Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

90年代初期のドラクエ・FFマルチバース話(FF3とFF4)

FF3を終えた娘の話

 

翔花「NOVAちゃん、FF3を終わったよ」

NOVA「おお、どうだった?」

翔花「面白かった」

NOVA「そうか、良かったな」

 

(当記事 完)

 

まだだ、まだ終わらんよ(さらばカニコング)

 

カニコング「ちょっと待つでごわす。そう簡単に話を終えたら、読者の期待外れでごわそう」

NOVA「って言うか、お前、まだいたのかよ。前回のコング話の後で、島に帰ったかと思ったぞ」

カニコング「フッ、吾が触手帝国の夢のためには、ここにいるのが最短コースだと気づき申したでごわす」

NOVA「何でだよ!?」

カニコング「理由その1。ここには作者、すなわち、このブログ時空の主とも称すべきお方がいる。媚びを売っておけば、吾が夢にも協力してもらえるはず」

NOVA「カニコングに媚びられてもなあ。日頃から触手触手って言ってるおっさんにまとわりつかれても、キモいだろう」

カニコング「大丈夫。そんなこともあろうかと、時空を越えた聖なる戦乙女のロールプレイは練習して来たでごわすジャン。これより、我はカニ座の聖闘乙女キャサリンと名乗り、作者どのの身の回りのお世話をさせていただく所存でごわしますので、よろしくお頼み申す」

NOVA「いらん、帰れ」

カニコング→キャサリン「そんなつれないことをおっしゃらずに……」

NOVA「……念のため、理由その2を言え」

キャサリン「おお、さすがはお優しい。もちろん、コングが今回モスラと共演したことで、怪獣女王の力さえあれば、ゴジラ様も味方してくれ、王の座を取り戻すことも可能と学んだ。そして、そこにいる花粉症ガールどのはモスラの力を宿した娘御と聞く。粉杉翔花どの、どうか我に力を貸していただき、共に手を取りあって新たなる帝国を築きましょう」

翔花「帝国なんていらない。邪魔だから帰って。マピロ・マハマ・ディロマト!」

キャサリン「ウキャーーーッ!」

 

BOM!

 

 大きな閃光と共に消失す。

 

 

NOVA「うおっ、久々に見たぞ、転移魔術の大きな閃光。お前がこんな大呪文を使えるようになったのは驚きだ。翔花、成長したな」

翔花「うん、FF3の黒魔法デジョンの応用よ。FF3を攻略したんだから、できるかな、と思って試したんだけど、何とか成功したみたいね」

NOVA「で、カニコングをどこに送ったんだ?」

翔花「さあ。ここじゃない未来のどこかじゃない?」

NOVA「歴史は繰り返す、かよ!? 6年前に俺が似たようなことをアストにやったっけ」

翔花「へえ。わたしがコンパーニュにいたときに、裏でそんなことがあったんだ〜」

NOVA「あの事件があったから、アストが未来でタイムジャッカーになったりして、俺たちと一時期、敵対したんだったな」

翔花「だったら、悪いのはNOVAちゃんじゃない?」

NOVA「反省してる。だから、お前も反省して、むやみに人を目的も定めずに転移させるなよ? 考えもなしに時空を操作すると、とんだしっぺ返しを受けることになりかねん」

翔花「うん、反省してる。でも、カニコングさんなら大丈夫よ、きっと」

NOVA「どうして、そう言いきれる?」

翔花「ヒーローは人々が応援する声がある限り、たとえ消失しても必ず帰ってくる。読者の皆さんがカニコングさんに帰って来るよう応援すれば、カニコングさんはふたたび登場するはずよ」

NOVA「あいつがヒーローかは疑問だが、少なくともFFゲームブックでヒロインを演じたのは確かだからな。まあ、コングの縁と、FFの縁できっと帰ってくれる、と信じよう」

翔花「うん。帰って来なかったら、それは読者さんの応援の声が届かなかったってことで。人気を獲得できなければ、歴史の狭間で人知れず消えていくのも、この世界の厳しいルールってことね(涙目)」

