フラットランドから西部文明圏へ
シロ→マシロン「では、獣使いマシロンとしてプレイを始めるぞ」
晶華「じゃあ、私がディレクター(GM)役ね」
009「ぼくは昔のウォーロック版経験者として、必要なときの解説役を担当しよう」
翔花「わたしは……特にすることがないので、野次馬やってます」
晶華「お姉ちゃんは、NPCヒロインをお願いするわ」
翔花「え? わたしはストーリーを知らないんですけど?」
晶華「大丈夫。必要なときには、私がフォローするから(ニヤリ)」
翔花「何だか邪悪そうな笑みを浮かべたんですけど?」
晶華「気のせいよ」
マシロン「ちょっと待て。NPCヒロインって、もしかして彼女のことか?」
晶華「シーさんはストーリーを知っているみたいだけど、ここは知らないふりをして。その方が面白いから」
マシロン「翔花はストーリーを知らないんだろう? それなのにNPCをできるのか?」
晶華「該当パラグラフに書いてるヒロインのセリフを読み上げてもらうだけだから簡単よ」
マシロン「……分かった。ディレクター役に従おう」
晶華「じゃあ、パラグラフ1番です。マシロン君は師匠の埋葬を終えた後に、その遺言に従って旅を開始しました。そして、フラットランドからトロール牙峠を無事に越えました。ここは凶悪なオークやゴブリンが出没することで有名なのですが、大きな危険には遭遇することはありませんでした。それでも山越えの道で疲労も溜まったので、体力点を4点減らしてください」
マシロン「パラグラフ1番から、いきなりかよ(22→18)」
晶華「弱音を吐かないで。旅はまだ始まったばかりよ。峠を越えると、そこは荒涼とした逆風平原です。前方の西の空に夕焼けが広がっていて、そろそろ野宿をする場所を見つけないと、と考えています」
マシロン「ここまで人に会わずに来たんだよな」
晶華「この近辺にはサラモニスという大きな街があるのですが、どうも地図を持たずに旅を始めたマシロン君は、街の位置が分からないまま、通り過ぎたようですね」
マシロン「文明人なら道に迷ったと嘆くんだろうけど、自然とともに育ってきたボクは野宿にも慣れている。それに、たとえ街に着いたとしても金を持っていないから、宿に泊まることもできない」
翔花「大丈夫。お金がないなら残飯漁りをすればいいって、ゲームブックもあったし」
マシロン「残飯漁りをするぐらいなら、狩りをして食いつなぐさ。野外でのサバイバルなら大得意だ」
晶華「そんな野生児の鋭い視力が、前方の丘の向こうに不穏な土煙が立ち上るのをとらえました。丘に上ってみると、眼下ではたくさんの人馬が入り乱れ、争っているのが分かりました。どうやら野盗の一団が、隊商のキャンプを襲っているようです。商人たちも健闘していますが、数は野盗側が多くて、放っておくと敗れることは明らかです。このまま戦いを黙って見ていますか、それとも隊商を助けるために動きますか?」
マシロン「悪い奴をやっつけて、弱い者を助けるのが、師匠から学んだことだ。見て見ぬフリなんてできないさ」
隊商を救出するために
晶華「隊商を助けようと決意したマシロン君ですが、野盗の前に闇雲に飛び出して行っても多勢に無勢なのは明らかなので、獣の力を借りようと思います。狼の群れを呼び出しますか、それとも野盗の乗ってる馬を操りますか?」
マシロン「狼が近くにいるかは分からないので、運だめしが必要なんだな。馬なら確実にいるので、馬を操る方が得だ。馬よ、ヒヒーンしろ」
晶華「馬を操るのに、体力点を3点消費します(18→15)。ヒヒーンと暴れた馬は乗り手を振り落とし、固いひづめで踏みつけます。野盗たちは大混乱で、その隙に隊商側の護衛戦士たちが反撃に出ました。あなたも彼らと協力して戦いますか、それとも危険を冒すのを避けて、見ているだけにしますか?」
マシロン「これ、戦いに参加すると、技9、体12のボスと戦わされるんだよな。同じ技術点9だったら、危険な戦いになるので、戦いは避けます」
晶華「ボスを倒せば、攻撃力+1の魔法の腕輪が手に入るのに?」
