待ちに待ったパーティー
NOVA「さて、これより指輪EXITの時間だ。君たちはホビットで、俺、いや、わしがガンダルフな」
晶華「NOVAちゃんがガンダルフさんなんて」
NOVA「俺、いや、わしがガンダルフ役で何が悪い? 我がサイトのホビー館でも、『白の魔術師ガンダルフに今なお憧れるNOVA』というキャッチフレーズで、24年間、続けているんだぞ」
翔花「今はブログ以外の更新をしていないのだから、本当に古代遺跡みたいになっているのよね」
NOVA「40代の懐古趣味男が50代の懐古趣味男にバージョンアップして、WhiteもShinyになったからな。まあ、たまに昔の記事を自分で発掘して、懐かしんでいるわけだが」
晶華「とにかく、NOVAちゃんがガンダルフさんの役を喜んでやってるわけね」
NOVA「ああ、ガンダルフに憧れた人間がガンダルフごっこをできるなんて、素晴らしいゲームだよ。指輪EXITって」
NOVA「そして、ヒントカードのイラストがいいんだな。前半が灰色のガンダルフで、後半が物語の流れに応じて、白のガンダルフに昇格するんだ。最初はてっきり、白のサルマン? と勘違いしたんだが」
晶華「NOVAちゃんがガンダルフさんなら、私たちはフロドさんたちをプレイするの?」
NOVA「いや、プレイヤーが担当するのは、歴史書には語られていない名もなきホビット集団。そうだな、『影のホビット忍び団』とでも勝手に名付けようか。略してKHSDとか」
晶華「どうせなら英語にしましょうよ。Shady Hobbit Burglers、略してSHBって感じで」
NOVA「erじゃなくて、arのBurglarが正しいつづりだがな。ホビットの『忍びの者』って。違う訳だと『押し入り』ってなってるが、やはりシノビットって瀬田さんの訳が気に入ってるし、いろいろ年寄りの蘊蓄語りもしたくなるが、とりあえず、君たちはガンダルフの密命を帯びたホビット忍び団として、歴史の影でフロドたちの支援をしてもらうことになった。こっそり彼らの旅に付いて行って、密かな援護を行う重要な使命を帯びているんだ」
翔花「原作もののゲームでよくある設定ね。ガンダムでも、『アムロさんのところに届けられる予定の新型ガンダム』が後からどんどん増えて行くし、違う戦場で戦った量産型ガンダムとか、歴史の影に消えた青いのとか、新作ゲームのたびにガンダムが増えて行く感じで」
NOVA「ロードスだと、主人公の故郷の若者たちから成る『ザクソン自警団』とか設定したなあ。俺が自警団長のセシルの役をしたこともある。後年、セシルが歴史の中で殺されたことを知ったときは、少しガーンとなったものだが、それはさておき、指輪EXITの設定では、プレイヤーたちはガンダルフさんに召集されて、フロドたちを影から支援する役どころ。君たちがパズルを解けないと、フロドたちの旅は頓挫するという話だ」
晶華「責任重大ってことね。私たちが失敗すると、サウロンが勝利する並行世界、マルチバースが発生してしまう」
NOVA「エルフが黒人化して、イメージが崩れてしまうマルチバースだって公式にあるわけだから、サウロン勝利エンドだって、誰かが考えれば実現する可能性もあるわけだ。もっとも指輪ファンがサウロン勝利の二次創作を見たいか、と言えば、よく分からんが。俺としては、サウロンよりもサルマンが改心して、ホビット庄でのんびりスローライフを送っているIF世界ものが見たいわけだが、さておき」
翔花「今回は、いつにも増して、『さておき』が多そうね」
