Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

ダークタワー1巻読了

久々の読書感想

 

NOVA「TRPG関連以外の小説感想は久しぶりだなあ」

晶華「妖精郷の冒険は休憩して、読書タイムね」

NOVA「とは言え、作者視点ではミストグレイヴの第1部を始めた段階だけどな。向こうで1記事書いたから、こちらでも1記事書きたくなったローテーションって感じだ」

晶華「で、NOVAちゃんは現在、スティーブン・キングさんの『ダークタワー』シリーズを読み始めた頃合いね」 

NOVA「ああ。1巻を読み終わって2巻めに入ったので、ここまでの感想を書いておこうと思った」

晶華「先週に半分ほど読んで、あまり面白くないという感想だったけど」

NOVA「いや、キングの小説は長編向きというか、まずはアメリカの日常の風景を丁寧に描写して、そこから非日常がじわじわ侵食していく話が人気作なので、事件が起こるまでの過程を味わうのが醍醐味なんだ。逆に言えば、感想記事を書く際も、そのじわじわとした恐怖が牙を剥くタイミングまで読んでないと、十分味わえたとは言えないだろう。実際、本の分厚さの感覚で半分ぐらいまで読んだ気になっていたけど、後からよくページ数を計算してみると3分の1程度だったし、1巻は全5話分の短編連作ストーリーなので、その1話を読んだだけの感想だったんだな」

晶華「で、1話だけだと面白くない、と」

NOVA「実は、1巻の前書きの方が興味深く読めた。『指輪物語』のトールキンに対するキングの想いとか、自分の若い日の思い出話とか、ガンスリンガーの物語の最初の構想は19歳の時ぐらいだったとか、そんな作者の述懐みたいなものがな。俺自身、キングの作品に初めて接した年齢が19歳ぐらいだったと思うし、90年代初頭にファンタジーから派生してモダンホラー作品をそれなりに読んだ時期があった(ファンタジーと違って、すぐに飽きて長続きしなかったけど)。

「キングにとっての『ダークタワー』シリーズは、1974年に『キャリー』で小説家デビューする前の学生時代(1966年ごろ)に着想を得て、70年代から執筆を始めて、雑誌掲載での発表を経て、1巻めの『ガンスリンガー』が82年に単行本として出版。日本語での翻訳版が出たのが92年なんだけど、その10年の間に日本におけるファンタジー観が大きく変化したんだよな。D&Dを始めとするTRPGや、ドラクエ・FFで大ブームとなるコンピューターRPGが西洋中世風ファンタジーのイメージを定着させ、そこから発展する流れもあるんだけど、キングの『ガンスリンガー』はそれ以前に発表されているわけだ。『荒野をさすらう拳銃使いが、謎の魔法使いを追う旅の途中で、立ち寄った街の怪異譚に巻き込まれ、結局、住民みんなを虐殺して命からがら脱出する』という、西部劇+ゾンビ映画的な短編第一話。これで終われば、まあ、安っぽいB級ホラー小説って感じだな」

晶華「TRPGのシナリオでよくありそうじゃない?」

NOVA「街一つ滅ぼすのはさすがに稀だと思うけど、怪異の出る館とかをダンジョンにして、そこで出現したモンスターを虐殺して回るのは定番だよな。ただ、面白くなるのは二話からで、今回はそれを踏まえた1巻全体の感想だ」

 

多元宇宙の幕開け

 

NOVA「二話めでガンスリンガーことローランド・デスチェインは、ジェイク・チェンバースという少年と出会う。このジェイクはニューヨーク出身だったのが、黒衣の男の目論見で交通事故に遭い、そしてガンスリンガーの破滅に瀕した荒野世界に転移してしまう」

晶華「ああ、よくある異世界転移ものね」

NOVA「これが書かれたのは82年以前だぞ。いや、『ダークタワー』シリーズが多元世界の物語だというのは知っていたんだが、それがはっきりするのはニューヨークが舞台の2巻からだと思っていたんだ。だけど、その前にジェイクを通じて多元世界構想が示されたために、突然、物語が面白くなった感じだな。

「ただし、ジェイクの記憶は薄ぼんやりしているし、ローランドも彼の話を聞いて、ただの妄想だろうと片付けるし(あるいは黒衣の男の手の込んだ罠だとか)、あくまで1巻の段階では、ジェイクの世界は伏線でしかないわけだ」

晶華「とにかく、旅の同行者が増えて、孤独な一人旅から賑やかなバディ物になったわけ?」

NOVA「いや。ローランドは30過ぎのおじさんだし、ジェイクは11歳の少年で、対等のパートナーというわけじゃない。どちらかと言えば、足手まといの少年だけど荒野で見殺しにはできないし、彼と接することで、ローランドが自分の少年時代を回顧する契機となる感じだな。黒衣の男の陰謀で、いろいろな物を失って追跡者、復讐者になるローランドの成熟過程が回想シーンで展開される。

「ローランドが旅する荒野は、世界が破滅に瀕しており、多くの生物がミュータントと化したり、妖魔と呼ばれる魔物が出没するポスト・アポカリプス的な様相を呈している。一方で、変転前のローランドが幼少〜青年期を過ごした時代は、緑がいっぱいで、いわゆる中世騎士道ファンタジーの世界観。騎士道と違うのは、武器が拳銃のガンスリンガーの一族というぐらいで、『銃と魔法のファンタジー』というイメージだな。俺的には、ローランドの回想シーンの方が面白く感じられた。

