FFゲームブックの魔法使い主人公の話
NOVA「さて、今回は魔法研究の話だが、FFシリーズで魔法というテーマだと、『バルサスの要塞』と『ソーサリー』シリーズという2大名作の名が真っ先に出てくる」
晶華「FFゲームブックの主人公は基本的に戦士だから、魔法使いがプレイできるゲームって少数派よね」
NOVA「日本のゲームブックは、名作『ドルアーガの塔』みたいに最初は戦士だったのが、冒険の途中で少しずつ魔法を習得していく作品がいくつか登場して、実はドラクエの勇者の影響なんだろうとは思うが、やはり剣と魔法の両方を使いこなしてこそのファンタジー主人公って感じはする」
晶華「他に魔法が使える作品は?」
NOVA「最近、FFコレクション5で復刻した『サソリ沼の迷路』が善中悪の3系統の魔法が設定されていて、自分のパトロンの魔法使いから使い捨ての〈魔法の石〉を提供される形で魔法が使える。主人公は戦士であって、厳密には魔法使いではないわけだ。あくまで石というアイテムに封じられた魔法を発動できるという形で、魔法を扱えるお手軽仕様ということになる」
翔花「魔法使いとしての修行はしていない、と」
NOVA「一方、FFