Shiny NOVA&晶華のNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガールというオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

「第3章・ちょっとひと息」感想

 10日ぶりの感想。
 その間に『ホビット』原作は読み終え、『指輪物語』も再読して、現在「旅の仲間」を制覇。さらに、映画『ロード・オブ・ザ・リング』ももう一度、第1部を見終わった次第。


 その理由は、この章の感想で、〈裂け谷〉について書こうと思いきや、実は情報量が少なくて、あれこれ想像だけ膨らませるに、『指輪』にまで当たらないと、と考えたわけで。
 何しろ、『ホビット』の方では、エルロンドの髪の毛の色すら定かではない。まあ、山本史郎氏の訳本では、「色白金髪の人物」という大ポカが書かれているわけですが。
ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間 6インチフィギュア エルロンド・イン・ローブ
 映画のエルロンドを見ると、当然黒髪だというのは分かりますし、
 『指輪』の原作でも「夕闇の影のようなその黒髪」という描写があって、山本訳『ホビット』の大きな欠陥の一つとされているそうな。


 ともあれ、原作のこの章は短く、映画と絡めようと思えば、『指輪』の方もいろいろチェックしないと、と思った次第。

第3章あらすじ

 ガンダルフに導かれるままに、エルフの憩う地〈裂け谷〉に到達した一行。
 そこで、しばしの休憩を経るとともに、賢人エルロンドの助言を受ける。
 トロルの岩屋で見つけた二本の剣、グラムドリングとオルクリストの由来を知るとともに、はなれ山の秘密の扉を示した地図に秘められた月光文字の解読まで果たし、一行は危険の待つ霧ふり山脈に向かうのだった。

 原作のストーリーはこれだけですね。
 連続ストーリーで言うところの「仕込みの回」となるわけで、この後の大事件に至る前の伏線を交えた話。
 何が伏線かというと、グラムドリング(敵くだき)とオルクリスト(ゴブリン退治)がゴブリン(オーク)との戦いのために作られた名剣であり、次の章で大活躍を示すわけですな。
 まあ、地図の秘密の方は、11章「入口の階段に腰かけて」まで物語に絡みませんが。それでも、「宝探しの地図」にまつわる謎解きというネタは、それだけでワクワクするというもの。

映画が膨らませたもの

 で、原作では短い一章ですが、映画では非常に豪華なシーンとなっております。
 エルロンドのみならず、前作に登場したガラドリエルの奥方と、白の魔法使いサルマンが登場し、ガンダルフも交えて、「白の賢人会議」を披露。
ロード・オブ・ザ・リング/ ガラドリエル スタチューLord Of The Rings - Mini Bust: Saruman
 原作では、この会議はセリフのみで語られ、参加者も議長役のサルマンとガンダルフ以外は定かではなかったわけですが*1
 まあ、ガラドリエルとエルロンドは参加するのも当然ですな。何せ、ガンダルフと3人で、「エルフの3つの指輪の所有者」なわけですから*2
 サルマンだけが指輪研究者であるにも関わらず、指輪を所持していなかったり。


 映画では、サルマンが、ラダガストから託されたガンダルフの報告を批判し、『指輪』で露呈する裏切りの伏線を張る一方で、
 ガラドリエルガンダルフを支援し、テレパシーによる密談で、まあサルマンをハブっている様子が描かれたりも。
 エルロンドは中立ながら、まあ、サルマン同様、ガンダルフの計画(ドワーフにスマウグ対策をさせると共に、ドル・グルドゥアにて復活しようとしている悪を撃退する)にも煮え切らない態度を示します。
 この人間関係は、保守的なエルロンド、活動的ながら奇矯な策を示しがちなガンダルフ、先見の明のあるガラドリエル、野心的な陰謀家だけど当面は秘密主義のサルマンのキャラクター性を示していて、面白いです。
 そもそも、『指輪』ではこの4人が一同に会したことはなかったですし、ガンダルフガラドリエルが話した場面も、映画では今回が初めて描かれた、と*3


 もちろん、原作のガラドリエルは、善の勢力の重鎮としてガンダルフに好意的であり、「白の会議の提唱者」であり、「ガンダルフが議長になっていれば、自分の望むとおりに物事が動いたはず」と述べていたりします。
 サルマンに疑念を抱いていたものの確証は得られず、事を荒立てないように慎重に振る舞っていたのだと思われます。
 一方で、エルロンドやガンダルフは、サルマンを『ホビット』の現段階では疑っておらず、ただ保守的に思えるサルマンに対して、エルロンドは信頼する一方で、行動的なガンダルフは何かをせずにはいられない心境にあった、と。
 『指輪』の原作や裏設定を交えて、このシーンを見ると、いろいろドラマ的に楽しいですし、そこまで考えなくても、『指輪』映画ファンなら〈裂け谷〉シーンを懐かしみつつ、前作の豪華なキャストの顔合わせに感じ入ることができるでしょう。*4