マシロン「それは魅力だけど、腕輪を入手しない方が、後でもっといいアイテムを入手できるから、ここでは避けておきます」
晶華「だったら、戦士たちは野盗に打ち勝ち、倒されなかった者もみな逃げ出しました。しかし、戦士たちは戦場近くに隠れていたマシロン君を見つけ出して、盗賊の仲間かと疑っています。魔法を示して、彼らを助けたのが自分だとアピールしますか? それとも魔法を使うことで、かえって戦士たちを恐れさせる危険を避けるため、黙っていますか?」
マシロン「黙っていると、誤解でボコボコにされるので、魔法を使います」
晶華「体力1点を消費します(15→14)。馬を操ってダンスさせると、彼らは獣使いの芸に感心して、疑いを晴らすとともに、先ほどの支援を感謝してくれます。護衛隊長がマシュウと名乗って、これから北西にあるチャリスの街に向かうから一緒に来ないか、と誘ってくれるのですが、同行しますか? それとも一人旅を続けますか?」
マシロン「同行すると旅が楽になるので、初見だと同行が正解だと思うんだけど、それを選ぶと重要フラグが立たないので、攻略不可になるんだよな。ここは一人旅を続けるのが正解だ」
晶華「……先に正解が分かっていると、何だかズルいわよね」
マシロン「物語をテンポよく進めるには、その方がいいんだよ。ここで隊商といっしょに行くと、大事な親友と出会えなくなるからな」
晶華「では、マシュウさんは、せめてものお礼だ、と言って、その夜だけは夕食をごちそうしてくれます。体力点を4点回復してください」
マシロン「14点から18点に回復した」
晶華「さらに、『もしもチャリスの街に来たら、妻の経営している〈イレブン亭〉という酒場に寄ってくれ』と言います」
翔花「イレブン……確か英語で11って意味よね。何か意味があるの?」
晶華「いわゆるパラグラフ・ジャンプに必要な手がかりよ。ちょっとした謎解きみたいなものね」
翔花「ふ〜ん、英語の分からない読者さんにはお手上げね」
009「当時のウォーロック誌の読者なら、大体、中高生以上じゃないかな? 英語を知らない小学生が読んでいる可能性もあるかもしれないが」
マシロン「とにかく〈イレブン亭〉の名前は覚えておくとして、他にもアイテムを譲ってくれるんだよな」
晶華「ええ。以下の6つから、2つを選んでね」
- 15メートルの縄
- ランタンと火口箱
- 予備のナイフ
- ハンマー
- 革のブーツ
- 布の服
マシロン「縄と、ランタン&火口箱が当たりと見た。ハンマーも役立つ局面はあるが、ランタンは攻略必須アイテムだし、縄は直後の遭遇で役立つ」
晶華「……正解を知っている相手とするゲームって、何だかつまらないわね。ここまでダイスも振ってないし」
親友との邂逅
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ69)
・技術点9
・体力点18/22
・運点11
・食料:5
・金貨:0
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱
・手がかり:チャリスの街では〈イレブン亭〉に行くといい
晶華「では、隊商と別れて、一人旅を決断したマシロン君。北西へ向かえば、チャリスの街があり、西へ向かうと太古の森がある、と聞いています。森には魔法の知識に詳しいハーフエルフの部族が住んでいる、と師匠のケマンダーが言っていました。さあ、どちらへ向かいますか?」
マシロン「そりゃあ、森だろうなあ。チャリスの街に行くなら、隊商と別れる必要がないわけだし」
晶華「このパラグラフ69番は、隊商を野盗から見捨てた場合も、通過することになりますので、その場合は少し判断に悩むと思うわ」
マシロン「攻略手順としては、ハーフエルフの森の後で、チャリスへ向かわないと詰むわけで」
009 「ゲームブックには森の名前が書いていないけど、地図から考えて、やはり〈ヨーレの森〉なんだろうなあ。『バルサスの要塞』の主人公が修行したことで有名なところだ」
マシロン「エルフの魔法使いなら、鋼鉄ゴーレムの件で助けになるかもしれない、と期待しながら森に入るわけだ。そして、森で道に迷って、すぐに夜が来る。仕方ないから、安全な樹上で眠りに就く、と」
