Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

ダークタワー7巻の第1部感想

最終巻は各部ごとに追跡宣言

 

NOVA「さて、ダークタワーの最終巻だ」

 

晶華「あれ? もう読み終わったの?」

NOVA「いや、第1部だけ読み終えたから、そこまでの感想を消化しておこうと思ってな」

翔花「全部で何部あるの?」

NOVA「5部構成で、上下合わせて1400ページだな。よくあるラノベが300ページほどだから、ラノベ5冊分ぐらい。つまり、一気に感想書くよりも、5つに分ける方が味わい深く感想記事が書けるだろうと考えた次第」

晶華「ふ〜ん、最終巻だから、じっくり追跡しようってことね」

NOVA「それに、6巻の終わり方が、クリフハンガー的だったからな。クライマックス戦闘がいよいよ始まる! ってところで続いたわけだ。感想記事的にも、中途半端な気分が否めないし、どうも1部ごとに1人の主要キャラが散って行くようだ。1部でキャラハン神父が、2部でエディが死んで、3部で……と流れる。やはり、ここは一人一人のキャラの散りざまを語りたいじゃないか。最後まで読んで、誰々が死んで、最後は新たな世界に転生しました……って仮面ライダー龍騎みたいな多元宇宙エンドを一度にまとめて語っても、つまらんわけで」

翔花「NOVAちゃん、先にネタバレするのも興醒めよ」

NOVA「あっ」

晶華「はい。主要キャラがみんな死んで、再生した新世界で平和な新生活が始まる形で一応のハッピーエンディング。要するに、仮面ライダージオウさんね」

翔花「崩壊していく世界を再生させるために戦う主人公。その中で散っていく仲間たち。だけど、主人公が勝利を収めることで、新たな世界が始まり、散って行った仲間たちも転生して、平和な日常を過ごしているシーンや、新たな再会シーンが描かれて、余韻を残して幕ってことね」

晶華「あれ? どうしてだろう? 初めて会う人なのに、何だか懐かしい気がする。それに、どうして泣いているんだろう? 悲しみ、それとも喜び? よく分からないけど、この出会いに祝福を感じる! ……とか、そんな感じね」

翔花「はい、ダークタワー読了おめでとう。Shiny NOVA先生の次の感想記事をお楽しみに♪」

 

再開と再会

 

NOVA「こら、勝手に終わらせるな。まだ、全部読み終えてねえ」

翔花「読んでないのに、どうして最後がどうなるか分かるのよ?」

NOVA「そりゃあ、そういう読み方をしているからだよ。最初から順に丁寧に読むのが読書の王道だが、忙しい人間の読書術は飛ばし読みとか、後書き解説を先に読むとか、目次を見て、面白そうなシーンに当たりを付けて、そこだけ読むとか、最後の方を読んで『へえ、このキャラは死んだのか。どこで死んだのかな〜』とか、読みたいシーンを探し当てて読むとか、そういうことをした後で、『よし、面白そうだから、初めからじっくり感情移入して読むか』と考える」

晶華「面白そうじゃなかったら?」

NOVA「そりゃあ、つまらないと思ったら読みたくないな。これは投稿作品にもよくあるケースだが、作品を送る際に『あらすじ』を付けるだろう? あらすじの段階でつまらない小説が忙しいプロの先生に読んでもらえるはずがないから、『自分の作品の面白いエッセンスを手短かに分かりやすく書けるセンス』というのはプロになるのに必須だろう。もちろん、『読んでもらえれば分かる』と言いたい気持ちも分かるが、『自分の魅力、あるいは自分の作品の魅力はこれだ』と自覚していない作家志望者はダメだな」

翔花「じゃあ、偉そうなことを言ってるNOVAちゃんに例を見せてもらいましょう」

NOVA「例か。だったら、俺が花粉症ガールをプロデュースするとしよう。すると、こんな感じかな」

 

 彼女の名前は粉杉翔花。花粉症ガールだ。

 想像力過多な魔法好き、ファンタジー好きの俺の心の中からPONと飛び出してきた、花粉症の精霊少女だ。

 よくあるただの妄想と思っていたのだけど、彼女の出現から俺の日常世界が変になる。ケイソンという悪霊殺人鬼が出現したり、宇宙から来た不定型生物と遭遇したり、何だか異世界からいろいろな怪奇現象が発生して、大変なんですけど?

