Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

「第2.5章・蜘蛛と狼と幽鬼」感想

 原作『ホビット』では、トロルとの遭遇のあと、さほどの困難もなく*1、〈裂け谷〉に到着するわけですが、
 映画では、そこまでに大きなイベントが次々と起こって、原作を知る者でも新鮮な気分が味わえました。


 本記事は、そういう映画が膨らませた箇所への感想です。

茶色のラダガスト

 『ホビット』原作では、熊人ビヨルンの知人として名前だけ登場。
 ガンダルフがビヨルンに自己紹介する際に、「そなたもラダガストの名を知っていよう。わしは、彼の仲間じゃ」といった感じで、信用を得る展開。
 それから『指輪』原作でも、ガンダルフにサルマンからの伝言を伝える役割として語られます。


 ただ、どちらも「ガンダルフの語りの中で登場する人物」で、じっさいに物語中で行動したシーンが描かれたわけではありません。
 だから、今回、『指輪』の映画でも登場しなかった彼が、しっかり画面に登場して、ガンダルフドワーフを助けるためにアクションする場面が描かれたのは、原作ファンにとってのサプライズだったわけで。


 ラダガストは、自然の獣を愛する魔法使い。
 その彼が、〈闇の森〉において大蜘蛛が大量発生しているトラブルに気付き、さらに、その原因がドル・グルドゥアのネクロマンサー(死人占い師)にまつわることまで探索。
 それらの異変をガンダルフに報告する役どころなんですね。


 ビヨルン、〈闇の森〉の大蜘蛛、そしてドル・グルドゥアのネクロマンサー。
 これら3つは、映画の第2部への伏線にもなっています。
 ビヨルンは、原作の第7章に登場。大蜘蛛は第8章に登場。どちらも、この後、ビルボとドワーフの旅に関係することが確定。
 ネクロマンサーは『指輪』の敵サウロンの仮の姿なんですが、こちらはビルボには関わらず、ガンダルフが『ホビット』の冒険の陰で何をしていたか、に関係してきます。

ドル・グルドゥアについて

 ガンダルフの目的は、トーリン一行にスマウグへの対処を任せ、その間に〈闇の森〉の南部ドル・グルドゥアで策動しているネクロマンサーを撃退すること。 ネクロマンサーが、スマウグと結託すれば、北方地域が壊滅することを危惧していた、と。


 このドル・グルドゥア絡みのエピソードは、『ホビット』のみならず、その後の『指輪物語』の膨大な追加資料を見ても、「こういう事実があった」という設定で語られるだけで、物語としては語られていない。つまり、原作ファンにとって、このドル・グルドゥアにまつわる物語こそが、今回の映画の醍醐味の一つだというわけですね。
 まあ、ドル・グルドゥア戦が、第2部で描かれるか、第3部で描かれるかは分かりませんが、第2部だと情報量が多そうなので、第3部になるかな。第3部の前半がドル・グルドゥアにおけるサウロン掃討戦で、後半が五軍の戦いになるなら、バランス的にはいいかと思います。ただ、この場合、ガンダルフが出ずっぱりになりますね。
 逆に、ドル・グルドゥア戦は第2部のクライマックスで、スマウグ退治が第3部に回される可能性もあるかな。第2部では、スマウグの脅威を見せるだけで、ビルボやドワーフがかろうじて生き残り、スマウグをどうやって倒すかを検討して、つづく、という可能性も。


 ドル・グルドゥア戦と、スマウグの死のどちらが先か、手持ちの資料を見ても分からず*2、仮に他の資料があったとしても、映画のストーリーの都合で、前後関係が変えられる可能性もあるし。
 今は、映画の続報を待つしかないかな、と。

オークの復讐

 トロルとの遭遇の前に、トーリンとオークの因縁が語られましたが、
 そのオークがドワーフに復讐を考えていることが、映画では判明します。
 トーリンの首に賞金がかけられ、その旅を妨害するように命令が下される、と。
 こういう展開は原作にはなかったので、いろいろと伏線めいた因縁を描くことで、ドラマ的因果関係を構築していく手法。


 で、トーリンのライバルとして登場するオークの頭アゾグ。
 トーリンに片手を切り落とされて、そこにフックを装着。
 トーリンは父祖の仇としてアゾグを何とか撃退したはずが、実は生きていた相手と後に対面し、クライマックスで対決します。
 「アゾグ、生きていたのか!」この時のトーリンの心境は、原作ファンもしかり。だって、原作でも、『ホビット』の時点でアゾグは(トーリンでなく)ダインに殺されているはずですから。
 『ホビット』に登場するのは、アゾグの息子のボルグのはずなのに……。
 まさに「アゾグ、生きていたのか!」です。


 ええと、原作でボルグが登場するのは、五軍の戦いにおいて、です。
 すると、アゾグが仮にボルグの代理であるなら、次に登場するのは、第3部ということになるのでしょうが、
 トーリン宿命のライバルとして、第2部でも出てきて欲しいかな。