NOVA「さりげなく、読者に責任を押しつけてやがるな。まあいい。カニコングには異世界転移ゲームブック『死神の首飾り』の攻略を託しているから、そのうち帰って来るだろう」

翔花「うん、ゲームブックのFFのことはウルトロピカルに任せた。今のわたしたちは、デジタルゲームのFF3の話に専念しましょう」

 

FF3のマルチバース

 

翔花「……で、せっかくの飛空艇エンタープライズを撃ち落とされた光の4戦士は、新たな飛空艇ノーチラスで冒険を続けることになったのね。やがて、ノーチラスには大魔道士のドーガさんの力で潜水機能が解放されて、海底世界の探索もできるようになった」

NOVA「うむ。海上だけでなく、海の底まで探検できたのもシリーズ初だったな。この探索できる世界が広がるワクワク感は、今でも忘れられない思い出だ」

翔花「でも、地底世界はまだなかったのね」

NOVA「それはドラクエの方が先だったな。FFでは4で地底と月が探索場所に広がる。まあ、その分、海の底は消えたが、FF5でもう一度、復活。ゲームによって探索できる範囲にヴァリエーションが出て来るのもシリーズを比較する楽しみができたわけだ。前はこういうことができたけど、今度は新しいことができるようになった反面、前にできたこっちは割愛されたとか、いろいろ考えるのが楽しい」

翔花「ノーチラスは潜水艦になるけど、海上の船にはなれないのよね。だから、エンタープライズの時に出会えた海上のモンスターとは、遭遇できなくなってしまうとか」

NOVA「全てのモンスターと遭遇して図鑑をコンプリートしようってマニアはそこで嘆くわけだ。場合によっては、もう一度初めからやり直して、全モンスターと全アイテムのコンプリートを達成しなければ、そのゲームは終わらないと考える猛者も出て来て、それぞれのゴールとか達成感が違って来る。まあ、普通はストーリーを一通り終えてラスボスを倒したら終わるんだけど、やがて裏ボスなんかも実装されて、やり込み派が時間をかけるようになる。FF3とか4だと、10何時間もあれば解けるんだけど、ゲームの容量が増えると普通にストーリーを終えるだけでも、20時間から50時間におよび、そのうちドラクエ7だと100時間近くかかった記憶がある」

翔花「うわあ、それだけ掛かったんじゃ、ゴールデンウィークじゅうに終わらせるってのも無理だね」

NOVA「昔は、頑張って3日で終わらせようとしていたのが、スーパーファミコン時代だったかな。まあ、FF3の場合は、ラストダンジョンが3時間、途中セーブができずに、何体ものボスキャラを倒さないといけなくて、全滅したらダンジョンの前からやり直し、場合によると2時間の苦労が水の泡ってケースもあった」

翔花「過酷な昭和ってことね」

NOVA「いや、FF3はもう平成に入っていたが、開発者の頭の中は昭和だったかもしれん」

翔花「とにかく、FF3はラストダンジョンが異世界になるのよね。『古代の民の迷宮』を抜けると、そこにそびえ立つのが『クリスタルタワー』。クリスタルタワーの入り口近くに、『禁断の地エウレカ』ってダンジョンがあって、強い武器や魔法がいっぱい隠されている」

NOVA「古代の封印された武器や魔法ってのが、FFの醍醐味の一つだな。封印された地ってのは、聞いただけで異世界って感覚があるが、FF3の場合は、ラストダンジョンのその奥にまた『闇の世界』という名のダンジョンがあって、そこが最終決戦の地となる。もう完全に異世界なんだな」

翔花「ダンジョンごとにBGMが切り替わるのよね。それがまた雰囲気を高めてくれる」

翔花「『闇の世界』にいる『闇のクリスタルの4戦士』って言うから、てっきり悪い奴らだと思っていたんだけど、実は味方だったのね」

NOVA「ああ。ドラクエだと、大地もしくは天の神さまが光で、魔族が闇という勧善懲悪の世界観が基本だったが、FFは3から闇=悪という単純な構造を廃するようになった。世界を滅ぼすのは『光と闇のバランスを崩す虚無の力』という構図が示され、クリスタルも光の4クリスタルと対になる闇の4クリスタル、表と裏の2世界の選ばれし戦士たちが協力して、全てを滅ぼす無のラスボスを倒す物語に発展したわけだ」