 え? 花粉症ガールは悪霊退治が使命だと? 協力してくれるなら、俺にハッピーをくれるだと? よし、ハッピーのためなら喜んで契約するぜ。

 こうして、精霊娘とのドタバタ悪霊バトルな日常生活が始まった。

 ハピネス・パワー・フルチャージ! 娘と融合合体して、華麗に悪霊退治を頑張る健気な作家志望だったおじさんの行き当たりばったりトンデモ妄想物語が今、開幕!

 

NOVA「とりあえず、これを叩き台にして、企画書を作れそうだな」

晶華「ボツね」

NOVA「何でだよ?」

晶華「私のことが書いていないじゃない」

NOVA「お前は、2巻に登場するんだよ」

晶華「最初から双子の姉妹で登場させなさいよ」

NOVA「いやあ、最初から双子設定なんて考えてなくて、行き当たりばったりで話を進めたからなあ。もし、花粉症ガールの企画を作り直すなら、お前は悪霊の女王としてキャラ付けするわ」

晶華「どうしてよ?」

NOVA「その方が面白くなりそうだから。光の力を持った翔花と、陰の力を持った晶華。2人は鏡合わせの存在だけど、戦いを通じて心を通わせて、双子の姉妹になるのが第1巻。そして、2巻は晶華メインで、書いてみるといいんじゃないかなあ。最近読んだ本だと、こんな感じに」

NOVA「今回、読んだのは3冊めの『四元館の殺人』だけど、AIを絡めた推理小説として面白いなあ、と思ったんだ」

翔花「って、NOVAちゃん? スティーヴン・キングさんのダークタワーの感想記事なのに、どうして関係ない本を出してくるのよ?」

NOVA「……行き当たりばったりで話を進めているからなあ」

晶華「NOVAちゃんの魅力であり、欠点はこれね。行き当たりばったりで、構成力があからさまに欠如してるじゃない?」

NOVA「自分で書いて、自分でサプライズがしばしばだからな。まあ、これだけ話が飛ぶようになったのは、ネット活動、とりわけブログ書きを始めてからだな。90年代はここまで暴走することはなく手堅い作風だったし、手堅すぎてつまらないと言われたこともあるし、今の頭で90年代に戻ったら、と夢想したこともあるが、そういう夢想を小説に書けばいいじゃないか、と思うし、プロットだけは書いてみたけど、どうも飛躍しない。何故だと思う?」

晶華「そんなの、私が知るか」

NOVA「過去の人生のやり直しってネタが、俺にはハッピーを築くアイデアには思えないんだな。一時的には上手く行っても、時空の修復作用によって必ず歪みを生じて、不幸を招くという『時間移動に関するペシミスティックな価値観』がこびり付いているから、それでハッピーな物語は自分で書いていても嘘っぽくなってしまう。嘘を書いていると思うと、話に乗れないんだな。作者が乗れない話が、面白いはずがないと思う」

翔花「つまり、NOVAちゃんは時空魔術師を自称しているのに、時間移動については悲観的だと」

NOVA「時間移動はワクワクするけど、それで過去を変えたらハッピーなのか、という命題に対して悲観的という立場だな。まあ、他の作家がそれで面白い話を書くことに否定的ではなくて、あくまで自分の書くもの、考えるものとして、そういう話は受け付けないというか、過去を改編するよりも、一つの事実として大切に扱いたいという気持ち。それがハッピーであれ、悲劇であれな」

晶華「叶わない夢をもう一度、取り戻そうって気持ちにはならない?」

NOVA「だったら、今、できることを一生懸命にして、賢く生きることを模索すべきだし、それができていないのだったら、過去に戻っても大して変わらないんじゃないか、という立場だな。自分の本質は変わらないんだから」

 

翔花「それにしても、スティーヴン・キングさんの話にはつながらないわよね」

NOVA「いや、過去の改変物語という点で、ダークタワーはいいテキストなんだよ。6巻のラストで死んじゃったキングさんを、『このままだとダークタワー探索の冒険が失敗に終わってしまう。何とか、作者の死を防いで、自分たちの物語を完結させてもらわないと』って頑張るローランドとジェイクの話があったりして、歴史の改変を企図する敵味方の攻防が描かれる」