NOVA「寄り道を軌道修正する定型句だからな、さておき。で、栄えあるホビット忍び団に参加するには、早速、入団テストを受けてもらわないといけない。ガンダルフの用意した鍵付き小箱を開封しなければいけないんだ」
晶華「それが、パズルの第一問ね」
NOVA「手掛かりは、カードに記された光るルーン文字と、ホビット庄における夏至のお祭りイラスト、そしてカードに描かれた種々のアイテムと数字を上手く組み合わせて、鍵を開ける3桁の番号を確定させる。数字の順番については、『大きい、さらに大きい、一番小さい』のコードも手掛かりになる」
NOVA「文字の意味は、ガンダルフのイニシャルのGを表しているのは、指輪マニアの常識だが、ここでは文字の意味よりも形の方が問題になる。イラストの中で、同じ形のアイテムを見つけて……おっと、ネタバレ禁止じゃ。ホビットの諸君、これぐらいの謎が解けずして、忍び団にはなれんぞ」
晶華「別に忍び団になっても、名誉が得られるわけでもなく、歴史に残るわけでもないでしょ?」
翔花「でも、歴史の影に隠された物語を楽しむことはできる。何とか頑張って、小箱を開けましょう」
2問め:黒の乗り手の進路を妨害せよ
ガンダルフ(NOVA)「小箱は無事に開いたようじゃな。では晴れて、『影のホビット忍び団』の結成じゃ。結成式を盛大に挙げたいところじゃが、その間に、フロドたちはすでに旅立ったようじゃのう。しかし、その後を黒の乗り手が追跡しておる。お前さんたちは、フロドたちを助けるために、急いで黒の乗り手の注意を引きつけなければならん」
翔花「それって、命懸けの任務じゃない? 名もなきホビットに務まるとは思わないんですけど」
晶華「それよりも大事な質問があるわ」
晶華「ホビットAって、本当に名もなきホビットって感じね。まあ、いいわ。原作や映画を知っている者としては、このタイミングでガンダルフさんがホビット庄にいるなんて、あり得ないと思うんですけど? 確か、サルマンの塔に捕まってなかった?」
ガンダルフ「うっ、確かに」
晶華「あなた、本物のガンダルフさんじゃないわね。一体、何者?」
ガンダルフ「わ、わしは、そのう、ええと……フロドたちを何とか助けたいと願うガンダルフの思念が生み出した『影のガンダルフ』なのじゃ。だから、『影の忍び団』を利用した間接的支援しか行えないということで」
翔花「ああ、だからゲームのタイトルが『中つ国を覆う影』なのね。影はサウロンさんじゃなくて、私たちプレイヤーだったという」
影ガンダルフ「ここでは、そういうことにしておこう。とにかく、パズルの2問めは、9体の黒の乗り手の進路妨害なのじゃ。黒の乗り手のペーパーフィギュアを、イラストの適切な場所に配置すると、数字が浮かび上がってくる仕掛けとなっておる。適切な場所とは、黒の乗り手の苦手とする炎のイラストと上手くつながるようにするといい。つまり、ホビット忍び団は、焚き火を上手く利用して、黒の乗り手の進路を指輪所持者から巧みにそらす役どころじゃよ。連中と直接やり合う必要はない」
晶華「黒の乗り手の紙フィギュアが結構、凝ってるわね。それはいいんだけど、原作を知る者としては疑問点が」
晶華「また、その名で呼ぶ〜。とにかく、黒の乗り手は全部で9人いるんだけど、フロドさんたちを追跡していたのは、9人全員ではなかったはず。何人かは忘れたけど、少なくとも首領のアングマール王はまだモルドールを出ていないんだから」
影ガンダルフ「ええい、これだからマニアは!」
晶華「こんなゲームを買って喜ぶのは、指輪マニアぐらいよ。まあ、指輪マニアは結構多いから、商売が成立するんだけど。そして、マニアだったら、原作とゲームの矛盾点を鋭くツッコむ記事の方がウケるはず」