翔花「FF3のジョブの一つに、暗黒剣を使う魔剣士っていうのがいて、闇の力を使わないと上手く倒せない敵もいる。闇が悪ではなく、光と闇の力を合わせることで最強になるって物語パターンがここで生まれたと言っていい?」

NOVA「光と闇の二項対立概念や、文明と野生とか、秩序と混沌とか、いろいろと異なる価値観を単純に善悪に色分けするのではなく、そこに調和をもたらすことが善で、調和を崩して世界を破滅に向かわせるのが悪という考え方がゲームというジャンル物語で提示されたわけだ」

晶華「東洋の陰陽思想に通じる原理ね」

NOVA「ああ、晶華も話に参加か。確かに、そういう見方もできるな。この90年という時期だと、ウィザードリィ4(87年)が登場して、1で倒された悪の魔術師ワードナが主役でモンスターを召喚する逆転ストーリーがもてはやされ、88年には日本のパソコンRPGでも、人間がエイリアンに滅ぼされた未来で、地下に潜伏していたモンスターを主人公キャラとして、エイリアンと死闘を展開する『ラストハルマゲドン』というゲームが話題になった背景がある。

「もちろん、1987年に出た『女神転生』ではモンスターを召喚するプログラムを開発した主人公が活躍し、後の『真・女神転生』シリーズ(92年〜)に発展すると、ロー・カオス・ニュートラルの3つの価値観のいずれでも攻略できるようになり、何が正義で何が悪かはプレイヤー次第というマルチエンディングな善悪感を採用するに至った」

晶華「プレイヤーさんがインタラクティブにいろいろと模索のできるゲームだからこそ、複数の価値観を仮想体験できるってことね。自分が悪の立場に立って世界を見ることもできる」

NOVA「善と悪の協力がないとゲームクリアができないのは、83年のウィザードリィ3が早かったな。ファミコン版に移植されたのは89年で、悪と思われた存在と主人公が協力したり、モンスターの力を借りる召喚魔法のアイデアも、この辺の流れがあってのことだと考えられる。

「善悪の価値観の見直しがゲーム界で流行したのが88年前後である一方、ウルティマは85年の4で8つの徳を極めて聖者アバタールになった主人公が、88年の5で徳の概念を他人に強要する圧政者ブラックソーンとの対立で、歪められた徳から生じる反乱者の物語を提示し、90年の6で地底世界の異種族ガーゴイルとの対立と和解の物語を通じ、ある視点での正義が別の視点では悪に転じる矛盾をプレイヤーに体験させた。サブタイトルの『偽りの予言者』が敵ではなく、ガーゴイル視点での聖者アバタール、すなわち自分自身の呼称だと知ったときは、ガーンとなったものだ(NOVAは92年のSFC版で体験)」

翔花「つまり、ゲームだから描ける多様性の深みある物語があったわけね。ゲームブックの『モンスターの逆襲』もそういう背景で生まれたのかな」

NOVA「モンスター主役の逆転構図の一つだな。この時期のゲームのストーリーの深化は凄くて、他のメディアでは味わえない価値観の逆転とか哲学的な物語の可能性を広げてくれたんだが、ゲームをしない大人は『ゲームは一面的な物の見方しかできない暴力的な子どもを増やす、教育に悪い代物だ』って一面的なレッテルを貼って、オタクへの偏見と合わせて社会的イジメを展開していったんだな」

晶華「正にカウンターカルチャーの文脈に近い立場ね」

NOVA「ともあれ、FF3はそうした価値逆転の文脈、冒険を通じた世界観の拡張を進めて、ついには闇は悪ではない、光の世界と闇の世界の協力の端緒を描いてみせたわけだ。少なくとも、ストーリーゲームは対立を経ての和解をドラマに取り入れ、当時の大多数の大人が想像するよりもはるかに豊かな情操教育を施していたと言える」