翔花「あれ? 野外のサバイバルは慣れているんじゃなかったの? あっさり道に迷うなんて、レンジャーとしては恥さらしよ」
マシロン「仕方ないだろう? ボクの得意地形は、広い平原だから森は専門外なんだよ。大丈夫。いざとなれば、森の動物を召喚すれば、いいわけだし」
翔花「道に迷う前に、召喚すればいいだけでしょ?」
マシロン「大丈夫。冒険者としては、道に迷うのも一つの経験だ……と呑気に構えている。食べ物も十分にあるし、道に迷っているうちに、親切なハーフエルフが発見してくれる可能性もある……と世間知らずの田舎者だから、他人の善意を信じてるんだ」
翔花「まあ、花粉症ガールも森にいると安心できるしね。野外暮らしに慣れた人なら、道に迷ってもサバイバルできると言われたら、こっちが心配しても仕方ないのか」
マシロン「そうそう。だから、おやすみ💤」
晶華「ディレクターが説明する前に、勝手に話を進めて寝てるし。ええと、森の中で道に迷って歩いているうちに体力点4を消耗します(18→14)。疲れた体を休めるために、樹上で眠るか、地面で眠るかの選択肢があったんですけど?」
マシロン「地面で眠ったら危険だって、ガンダムが教えてくれた」
晶華「ガンダムなんていないでしょ? ここはジークアクスの世界じゃないんだから」
マシロン「だったら、ガンダムって名前の森の精霊の声が聞こえたことにしよう」
翔花「じゃあ、わたしが森の精霊の役をやるね。わたしがガンダムです」
晶華「そのままの固有名詞じゃ芸がないので、森の精霊グアンドゥムとでも名付けましょう」
翔花→グアンドゥム「わ〜い、自分のキャラクターができた。じゃあ、グアンドゥムのお告げです。マシロンよ、地面は危険なので、樹上で眠りなさい」
マシロン「さすが太古の森だ。フラットランドでは微かにしか聞こえなかった大地の精霊の声が、こんなにはっきりと? ここだと、精霊魔法も使えるような気がする」
晶華「気のせいだから。ゲームブックに載ってない特殊能力は勝手に生えて来ないから」
マシロン「とにかく、そうやって眠っていると、事件が発生するんだな」
晶華「そうよ。気を取り直して、イベントを進めます。夜明けごろ、地上が騒がしくなったので目が覚めました。見下ろすと、一人の旅人が怪物に襲われています。その怪物は、師匠から教わったことのある土魔人。地中に潜んで、通りがかった人間をみさかいなく襲う凶暴な魔物です」
マシロン「こいつの体は土そのもので、大地から力を得ているので、きわめて手強いんだな」
グアンドゥム「……と、わたしが教えたことにします。さあ、マシロンよ。あの旅人を助けることが、あなたの使命です。……プレイヤーはよく知らないけど」
マシロン「まあ、合ってる。グアンドゥムの言葉に従い、旅人を助けてやる。そうしないと、ゲームがクリアできないからな」
グアンドゥム「ここで縄を使うのです」
晶華「って、何でストーリーを知らないはずのお姉ちゃんが、分かるのよ!?」
グアンドゥム「森の精霊は森に関わることなら何でも知っている♪ というか、さっき言ってたでしょう? 『縄は直後の遭遇で役立つ』って」
マシロン「グアンドゥムの導きに従って、背負い袋から縄を取り出すぞ」
晶華「土魔人は地面から離れると力を失う、とグアンドゥムが言ってます。縄をうまく使えば、土魔人を地面から引き離すことができるかもしれません。縄の端を輪にすると、投げ下ろして魔人に引っ掛けようとしました。技術点判定を行なってください」
マシロン「初めてのダイス判定だな。(コロコロ)3が出たので、余裕で成功」
晶華「三味線屋の勇次さんや組紐屋さんみたいに、土魔人の体に縄を引っ掛けると、マシロンさんは枝から飛び降りました。そのまま枝を支点に縄で魔人を引き上げようとしますが、人一人の力で持ち上がるほど魔人は軽くありません」
マシロン「その辺が必殺仕事人と違って、山本さん流のリアルなんだな。旅人に声をかけるぞ。力を貸してくれ。そいつを倒すには、地面から引き上げないと」