影ガンダルフ「まあ、それはあれじゃよ。わしらが影であるのと同様に、指輪の幽鬼にも分身たる影がいて、その分、数が増えているってことで」
翔花「いくら数が増えても、弱点が炎であることには変わりない。頑張って紙フィギュアを並べて、数字を見つけ出しましょう」
3問め:馳夫を見つけろ
影ガンダルフ「よくぞ黒の乗り手の進路をそらし、フロドたちのための時間稼ぎに成功したのう。次はブリー村に行き、馳夫(ストライダー)と呼ばれる男を探すのじゃ。そして、フロドたちのことを伝えて、ガンダルフの名のもとに、協力を要請して欲しい」
晶華「はあい、『躍る子馬亭』に行けばいいのね」
影ガンダルフ「この『躍る』という漢字じゃが、ネットでは『踊る』という誤字が結構な数で散乱しているので、マニアは注意が必要じゃ」
晶華「しゃべっている時は問題ないんだけど、記事書きするときは要注意ね。それはともかく、イラストの中で、どれが馳夫さんなのかは簡単に見つかるんだけど、そこから、どうやって数字を見つけ出すの?」
影ガンダルフ「この謎は、本作でも最大級の難しさだと思う。ヒントは扉を箱に重ね合わせるということじゃが、わしも答えを見るまで見当がつかんかった。よくもまあ、こんなパズルを考えつくものと感心させられたものじゃ。しかし、答えの通りに重ね合わせると、いろいろ光が差して、実に美しいイラスト美に感銘したわけで。まるで映画で月光文字やドゥリンの扉の謎解きのシーンを見たときのような気分じゃよ」
翔花「馳夫さんを見つけるのに、影に隠れた光を見出すように頑張るのね」
影ガンダルフ「解けなくても、答えを知って感動できる謎はいいものじゃ」
4問め:折れたる剣ナルシルを鍛え直せ
影ガンダルフ「無事に馳夫にメッセージを伝え、フロドたちと合流させてくれたようじゃのう。わしができぬことをよくぞ成し遂げてくれた。さて、そなたたちは次に裂け谷に向かい、馳夫ことアラゴルンの剣ナルシルを鍛え直す使命を与えよう」
晶華「はあい、質問」
晶華「いい加減、名無しのホビットAは勘弁して欲しいですけど〜」
影ガンダルフ「では、イニシャルAで好きに名乗るといい」
晶華「Aでいいのね。だったら、由緒正しいアンドゥリルでいいわ」
影ガンダルフ「鍛え直された剣の名前じゃないか。その名は使用禁止。大体、ホビットがそんな名前のはずがないだろう。ホビット女史は花の名前ってのが原作設定だ」
晶華「花かあ。花粉症ガールとしては、問題ないわね。ええと、アで始まる花だと……」
翔花「アサガオ」
影ガンダルフ「じゃあ、それで決定」
晶華→アサガオ「ちょっとぉ。せめて英語にしようよ〜」
影ガンダルフ「英語でアサガオか。モーニング・グローリーだな。思ったより格好いいなあ」
晶華「じゃあ、長いのでモニカね」
翔花「だったら、わたしはローリーにするわ」
影ガンダルフ「急に名前が決まったな。では、モニカ、質問は何だ?」
晶華→モニカ「あっ、ええと、ただのホビットの私たちに、ナルシルを鍛え直すなんて大それたことができるはずがないでしょ?」
影ガンダルフ「うむ。鍛えるのはエルフの刀鍛治に任せるしかないのだが、パズルのネタとしては、バラバラのナルシルの破片を正しい順番に並べ直すだけじゃ。イラストの記述に沿って、ナルシルのパーツを並べることができたら、3桁の数字も見出せよう」
翔花→ローリー「伝説の名剣を自分たちで再生させるような気分が味わえるわけね。楽しいパズルだと思う」
5問め:ゴクリの謎々を解きまくれ
影ガンダルフ「馳夫探しとか、ナルシルを鍛え直す手伝いとか、TRPGシナリオでもいろいろワクワクできそうなシチュエーションを堪能した後で、次はゴクリとのコミュニケーションを求めるとしよう」
