを魔法のように隠せる場所を提供できる』ことを条件に、税関職員の目を潜り抜けるためには謎の幽霊の声を信用するしかないという結論になる」

晶華「ローランドさんの思惑と、エディさんの思惑が最初はうまく意思疎通できなかったのが、だんだん同意するようになる流れね」

NOVA「それと、エディを疑うスチュワーデスたちの視点が交錯して、麻薬密輸を巡るサスペンス場面となる。なお、この時点で俺が一番感情移入したのがスチュワーデスのジェーン・ドーニングだ。というのも、エディは悪党の麻薬密輸犯、ローランドは得体の知れない異世界の幽霊で、一番まともな人間が彼女。で、彼女がエディのことを格好いい乗客という目で見ていたら、不審な言動に接して『もしかするとハイジャックを企んでいる?』と疑心暗鬼に駆られて、やがて密輸犯ということに気づく流れがじっくり描かれていく。

「この対峙する二つの陣営の思惑が交互に描かれて、サスペンスを盛り上げる心理描写が面白いと思った。そして、主役陣営が悪党で、一般人の方が法的には正義という状況もピカレスクロマンな魅力があるな。キング作品では、超常現象に接した一般人の反応が丁寧に描かれていくのが小説として面白いと考える」

晶華「エディさんも小悪党だけど、特殊能力を持たない一般人で、ローランドさんだけが『異世界に通じるドア』という魔法的な芸当ができるわけね」

NOVA「だけど、ローランドもドアの能力を探り探りだし、何よりも肉体的に死にかけている。一方、エディは脳内で聞こえる謎の声に翻弄されながら、ローランドとのチグハグなやり取りを展開しつつ、差し迫った逮捕という危機を乗り越えるために協力を決意。やがて一苦労して、エディの隠し持つヤクをローランドの世界に持ち込むことで、一時的に証拠隠滅に成功したわけだ。その後、エディは税関職員に一時拘束されて事情聴取を受けるも、証拠不十分なために、うまくシラを切り通すことに成功。そりゃ、普通は『機内の麻薬が異世界に隠されている』とは思わないな」

晶華「どこでもドアを使った証拠隠滅ね」

NOVA「どこでもドアは最初、ローランドにしか見えないが、ローランドに教えてもらうことでエディにも認知できるようになる。ただし、他の人間には見えないので、エディはローランドという守護神と、物品の隠匿能力を備えるようになった。なお、ドアはローランドやエディにリンクしているので、二人の移動に合わせて、付いて来るようになっている」

晶華「それは便利ね」

NOVA「この時点で、俺はJOJOの第5部を連想したんだ。エディがスタンド能力に目覚めて、ローランドが一種のスタンドみたいなもの(そばに立つ幽霊)。おまけに、ローランドは以前に黒衣の男のタロット占いで、将来、仲間になる三人の予言を聞いていたり、何となくJOJOの要素を感じたりもした(じっさい、JOJOの原作者の荒木さんは、自分の作品がキングの影響を強く受けていることを公言している)。

「とにかく、エディがローランドの観察能力に助けられて、周囲の危険を察知したりする中で、世界を違った目で見られるようになる覚醒シーンが、キング得意の超能力ドラマを読んでいる感じで楽しめた。ただし、心理劇メインで、ここまではアクションがない。それがダイナミックな展開になるのは、ヤクを引き渡す相手のマフィアが登場してからだ」

 

マフィア相手の大立ち回りの果てに

 

NOVA「麻薬取締官の追及を逃れ、応急治療のためにアスピリンを入手したエディのおかげで、ローランドも一時的に回復するわけだが、その後でヤクの密輸を依頼したマフィアがエディに接触してくる。エディの兄のヘンリーを人質にとったマフィアは、ヤクの行方をエディに尋ねてくる。エディは取締官に拘束されていたから、どういうことなのか状況を確認する意図も含めてだが、最悪な場合、取り引きに失敗した件で死んでもらうことも匂わせてな」

晶華「エディさんはマフィアを裏切るつもりはなかったのでしょ?」

NOVA「ああ、兄を人質に取られているし、相手の要求どおり取り引きには応じようとしていたな。だけど取締官の目を逃れて、どこにヤクを隠し持っているのかという秘密を執拗に聞き出そうとされたことで、ローランドのことを秘密にしておきたいエディとの間で、疑念と緊張感が湧き上がって来る。一方で、人質に取られたヘンリーが運悪く薬物中毒の果てのショック死という事態になって、エディとマフィアの間に抗争が勃発するんだ。

