Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

ドラクエ6と、ストーリーテリングの話

ドラクエとFFのヒロイン観

 

NOVA「さて、前回はSFC時代のドラクエとFFのシリーズ発展の歴史を振り返りながら、思いつくままに雑談した回なんだが、最後に、翔花が『物語における伏線の撒き方』について、プロ作家でもない俺に質問して来たんだな」

翔花「プロ作家志望だったんでしょ?」

NOVA「まあな。ストーリーゲームの土台からファンタジーにハマって、いろいろ書いたけど実ることなく挫折した男が未練がましく趣味語りしているわけだが、ここまでドラクエとFFを比べながら、今ごろ気づいたことがある」

晶華「何なに?」

NOVA「ヒロインについてなんだが、何故か俺はドラクエでは同じパーティーの仲間ヒロインに惚れずに、仲間にならないNPCばかりに惚れるんだ。FFだと、ちゃんとマリアやリディア、レナ、ティナ、セリス、ティファ、セルフィ、ガーネット、ユウナ、アーシェときっちり萌えてるのに、ドラクエだと違うんだ」

翔花「ああ、前回、わたしのした質問への答えね」

NOVA「ドラクエで俺が萌えたのは、サマルトリアの王子の妹、4勇者の幼馴染のシンシア、ベラとマリア、6主人公妹のターニア、フォズ大神官、馬姫ミーティア、宿屋のリッカと来て、11に至って初めてパーティー内のマルティナ、ベロニカ、セーニャ、それに過去勇者の仲間のセニカだったか。うん、11までは、パーティー内の仲間に惚れたことがないのが、俺のドラクエライフだ」

晶華「分かった。パーティー内の仲間に手を出すと、冒険がややこしくなると自制が働いていた」

NOVA「すると、11に至るときに心境の変化が生じたのかもな。とにかく、11では従来のパターンだと、幼馴染みのエマに惚れて然るべきだったんだが、そっちにはちっとも反応しなかった。何故だと思う?」

翔花「う〜ん、距離感の問題かな。主人公に感情移入している場合、普段から顔を合わせている人には恋愛感情を抱きにくいとか」

NOVA「まあ、いつも一緒で私生活が丸見えだと、恋心には発展しにくいという理由は分かる。しかし、よくもまあ、ここまでNPCだらけだったと思うぜ。おかげで、『何でこの娘はパーティーに加入しないんだよ?』とか、リメイクでターニアが仲間になったらなあ、とか、いろいろと叶わない夢を抱き続けた時期もあったんだな」

NOVA「ターニアの場合、夢の世界では妹で、現実世界では王子と田舎娘の関係性なんだな。物語では、山の精霊に憑依されて神託を下す妹巫女という劇的なスタートで、その後、家でいろいろ世話を焼いてくれる理想の妹キャラだが、本物は親を失った一人暮らしの娘で、兄がいたらいいという願望があって……となかなか奥深い設定なのに、冒険には連れて行けない」

晶華「妹系のキャラに萌える傾向がある?」

NOVA「それはあるかもしれないが、とにかくドラクエベストヒロインはターニアで、FFベストヒロインはリディアかレナで迷う」

翔花「ビアンカさんとフローラさんでは、どっちを選んだ?」

NOVA「俺はフローラ派だな。あの物語の局面で、ビアンカを選ぶのは幼馴染みに幻想を抱きすぎだ。元々はフローラの結婚相手を決める約束で試練に臨んだんだから、フローラお嬢さまを選ぶのが誠実な態度というものだろう。フローラを選ばない公式正史など、俺の王道とは呼べんわ。俺はフローラ派で行く」

晶華「ここから、NOVAちゃんの好みの女性傾向を割り出して……」

NOVA「そんなことはどうでもいい。とにかく、ドラクエ6の話のつづきだ。ターニアちゃんが俺の帰りを待っている」

翔花「待ってないと思う」

晶華「妄想乙。妹ターニアちゃんは夢の存在だし」

 

どんでん返しのドラクエ6

 