晶華「旅人は急に頭上から降りてきたマシロンさんに驚きながらも、すぐに事態を理解して協力してくれます。2人がかりの力で縄を引っ張り、魔人を宙吊りにすることに成功しました」
マシロン「そのまま、縄の端を近くの木に結びつけて、固定する」
晶華「それによって、『技術点12、体力点15(ダメージは1点ずつしか与えられない)』という強敵だった土魔人は、『技術・体力ともに9(ふつうに2点ずつのダメージが通る)』に弱体化しました」
マシロン「それでも技術点9は、ボクにとっては強敵なんだけどね」
晶華「『後は俺に任せろ!』と旅人が宣言します。技術点12、体力点15の凄腕剣士が土魔人と戦ってくれますので、マシロンさんは縄を押さえながら、見守るだけにします。さあ、旅人さんの分はお姉ちゃんがダイスを振って」
グアンドゥム→旅人「じゃあ、森の精霊の加護で、旅人の戦いを支援するってことで」
結果的に、無傷で土魔人を撃退した旅人だった。
旅人(翔花)『ありがとうよ。あんたのおかげで助かったぜ。俺の名はザカレミイ。見てのとおり、冒険者さ。ザックと呼んでくれ……とパラグラフ150番に書いてます』
晶華「ザックは食料を分けてくれ、ふたりで食事をとりながら、互いの身の上話を簡単にしました。体力点を4点回復してください。さらに良き友人を得ることができたので、運点も2点回復です」
マシロン「運は使ってないので変わらないけど、体力は18点に戻ったのがありがたい」
晶華「ザックさんのセリフの続きも、お姉ちゃん、読んで」
ザック(翔花)「分かった。『俺はこれから北へ行くつもりだ。チャリスを通ってダークウッドに行くのさ。あのあたりで面白い冒険ができそうなんでな。いっしょに来るかい?』とザックさんは誘ってくれます」
念のため解説すると、ダークウッドはFFゲームブック3巻『運命の森』の主要舞台。その後も、善の魔術師ヤズトロモや、北にあるドワーフの町ストーンブリッジと合わせて、たびたびFFゲームブックに登場する名所となっています。
『運命の森』の攻略記事はこちらから。
マシロン「ザックと同行したいのもやまやまなんだけど、ダークウッドまで寄り道している余裕はないので、チャリスですぐに別れることになるんだな。今回はハーフエルフのイベントを見たいので、ここでいったん別れよう。また、再会を約束して」
ザック『残念だな。またどこかで会えるといいんだが……そうだ、ブラックサンドに行くならダルミナートの酒場に寄るといい。あそこの主人とは顔なじみなんだ。俺も冒険を終えたらブラックサンドへ行くよ。生きていたらまた会おうぜ』
マシロン「ああ、友よ。お前の力がなければ、ボクの冒険は成功しない。ダルミナートの酒場には、必ず寄らせてもらう。これで重要なフラグが立った」
晶華「ザックさんはついでに〈イノシシの毛皮〉をくれます。街で売ったら、お金になりますよ」
ハーフエルフの予知魔法
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ190)
・技術点9
・体力点18/22
・運点11
・食料:5
・金貨:0
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、イノシシの毛皮
・手がかり:チャリスの街では〈イレブン亭〉に行くといい
ブラックサンドでは、ダルミナートの酒場に寄ること
晶華「北に向かったザックを見送ったマシロン君は、さらに森をさ迷い歩いているうちに、突然、草むらから飛び出してきた黒ヒョウに襲われます」
マシロン「素早く身をかわして、相手が獣だと確認すると、獣使いの魔力を発動させるぞ。インスタンス・ドミネーション!」
晶華「体力点を4点減らしてください」
マシロン「18点がまた14点に下がった。体力点の変動が結構多いゲームだな」
晶華「マシロン君は精神集中しましたが、どうも黒ヒョウの精神は、素朴な獣よりも高度な知性がある感じで、うまく掌握できないようです」