 

スーパーファミコン初のFF4

 

NOVA「1990年11月にスーパーファミコンが発売されて、日本のデジタルゲーム界も新たな時代に入る。そして、この新たなハードに先鞭をつけたのは、ドラクエではなくてFFの方だった。91年7月にファイナルファンタジー4が登場して、新たなハードで描かれる物語の進化に驚かされたものだ」

晶華「最初に飛空艇が5機の編隊を組んで飛んでいるだけで、それまでのFFではあり得ない映像だったものね」

NOVA「主人公は、軍事王国バロンの飛空艇団『赤い翼』の隊長にして、暗黒騎士のセシル。エリート騎士で王命に従い、他国からクリスタルを略奪する任務から帰還したはいいものの、それが本当に正義なのかと悩むナイーブな青年というキャラクターで、これまでのRPGでありがちだった冒険好きな陽性少年主人公とは一線を画すドラマチックな設定だった」

翔花「暗黒騎士って、どう見ても悪い人よね」

NOVA「FF3の魔剣士が使う暗黒剣を、少し解釈を変えて用語採用した。魔剣士の暗黒剣は日本刀なんだな。だけど、セシルの使う暗黒剣は最強武器がデスブリンガーで、一部の敵に即死効果を持つうえ、自らのHPを代償に闇のオーラを敵集団に撃ち放つ技を得意とする。もう完全に悪役で、しかも会話相手がみな『バロンの暗黒騎士だ』とビビったり(バロン領内は別)、警戒したり、嫌われて毒を盛られたりする。序盤はここまで嫌われてネガティブな気分になる主人公もこの時期はまだ珍しかった」

晶華「ドラクエだと、悪魔の子と言われる11の主人公(2017)ぐらいじゃない?」

NOVA「まあ、ドラクエ4の故郷を滅ぼされる勇者も可哀想なスタートだったけど、ゲーム全体だと最初はライアンからスタートだからな。みんなに慕われる王宮戦士として事件解決を依頼されるわけで、いきなり不幸な劇的主人公はセシルが初かも」

翔花「でも、ずっと不幸ってわけじゃないんでしょう?」

NOVA「まあ、途中で試練を果たして、闇の力を光に変えたパラディン・セシルに生まれ変わるんだな。4にはジョブチェンジがなくて、多彩な職業の仲間たちがストーリー展開に合わせて入れ替わり立ち替わり、加入と離別を経て1〜5人のパーティー制だ。

「ともあれ、王命に従って悪事を働いた罪滅ぼしのために、そして聖騎士パラディンとして世界全ての平和のために故国バロンに反抗を決意したら、国王は怪物に成り代わられていて、全ての黒幕はゴルベーザと分かり、打倒ゴルベーザに向けて戦っているうちに、ゴルベーザが実はセシルの兄だと判明したり、親友の竜騎士カインが敵になったり味方になったりコロコロ裏切りまくって、『俺は正気に戻った』と言いながらクリスタルを奪って逃走したり、とにかく劇的などんでん返しが繰り返される。まさに当時流行したトレンディドラマ的な展開だな」

翔花「ええと、スーパー戦隊で言うところのジェットマンさん?」

NOVA「ジェットマンも91年だから、まさに同年だな。そして、トレンディということはドロドロの三角関係恋愛劇がつきもの。よって、FF4のBGMもこんなのが用意されているわけだ」

晶華「ファミコンからスーパーファミコンになって、表現力も高まったことでドラマ演出にも磨きがかかったってことね」

NOVA「FFが追求したのは、映画みたいに見せる(魅せる)ゲーム体験だな。ドラクエが『プレイヤーがゲーム世界の主人公視点で没入する冒険』を提供するようになったのに対し、FFは『プレイヤーが観客視点で、ゲーム内のキャラの演じるドラマを鑑賞する冒険』を提供するように切り替わった。だから、FFの武器は当時の最高のグラフィック表現で、映画みたいなゲームを目指して、そういう演出をどんどん取り入れて行った」