NOVA「さて、ターニアちゃんの存在だけで俺の中の評価が爆上げのドラクエ6だが、もちろん、それだけの浅はかな作品でないのは確かだ。ドラクエ6を研究すると、印象的なストーリー作りのメソッドがいろいろ隠れているのが分かる」

翔花「どんなメソッド?」

NOVA「印象的な物語とは、予定調和をちょっぴりひっくり返したサプライズ要素が必要だ。何のサプライズもない物語だと、よくある佳作で終わってしまう。評価は単に好みの問題になってしまい、他人にその凄さを伝えるのにも苦労する」

晶華「まあ、こんなのが好き、と自分語りには使えるけどね」

NOVA「自分のツボを突く要素があって、自分の嫌う要素が目立たなければ、普通に面白く鑑賞できる。普通に面白いというのは立派な誉め言葉だ。しかし、同じように面白いものだけだと飽きてしまうのも人間事実。舌が肥えて来ると、もっと自分をビリッと感じさせてくれる刺激物が欲しくなる。それこそがサプライズ。おおよそは自分好みだけど、ここで予想外の流れになって、かつ上手く着地してキレイに収まった。こういう作品を求めたくなるわけだ」

晶華「いわゆる起承転結ってことね」

NOVA「もちろん、全てが予想どおりのストーリーだけど、アクションが凄いとか、映像美が凄いとか、作り手の技術力に感服する作品もあって、筋書きは凡庸で月並みながら、光る何かがあるから繰り返し見たくなる、もしくは定番の物語だから安心して鑑賞できるということもあるだろう」

翔花「同じ映画や番組を録画して何回も見るってのは、そういうことね」

NOVA「良い物は何回見ても良いとか、最初の感動の記憶が何度も自分の中でリフレインして、素敵な気持ちになれる作品は宝物と言えるだろう。だけど、初見のサプライズはそういうことじゃない」

晶華「初見の人のツボを上手く突くメソッドね。そういうのがあれば、素晴らしいけど?」

NOVA「ここでサプライズの話だが、一口にサプライズと言っても、いろいろなケースがある。例えば、ここで俺が『初見の人のツボを上手く突くメソッドか。そんな物はない』と言って、(当記事 完)と締めくくると、確かにサプライズだが、それはマイナスのサプライズ。いわゆる期待外れって奴だ。ここまで書いた記事を読んでくれた読者に申し訳が立たんだろう」

翔花「さんざん期待させておきながら、そういうオチかよ。ガッカリだ……って反応が来るわね」

NOVA「連載ラブコメマンガなんかで多いな。カップルの感情が高まって、いよいよ2人の関係性が進展するかとドキドキワクワク期待した読者に水を差して、元の日常に戻してしまうルーティン展開。まあ、そのドキドキ甘酸っぱい青春の焦ったさを求める層にはそれでいいし、あっさり突き進んでしまうと関係性成就で話が終わってしまう」

晶華「成就した後の深まり方を読みたい人もいるでしょうけどね」

NOVA「少年誌の限界に挑むとか、鳥山さんみたいにあっさり想いが結実して、夫婦関係が成立した後の物語を続けるとか、いろいろな手法もあるが、同じ日常を続けるか、日常の崩壊を描くか、あるいは次のステージに上がった新たな日常が続くか……おおむね3パターンのどれかだな」

翔花「それぞれ代表例は?」

NOVA「同じ日常は『ゴブリンスレイヤー』、日常の崩壊は『BASTARD』、次のステージの日常は『バーンブレイバーン』というのが最近、見たアニメになるか。まあ、『BASTARD』については、クライマックスで急に盛り上げて、これからってところでアメリカン連続ドラマ張りのクリフハンガーエンドで収拾をつけないまま、次章で新展開って作者の悪癖をアニメが忠実に再現しているわけだが、海外ではウケているのかね、これ?」

晶華「要するに、キレイに風呂敷を畳むことができないタイプの作家ってことね」

NOVA「それでも、盛り上げるところで、過剰な勢いで爆発的に盛り上げる筆致は秀逸だがな。それはさておき、ガッカリなサプライズを参考にしても仕方ないので、良いサプライズの作り方を語りたいわけだ」

 