晶華「現実は、キングさんは生きているんでしょう?」

NOVA「ああ。公式サイトはこちらだ」

NOVA「2021年8月に『ビリー・サマーズ』という小説を出版して、まだまだ現役の74才だ。ビリー・サマーズは悪党殺しだけを請け負う暗殺者ガンマンの名前で、彼の愛と死闘に関する物語らしい」

翔花「まだまだ精力的に書き続けているってことね」

NOVA「来年2月にも次の本が予定されているそうだ。俺は別にずっとスティーヴン・キングさんの追っかけをしているわけじゃないし、90年代に何冊かちょこっと読んだり、映画を見たりした程度の縁だ。ただ去年、ちょっとしたきっかけで『ダークタワー』に挑戦する気になって、にわかにいろいろ調べて感じ入ったり入らなかったり、まあ、いろいろ思ったりしている最中。ただ、それでも凄い人だし、自伝とか、小説作法とか読むと、自分に通じる部分もあって、面白いなあ、と。プロットなしに一気に長編を書き上げて、細かい整合性は後から推敲時に辻褄合わせをする豪快な作家手法には大いに笑った」

晶華「プロットなしというのは、どんな結末か自分でも分かっていないってことね」

NOVA「連載マンガとかだったら分かるけど、長編書き下ろしでプロットなしというのは凄いなあ。ただ、そういう作風なので、悪く言えば、勢いだけで突き進む傾向があって、ご都合主義でいろいろな超常現象が発生して、後からこれはこういうことだったんだ、と辻褄合わせで納得させることが多い。まずは事件や怪現象を起こして登場人物を慌てさせる。一体、今のは何だったんだ、と登場人物に考えさせて、適当な辻褄合わせで納得させる。登場人物が納得しているのだから、そのまま読み進めるしかないんだが、登場人物が妄想過多な小説家だったり超能力者だったり子どもだったりヤク中だったりするから、どこまで現実で、どこまで妄想か分からない。結局、空想と現実が入り混じり、狂気が理性を侵食するオカルト・モダンホラーになってしまうわけだ」

翔花「理性的な科学者とか医者とかは出て来ないの?」

NOVA「彼らは、最初に科学的な見地で調べて、『おかしい。これは科学的な手段では分析できない。どうなってるんだ?』と言って、疑問を突きつけて役割終了、下手したら序盤であっさり死んでしまう。科学じゃ役に立たないから、銃か魔術か超能力で解決する……と言うと、SFじゃないのは分かるな。ダークタワーにもロボットとかは登場するけど、どういう仕組みで動いているかは、キングは気にしない」

晶華「確かにSF作家だったら、ロボットを動かすためのエネルギー源とか、関節構造とか、そういうことを丁寧に描写するわね」

NOVA「スティーヴン・キングダークタワーで出てくるメカニック描写って、登場人物からすると『何だかよく分からない機構で動いている』って感じで、未来か超古代の異質な文明の産物だもんな。化け物グマが暴れていたので倒したら、実はメカだったとか、壊れたAIの暴走が目立つなあ。言わば、『クリスティーン』みたいな呪われた機械的な代物が、キングのメカロボイメージ」

翔花「お友だちロボットは登場しないの?」

NOVA「『カーラの狼』にお手伝いロボットのアンディというキャラが登場して、キングにしては珍しいなあ、と思ってたら、案の定、敵の〈狼〉のスパイロボットだった。勇者ロボットとか、ターミネーター2みたいな『少年とロボットの絆』めいた話をキングの小説に求めても、期待できそうにないな」

翔花「じゃあ、何に期待したらいいのよ」

NOVA「そりゃあ、闇に抗う覚悟を決めた仲間の絆じゃないか? そんなわけで、最終巻の第1部は別れた仲間の再会劇から再開することになったわけだ」

 

キャラハン神父の物語

 

NOVA「敵に囚われたスザンナを助けるために、キャラハン神父とジェイク少年が絶望的な戦いを行うところから、最終巻は幕を開ける。これで神父の『命を掛けて、この子を守る』贖罪劇に感じ入るわけだ」