晶華「当時はゲーム性の豊かな奇数FFと、ドラマ性の豊かな偶数FFの二系統に分かれていたって聞いたけど?」

NOVA「ドラクエと違って、FFは作品ごとにゲームシステムも大きく変えて、ストーリーの雰囲気も全く異なる。FF1と3は無色透明主人公4人組という設定で、ドラマは主に敵役や味方NPCの主人公たちへの関わり合いで描かれる。一方、FF2は世界支配を狙う帝国に反旗を翻したレジスタンスの物語で、冒険ではなく戦争を背景にしたストーリーがそのままFF4や6に受け継がれた。主なイメージソースは80年代までのスターウォーズだったりする」

翔花「FF3の敵は野心家の悪の魔道士だったけど、FF4の敵は悪の国家ってこと?」

NOVA「そう。冒険家が世界の破滅を目論む悪と個人単位で戦うのが奇数FFで、小国のエージェントやレジスタンスの立場で覇権国家と戦うのが偶数FFという流れで、やがて2本のストーリーラインが融合したりもする」

晶華「ドラクエは勇者と魔王という文脈を作って、さらに神さまがいる王道ファンタジー。一方のFFは魔王と呼ばれる存在もいなくて、世界観に神さまだっていない。回復役は僧侶ではなくて、白魔道士が担当して、宗教色は極力、薄められているのがFFね」

NOVA「まあ、神さまはいないけど、やがて召喚モンスターとなる幻獣とか、精霊なんかが神さまの代役を務めるようになって、原始アニミズム的な宗教哲学の雰囲気になる」

翔花「ドルイド的な自然との調和を訴えるような信仰観?」

NOVA「FFは既成宗教ではなく、ヨーロッパのエコ思想を取り込んで行くんだな。だから、ドラクエキリスト教的な宗教解釈で、海外に輸出する際に大幅なアレンジを必要としたのに対し、FFの方がそのままスッと受け入れられて、改訂ブラッシュアップされたインターナショナル版が定着する流れにもなる。世界的にメジャー化していったのはFFの方だ」

晶華「世界視点では、ドラクエよりもFFの方が王道になって行く、と」

NOVA「海外のアクション映画ストーリーの要素を貪欲に取り込んで行ったのもFFだからな。創作作品として斬新さは求められているが、過去の文脈から切り離された斬新さは観客が付いて行けない。キャッチーとなる新しさと、根底に流れる伝統的ヒューマニズムとか、逆にアングラ要素の掘り起こしとか、ある程度の客層も想定した設定要素、ストーリー要素が上手く時流と噛み合ったときに傑作は生まれる。もちろん、眼高手低で技術的に下手なのはどうしようもないんだけどな」

晶華「あれこれ批判的なことを言うけど、ものづくりはできないし、その人の言ったとおりのものを誰かが代わりに作っても、つまらないものにしかならないってことかしら」

NOVA「まあ、理想は高くても実務能力が大きく欠如している(のに何かと口出しする)ダメ評論家を指す言葉だな。じっさいに作品づくりの苦労を知らないうえに、製作背景とかを調べようともせずに、表面の見た目だけの印象論で物を語りがちだから、底の浅い話しかできない。まあ、ファンレベルの感想文ならそれでいいんだけど、個人的な好き嫌いレベルの話を、作品の粗探しだけで上から目線の評論家気取りになったつもりで語るから、見ていて痛い」

翔花「NOVAちゃんはそうじゃないってこと?」

NOVA「どうだろうな。俺が好きなのは、製作裏事情とか、時代背景と組み合わせての流れだからな。ことさら作品を駄作とこき下ろすつもりもないし、『こういう背景があるから、上手く時流に乗れて、後にこういう影響を与えるようになった』って振り返りだ。俺が嫌いなものでも、歴史的意義があるなら、詳しくないけどと補足したうえで、思い入れとは別に客観的な評価で考えたいが、できれば好きな物だけたっぷりと語りたい」