翔花「良いサプライズってことは、ターニアちゃん?」

NOVA「それもある」

晶華「あるんだ」

NOVA「彼女は主人公の妹だ。これが日常。しかし、実は本当の妹じゃなかった。これがサプライズ」

晶華「なるほど、確かに」

NOVA「ドラクエ6の最大のサプライズは、現実だと思っていたのが夢で、幻だと思っていた大地が現実だったという認知の逆転だ。そこで、じゃあ、これまで日常だと思っていた妹との暮らしや関係性はどうなるの? ってドキドキ感に答えを出したくて、プレイヤーは先を急ぎたくなる」

翔花「壊れた日常を取り戻したくて、自分の世界(居場所とも言っていい)探しを頑張るわけね」

NOVA「そこで、考えられる選択肢は、『それでも妹だという幻にしがみ付く』か、『日常の崩壊に自暴自棄になってバッドエンドに走る』か、『妹じゃなかった彼女を受け入れて、新たな関係を構築する』かの3択だが、バッドエンドは論外、もしくは悪堕ち2次創作の良ネタだ」

晶華「そういう需要もあるわけね」

NOVA「さすがに公式がそこまで踏み込むわけにはいかないので、結果的には……兄が幻と受け入れたターニアが、主人公勇者=レイドック王子との別れを寂しく思いつつ、それでも自分に会いに来てくれる勇者に遠慮しながらも、『これからもお兄ちゃんと呼んでもいいですか』とおずおず問いかけて来るのが本当にエモいんだよ。これで、主人公とターニアは兄妹ではないけど、互いの心の中で兄妹という関係性を維持できる。あるいは、妹ではなくて嫁になれ、と関係性の深化を求めるプレイヤーも少なからずいたと思うが、その辺は個人の妄想として〈新たな夢の世界〉を構築すればいい。公式はそこまで責任持たんぞ、と」

晶華「まあ、現実世界で妹じゃないんだから、王子さまがその気になれば、見染めることは可能よね」

NOVA「お付きの侍女(メイド)とか、いろいろと想像はたぎるな。まあ、ともあれ、良いサプライズとはこういうものだ」

翔花「どういうものよ!?」

 

良いサプライズとは?

 

NOVA「鑑賞者の多くが抱くであろう願望はきちんと汲みとって、そこは崩さず尊重したうえで、ちょっと揺らすことでドキドキハラハラさせて、想像力を掻き立てる。最後は、鑑賞者の妄想が入る余地を少し残すぐらいがちょうどいい。きちんと決着をつけてしまうと、ああ、良かったで終わって、後に余韻が響かない。まあ、これでめでたしめでたしで終わっても、妄想する人は勝手に続きを考えるんだけどな」

晶華「いわゆる脳内補完って奴ね」

NOVA「読者の脳内補完に委ねる程度の隙間を残しておくのが、作家の腕ってものだな。全てに完全な正解を描いてしまうと、物語が閉じてしまう」

晶華「物語が作者の独占物と思うか、読者や鑑賞者、プレイヤーに開放されたものと思うかってことね」

NOVA「現実には、語り手と聞き手の交流こそが物語の成立要件だと思っているけど*1、聞き手は自由に作家や作品を選べる反面、語り手は自分の読者を選べないので*2、せっかく作ったものにダメ出しされて凹んだり、自分の自信作だから威丈高になったりもするけど、読んで楽しめる読者に届くよう願っているのは本当。プロ作家たるもの、知恵を振り絞って、自分と読者が楽しめる作品作りをしているのが事実だからね」

翔花「それはブログ作者も同じね」

NOVA「そうあれかしと思うが、中には自分のメンタルセラピーとか、お気持ちの垂れ流しで書いている人もいるだろう。個人によっても書く目的は違うし、その時の気分によっても違うだろうから一概には言えないが、商業作家の場合はもっと明確に読者を楽しませることを意識しないといけない作品づくりサービス業なのは間違いない。だから、どう書けば読者を楽しめさせることができるかのノウハウに興味があれば、プロ作家に近いメンタルだろうし、読者が見えていない独り善がりな書き手はプロを目指す以前の話だと思う」