モニカ「ゴクリって、映画のゴラムのことでしょ? あんまり乗り気になれないんですけど?」
ローリー「どうして?」
モニカ「映画では、そこまで酷い描写じゃないけど、原作小説だとカエルか半魚人みたいなイラストで、臭くて、ブツブツ独り言をつぶやいて、やたらと不気味で、可愛げがないもの。ゴクリを見ると、みんなが嫌っているし、気高くて優しいフロドだけが慈悲を持って振る舞うんだけど、結局、最後は裏切って自滅するような奴だし、好き好んで相手したいとは思わない」
影ガンダルフ「そこは、大いなる慈悲の心で接するのじゃ」
ローリー「分かった。ゴクリ相手なら、わたしが相手してあげる。大丈夫、わたしは指輪所持者じゃないから、ゴクリに狙われたりはしない」
モニカ「う〜ん、ゴクリってホビット相手に結構、凶悪なところがあるからなあ。襲いかかって餌にしようとするぐらいだし」
影ガンダルフ「そんなゴクリと謎々対決しようってパズルなのじゃ。たった1つのパズルの中に、9問の謎解きが仕込まれていて、数的にお得感がある。ここで中つ国の地図を利用したり、原作物としては非常に盛り沢山な内容と言えよう。ゴクリとの謎々合戦は、指輪よりは前日譚のホビットのネタなのじゃが、とにかくゴクリと謎々できるシチュエーションだけで、原作ファンは嬉しくなるはず」
モニカ「現実に、ゴクリにストーキングされるようなのは勘弁だけどね」
6問め:モリアのバルログを利用せよ
影ガンダルフ「ゴクリとの謎とき対決に勝って、モリアの鉱窟の案内をさせることに成功したようじゃな」
モニカ「というか、本物のガンダルフさんはもうフロドたちを助けているんだから、私たちが追いかける必要があるの?」
影ガンダルフ「ある。モリアではオークたちが満ちあふれ、指輪所持者は決死の逃避行を余儀なくされる。その状況を打開する方策として、バルログを目覚めさせるのじゃ」
モニカ「はい? オークの群れよりも、ずっと恐ろしい魔物を目覚めさせようだなんて、正気?」
影ガンダルフ「さよう、無謀な策じゃ。危険も大きい。しかし、それを言うなら、モルドールの滅びの山に指輪を運んでいく旅からして、大いなる愚行と呼ぶべきじゃ。まともな知恵ある者では想定しない愚行の中に、一筋の光明と希望を見出すのが指輪の物語。バルログが目覚めれば、闇の中から光が灯る未来が見出せよう」
ローリー「悪を以て悪を制す賭けね。コングさんが怪獣王の力を借りてスカーキングを倒したように、わたしたちはバルログの力を借りて、オークの群れを蹴散らしましょう」
モニカ「ああ、どうなっても知らないから(涙目)」
7問め:ガラドリエルの鏡の予見を読み解け
ローリー「ガンダルフさんが奈落の底に落ちちゃった(涙目)」
モニカ「そりゃあ、原作を知る者には当然の帰結ね。影のガンダルフさんも消えちゃったので、次のパズルはどうするのかしら?」
ガンダルフの手紙『忍び団の面々よ、よくやった』
ローリー「手紙がしゃべった!」
モニカ「まあ、TRPGじゃたまにあるみたいね。タイミングよく情報をくれる手紙とか、いちいち質問に答えてくれる都合のいいメッセージとか。ええと、手紙さん、次のパズルは何?」
ガンダルフの手紙『わしの道は、お主たちとは違えたが、お主たちはフロドの後を追え。このまま、エルフの国ロスロリアンへ行き、ガラドリエル様を訪ねるのじゃ。この手紙を持って行けば、ガラドリエル様にもわしの意図が伝わろう。わしがお主たちに事を託したのも、彼女の予見の鏡を見たおかげじゃ。お前たちも鏡を見せてもらい、その奥に隠れた未来を見出すがいい。未来が見えぬ時は、白のガンダルフの助けを祈ってもいいがな』