「一応、ローランドの世界は、『古代魔法の時代』と『テクノロジーの時代』が過去にあって、青年期の世界観が『ソード・ワールドラクシア』に近い感じだ。いや、ラクシアの方が後なので、82年に魔法とテクノロジーの両方を背景に持つダークタワーは結構斬新だったと言えよう。異世界転移と、妖精と魔法とメカを交えた『聖戦士ダンバイン』が83年だし」

晶華「つまり、二話めから回想シーンを主体に、NOVAちゃんの馴染みのある要素がいろいろ出てきて、世界観が膨らんだわけね」

NOVA「回想シーンは面白いんだが、現代編はつまらないな。ジェイクにあれこれ話をしながら、ジェイクがローランドを保護者として慕い、ローランドもジェイクに対して愛情を抱くようになる」

晶華「え? 愛情って、そっちの関係?」

NOVA「同性愛的な関係という意味では、イエスともノーとも言えるな。キングの小説では、女性は魔物であったり、少年が大人になる通過儀礼的に描かれたりすることが多くて、一方で少年に対する純粋さへの憧れを描写した話は多い。まあ、これは作家の作風なので、そこに男女差別云々を言っても仕方ないんだけど、キングは女性キャラを闇堕ち、魔性、男を誘い込む狂気の象徴として描き、それに翻弄され葛藤する主人公が、光に返り咲くために、勇敢で純粋な少年の善性をモチーフにすることが多々見られる。

「もちろん、俺はキングの作品のマニアではないし、ファンを名乗るほど沢山読んでいるわけでもないので、いくつかの映画や原作からの印象論でしかないが、デビュー作の『キャリー』はいじめられた超能力少女が超能力を暴走させてクライマックスの大虐殺をもたらす話だし、『クリスティーン』は女性人格を持った自動車が魔性となって少年に取り憑いて暴走する話だし、もちろん探せば例外はいろいろあるんだろうけど、キングの作品で無垢な聖女的な存在がそのままハッピーエンドを迎えるケースは知らないな。無垢な少年が救われる話はいろいろ思いつくけど。

「キングについては、学生時代にホラー映画にいろいろハマっていた時期にそれなりに見たぐらいで、近年の作品傾向は知らないし(比較的近年だと、TVドラマの『アンダー・ザ・ドーム』を何話か見て、自分には合わないなと感じて以来)、作品執筆時期によって作家の価値観も多かれ少なかれ変遷していくものだと思うけど、まあ、その中で自分が何を汲みとったかを大事にしたいし、その上で俺より詳しい研究者の意見も参考にしたいわけだよ」

晶華「とにかく、NOVAちゃんにとって、キングの作品は主人公が少年愛を抱きがちって印象なのね」

NOVA「だって、実際にローランドがジェイクに対して『一目惚れした』とか、やたらと美化して描写するシーンがあって、そこは読んでて閉口するわけだよ。まあ、後で、ローランドはジェイクを見捨てることを予言されて、葛藤を深めるために誇張された感情と見なすこともできるけど。こういうキング作品の男色っぽい表現が、女性ファンを惹きつける要素かもしれないとか、逆に魔性の女性がいいと感じるのかもしれない。これについては、1巻には女性のメインキャラが登場しないので、後日また掘り下げることになるとは思う」

 

晶華「とにかく、NOVAちゃんは多元宇宙の世界観を面白く読む一方で、現代編の人間関係については『キングのよくある類型』程度にしか感じなかった、と」

NOVA「まあ、キャラにはあまり感情移入していないなあ。キングの小説は、狂気の描写が秀逸だと思っているけど、男の狂気って萌えないんだよな。ホラー小説としては、女性キャラの怯えとか熱情とか、陥りつつある狂気とか破滅の心理描写が自分的にはゾクゾクするシーンだったりして、そこは1巻にはほとんどないので、だったら感情移入するところがないなあ、と」

晶華「ローランドさんには感情移入しないの?」

NOVA「こいつはクールに見えて、割と衝動的に振る舞いがちで、だけど、いろいろ翻弄されるだけで主体性を感じないからなあ。少なくとも、1巻では感情移入対象にはならなかった。むしろ、最後の対決シーンで登場する黒衣の男ウォルターに対して、ゲームマスター視点での感情移入をしたぐらいだ。

「とにかく、ローランドはジェイクと旅を重ね、断片的な思い出話から自分の来し方を語った挙句、黒衣の男の追跡のために、谷底に落ちるジェイクを見殺しにしてしまった。後の巻でローランドは過去のニューヨークで異世界転移する前のジェイクを助けて、ジェイクが死なない時間軸を構築するらしいんだけど、一度は運命に従い、ジェイクを見捨てたローランド。そして、対峙した黒衣の男に世界の真実をいろいろ幻想的に突きつけられ、よく分からないまま見失った状態で、2巻に続いた感じだな。多くの犠牲を重ねて、完全に翻弄されて1巻は終わり、と。

「で、82年に1巻が出版された後、続きの2巻めが出たのは87年。2巻の最初はロブスター🦞みたいな魔物に襲われ、右手の人差し指と中指をハサミでチョッキンされてしまった痛々しいローランドが時空転移に巻き込まれて、ニューヨークに来て、旅の仲間と邂逅する話らしい。ヤク中の男と、二重人格の黒人女性と、そして異世界転移する前のジェイクと出会う中で、ローランドの旅はどういう展開を迎えるか、に注目して読みたい。何よりも、異世界人がニューヨークでどういう反応を示すかを楽しみたいな、と」

(当記事 完)