翔花「独り善がりの書き手って?」

NOVA「プロとして実際に商売している人は、読者に向き合う前に、編集さんといろいろ打ち合わせしながら推敲したりして、その時の自己ベストを作ろうとしているだろうから、完全な独り善がりとは言えない。ここで言っているのは、自分の書いたものを楽しんでくれるのは、どういう読者層だろうか、ということが見えていない素人だな(俺、含む)。

「自己表現のために書くってのは、動機として悪くないと思うけど、それだけだと、よほど芸達者な人間でないと、つまらない自分の醜いメンタルを投影した、他人が読むに耐えない代物しか書けないと思う。それでも、まあ、物語として成立していて、他に光る長所があれば、誰かの目に止まって評価される可能性もゼロじゃないけど、せめて醜いメンタルの垂れ流しはオブラートに包んで、人が味わえる程度には加工しないと、恥ずかしいわけで」

晶華「その醜いメンタルをストレートに垂れ流す芸風もあるとは思うけどね」

NOVA「毒舌批評家とかか。そういう人でも話し手としてウケるテクニックと、時と場合をわきまえているし、表で毒舌に見えて、裏では共演者に気を配ってフォローしている人間は芸能界で生き残れるし、表と裏の両面で嫌われてしまうと仕事は回って来ない。何かを批評して生きていくためには、書ける場を確保するための根回しとか人脈作りが重要になるわけで、プロの芸風については、それを下支えする土台があってこそだと思う」

晶華「事務所のバックとか、資金力とか?」

NOVA「コネとカネがあればこそ、悪口にも花を咲かせられるってことかもな。フォローしてくれる人も付いてるだろうし」

翔花「そういうバックボーンなしに毒舌批評のマネゴトをしても、花実が咲かないってのが昔からのNOVAちゃんの主張ね」

NOVA「だって、そういう批評のファンになる人って、毒舌批評好きな連中ばかりじゃないか。そういう人間を集めても、凄いギスギスした空気になるわけで、俺には耐えられんな。まあ、その中に建設のための批評という意識高い系の目的を持っていて、作品創作とか理想的な政治討論とかを志している人間が多ければ、立派に学べるサロンとして回せるのかもしれないけど、批判ばかりの集団だと簡単に内部崩壊するのが関の山だ。バランスとしては7割褒めて、1割批判するぐらいがちょうどいい」

晶華「残り2割は?」

NOVA「何の関係もない寄り道脱線蘊蓄で、お茶を濁す

晶華「寄り道脱線が2割もあるんかい!?」

NOVA「寄り道脱線で半分近い当ブログよりは、十分理想的だと思うが?」

 

翔花「自分を客観的に批判できるのも、NOVAちゃんの芸風よね」

NOVA「自分で自分をネタにしても傷つかないが、他人にネタにされるとカチンと来る。心理学的な防衛機制って奴だ。さて、読者を楽しませるコツだが、読者が自分および作品に何を求めているかをきちんと理解することが第一条件だな。そこを根本的に外すと、コミュニケーションがいきなり崩壊する」

晶華「マジメに勉強したがっている子に、趣味の話を聞かせてもダメってことね」

NOVA「そこは寄り道脱線にブレーキをかけないと、仕事ができない。まあ、勉強で疲れている子に、ちょっとした余談程度ならありって話だし、TPOをわきまえた上での和ませる会話なのか、相手に真面目な話をしたいのか、相互の目的意識や願望を察するのは人間関係を維持する基本だが、時に抑えが利かなくなることもあって、相手が嫌がっていることや無駄だと思っていることに時間を過剰に費やす人間は避けられやすい」

翔花「この人と会って話してもつまらないし、時間の無駄だし、イラッと来るし……と思われたら、話し相手にはなってもらえないってことね」

NOVA「同じことは作品にも言える。読んでもつまらないし、時間の無駄だし、イラッと来るし……と思われる作品を人は読みたくない。だから、とりあえずは流行している売れ線を習作程度に試し書きしてみるのは、作家修行にはなる。売れ線のコピーができるのは、プロ作家の基礎修行と言ってもいいが、別に作品にしなくても脳内コピーとか構造分析とか、きちんと研究してみることで自己の幅を広げる糧にはなる」