マシロン「こいつ、ただの獣じゃないのか? と驚きます。プレイヤーは知っているんだけど、うまく操れない。だけど、この黒ヒョウを攻撃するのは禁じ手なんだよな。ハーフエルフの信頼を得るためには、おとなしく様子見をしないといけない」
晶華「黒ヒョウは威嚇するように牙をむき出したまま、緑の目でマシロン君をにらみつけていますが、そこに『よしなさい、シーナ。この人は悪人ではないようだ』と、緑色の服を着た背の高い若者が現れます。とがった耳と、やや吊り上がった目つきから、エルフの血を引くことが分かりますね」
マシロン「なるほど。その黒ヒョウは、ハーフエルフのペットだから、他人の支配を受けつけないってことか」
晶華「そういうことを言うと、『誰がペットよ!』と黒ヒョウは言葉を発して、スッと変身を解くと、緑衣の美しいハーフエルフの娘の正体を明かしました。すっくと立ち上がった娘、シーナはマシロン君を険しい目でにらみつけます」
マシロン「おっと、獣に変身していたのか? その種の魔法は師匠が見せてくれたが、気付かなかったよ。ボクにはまだ習得できなかったが、さすがはハーフエルフだ。見事な魔法の使い手だ、と感心したように言います。ペット呼ばわりは失礼だったね、と謝罪の言葉も付け加えて」
晶華「『こちらも妹が失礼しました。このとおり、はねっかえりなもので手を焼いています』と、ハーフエルフの若者はそっぽを向いたシーナさんに代わって、謝罪をします。『ところで、魔法使いの師匠がおられるのか? どちらのお弟子さんで?』と誰何してきますよ」
マシロン「ケマンダーの名前と、自分の使命について明かします」
晶華「善き魔法使いケマンダーの名は、ハーフエルフも知っていたようで、その死にお悔やみを申し上げた後、弟子のあなたを信用して、森の奥の村まで案内してくれます。エルフの魔法で巧妙に隠されているので、外の人間には発見できないようになっていたんですね」
マシロン「グアンドゥムは知らなかったのか?」
グアンドゥム(翔花)「知っていたから、シーナさんを導いたんだけど、まさか敵と勘違いして襲いかかるとは思わなかったわ」
マシロン「何と言って導いたんだよ?」
グアンドゥム「森に入ってきた人間がいるから、しっかり対処してやって。世界を破壊する闇に関わっている重要人物だからって」
マシロン「間違ってないけど、そういう言い方じゃ誤解を招くだろう。それじゃあ、ボクが世界を破壊しようとしているみたいじゃないか。こっちは世界の破壊を止めようとしている側なのに」
グアンドゥム「結果的に、ハーフエルフの村まで迎え入れられたのだから、問題ナッシングってことで」
晶華「ともあれ、ケマンダーの弟子をハーフエルフさんたちは歓待してくれ、体力点が6点回復しました」
マシロン「20点になったのはありがたい。それで、鋼鉄ゴーレムについて、何か知らないかな?」
晶華「村の長老さんが言うには、村の外のことはあまり知らないとのこと。ただ、やはりブラックサンドでニカデマスさんに聞けばいいのでは? と」
マシロン「ニカデマスさんは有名だからな」
晶華「他に、村の魔法は森の平和を守るためのもので、自然とは関わりないゴーレムには通用しないだろう、と長老さんは言いますが、代わりに未来予知の儀式魔法なら手がかりを与えられるかも、と提案してくれます」
マシロン「未来予知か。じゃあ、試してみよう」
晶華「すると、薬草の粉末を吸い込むことで、幻覚を見る儀式が執り行われます。D6を振ってください」
マシロン「(コロコロ)2が出た」
晶華「それは未来のバッドエンドのパラグラフ。石を投げたけど外して、ゴーレムが反撃に強力な冷凍光線を放ちます。あなたはたちまち凍りつき、花は枯れ、鳥は空を捨て、人は微笑みをなくす未来を幻視しました」
マシロン「何だ、その太陽戦隊みたいな未来は!?」
グアンドゥム「その恐ろしい鋼鉄ゴーレムのもたらす未来を阻止するために、マシロンよ、あなたのアニマルパワーが必要なのです。そう、3つの獣と人の力が合わさったとき、大いなる精霊の王が誕生するでしょう」
マシロン「いつの間にか、予言に森の精霊が加わっているし。とにかく、鋼鉄ゴーレムが冷凍光線を放つことは分かった」