翔花「それって無謀な戦いよね」

NOVA「元々、キャラハン神父はアル中で信仰が疎かになり、吸血鬼に呪われて逃げた恥辱を後悔していたんだな。こういう怯えるダメな人間に、作者のキングは感情移入していた時期があるらしい。そういう神父が、自分の使命をはっきり自覚して、最期に少年の礎になるために、満足した笑みを浮かべて華々しく散っていく花道を用意してあげた。作者のデビュー2作めで、ダメな聖職者として見捨てられたキャラが、悔悟反省して栄光の最期を与えられたことになる。本当に、この散り際が泣けてくる」

晶華「私はNOVAちゃんほどキャラハン神父に感情移入していないけど、NOVAちゃんには感情移入してるので、一緒に泣いてあげるわ(涙目)」

NOVA「そんな、無理やり泣かなくていい。キャラハン神父の格好良さは『一度は挫折して、苦渋の時を味わって、どん底まで落ちた人間が流浪の末に自らの信仰を取り戻して、神の元に召される姿を描いた』姿であって、堕落した者の救済を描ききったことにある。そもそも、信仰に懐疑的だったキングの心境の変化を感じとれるわけだし、ちょっとした人間讃歌のドラマなんだな」

翔花「へえ。そんなにいいシーンだったの?」

NOVA「まず、神父の戦いなんだけど、切り札は『亀の像』だったんだな。これは人間相手には無敵なんだが、そこにいたのは人間だけじゃない。吸血鬼の始祖たちが巣食っていたんだ。吸血鬼相手に『亀の像』の効力は発揮できない。自分がかつて抵抗できなかった恐怖を再体験する神父だが、そこで『亀の像』の代わりに十字架を取り出す。かつては吸血鬼相手に、信仰が足りないために効力を発揮しなかった十字架が輝き出して、聖職者としての光を取り戻す。ここが燃えるシーンなわけで、吸血鬼に対して完全勝利を収めたかのように見えるんだ」

翔花「おお。かつてのトラウマを苦悩の末に克服するのね」

NOVA「だけど、十字架パワーを発動する代償として、『亀の像』で抑え込んでいた闇の配下の人間がフリーになり、結果的に『吸血鬼相手には勝ったけど、闇に堕ちた人間の手で命を落とす』ことになる。神父にできたのは、敵の目を自分に引きつけて、ジェイク少年を先へ進ませることだけだった。だけど、それが自分の物語の役割だと悟った神父に後悔はない。こうして、ローランドたち一行の旅の成就を祈って、神父の物語はきれいに終わるわけだ。かつては逃げ出した者に、栄光の贖罪の機会が与えられた名シーンから、ダークタワー最終巻は幕を開いた形になる」

 

スザンナの物語

 

NOVA「一方そのころ、妖魔の子モルドレッドを身籠ったスザンナ=ミーアは、何らかの魔法の儀式で2つの体に分裂していた」

翔花「え? スザンナさんって、実は花粉症ガールだった?」

NOVA「そんなわけはないが、この辺の理屈が俺にもよく分からないんだ。確かに前巻の終わりの方で、スザンナとミーアは『スザンナの脳内』で語り合ったりしていて、精神世界で2人のキャラになっていた。そして、ミーアに乗っ取られたスザンナが闇の勢力のアジトに到着し、悪魔の子誕生の魔法儀式によってミーアの肉体が形作られることになる。この辺の描写が、現実なのか精神世界のイメージなのかは、はっきり分からないままに続きを読んだら、結局はスザンナの肉体とミーアの肉体がそれぞれ何らかの魔法装置につながれて、別々にある状態で話が進展する。つまり、この段階で、脚のない黒人女性のスザンナと、白人少女の肉体を得た妊婦ミーアが別個のキャラとして分かたれたことになる」

晶華「それって、私がお姉ちゃんからPONと分裂したように、気づけばミーアさんがそこにいた、と?」

NOVA「しかも、スザンナにとって、ミーアは自分の双子の妹のように感じられたわけで、正に花粉症ガールだな、と」

晶華「その例えで通じるのって、このブログの熱心な読者だけじゃない?」

NOVA「このブログの熱心な読者のために書いている記事なんだから、これで十分じゃないか。つまり、翔花にとっての晶華が、スザンナにとってのミーアみたいなものと考えると、分かる人には(たぶん)分かりやすいわけだ」