晶華「何で、この作品が売れているか分からない、とファンの集まりで言っちゃったプロ作家の人はいたらしいけど?」

NOVA「作家の意図がその場では伝わらなくて、その作品の悪口大会になったかな。最初は純粋に売れ筋研究の一環で出た疑問なのかもしれないけど、ジャンル違いとか、世代の感覚違いとか、理由はいろいろあったろう。俺の持ってた答えは、『その作家の作品作りの方法論とは異なるメソッドで書かれた作品は、理解が難しいんだろう』というものだった。それをしっかり分析して、自分の書き方の幅を広げるタイプの作家もいるだろうけど、その作家に分からないものを理路整然と説明できるファンもその場にはいなかったのだろう。そもそも、俺自身はその作品を読んでもいないんだから、そこまで踏み込んで説明できるはずもなかったんだが、今だと答えは持っている」

晶華「どんな答え?」

NOVA「作家自身が出した答えは、『その作家はその作品一つで消えた。やはり、たまたま偶然売れただけだ』という結論。俺の答えは、『上手く時流に乗ることができた。だけど、感性で書いたものに、理論的な裏付けがなかったので、時流のセンスから外れると立て直しができなかった』というもの。これはプロ作家のメソッドだけど、創作ノートに膨大な思いつきの断片アイデアが記載されていて、たった一つのアイデアにはこだわらないんだな」

晶華「大量の蓄積があって、その中で上手くつながるものに思い当たったときに試しに書いてみるけど、途中で先が見えなくなって、しばらく寝かせておくとか、いろいろあるみたいね」

NOVA「プロットをガチガチに固める作家もいれば、大筋だけ見えた段階で見切り発車して、キャラに自由に行動させて解決させるって作家もいる。キャラになった気分で書き進めれば、いいアイデアが思いつくタイプの作家もいるみたいだし、これがミステリーだと、先にトリックを考えるのが定番だと思っていたら、問題を先に考えて、答えは後から考える行き当たりばったりスタイルも結構いて、書いているうちに答えが見えて来るらしい」

翔花「NOVAちゃんはどのタイプ?」

NOVA「プロットをきちんと立てている人間が、寄り道脱線を繰り返すはずがないだろう?」

晶華「プロットなしなの?」

NOVA「脳内プロットはあるんだけど、頭の中から飛び出すサプライズを楽しみながら書いている。プロットを書きながら、無秩序に膨らませているのが俺のブログ書きスタイルだ」

晶華「だったら、そのプロットを見せてよ。今の寄り道脱線を軌道修正してやるんだから」

NOVA「何で、今が寄り道脱線しているって分かるんだ?」

晶華「半分近くが寄り道脱線って言ったんだから、テキトーに言えば2分の1の確率で、寄り道脱線に当たるってものよ」

翔花「確かに」

 

当記事の脳内プロット

 

NOVA「では、本邦初公開。これが俺の当記事の脳内プロットだ」

 

  • ドラクエ6の上の世界は、夢の世界。夢=空想、妄想。すなわち当ブログ時空は、ドラクエ6の上の世界に相当するマイ・ドリーム・ワールド。
  • もしかすると、堀井雄二さんもシナリオライターとして、上の世界を創作者の脳内イメージとして描いたのかも。
  • 今さらドラクエ6を思い出しながら、クリエイターのすぎやまこういちさんや鳥山明さんなど、故人を偲ぶ記事になったらいいなあ。
  • ドラクエ6の物語と、創作論を上手くつなげるような文章が見えた(気がする)。見切り発車だけど、まあ、書けば形になるだろう。うまく話を誘導してくれよ、Wショーカ。

 

NOVA「まあ、こんなところか」

晶華「最後の一文は何よ!? どうして私たちがNOVAちゃんのカオスな話を誘導する役を押しつけられないといけないの?」

NOVA「社長のスケジュール管理は秘書の仕事だろうが?」

晶華「ブログ記事のアシスタントガールって秘書なの? NOVA先生に質問する生徒みたいな認識でいたわ」

翔花「先生、いつまでも寄り道してないと、授業に戻って下さい」

NOVA「おっと、そうだったな。どこまで話を進めたか」

翔花「『良いサプライズとは?』の章です」

NOVA「おお、だったら、この答えは晶華くんに答えてもらおうか?」

晶華「え? 私が答えるの? ええと、良いサプライズとは……NOVA先生流に答えるなら、『寄り道しながら出会える、思いがけないセレンディピティこそ、良いサプライズである』って感じ?」