「ヤクの隠し場所を突き止めようとしたボスの用心棒が、異世界のローランドに引きずり込まれて銃撃戦の末に死亡したところから、バトル開始。兄の仇を討ちたいエディがローランドから銃を受け取り、ローランドもエディを助けるためにドアを抜けて現代アメリカへ出現。たった2人で、マフィアのメンバー相手に派手な銃撃戦を展開。ショットガンやサブマシンガンも含む近代火器の前に、旧式リボルバー1丁ずつで立ち向かうガンスリンガーと、その予備軍の活劇模様が丁寧に描かれたあと、卓越した技量と幸運でマフィアは全滅。

「このシーンで、キングの銃器に関する解説が興味深いんだな。相手がショットガンを撃ったシーンで、『男がもっと至近距離で発砲していたら、弾は散ることもなく、エディの身体を粉々にしていただろう』とか、もう一人、サブマシンガンを持ったアクション映画マニアが映画のマネをしてぶっ放したら、味方も巻き込んで撃ち殺したりとか、その後、『映画の中では機銃掃射で大勢が倒されるけど、現実ではそんなことは滅多にない。最初の4、5発撃った後は、反動で銃口が跳ね上がり、射手は体勢を崩すことになる。要するに、アホか映画スターでもなければ機銃掃射などしない』というような文章で、強い武器は持っていても使い方を熟知していない素人構成員のために、マフィアが自滅的に倒されていく様子が描かれているわけだな」

晶華「アクション映画でよくあるシーンに対して、キングさんの痛烈な皮肉ってことね」

NOVA「キング自身、映画の原作をいっぱい書いているんだけどな。他に『映画の見過ぎで現実と頭の中のシナリオとの区別がつかなくなった男の狂気の叫び声』という表現が、何とも自虐的で笑った。ついでに言うと、エディの薬物依存症という設定も、80年代半ばのキング自身がそういう状態だったらしいし。87年にキングが書いた作品は、ファンタジー小説『ドラゴンの眼』とホラーの『ミザリー』や『トミーノッカーズ』。『ドラゴンの眼』がダークタワーと同じ中間世界が舞台ということで少し気になっているが、文庫版が出ていないのが残念」

NOVA「とりあえず、『ドラゴンの眼』の登場人物もダークタワーに登場するとのことなので、それを読んで気になるようなら、こちらにも手を出そうかなと思いつつ。まずはダークタワーを完全制覇するだけでも大変そうだが」

晶華「そうよ。まだ2巻の上巻を読んだだけで、他に目移りしちゃうようだと先が思いやられるわ」

NOVA「話を戻すと、マフィアを壊滅させて、兄の死を嘆き悲しむエディ。一方、マフィアのアジトでローランドのための毒消し治療薬が見つかって、ローランドの目的はひとまず達成。ローランドは、エディを自分の探索の旅に選ばれた三人のうちの一人だと語り、兄のためという生きる目的を失ったエディも少しの逡巡の後、『自分を必要とする誰かのために動くのは悪くない』との気持ちで、ローランドに従うことに。どっちにしても、マフィアのアジトで銃撃戦があったことで、警察が駆けつけてきたためにエディは逃げ延びないといけない。だったら、ローランドの異世界に逃げるしかない、と考えるわけだ」

晶華「それで下巻は、他の2人の物語になるわけね」

NOVA「2人めは、二重人格の黒人女性ということで、そんなややこしい設定のキャラにローランドがどう接触するのかということが、まず楽しみだな。元々、二重人格というところに、ローランドまで介入すると三重人格になってしまうとか。しかも、彼女は両足が動かない車椅子生活なので、普通に考えたら冒険の旅に行くことなど難しいはず。それとも、ローランドの世界に来たら、足が回復するのだろうか、とかいろいろ気にしつつ。なお、同じニューヨークでもエディの80年代とは異なる黒人公民権運動の真っ最中の60年代アメリカで、ケネディ大統領が暗殺された年の話らしい」

晶華「ああ、時空も越えちゃうんだ」

NOVA「時空魔術師を名乗る者としては、ワクワクする話になりそうだ」

(当記事 完)