晶華「なお、予知の種類は6種類。他の出目だと、こんなバッドエンドの予言が見られます」
- 1:ゴーレムの持つ三叉の矛から放たれた電撃を受けて死亡
- 3:岩妖怪がゴーレムの額のルビーを砕いて、大爆発が生じる。ブラックサンドが吹き飛び、爆発の中心近くにいたマシロンも粉々に消滅する
- 4:魔女のナイフが心臓に突き刺さって死亡。マシロンの血がルビーに降り注いで、その魔力を活性化させる
- 5:明かりのないままブラックサンドの地下をさまよい、力尽きて、ドブネズミの餌になる
- 6:魔法使いに切りかかるものの、緑色の炎を浴びて燃え尽きる
マシロン「改めて見ると、バッドエンドの多い話だな、これ」
晶華「後でまた、バッドエンド総数を数えてみましょう」
マシロン「とにかく、予言を全部見ると、岩妖怪にゴーレムを攻撃させてはいけないとか、魔女に注意とか、明かりは必要になるとか、魔法使いにうかつに切りかかってはいけないとか、ゴーレムは冷凍光線とか電撃とか多彩な技を使うとか分かるんだな」
009「なお、太古のゴーレムを復活させようとする魔女の話だと、FF23巻『仮面の破壊者』を参考にしたことが考えられる。同ゲームブックが87年11月に邦訳出版されたことを考えると、88年6月号の雑誌に収録された当作品の執筆に十分間に合うわけだ。もちろん、シチュエーションは同じでも、舞台やストーリーの流れは全然異なるし、主人公の獣使いの能力は、当時の他のFFゲームブックに見られない独創性の高いものだから、パクリには当たらない」
晶華「そもそも、『仮面の破壊者』を参考にしないと、第3部のクール編が書けないよね」
マシロン「予知の魔法で、この先に待ち受ける危険に対して、覚悟を新たにしたボクは、翌朝、旅を再開することになる」
晶華「昨日、あなたに襲いかかったシーナが出発間際に駆けつけてきて、『待って。昨日は悪かったわ。お詫びにこれをあげる』と言うと、〈魔よけのペンダント〉を首にかけてくれます。そして無邪気な笑みで旅立つあなたを見送ってくれます。運点1点も得られますね」
マシロン「運点は使ってないから増えないんだけど、順調に進めていけば、きちんと運が回復するゲームは好印象だよね」
晶華「とにかく、太古の森のエピソードはこれで終わりです。森の精霊グアンドゥムとも、ここでお別れです」
グアンドゥム(翔花)「いっしょに付いて行ったりはできないの?」
晶華「無理です」
翔花「黒ヒョウガールのシーナさんに憑依して、後からマシロンさんを追っかけて来るとか?」
晶華「面白いネタだけど、山本さんのゲームブックの大筋ストーリーをそこまで改変するつもりはないわ。グアンドゥムが出て来ただけでも、改変なのに」
翔花「『モンスターの逆襲』では、ゴブリンの代わりにタヌキを主人公にしたんだから、黒ヒョウガールを主人公のパートナーにしてもいいと思うんだけど?」
晶華「お姉ちゃんには、また違うヒロインを演じてもらうから、これ以上キャラを増やさないで」
翔花「分かった。今回の主役は、わたしじゃなくてシロちゃんなんだから、これ以上のわがままは言いません」
チャリスへ
マシロン「それでは、改めて北のチャリスへ向かうとしよう」
晶華「チャリスへ一人旅をすると、ランダムで3つのイベントが発生します。1Dを振ってください」
マシロン「3だ」
晶華「オークの集団(技6、体20)が出現しました。戦ってください」
マシロン「技術点はザコだけど、数が多いので体力がすごいことになってるな。最低でも10ラウンドはかかってしまう」
じっさいには12ラウンドかかった(2回引き分け)。
幸い、ノーダメージで撃退することができて、しかも金貨15枚をゲットできた。
なお、ここでのランダムイベントは他に、こうなってる。
- 出目1と2:火トカゲ(技7、体8。与ダメが熱で2点増加して4点の強敵)。倒すと、火炎ダメージを1点減らす〈火トカゲの皮のマント〉を作ることができる。さらに3食分の食料(1食で6点回復)という美味しい戦利品が得られる。