NOVA「半分正解だ。行き当たりばったりで書き進めているうちに、面白い発見があれば、その感動に目を輝かせて、ここまでの寄り道がムダでなかったように見せかける。すると、読者もその発見がさも素晴らしいものであるかのように感情移入できる。そう、主人公たちといっしょに世界の真実に気づいて、貴重な発見を成し遂げたように上手く感じ入ってもらえれば勝ち、というメソッドだ」

晶華「新発見の臨場感を味わってもらう。確かに、それはサプライズだわ」

NOVA「作者が自分の書いた文章で何かを発見して素直に驚きを表明する、もしくは当初からの予定どおりでも、新発見のように演じることで、読者にお得感を抱いてもらう。読んでも、何の新発見も得られないブログ記事など、時間の無駄だろう」

晶華「NOVAちゃんの空想や妄想の中から、新発見のセレンディピティってあるのかしら?」

NOVA「さあ。それは読者次第だが、少なくともドラクエ6のテーマである『発見』ってそういうことだぞ」

晶華「おお、上手くつながった」

NOVA「自分の知識を上手く辻褄合わせで、整合性ある物語に紡ぎ上げて見せるのが創作家ってものだぞ。思いつきのアイデアは結構だが、それをそれまでのストーリーの流れで、上手くつなげて見せないと、本当に思いつきの行き当たりばったりになってしまう。リアルだと、たまたま偶然、そういう発見もあるだろうけど、ドラマや物語としての完成度を高めるには、中身の薄い寄り道文章は削って、寄り道だと思われていた話が実は深い意味があるように推敲しながら、上手く紡ぎ上げるのがプロ作家の見せていない作業である」

翔花「そうなの?」

NOVA「プロットどおり書くと、割と無味乾燥な筋書きを追った文章になるんだな。そこを書きながら膨らませたり、興に乗って余計な寄り道を加えて字数オーバーしたり、逆に描写が足りなくてキャラに感情移入しにくかったり、などなど自分で思ったり、編集さんにツツかれたりする叩き台が第一稿。

「そこから長くて苦しい推敲作業が始まる。プロの推敲って、学生さんの作文みたいに誤字脱字や文章表現のミスを直すためだけじゃなくて、より完成度の高い物語にブラッシュアップするために行うものだ。そのために物語に貢献しない余計なシーンを削ったり、つまらない蘊蓄を涙交じりに切り捨てたり、いっぱい割愛する作業で切り詰めながら、読者がすっきり読めるように体裁を整える。

「また、サプライズをご都合主義にしないよう、そういう要素が出て来る伏線を遡って描写するシーンを(多くは後付けで)挿入する。第一稿を書いたときは思いつきだったサプライズ・アイデアが、推敲作業の最中であらかじめ考えていたかのように仕込んでおいて、再読する熱心なファンを感じ入らせるわけだ。もちろん、最初から答えを思いついていて、あらかじめ狙って伏線を仕込むタイプの作者もいるだろうけどな」

晶華「へえ。伏線って後から仕込むこともありなんだ?」

NOVA「週刊連載など、製作期間が短いマンガは難しいけどな。そういうストーリー構成や仕込みを当初から計画的にやったマンガ原作者は、ダイ大の三条陸さんだったことが最近分かったことなんだ。週刊マンガで、そこまでストーリー構成を計算立てて考えていた人は珍しいタイプだとは思う」