晶華「私は妖魔じゃないし。妊娠もしていないし」

NOVA「精霊少女って妊娠するのか?」

晶華「そんなの私が知るか。花粉症ガールの設定を考えたのはNOVAちゃんだから、それを決めるのはNOVAちゃんの仕事よ」

NOVA「俺のイメージだと、植物の精霊少女が妊娠するとは思えないので、ここはやはりPONと分裂して増える説を推奨したいな」

翔花「花粉症ガールの増え方がどうこうはスルーして、スザンナさんとミーアさんが分離したことで、状況が一変したわけね」

NOVA「どう考えても、ご都合主義にしか思えないんだが、結局のところ、ヒロインが妖魔の子を出産するような場面は、キングも書きたくなかったらしい。そして、ついにミーアがモルドレッドを生むんだが、モルドレッドは人間の赤ん坊の姿と、蜘蛛の姿をとる魔物だったんだ」

晶華「つまり、スパイダーマンさん? それともデモンズさん?」

NOVA「今のタイミングだと、どっちも旬だったりするんだな。しかも、ローランドの子だと言われたモルドレッドは同時にクリムゾン・キングの子でもあるらしい」

晶華「どういうことよ?」

NOVA「妖魔によって奪取されたローランドの精と、クリムゾン・キングのエッセンスがブレンドされて、スザンナと分離したミーアの母胎を使って受肉した呪わしき存在。それがモルドレッドだ。人の赤ん坊の姿はローランド譲りで、蜘蛛の姿はクリムゾン・キング譲りで、いろいろな宿命を帯びた魔物らしい」

翔花「人間の常識では計り知れないわね」

NOVA「まあ、人間じゃないからな。おまけに、蜘蛛の姿となったモルドレッドは、母親のミーアを栄養分として食い殺したりする。こうしてミーアの物語は終わった。可哀想に」

晶華「スザンナさんは?」

NOVA「妊娠状態から解放された後、自分たちを拘束していた悪の医者や看護士たちがモルドレッドの誕生と凶行に気を取られているうちに、スーパーヒロイン・アクションタイムを発動して、掠めとった拳銃でローランドにも負けぬ活躍で窮地を脱して、生まれたばかりのモルドレッドにも弾丸を2発浴びせて、逃げ出す蜘蛛の魔物。これにて、彼女のピンチは解消されたわけだ」

翔花「すると、もしかしてキャラハン神父とジェイク君は助けに来る必要はなかったわけ?」

NOVA「結果的には、スザンナに助けは必要なかった形になる。自分で当座の危機を乗り越えたんだから。ただ、脚がなくて歩けないから、周囲の敵は倒しても、自力で長距離移動するのは困難という状況なわけで」

 

ジェイクの物語

 

NOVA「スザンナが自力で窮地を切り抜けたことで、何のために助けに来たのか分からないジェイクなんだが、キャラハン神父の最期を知って、涙を流したまま敵に追われて、食堂から地下道に脱出して、恐怖に怯えたままスザンナと合流するために進み続けるんだ」

晶華「地下からどうやってスザンナさんのいるところにたどり着くの?」

NOVA「方法その1、ジェイクにはタッチという精神感応パワーがある。方法その2、相方のペット、オイが匂いに敏感。これによってスザンナの位置はそれなりに分かるんだけど、闇の手下どもが追ってくるので、真っ直ぐスザンナに合流することができないんだ。いろいろ地下の迷路を駆け抜けている途中で、魔法じみた機械仕掛けの幻影トラップで進めなくなる」

翔花「どんな幻?」

NOVA「本人の恐怖がそのまま映し出される。そこで、ジェイクの幼少期の思い出が想起され、昔見た映画で『ジャングルの中で恐竜に襲われるシーン』が蘇ってきて、訳の分からないままに恐慌をきたしてしまうんだ」

晶華「ジャングルの中の恐竜って、そんなに怖いものなの?」

NOVA「ジェイクが爬虫類が苦手という設定が、これまでに語られていれば納得なんだけど、何だか唐突に思えたな、このシーン。とにかく、突然、恐竜恐怖症に陥ったジェイクがそれ以上、進むに進めない。だけど、追っ手に追われて進まないといけないというピンチの状況で、解決策がまた独創的だ」