エルフとドワーフの因縁

 映画では、トーリンを初めとするドワーフのエルフ嫌いは徹底しております。


 原作の〈裂け谷〉では、別にトーリンがエルフを嫌悪する様子はなく、まあ、せいぜい軽々しいエルフの若者連中に、髭のことをからかわれたりして、少々不機嫌になる程度。
 トーリンたちのエルフ嫌いは、この後、〈闇の森〉のスランドゥイル王の仕打ち(森に侵入して平穏を脅かしたとして投獄)が主な原因。まあ、それ以前に、昔、「エルフの王がドワーフに頼んで作らせた装飾品の代価を払おうとせず、ドワーフの方が勝手に代価としてエルフの宝物を持って行った」という事件があって、それで両種族の不信の念が生まれた、という背景もありますが。
 『指輪』の神秘的なエルフ像に比べて、『ホビット』原作のエルフ像は、かなり軽くて庶民的に描かれています。エルフ王のスランドゥイルも、ワインマニアで、森で宴会を開くのが楽しみなキャラだったりしますし。
 まあ、〈闇の森〉のエルフが庶民的で、ロスロリエーンのエルフがより格式が高い一族という設定もあるんですけどね。


 ともあれ、原作『ホビット』では軽薄なところのあるエルフたちも、映画ではもっとシリアスな感じに描かれています。
 トーリンとの因縁も、「はぐれ山がスマウグに襲撃された際、スランドゥイルが軍隊と共に居合わせたにも関わらず、ドワーフの危機を見殺しにした」という形に描かれ、憎悪の域に達している。
 だから、〈裂け谷〉訪問に際しても、それを勧めるガンダルフと口論にまでなっている。原作では、食べ物が乏しくなってきたので、〈裂け谷〉で恵んでもらおうか程度の感覚だったのが、映画ではオーク騎兵の襲撃を受けて、やむなくエルフの地に逃げ延びる形に。


 さらに、原作のトーリンは別にエルロンドを嫌いはしませんでしたが、映画では助言を受け入れつつ、心の底では信用していない。
 おまけに、白の会議ではサルマンを中心に、ガンダルフの計画であるドワーフの探索行を、「眠っているスマウグを起こして、大惨事を引き起こしかねない暴挙」としてやめさせようとする提案が為されたりして、
 ドワーフ一行がガンダルフすら信用できなくなったのか、彼を置いてさっさと霧降り山脈に旅立ってしまう、という展開にエスカレート。
 原作ドワーフが、まあ、ガンダルフ(後にビルボ)に依存しきっている感じが強いのに対し、映画では原作以上に独立独歩の精神が強く、頼り甲斐がある反面、好戦的、反抗的に描かれているな、と。


 そんなわけで、『指輪』の映画では、旅の仲間が結成されて意気揚々と〈裂け谷〉を出発したわけですが、『ホビット』の映画では逃げるように〈裂け谷〉を出ている。
 まあ、逆に原作だと、『指輪』の〈裂け谷〉出発は敵の監視を逃れるために闇夜の中をコソコソと、って感じになるのですが、『ホビット』では休息とれて意気揚々という感じで、
 いろいろ対比すると面白かったり。


 この後、『指輪』では南に向かうわけですが、『ホビット』では東に向かうことに。
 もっとも、「自然の脅威に苦戦し、避難した洞窟でゴブリン(オーク)と戦いながらの脱出劇」という作劇展開は全く同じなんですけどね。
 この辺のストーリー展開の類似も、比較すると楽しいです。

*1:ホビット』原作の書かれた当時は、たくさんの魔法使いの参加する会議という印象だったのが、後に中つ国にいる魔法使い=イスタリは5人だけ、という設定が加わり、魔法使い以外の参加者も交える形になった。

*2:ガンダルフは「炎の指輪ナルヤ(主に創造と活性化の効果)」、ガラドリエルは「水の指輪ネンヤ(主に見識と隠蔽の効果)」、エルロンドは「風の指輪ヴィルヤ(主に癒しと保護の効果)」の持ち主。4元素で「大地」がないのは、まあ、ドワーフの7つの指輪の属性だから、でしょうな。

*3:ガラドリエルの登場は、モリアでガンダルフバルログと戦い、深淵に落ちた後なので。

*4:で、後からエクステンデッドDVDに収録された製作者のオーディオコメンタリーによると、サルマン役のクリストファー・リーは高齢のために、本作が撮影されたニュージーランドに行けず、彼だけロンドンで別撮りだったとか。つまり、キャスト的には、サルマンだけそこにいない形。よって、ガンダルフと対話するシーンでは、代役が背中を向けて対話していたり、正面からアップで見せるシーンではサルマン一人しか写ってなかったり、裏話を知ってから見ると、いろいろ面白い。でも、きちんと4人で会議しているように見せてるのは、見事な編集トリックだなあ、と改めて感心。