ローリー「あっ、ヒントカードのイラストが白に変わった」
モニカ「とにかく、ガラドリエル様の鏡の謎を解くのね。でも、この謎ときって、カードをハサミで切らないといけないのね。何だかもったいない」
ガンダルフの手紙『あ、そうそう。カードを切るのに抵抗があるなら、カラーコピーを利用するといいぞ。わしもそうした』
8問め:ゴンドールの烽火を灯せ
モニカ「ガンダルフさんの手紙では、フロドの後を追えって書いてあったのに、何故か私たちはゴンドールに来ているのね」
ローリー「だって、ゴンドールで戦争が始まるのでしょ? わたしたちの仕事は、ゴンドールの戦争の援軍を募るために、ローハン国への出動要請の烽火を北の山々に灯して行くこと」
モニカ「映画だと、ピピンが活躍した場面ね。実は、忍び団が影で苦労していたことが今、明かされる、と」
ローリー「さすがは忍び団。神出鬼没ね」
モニカ「本当に物語の要所要所に介入するわけで、時空魔術を学んでなければ、意味不明よ。それに、映画の第1部『旅の仲間』はここまでのパズルでじっくり物語を追っていたけど、第2部『二つの塔』のイベントは何一つない。ファンゴルンのエントたちとか、ローハンの騎士とか、エオウィン姫とか、サルマン関係は完全に割愛されたのが残念」
ローリー「その辺は、大きな戦争なので、わたしたち忍びの者ができることも知れているってことね。とりあえず今は、立体フィギュアでゴンドールの北の山々を組み立てましょう」
モニカ「紙工作が何だか楽しいかも」
9問め:大蜘蛛シェロブの気をそらせ
ローリー「私たちがゴンドールに出張している間に、フロドの旅の仲間は離散したそうね」
モニカ「ボロミアさんは討ち死にして、メリーとピピンはウルクハイ(サルマンが作り出した上級オーク部隊)に捕まってさらわれた。それを追いかけるアラゴルンさんとレゴラスさんとギムリさんの物語は放置して、私たちはフロドとサムの後を急いで追跡することに」
ローリー「何だか時間軸がいろいろ前後している気もするけど、ふと気づくと、わたしたちはモルドールに続くキリス=ウンゴルの峠道に来ていました」
モニカ「原作小説では『二つの塔』なんだけど、映画では第3部の『王の帰還』のイベントね。フロドとサムに逃げられて重傷を負ったシェロブが復讐のために動き出そうとするのを、忍び団の手で阻止しようってパズル」
ローリー「そんな大きな蜘蛛をわたしたち二人だけで、何とかできるの?」
モニカ「蜘蛛の巣を武器なしで切断することはできないけど、折りたたむことはできるみたい。つまり、折り紙をしながら、数字……じゃなくて、蜘蛛の巣が描くルーン文字を見つけ出すパズルね。本のイラストを折るのがイヤなので、カラーコピーを利用しましょう。それぞれのルーン文字が数字に対応しているから、それをデコーダーで解析して……とにかくパズルが解けたら、シェロブの足止めに成功したってことで」
10問め:サウロンの視線をそらせ
ローリー「これが最後のパズル」
モニカ「いよいよ、フロドたちが指輪を滅びの山の火口に投げ捨てるんだけど、そのためには冥王サウロンの目を指輪所持者からそらさないといけない。そのためにゴンドールの首都ミナス・ティリスを出立したアラゴルンさんたちの軍勢はモルドールの黒門の前でサウロン軍と決戦を挑み、私たち忍び団はその影でパズルを解く。そして命がけの戦いで、私たちのパズル解析の切り札であるデコーダーも破壊されてしまった」
ローリー「まさか、パズルを解くのに、解析器を分解しないといけないとは思いも寄らなかったわ」