翔花「どんな手段?」

NOVA「ペットのオイは、恐怖の幻影に脅かされないんだ。そして、ジェイクとオイには強い心の絆があって、ジェイクはオイに頼むんだ。『ぼくと交代してよ』って」

晶華「ええと、どういうこと?」

NOVA「ジェイクとオイの心が入れ替わるんだ。オイの体にジェイクの心が入って、ジェイクの体をオイが操作するという形で、恐怖にびびったオイ(中身はジェイク)を、ジェイクの体(中身はオイ)が抱きかかえて、幻影空間を切り抜けようというアイデア

翔花「そんなことができたんだ」

NOVA「急にできるようになったんだな。ここで今まで一度も語られなかったオイの心理描写が語られる。人間の体は不便だ、とか、それでも親愛の情を抱いたジェイクは助けてやらないと、とか、まあ忠義心篤い動物の心情が描写されて、にわかにオイ萌えモードに入る次第。そして、2本脚で歩くのに慣れていないオイがジェイクを抱きかかえたまま、バランスを崩すことに怯えながら、そろりそろりと歩いて、何とか幻影空間を脱出するシーンは短いながらも面白いシーン。まさか、この土壇場でオイに感情移入してしまうとは思わなかった」

晶華「それで上手く追っ手をかわすことができたの?」

NOVA「敵は幻影装置の存在を知っていたので、装置を破壊して追ってくる。そして、ジェイクが行き止まりの扉に出くわしたところ、その向こうにスザンナがいて、扉を開くパスワードを教えてくれた。そのパスワードは、ミーアが死ぬ前に教えてくれたもので、これでジェイクとスザンナは合流を果たすことに成功したわけだ」

 

ローランドとエディの物語

 

NOVA「さて、スザンナとジェイクは1999年にいたんだが、ローランドたちは1977年にいるので、どうやって合流するのかが問題になるわけだが、その前に一仕事ある」

翔花「スティーヴン・キングさんを助けないといけないわね」

NOVA「この段階では、まだキングの死の可能性をローランドたちは知らない。そもそも、この1977年に来た目的は、ダークタワーに通じる神秘の薔薇を守るため、その土地を入手することだ」

晶華「土地の売買契約は済ませたのよね」

NOVA「ああ。だけど、それだけで終わらない。次に薔薇を守り通さないといけないので、そのための企業テット・コーポレーションを設立。自分たちの代わりに、薔薇を守ってくれる男に後事を託さないといけないという話になる」

翔花「ちょっと待って。土地の買収だけじゃなく、会社設立とか、西部劇風ファンタジー小説じゃなかったの、これ?」

NOVA「何だか、にわかに企業経営ドラマっぽくなったよなあ。ここでスポットライトが当たるのが、ジョン・カラムという男だ」

翔花「誰、それ?」

NOVA「実は前巻で、バラザー一味がローランドたちを襲撃した時に、一緒に巻き込まれて命からがら脱出して、その後、1977年のローランドたちに親切にしてくれた『指輪物語』ファンの気のいいおじさんだ。まさか再登場するとは思ってなかったので、感想記事からは割愛した」

晶華「重要人物とは思ってなかったから飛ばしたんだけど、再登場したことで評価が上がったと?」

NOVA「ジョン・カラムは、〈予期せぬ訪問者〉のニュースを聞いて、想像を膨らませながら冒険心でワクワクしている頼り甲斐のあるおじさんで、怪我したエディを応急手当てしてくれたり、ローランドたちの話を聞いて、車を貸してくれたりした現地の協力者キャラだな」

翔花「〈予期せぬ訪問者〉って?」

NOVA「スパロボ30でお馴染みの、異世界からやって来る連中だ。多元宇宙もので時空の歪みが活性化すると、たまに次元間のゲートが開き、異世界人が出現してトラブルが発生したり、巻き込まれた人間が失踪したりする。そんな事件が、ダークタワーの世界でも頻繁に起こっていることが前巻で判明していたんだ」

晶華「そんな重要な話を、どうして感想記事に書かないのよ?」

NOVA「前巻ではただの伏線でしかなかったし、最終巻で重要度が高まったからだよ。とにかく、ダークタワーの倒壊が近づくにつれて、世界間の境界線が不安定になって、怪現象が勃発しやすくなる。一部の幻想物語好き、冒険物語好きの間で噂されているレベルだが、ジョン・カラムはその手の話に関心があるらしく、ローランドたちの関わっている事件に興味津々に描かれていた。スティーヴン・キングの住所を教えてくれたのもジョン・カラムで、1977年という時代の案内役として機能していたんだな」