 トーリンの仇敵といえば、映画では、アゾグ、スマウグ、そして一族を見捨てたエルフのスランドゥイルになるわけですが、第2部では、それらの因縁がいろいろ立ち上がって、波乱万丈の英雄サーガになりそう。

ウサギ対オオカミ

 ガンダルフに知らせをもたらしたラダガスト。
 そこへ、トーリンを倒すべく急襲してくるオーク騎兵の集団。
 オーク騎兵は、ワーグという悪魔狼に乗っていて、これがどれだけ強敵かと言えば、『指輪』の映画でアラゴルンを生死不明に追い込むほど。


 『指輪』のアクションゲームをやっていても、普通のオークは決して強くはないのですけど、ワーグに乗られると動きが早くて、攻撃が当たらないで苦戦した記憶があります。敵にヒット&ランを仕掛けられて、苛立つ元に。攻略法は、接近される前に弓矢で大ダメージを与えておき、接近されたら一撃で倒せるようにHPを削っておく。
 トロルみたいに大きな敵は、攻撃のモーションが分かりやすいので、動きを読めば容易いんですけど、スピードタイプの敵は、接近されてしまうと動きが読めない。おまけに、オーク騎兵は、耐久力も高いですからね。
 要は、バイクに乗った暴走族の集団に、ヒャッハーと絡まれたようなもん。


 映画のドワーフは、原作ほど弱くはないのですけど、広い荒野で騎兵集団の襲撃を受ければ、踏み止まって戦うにしても囲まれて不利になる。
 だから、逃げることを選択。
 で、ラダガスト爺さんが「わしが囮になる」と言い出して、うさぎの引っ張るソリを駆って、オーク騎兵とチェイス
 この場面、『指輪』映画における、黒の乗り手から逃げるアルウェン姫(withフロド)のチェイスのオマージュなのかもしれないですが、あちらの幻想的な逃避行に比べて、ラダガスト爺さんはコミカルでアクティブ。
 狼よりも速いウサギゾリとか凄え、と。


 さあ、このラダガスト爺さんも、第2部で出るのかな。
 熊人ビヨルンとタッグを組んで、オークの集団と戦うラダガストというのも見てみたいです。

幽鬼の刃と、前作とのつながり

 『指輪』オマージュといえば、ラダガストが敵の正体の手がかりとして獲得した黒の刃。
 当然、フロドがこれで傷つけられた風見が丘の場面を思い出すわけです。


 実のところ、自分、今回の映画は、どこまで期待していいか、不安があったんですね。
 原作『ホビット』の童話的世界と、原作『指輪』の神話的世界。うまく融合できればいいですけど、『指輪』の影響が強すぎれば『ホビット』の魅力が減るし、童話過ぎても駄目。
 で、実際はどうだったか。


 まず、最初のスマウグによるエレボール襲撃で魂をつかまれました。
 スマウグの全身を映さず、断片的な映像描写で、巨大生物大暴れを示すのは、まあ、この10年のドキュメンタリータッチな怪獣映画の手法も取り込んでいて、続編への期待を高めてくれるな、と。


 そして、続くホビット庄
 『指輪』の主人公フロドに話しかけるビルボの言葉と、ホビットのテーマBGMで、懐かしい世界に帰ってきたと思わせました。おかげで、『ホビット』の映画見てから、懐かしい世界に浸りたいと考えて、『指輪』の映画を見直して、今に至る、と。
 『ホビット』の物語テーマが望郷なんだから、いろいろ懐かしさを喚起させてくれただけで、自分にとって、この映画は成功です。


 で、ドワーフの登場シーンは、コミカルさと渋さを、二種類の歌で両立。
 その後、一行の旅路は明るい映像と、雄大なメインテーマで、中つ国の広大さに浸らせてくれました。
 これが『指輪』になると、黒の乗り手に追われての旅立ちなので、冒険ではなくて逃避行、闇と恐怖からのスタートなんですね。
 この辺は、『指輪』と異なる『ホビット』の物語的個性を実感。


 この後、『指輪』はアラゴルンとの邂逅になり、視点がフロドよりもアラゴルンメインになりつつ、ガンダルフとサルマンとの対決など、複合的なドラマになっていくわけですが、
 『ホビット』でも同じような展開で背景世界を広げてから、〈裂け谷〉に到着する流れ。


 ここまでで『指輪』の懐かしさを味わいながらも、『ホビット』らしいコミカルさも実感できて、破綻してないのは見事、と思いました。
 次に、『指輪』の映画ファンが最も懐かしむ〈裂け谷〉の場面に入ります。

*1:少々、道に迷いかけるぐらい。案内人のガンダルフが微妙に頼りなかったり。

*2:追補編に年表はあるけど、日付設定が見当たらない。スマウグの死は、『ホビット』での記述から、ある程度、推測できそうだけど、ドル・グルドゥア戦がいつかは推測する材料すらない。