世界の終わりに向き合って
NOVA「今日は悲しい知らせがある」
翔花「そういう時は、ドンブラ脳になって、祭りだ祭りだ〜、悩みなんてぶっ飛ばせ〜の精神で乗り越えるといいと思うわ」
NOVA「いきなり、話の腰を折るなよ。ドンブラザーズが始まったばかりでこう言うのも何だが、俺が愛する『特撮掲示板』がこの夏、終了してしまうことが確定したんだ」
晶華「大変。ダイアンナちゃんとアストの安住の地が消えてしまうってこと?」
NOVA「アステロイド宮殿が時空震動に飲み込まれて消失してしまう未来が見えたから、新たな移住先を見つけないとって話になるが、それよりも大事なのは、うちのホビー館の歴史とともに歩み続けた『20年以上の歴史を誇る特撮掲示板』が終わってしまうという衝撃だろう。俺にとっては、様々な縁をつないできた場所として思い出の多い掲示板だったから、いろいろとこみ上げて来る思いがあってな。『仕方ないなあ。すぐに引っ越し先を見つけないと〜。どこがいいかなあ』と即座に事務的に切り替える気になれないわけだよ」
翔花「つまり、NOVAちゃんは『特撮掲示板』とアステロイド宮殿こと『GTライフ』のブログの引っ越し先を考えないといけない状況に立たされたわけね」
NOVA「ああ。どちらも管理人として終わらせるつもりは毛頭ない場所だからな。3月中には難しいかもしれないが、4月には正式に引っ越し先を確定・公表したいと思う」
晶華「ところで、どうして特撮掲示板じゃなくて、ここで話をしているの? NOVAちゃんはともかく、私とお姉ちゃんには関係ない話じゃない?」
NOVA「そりゃあ、俺が考えを整理するために決まっているだろう。割とショックなんだからよう。少なくとも、俺個人にとっては、今年の十大ニュースに入るぐらい重要な事件だからなあ。花粉症ガールの誕生に匹敵するぐらい衝撃的なイベントと言っていい」
晶華「そんなに凄い話なんだ」
翔花「20年の歴史の重みを持つ掲示板と、花粉症ガールが等価値なんて誇りに感じるわね」
NOVA「そんなわけで、『祭りだ祭りだ〜、悩みなんてぶっ飛ばせ〜』の気分が熟成した段階で、掲示板の引っ越し先を決めることにする。先に3回めのワクチンの接種を終えてからになりそうだな。新掲示板作りを鬱気分で面倒くさがらずに、躁気分でワクワクできるようにマインドセッティングしてからの予定」
翔花「そんなわけで、世界の終わりと新世界誕生の話でした」
改めて世界の危機の話
NOVA「さて、掲示板やブログの話は後回しにして、読書感想の続きだな」
晶華「ええと、前の感想はこちらを参考にするといいと思うわ」
翔花「誕生日前のよもやま話の最後に、ちょこっとダークタワーの感想を混ぜているから、読者さんが追っかけるのに苦労するのよね」
NOVA「仕方ないじゃないか。本当はこの次の記事がダークタワー感想にして、つなげるつもりだったのに、晶華が妖精郷話をせがむものだからよ。先に妖精女王ズを立ち上げて、さあ、誕生日パワーでダークタワー感想だ〜と思ったら、恐ロシアのプーチンの奴が攻撃を仕掛けて来やがって、こっちの気分やスケジュールをぐちゃぐちゃにしやがったんだ。悪いのはプーチンであって、俺ではない。文句があったら、全部プーチンに言うように。今なら、プーチンに翔花が花粉症バスターを打ち込んでも、俺が許す。それで戦争が終わるなら、ありがたいことだ」
翔花「キングコロナンよりは対処しやすそうな相手ね。今から行ってくる。モスクワに行けばいいの?」
NOVA「ああ。上手く行けば、懸賞金ががっぽりもらえるかもしれんぞ」
晶華「プーチンさんが花粉症になって、涙目鼻水でマスク姿で現れても、懸賞金がもらえるとは思わないけど。それに花粉症効果で頭がぼんやりして、脳みそが異常活性化して、全力全開ドンブラコ〜とロシア語で叫びながら、核ミサイルのボタンを押したりしたら、それこそ世界崩壊の危機だから、うかつなことはしない方がいいと思うの」