- 出目5と6:イノシシ(技6、体6)。倒すと、〈イノシシの毛皮〉と食料4食が手に入る。
マシロン「オーク相手だと食料は手に入らないけど、まあ、現金収入は無一文のボクにはありがたい」
晶華「毛皮を市場で売って、お金に換えることもできるんだけどね。そんなわけで、戦いを切り抜けて、無事にチャリスの街に到着しました」
マシロン「イレブン亭に行けばいいんだな」
晶華「店の名前に、100を足したパラグラフへ進んでください」
マシロン「これが、凝ったゲームブックに付きもののパラグラフ・ジャンプのシステムか。情報を得ていなければ、進めない項目がある、と」
晶華「これが多用されているゲームブックは、パズル性が高いと言えるわね。FFでは、イギリスのスティーブ・ジャクソンが第4作『さまよえる宇宙船』で始め、第10作『地獄の館』で確立させたそうよ」
009「厳密には、第1作の『火吹山の魔法使い』でも最後の宝箱の鍵が、パラグラフ・ジャンプの原型とも言えるが、必須アイテムのシステムと、情報を得てのパラグラフ・ジャンプは別ものとして扱うべきとするゲームブック研究者もいて、その見解に則るなら、『さまよえる宇宙船』が初となる。いずれにせよ、ジャクソンが開拓したゲームブックシステムであることは間違いない。『ソーサリー』のシリーズでも、巻が進むほど多用されていくようだ」
マシロン「とにかく、111番へ進めばいいんだな」
晶華「イレブン亭では、マシュウさんが待っていました。『また会えたな! 元気で何よりだ。まあ一杯飲もうじゃないか!』 マシュウさんのおごりで飲み食いしたおかげで、体力点が4点回復します」
マシロン「やった、全快だ」
晶華「そして、マシュウさんは、『ブラックサンドまで行くには一人だと危険だから、途中のシルバートンの街まで向かう隊商の護衛として、いっしょに行くといい』と言って、〈紹介状〉を書いてくれます」
マシロン「おお、何て親切なんだ。野盗から助けて良かったよ」
翔花「人に親切にすると報われるゲームブックは、良いゲームブックね」
晶華「まあ、最初に隊商を助けなくても、少し苦労はするけど、解けなくなるわけじゃないけどね。攻略に必須なのは、マシュウさんじゃなくて、ザックさんの方だし」
マシロン「それでも、マシュウさんと知り合いになれたのは良かったと思う」
晶華「さて、マシュウさんとの再会劇の後では、チャリスの市場でいろいろ売買ができます」
ちなみに一番高価な売り物は、〈火トカゲの皮のマント〉で金貨20枚で売ることができる。
その次に高価なのは〈魔よけのペンダント〉で売却価格が金貨10枚。しかし、シーナからもらったペンダントを売る気にはならず、ここではザックからもらった〈イノシシの毛皮〉のみを金貨4枚で売る(所持金19枚)。
買い物としては、食料1食が金貨2枚で、縄(金貨2枚)、ランタンと火口箱(金貨4枚)の他に、ハンマー(金貨6枚)、銀のナイフ(金貨10枚)が未入手アイテムとして買いたくなるが、いずれも攻略必須ではないと割りきって、買わずに留める。
こうして、チャリスの市場を後にして、パラグラフ84に向かうマシロンだった。
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ84)
・技術点9
・体力点22
・運点11
・食料:5
・金貨:19枚
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、イノシシの毛皮、魔よけのペンダント、紹介状
・手がかり:チャリスの街では〈イレブン亭〉に行くといい
ブラックサンドでは、ダルミナートの酒場に寄ること
ブラックサンドでは、魔法使いのニカデマスを訪ねること
鋼鉄ゴーレムは冷凍光線を放つ
晶華「今回はここまでよ。次回は、いよいよ待望のヒロインが登場します。挿し絵付きで可愛い美少女であること確定だから楽しみに」
翔花「シーナさんの挿し絵はないの?」
晶華「一応あるけど、彼女の出番はもうないから」
翔花「でも、記念に貼り付けておきましょう」
(当記事 完)