晶華「そうしているでしょ?」

NOVA「ああ、そうしている。で、FF4とマルチバースというテーマに話を戻すなら、FFの文脈で『地水火風の4つのエレメントの探索と、それを巡る戦い』という伝統的文脈があって、そこにクリスタルを絡めて行ったのが3〜5の流れだが、地水火風の4つを敵に奪われた後で、闇のクリスタルの存在が明かされ、物語が地底世界に突入する」

翔花「そっかあ、闇の世界は地底の王国ね」

晶華「コング映画とタイムリーにつながったわね」

NOVA「FF4の地底世界は、ドワーフの王が治めている一方で、幻獣たちの世界にも通じていて、そこは幻獣王リヴァイアサンと女王のアスラが治めている。航海の途中でリヴァイアサンに飲み込まれて行方不明になった幼女召喚士のリディアが、成長した姿でセシルたちのピンチを救い、以降、召喚魔法を駆使するボス敵相手の主戦力として活躍する姿は非常に萌えた(当時はまだなかった言葉だけど)」

晶華「幼女から大人への成長が萌え要素ってことね」

NOVA「成熟にまでは至っていないのがポイントだな。FF4では日常系お姉さんヒロインのローザと、神秘系な妹ヒロインのリディアのヒロイン2人体制がいい。ローザはセシルとの恋愛ドラマで忙しくて、俺の嫁を求める層には不人気だけど(寝取られ2次創作が好きな層には格好の素材)、劇中で手垢が付いていない純朴ヒロインを求める層にはリディア大人気だ。以降、FFはクルル→リルム→エーコと幼女路線を開拓するようにもなって行く。ポイントは召喚獣や異種族との共感能力だな」

翔花「ああ、子どもだから不思議な存在との親和性が高いってことね」

NOVA「ともあれ、FF3でデビューした召喚獣は、FF4でその背景世界が大きくクローズアップされて、その戦闘演出のビジュアル発展と、ドラマ性の深化が相まって、飛空艇に次ぐFFの象徴になっていく。そして、地底世界の探索を続けるうちに我々はまた新たな驚異に直面する」

翔花「何なに?」

NOVA「地底世界から地上まで貫く壮大なバブイルの塔。これが既存のファイナルファンタジー世界に大きなカルチャーショックを与えたんだ。えっ、これってファンタジー? って感じに」

NOVA「その前にゾットの塔ってのがあって、いかにもメカニックな外見だったけど、登場モンスターはまだオーガとかファンタジーの文脈だったんだ。しかし、バブイルの塔になると、ファンタジーからSF的なロボメカが出現し始めて、え? という価値観の転倒が生じる」

晶華「でも、FFには飛空艇とかもあって、メカ要素は今さらでしょ?」

NOVA「まあ、ファンタジー世界にメカロボが登場するのは、ドラクエ2キラーマシンを始め、過去に例がないわけじゃないんだが、あくまで古代文明の遺産とか、例外的な扱いなんだよ。おまけにファイナルファンタジーでは、聖騎士パラディンとか、幻獣とか、地水火風のクリスタルとか、ファンタジー要素を濃厚に見せた後で、突然、世界観が切り替わった感じがあった」

晶華「伏線はあったはずよ。ホバーカーとか」

NOVA「先にウルティマ1とか、ウィザードリィ7とかをプレイしていれば、驚きは薄かったのかもしれないが、ファンタジーゲームに突然飛び込んで来るSF的世界観は、俺にとってはFF4が初だったんだよ(TRPGを除く)。ともあれ、バブイルの塔以降、中世ヨーロッパ風ファンタジーと、メカロボSF要素がハイブリッドされた世界観がどんどん加速して、ドリル付き戦艦と、月に向かう宇宙船と、巨大ロボットのバブイルの巨人を迎え撃つドワーフ戦車隊といった感じに未来の科学文明が上乗せされて行く」

翔花「ファンタジーだと思ったら、その向こうにメカSFが隠れていたってことね」

NOVA「物語の奥に想像と違うものが隠れていたら、サプライズだな。あるいは、センス・オブ・ワンダー。この場合に大事なのは、『ある程度、これはこういうものだ』という考えが浸透してきたタイミングで、少しずつ伏線を小出しにしながら、一気にヴェールを剥がした瞬間の驚き。