NOVA「良いサプライズとは、予想とは違う思いがけない展開に、『まさか、そう来るとはな』と感じさせておいて、でもよくよく考えると、確かに伏線は前もって張っていたと回想シーンを示すことで納得性を高める創作手法だ。何の伏線もない思いつきにしか見えんサプライズは、やたらと記憶力の良い知的なファンや、前の話を繰り返し読んだり見たりする熱心なファンには唐突すぎて響かない。ましてや、ネット時代で作品解析に触れる機会が多い現代では、過去の話との矛盾がツッコミネタになったり、逆にきちんと仕込まれた伏線にはファンの溜飲を下げさせたりするのは、『ブレイバーン』や『キングオージャー』のようなややこしい展開が盛り上がる時代を見れば明らかだろう」

晶華「もしかして、昔よりも作品作りのハードルって上がっている?」

NOVA「読者や鑑賞者の目が昔よりもはるかに肥えていると言えるな。何せ、昔ならサブカルチャーから卒業していた年齢層の人間が卒業することなく、年季だけは重ねて論評活動に精を出しているから、見る目の経験値は高まっている。さすがにスピーディーな映像表現は視力の老化で付いていけない面があるが、ストーリー解析力は2、30年前よりも格段に進化しているのが今の情報社会だ。もちろん、作り手の若者が昔よりも簡単に往年の傑作の文脈を調べることもできる時代なので、知ったかの嘘つきが年齢とは関係なく、にわか扱いされる世相でもある*3

 

サプライズそのものの仕込み方

 

翔花「良いサプライズってものが分かった気がする」

NOVA「ほう、どういうことだ」

翔花「マピロ・マハマ……」

NOVA「ちょ、ちょっと待て、翔花。今、その呪文を使うと……」

翔花「はい、冗談。今のは驚いたでしょ?」

NOVA「ああ、唐突に、この記事が完、してしまうかと思ったぞ」

晶華「つまり、お姉ちゃんが覚えたばかりの転移呪文を使う真似をして、NOVAちゃんを驚かせたってこと?」

NOVA「思いがけない不意討ちだった。まさか、この状況でそういう呪文を仕掛けられるとは想定外。しかし、伏線は張ってあった。前々回の記事が、そういうネタを含んでいたからな。これで本当にバシルーラみたいに飛ばされていたら、どうなるかと思ったぜ」

晶華「バシルーラだったら、スタート地点の酒場に飛ばされるだけだから、実害はないんじゃない?」

NOVA「ああ、そうかもな。だが、ここで大事なのは、『読者に通じる良いサプライズとは、意表をつきながら、かつ伏線がしっかり張られていて、何が起こったか理解できること。また、これまでの話の流れにしっかりつながっていること』だな」

翔花「何の予告もなしに、いきなりのサプライズでもいいんだけど、その場合は、次回の話でその事情を説明して欲しいってことね。唐突でもダメだし、投げっぱなしでもダメ。前後関係のどちらか片方でも筋が通っていれば、熱心な読者が筋を辿って追いかけてくれるし、何の筋もないその場だけのサプライズは??????で、意味不明ギャグと扱われるだけだし」

NOVA「つまり、そういうことをやれば読者がどう思うかを、作者がある程度読めた(予想した)うえで、必要なら後付けでもフォロー説明を入れる必要があるってことだな。これがギャグ漫画などのノリなら、勢いで畳みかけるように、その場の流れで変なことをやってカオスをばら撒くという見せ方もあるが、真面目な局面でいきなり場の空気を崩すようなマネをされても困る」

晶華「空気嫁って読者のツッコミが入るだけよね」

NOVA「空気嫁というのがどういう嫁なのかはともかく、サプライズの意味というものを我々は考えないといけない。何のためのサプライズかを考えることで、面白いストーリー作りの材料に利用できるわけだ」

晶華「まあ、物語に貢献しないつまらないサプライズなら時間の無駄なので、削るべし、だもんね」

NOVA「サプライズの活用とは、普通にプロット通りにやったら、つまらないから連載マンガの最後のページに衝撃的な場面で煽って、次の週につなげるという手法もあるが、ここで大事なのは、何が普通で、何がサプライズなのか作者が自覚的でなければならないってことだ」

晶華「普通に考えるなら、こういう流れだけど、ここはあえて奇を衒って違うやり方をしてみせる。こうすることで違う展開を狙ってみるのがサプライズってことね」

NOVA「そのサプライズで単調な話が活性化するなら、面白く盛り上がるし、客がストレートな話を望んでいるのに、いちいちサプライズで邪魔するなら白けるだけ。さて、ここでドラクエ6に話を戻す」