NOVA「そうかあ。全力全開ドンブラコ〜って、ロシア語でどういうかは知らんが、花粉症バスターが世界崩壊の引き金になるようなマネは避けないとな。リアルネタの妄想乙、と自己ツッコミしておいて、フィクションの世界に戻るぞ。まずはダークタワー7巻の第2部だ。これはダークタワー倒壊をもくろむクリムゾン・キングの尖兵どもの本拠地にローランド一行が乗り込んで、銃撃戦を展開し、戦いは勝って塔は救われたものの、仲間のエディが死んでしまうという話だ」
翔花「崩壊する塔を守るための戦いかあ。それは派手なクライマックス戦闘って感じね」
NOVA「シチュエーションだけは派手にも思えるが、どうも話の展開がゴチャゴチャし過ぎて、分かりづらいというか、イメージがいろいろ抽象的すぎるんだな。まず、ここで登場するダークタワーは物理的に形のある建物ではなくて、霊的な存在として扱われている。ダークタワーは複数の世界にまたがって存在しており、それを破壊するには、霊能力者を大勢集めて、破壊の思念を定期的に塔を支える光線柱(本文では〈ビーム〉と呼称される)にぶつける必要がある。その集められた霊能力者集団は〈破壊者(ブレイカー)〉と総称され、ローランドたちの目的は、この〈破壊者〉たちに命令する幹部連中を倒すことになる」
晶華「〈破壊者〉の軍団を殲滅させるような話じゃないのね」
NOVA「〈破壊者〉は別に悪人というわけではないんだな。多元世界の各地から集められた霊能力の素質を持った者たちで、最初は高給につられて雇われ、そこで自分たちの特殊能力を活かす道を教えられ(一種の洗脳教育とも受けとられる)、隔離はされているけど安定した生活を提供され、世界のために祈るという満ち足りた日々を送っているわけだ。奴隷のようにこき使われるでもなく、ただ閉じた世界で秘密任務に従事している。自分たちの祈りがダークタワーという世界の柱の倒壊に向けられていることに気付いている者もいれば、そうでない者もいる。
「たとえ、世界が崩壊しようとも、それを運命と受け入れて、理想もなく日々の仕事を機械のように静穏に暮らしたい者や、自分は超能力で迫害されて来たから世界なんて滅びても構わないと考える者、世界が滅びても愛する者といられたり、それまで好きな本を読んで文化的な生活が過ごせれば満足と考えたり、まあ、いろいろな〈破壊者〉ライフと閉鎖されたコミュニティーが存在するわけだ」
翔花「〈破壊者〉ってのは必ずしも悪人ではないけど、自分たちの祈りや日々の生活の結果、世界が崩壊に向かっても大して気にしない人たち、みたいなもの?」
NOVA「それまでも、〈破壊者〉という連中が塔を破壊しようとしているって情報は小出しにされていたが、俺のイメージは『ヒャッハーって叫ぶモヒカン荒くれ集団が、ハンマーやドリルなんかでガンガン物理的に塔を打ち壊す』感じだった。それが、実際にははるかに文化的な連中だったんだな。
「そして、ローランドたちに協力してくれる〈破壊者〉として、テッド・ブローティガンやディンキー・アーンショー、シーミー・ルイスというキャラクターが登場する」
晶華「新キャラ登場ってこと?」
NOVA「シーミー・ルイスは、ローランドの昔なじみだった。いささか知恵遅れ気味の少年で、ローランド初恋の相手スーザン・デルガドとの回想譚(ダークタワー4巻)に登場していたんだけど、スーザンの命を助けられなかったことを悔いながら、時空を越えてここまで生き永らえ、時空超越のテレポート能力を会得して再会するわけだ。ただ、超能力を発動し過ぎると命を削ることになるんだが、ローランドたちを助けるために頑張ってくれ、最後はちょっとした怪我から大地の毒が体内に入って死んでしまうことが第3部で語られる」
晶華「他の2人は?」
NOVA「どちらも、S.キングの他の小説の登場人物だ。テッド・ブローディガンは、『アトランティスのこころ』所収の中編『黄色いコートの下衆男たち』に登場しているそうだ」