「例えば、FF4だと『空に浮かぶ二つの月』という幻想的な世界観をオープニングで見せておいて、後で『その月の一つは人工の物で、古代に宇宙の他の星から飛来して来たものが地球の文明を監視するようにしながら、月の民の多くは眠りに就いている』『主人公のセシルは、月の民のクルーヤを父に持つハーフで、仇敵のゴルベーザの弟である』『ゴルベーザは、月の民のうち邪悪な思念を持ったゼムスに操られている』といった秘密が後半から終盤にかけて次々と解明されていくんだが、その秘密を納得させるための伏線がきちんと張られていることがストーリーテラーとして感じ入るべきポイントだ」

晶華「ええと、どんな伏線?」

NOVA「二つの月、というのは分かりやすいが、セシルが月の民の血を引くことはパラディンの儀式を受けたときに聞こえてきたクルーヤの声で察せられる。試練の場所は、クリスタルっぽい壁で神秘的な雰囲気を演出していたが、それは月文明の建物がそういう作りになっていたことで、納得できる。また、月に行く宇宙船の魔導船が封印されているのも試練の山の近くのミシディア湾だ(地形的に竜の口に喩えられている)。そして、魔導船の復活にも、ミシディアの長老が教えてくれる予言の言葉があって、話がつながって来る。

「一方、ゴルベーザがゼムスに操られているのは、カインがゴルベーザに操られているのと複層構造になっていて、プレイヤーはカインの裏切りについては怒りを覚える者も多かったが、ゴルベーザについては許そうって気になってる」

翔花「何で?」

NOVA「カインについては、味方→敵→味方→敵→味方と再三の裏切りを展開しているからだな。ゴルベーザは敵→味方の一回だけで、こちらの信頼を裏切ったわけじゃない。カインが三角関係の恋愛感情も交えたドロドロ裏切りを繰り返していた*1のに、ゴルベーザは自己犠牲による贖罪行動まで披露して見せて、しれっと味方面して最終パーティーのクール枠に収まっているカインとは距離感が違う」

晶華「もしかすると、ゴルベーザさんの系譜が、キングオージャーのラクレスさんじゃないかしら?」

NOVA「そういうつながりはあるかもしれないな。まあ、弟に敵対する兄が後で改心して心強い助っ人になるのは、聖闘士星矢の一輝兄さんの文脈もあるし、翌年の戦隊ジュウレンジャーのブライ兄さんにも引き継がれて、一種の様式美だ」

翔花「だったら、ゴルベーザさんを使いたい層もいそうね」

晶華「だから、続編のFF4TAではゴルベーザさん主役の章も用意されているし」

NOVA「その後のFFマルチバース的なゲームでは、ゴルベーザのエピソードも増えているみたいだな」

翔花「とにかく、FF4では、地上の他に地底世界と、幻獣界と、月の世界が用意されているってことね」

NOVA「ああ、ファミコンからスーパーファミコンになって、表現力もドラマの容量も増えたわけで、いろいろワクワクできた思い出だなあ」

晶華「じゃあ、次はFFを追いかける立場になったドラクエの初SFC作品、92年のドラクエ5の話ね」

NOVA「92年だと、年末にFF5も出たんだな。次回は、SFC時代のドラクエ(5と6)とFF(5と6)の話と、マルチバースの話を語ってみよう」

(当記事 完)

*1:後年、カイン擁護派は「カインの気持ちに気づかない鈍感セシルが、カインの見ている前でローザとイチャイチャ恋愛劇を堂々と披露しているのが悪い」と非難することも多いが、こういう見せつける愛というのも当時のトレンディドラマの文脈であり、欧米から伝わった隠さないラブ表現のスタイル。まあ、愛を秘め事と考える層には、リア充爆発的なニュアンスでカインに同情するスタンスも広がったが、ドラクエ5の嫁論争同様に、ネットのいい語りネタになったよなあ。