モニカ「そんなこと、ヒントがなければ絶対に思いつきもしないわね。まさか部品のあの部分が外せるようになっていたなんて。壊れて修復不能になったら、どうしようかと思ったわ」
ローリー「数字を見つけ出した後、もう1回、デコーダーを使わないといけないんだしね」
光のガンダルフ(NOVA)「と言うことで、最後のパズルを解いた途端、指輪もゴクリごと滅びの山の火口に落下して、サウロンの断末魔が響き渡った。悪の軍勢は冥王の加護を失って、雲霞の如き大軍もたちどころに戦意喪失して散り散りになった。フロドとサムは大鷲に救出され、彼らの回復の後、ゴンドールではアラゴルンの戴冠式が行われた。式典にはフロドと仲間の4人の他に、もう2人のホビットが招待されて、お主たちは影から光の舞台で称賛されることになったのじゃ」
モニカ「え? 私たちのことも称賛してくれるの?」
ローリー「わ〜い、影の忍び団が光の忍び団に変わった瞬間ね」
光のガンダルフ「灰色のガンダルフが白のガンダルフになったようにな。『中つ国を覆う影』も『中つ国を照らす光』に変わったのじゃ。お主たちの活躍は、公式の歴史書には載せられんが、そのゲーム体験はプレイヤーそれぞれの思い出の中に生き続けるし、このブログ時空では指輪物語の知られざるエピソードとして、マルチバースの一環として記録された。こういう私的な物語体験こそ、今はナラティブと呼ばれ、公式のストーリーと対比される、しかし情報社会においては決して引けを取らない等価な物語として注目されておるのじゃ。小さな者こそが世界を救うこともあるのが、元々の指輪物語のテーマの一つじゃしのう」
モニカ「ゲームのストーリー体験って、プレイヤー各自の物語が存在するものね」
光のガンダルフ「モニカも、ローリーも、ゲームプレイ中にポッと出た使い捨てキャラ名に過ぎんが、名付けられた途端、独自の存在感を発揮して、もしも続きの物語を思いついたなら、もっとキャラクターを膨らませることも可能。そういう私的な物語に共感できるかどうかは、読み手のセンスにもかかって来よう。語り手としては、私的な物語体験をナラティブとして誠実に語ることもあろうが、公式ストーリーと異なる私的物語を理解も評価もできないセンスの持ち主もいようし、逆にそういう可能性の豊穣な物語を楽しむ者もいる。ただ一つだけ確実に言えるのは、語り手がこの物語体験を楽しく語れたってことじゃな」
ローリー→翔花「うん、私的なゲームでも、フロドさんたちを助けて、中つ国をサウロンの魔の手から救ったことは実感できた。この体験はわたしにとって、かけがえのない事実よ」
モニカ→晶華「そうね。パズルと指輪の原作要素が上手くつながると、自分もその世界の中で役割を果たしているって感じられたし。自分が役割を果たせると、その世界の中で生きてるって実感が得られると思う」
光のガンダルフ→NOVA「俺も、自分がガンダルフになった気分でいろいろ喋ったのは、実のところ初めてなので(アクションゲームなら昔、ガンダルフをプレイしたこともあるが、ロールプレイの語りとは感覚が違う)、思ったよりも楽しめたかな」
晶華「NOVAちゃんは前回、パズルにストーリー性は必要ないと言っていたけど、上手くストーリーと融合したパズルは立派に楽しめることが分かったわ」
NOVA「確かにな。まあ、この場合、原作の要素を上手くパズルが取り込んだことが大きいと思うし、パズルを解くという作業と、ストーリーの必然性が上手くつながっていることが重要だと思う。何にせよ、指輪EXITが良作で楽しめて良かったな、と」
(当記事 完)