NOVA「テッドは強力なテレパシー能力を持った年配の男で、『アトランティスのこころ』の主人公格となるボビーの少年期(60年代)に登場する謎のおじさんらしい。このテッドとボビーの関係が、ローランドとジェイクの関係にも似ているそうで、『アトランティスのこころ』も60年代から80年代のアメリカへの郷愁に彩られたハートフルな内容とのこと」
晶華「そういう言い回しってことは、未読なのね」
NOVA「まあな。読んでいたら、もっとテッドのキャラに感情移入できたのかもしれないが、こちらから見れば、唐突に出てきたおじさんが自分語りで尺をとって、いろいろ仕切り出すので、ローランドたちの物語に割り込まれた感じだが、テッドがいなければ〈破壊者〉というのがどういう背景を持った連中か分からないので、ローランドたちの行動方針が成り立たなくもなる。最悪、〈破壊者〉たちの皆殺しという凄惨な殺戮劇が展開していたろう。テッドが比較的罪のない〈破壊者〉たちを率いて、避難誘導に尽力してくれたおかげで、ローランドたちは悪辣な親玉だけを倒せばいいって話になるわけだ」
翔花「もう一人は?」
NOVA「ディンキー・アーンショーは『幸運の25セント硬貨』所収の『なにもかもが究極的』に登場しているそうだ」
NOVA「ディンキーの持つ超能力は未来予知。キングの短編集に多いパターンは、何らかの超能力を持った一般市民の身に降りかかる突然の幸運や不幸、そして超能力を利用しようとする悪の組織の追跡など。その悪の組織の背景にいるのが、ダークタワーの世界観で統括されて、『クリムゾン・キングの手下が超能力の素養を持った者を集めて、〈終焉世界〉の施設に隔離し、ダークタワー倒壊の思念波を供給させようとする』設定にまとめられた形になる。
「テッドやディンキーはそうした組織の動きから逃がれようと抵抗したんだけど、個人の力では如何ともしがたく、拉致の末に施設に隔離され、忍従の末に現れたローランドの純粋な暴力に賭けようって話になったんだ」
晶華「つまり、西部劇のヒーローと超能力者が協力しての一大活劇ってことね」
NOVA「設定だけ聞くと、いかにも派手な展開だよな。超能力を駆使して大暴れって形なら凄いけど、テッドのテレパス能力はもっぱら〈破壊者〉たちの避難誘導に使われ、ディンキーの未来予知も『ローランドたちの来訪と、自分たちの解放が見えた』というだけで、あくまで戦闘そのものではなくて、サポート的な扱われ方だったんだな。テッドたちも不屈な心は持つけど、戦闘訓練をしてきたわけではないし、ヒーローとまでは言い切れない。ドンパチやらかして暴れるヒーローはローランド一行で、テッドたちは不思議な力を持っただけの一般市民でしかない、と」
晶華「ローランドさんたちが仮面ライダーだとするなら、テッドさんたちは立花のおやっさんとか霞のジョーさんとか、的場響子ちゃんみたいなもの? サポートはできるけど、怪人を倒すのはライダーに任せるしかない、と」
NOVA「テッドたちとの交流がその後も続くようなら、彼らの個性がもっと面白く浮かび上がるのかもしれないが、それを味わうには彼らの出典作品に当たれってことだろう。とりあえず、ローランドたちは無事にダークタワーを守り、テッドたちを隔離生活から解放し、めでたしめでたし……ではなかったんだな。安心した隙を突かれて、エディが撃たれて致命傷を受けたんだ」
再び現実世界にて(1999年6月19日前後)
NOVA「第2部では、その他にローランドの息子(クリムゾン・キングの息子でもある)の蜘蛛人モルドレッドの動向が描かれたり、超能力によって小説家スティーヴン・キングが死ぬという可能性が見えたりした挙句、『ダークタワー到達の旅を成就するには作者を死なせるわけにはいかない』という話になって、エディの死を悼むスザンナをテッドたちに託して、現実世界の1999年にローランド、ジェイク、オイの3人が向かうことになった。移動手段はシーミーのテレポート能力だ」
翔花「便利よね、テレポートって」
NOVA「行き先は馴染みがある場所に限られるとか、長時間の儀式が必要とか、転送先がズレると思いがけない事故や悲劇に見舞われるとか、エネルギーの消耗が激しくて酷使は死に至るとか、作品やシチュエーションによって使用制限がいろいろあるが、物語世界を広げたり、テンポ良く進めるには欠かせないギミックと言えるだろう」