晶華「TRPGにおける情報を教えてくれる便利なNPCってことね」

NOVA「それで87年から来たエディは、ジョンさんと意気投合して、大リーグの話をしたり、『マイクロソフト』の株は絶対に買っておいた方がいいぞ、とか未来人らしいアドバイスをするんだな」

晶華「ええと、マイクロソフトってビル・ゲイツさんが1975年に立ち上げた会社ってことよね」

NOVA「1977年時点ではまだ無名のベンチャー企業だったが、80年代から90年代にかけて急成長を果たすわけで、時間移動して経済的に豊かになろうと思えば、70年代にできたばかりのマイクロソフトに投資しておくのは、鉄板セオリーってことだろうな」

晶華「グーグルさんは?」

NOVA「設立が1998年だから、エディが知る由もないな。おまけに、株式公開が2004年だから、キングさんがダークタワーを完結させた時点で、グーグルに投資すれば得するって発想が常識とは言えん」

翔花「未来が正確に分かるなら、どの企業が発展するか分かるから、株式投資で儲けることも可能ってことね」

NOVA「だから、利益に敏感な未来人は安易に過去を変えることを控えるわけだ。過去を大きくイジって、自分の知ってる未来といろいろ変わるようなことになれば、未来を知ってるというアドバンテージが失われてしまうからな。この辺の思考シミュレーションをするのは楽しいけど、それを作品として成立させるのはなかなか難しいと思う。事象の原因と結果の筋道を読者に納得させるように描写するには、アイデア以上の整合性が必要になる」

翔花「もしかして、キングさんはダークタワーでそういう話を目指してるの?」

NOVA「1977年に、テット・コーポレーションという薔薇管理会社を設立。その代表にジョン・カラムに就いてもらう。資本金については、60年代に大富豪だったスザンナの実家を利用するとか、いろいろな計画を立てながら、それでテット・コーポレーションが1999年にどう発展しているかが描かれるのが、第3部らしい」

晶華「つまり、1977年に企業の種をまいて、99年にその結果を見届けるわけね」

NOVA「悲しいのは、種をまいたエディは第2部で散ることになるし、ジョン・カラムも80年代に亡くなって、彼の子孫が後を継いでいるようなんだな。こういう時空を越えた企業ドラマっぽい要素は、今年の大河ドラマを初め、興味を抱いていた要素なので、ちょっと楽しみな感じだ」

 

合流

 

NOVA「1977年の仕事を再登場したジョン・カラムに託したところで、いよいよ99年に向かうことになる。時空の歪みを彼が発見して、ローランドたちは渡りに船という形でそこに突入する。カラムも一緒に行きたかったんだけど、自分に与えられた仕事のために渋々後に残ることになる。異世界人、未来人から多元宇宙の安定を守るための重要使命を与えられたカラムおじさんの話はこれで終わりなんだけど、彼が主役の物語を読みたくなったぐらいだ」

晶華「もしかして、キングさんが既に書いているかも?」

NOVA「そう思って調べてみたら、ジョン・カラムという名の俳優さんは実在するみたいだな。モデルなのか、たまたま偶然なのかは知らんが、とにかくカラムおじさんは『ホビット穴のような居心地のいい家に住んでいる』という描写だけで、いいキャラだなあ、と感じた次第」

翔花「そう言えば、ダークタワーってキングさんが『指輪物語』に触発されて書いた話でもあるのよね」

NOVA「そして、最終巻を書いた時期に『ロード・オブ・ザ・リング』3部作公開だからなあ。クリムゾン・キングの赤い目の印も、ほとんど冥王サウロンを思わせるイメージだし、トールキンとキングがどちらも蜘蛛が嫌いというリンクも面白い」

 

晶華「時空の転移門を通ったローランドさんたちは、ようやくスザンナさんたちと合流するのね」

NOVA「ああ。その前にジェイクを脅かした闇の手下の追っ手を、ローランドとエディの2人で撃退するアクションシーン付きでな。キャラハン神父の死を悼みながら、一行は再会を喜ぶのだった。第一部 完ってところだな」

翔花「じゃあ、続きを期待してるね」

NOVA「まあ、のんびり読むことになるだろうな。エディが死ぬ話は急いで読みたくない気分だ」

(当記事 完)