翔花「ここで、FF3に話を戻し過ぎると、サプライズよね」

NOVA「FF5でもいいんがな。ここでのサプライズは、世界が複数あるってことだ。浮遊大陸からより広い世界。第1世界から第2世界、そして2つが融合した第3世界。そしてドラクエ6の上の世界と下の世界。世界を股にかける冒険とはそれだけでワクワクできるサプライズだが、ドラクエ6は既存の物理的な世界から改めて、心理的な世界を描いてみせた」

晶華「体と心、現実と理想の二面性ってことね」

NOVA「そして、プレイヤーには『下の世界が幻の大地という前情報を与えて、自分が元々いた上の世界が現実という常識を根付かせる。そのうえで、ひっくり返して見せたのが一番の大仕掛けのサプライズなんだな」

翔花「これまでの天空シリーズでは、地上から天空城に赴く物語パターンだけど、ドラクエ6では上から下への移動と逆にした」

NOVA「上から下という常識は、ドラクエ3がそうだったことでドラクエファンには違和感ない。しかし、上の世界が幻で、天空城の起源でもある、という世界構造の秘密を知ったときは本当に驚いて、同時に感じ入った。サプライズが本当に効果を発揮するのは、それまでに『こういう常識がある』と物語で提示しておいて、それが覆る瞬間をクライマックスとして、効果的に狙って演出することだ」

晶華「つまり、作者が『この世界の常識はこうである』と物語であらかじめ提示しておいて、そのうえで、『非常識に直面した主人公の戸惑いや驚き』をしっかり描くことね。そこから、サプライズの重要度と価値観の転換に至るストーリーが発見を生む」

NOVA「これは最近のなろう系小説の傾向だと思うんだが、主人公が最初から世界を上から目線で見て、その世界のことを詳しく知り過ぎているんだな。そして、世界の歴史やゲームとしての攻略法を知っているがゆえに、驚くのは主人公ではなく、その周りにいるゲーム世界の登場人物たちとなっている」

翔花「驚くのが主人公ではなく、周りの人たち……ってことは、物語の作り方が逆転しているわね」

NOVA「これは読者が、自分が驚きたいのではなく、驚かせる立場でいたいという欲求の現れなのかと分析することもできるが、そこで主人公が驚くなら、『ゲームの世界だと、こうなるはずなのに自分が介入したからか、どこかで常識が変わって来ているようだ。その歪みを修復するか、それとも利用して自分の理想郷を作るようコントロールしないと』って話に転換して、言わば歴史に介入する時空改変系の物語が令和の方向性になって来たな、と感じる次第」

 

晶華「もしかして、時空改変系の話って、ドラクエ6もそうじゃないの?」

NOVA「ああ。ターニアを俺の嫁にできたら、正に時空改変系だな。ドラクエ5の嫁選びで、世界のどこかにいるターニアを探したいところだぜ」

翔花「いや、そういうことをしたら勇者が生まれて来ないでしょう」

NOVA「いや、大丈夫だ。ドラクエ6の主人公は自分が勇者にだってなれるし」

晶華「2つの世界を混ぜたらダメ……って、公式がもう、そうしちゃっているのか」

NOVA「そうだ。常識がくつがえって、いろいろサプライズなのがマルチバースってことだ」

(当記事 完)

*1:教え子がいないと教師という職業が成立しないのと同様、聞き手がいないと語り手だけの物語は成立しにくい。

*2:嫌なら読むなは、語り手サイドからは禁句。営業文句としては『読みたい読者が読んでくれれば幸いです』ぐらいが理想。まあ、親が聞き分けのない子に言うなら『嫌なら食うな』が正解のときもあるけど。

*3:たまに、無知な若者が世代の異なるジャンルの重鎮をにわか呼ばわりして、苦笑とともに返り討ちにされる光景がXポストで流れても来るが。ネットで少し情報を知っただけの井の中の蛙がすぐにのぼせて天狗になる光景もネットあるあるだなあ。