晶華「ダークタワーの世界では、どこでもドアが基本ね」
NOVA「略してDD。英語風にディメンジョン・ドアと言ってもDDだな。あと、最初のジェイクは殺人鬼の仕向けた交通事故で死んで、ローランドの世界に転生して、それからまた崖から落ちて死んだ。その後、過去ジェイクの事故死の運命をローランドがねじ曲げたことで、第2のジェイクはローランドの仲間として旅を続けてきたわけだけど、彼もスティーヴン・キングの命を助けるために、自分が代わりに車に轢かれて致命傷を負ってしまう。キングは重傷を負ったものの生き延びて、『ダークタワー』を最後まで完成させることができました、めでたしめでたし……って物語なわけだ」
翔花「って、ジェイク君が死んだのだから、ちっともめでたくないわよ」
NOVA「キングは作者だから、作者のいる根幹世界で死ぬと生き返ることはできないというルールがあるらしい。だから、ジェイクの死は覆せないんだけど、本作を最後まで読むと、ローランドが旅を完遂した後に崩壊に向かっていた世界が再生され、ジェイクも転生するという龍騎エンド、あるいはストーンオーシャンエンドで、真のめでたしめでたしに至る物語だ」
晶華「どこでもドアで、エディさんとスザンナさんを自分の世界に引きずり込んだローランドさんの話が2巻ね。予言された3人めの仲間はスザンナさんの足を奪い、ジェイク君を殺した殺人鬼だったけど、ローランドさんが復讐の気持ちで始末し、代わりにジェイク君が仲間になった、と」
NOVA「ジェイクの加入は3巻だな。その際、魔術で次元の扉を開くことが必要になり、その鍵をエディが作ったんだ。彼は持ち前の芸術的センスで魔法のアイテムを作り出すことができるみたいで、ローランド以上に魔術の才や直観的霊視能力を秘めていたようだが、それを開花させる前に死んだ形になる」
晶華「ローランドさんは射撃だけ?」
NOVA「戦術とか冷静さ、それと催眠術が使える。相手の記憶の底を読んだり、不都合な記憶を底に沈めたりすることができる。作者のキングも、ジェイクが自分の代わりに死んだことや、ローランドと出会ったことを忘れていて、小説を書きながら半ばトランス状態になることで記憶が覚醒したという設定だ。だから、ジェイクを意図的に殺したのではなく、気が付けばジェイクがすでに死んでいたことに気がついた、と読者に言い訳している。
「まあ、物語をつづっていて、突然、自分の意図していたのと違う展開になっていることに気づくのは、俺もたまによくある。ふと気づくと、当初のプロットとズレていて、どう軌道修正を図るか、それとも新たに生まれた軌道を大切にするかは、読み直して、その場で面白いと思ったものを選択するようにし、プロットの方を修正するわけだ」
晶華「4巻はローランドさんの語る昔話で、5巻からは〈暗黒の水晶球〉とかマニ教団の魔術で異世界転移する形ね」
NOVA「それとクリムゾン・キングの手下が多元世界を股にかけて暗躍しているので、彼らの仕掛けたゲートをローランドたちが利用したのが、7巻の第1部と第2部の間だ。さらに、物語が進むにつれて世界間の境界があやふやになるようで、思いがけず出現した次元の歪みで異世界に飛ばされる現象が多発しているらしい。不安定だから、どこに飛ばされるか分からない。だから、確実に行きたい世界、行きたい時間に飛ぶためには強い意思と確かな絆(場所とか物品とか人とか)を道標にする必要がある」
翔花「運命の導きとか、ご都合主義とも言えるけど」
NOVA「確率的には、6面ダイス1個で7は決して出ない。だけど、6なら出るかもしれない。あるいは6面ダイス2個を振れるようにするとか、ダイスを20面に変えるとか、不可能を可能にする方策を見つけるのが知恵とか発想とかになるのだろう。7は出ないけど、ボーナス+1をもらえるように工夫をこらすとか、そういうアイデアの構築は、ご都合主義とは言えないだろうな。まあ、ゲーム的に考えるなら、1シナリオに1回、ご都合主義を起こせる特殊能力とか、ご都合主義は起こせるけど代償に不幸なことも時を前後して発生するとか、いろいろとバランスをとるルールもあるんだろうけど」
晶華「話を戻して、ジェイク君はタッチという超能力を持っているのよね」
NOVA「相手の精神に接触するテレパシー的な能力だな。一般的には、感受性の強さと見なされるものだけど、日本のSFだとニュータイプ的な勘の良さに例えられるか。とにかく、ジェイクは現実主義のローランドにない感受性、少年らしい心配性な面と秘めたる勇気を備えていて、先読みの才を持っている。ローランドが抜群の観察力と、見える物に対する機敏な反応力を備える一方で、見えない物に対する想像力が貧困で、予期できない出来事に対しては鈍感でもある。だからこそ、エディやジェイクのような機転の利く仲間が必要なわけだ」
翔花「ジェイク君がキングさんを庇って死ぬ場面で、ローランドさんは助けられなかったの?」
NOVA「ローランドがいち早く動こうとしたら、腰に激痛が走るんだな。ローランドが若いときの俊敏さを失って、リウマチに悩まされるようになっているのは5巻辺りから描写されているんだが、ずっと年をとったから、と思い込んでいたんだな。しかし、実は作者のキングの事故による腰痛が反映されていたことが明かされる。ローランドがキングを助けようとしたら、腰に激痛が走って動けなくなった。その時に、ジェイクがとっさに動いてキングを庇った。ローランドの前で2人が車にはねられて、その瞬間、ローランドの感じていた腰の痛みがキングに転移するんだ。キングが重傷を負ったのと同時に、ローランドは突然、健康体に戻って、その後の旅では支障なく行動できるようになるわけだ」
翔花「作者と、物語の登場人物の体調がそういう形で逆にリンクしているのも面白いわね」
NOVA「まあ、自分の感じている苦痛を作中キャラが感じているように描写することは、作者視点では割とありがちかもな。ただ、ローランドが自分の腰の痛みは、作者のケガの影響なのかと突然悟る場面は読者として、おいおいと思ったりもする。だけど、それが原因でジェイクの自己犠牲に至るのだから、ローランドとしては作者に腹立たしい思いをぶつけながら、辛辣に毒づくわけだよ。お前のせいで、俺は大切なジェイクを失ったんだ。死んでも作品を完成させろ、と脅迫したりもする」
晶華「重傷を負った作者に?」
NOVA「そう。悲しみと怒りの呪いを込めて、作者に催眠術を掛けたりするわけだ。壮絶な場面なのに、自虐的なブラックジョークに笑える仕掛け。その後、ローランドはジェイクの葬いを済ませて、この時代に来たもう一つの理由を確認しに行く」
翔花「もう一つの理由って?」
NOVA「第1部で、77年の世界でローランドとエディがジョン・カラムに頼んで、ダークタワーの象徴である薔薇を悪の手から守るために設立した企業テット・コーポが、99年にどうなっているかの確認だ。第1部で蒔いた種が第3部で問題なく咲いていることを確認して、時間移動SFっぽい面白さを描いた後で、ローランドはこの時代で死んだキャラハン神父とか、スザンナの通った痕跡を辿り直して、オイと共にもう一度、ダークタワーのある〈終焉世界〉に帰還する。そして、スザンナと合流して、ジェイクの死を報告した後、旅を再開するわけだ。そのまま、第4部に続くんだけど、今度はまた別の小説の登場人物、画家のパトリック・ダンヴィルというキャラが登場するらしい」
晶華「何だかいろいろな物語がリンクしているのね」
NOVA「チェックするのも大変だが、本作のここまでの感想記事をつづるに際して、後書きには相当お世話になった。後書きから作品タイトルをチェックして、インターネットで人様の感想記事を読んだりしながら、キングの多元世界の断片なりとも確認できたと思う。さて、残りの4部と5部を今月中に読了できるといいなあ。まあ、感想書くまでは無理かもしれないけど(来月になりそう)、読むぐらいなら何とかなると思うんだ」
(当記事 完)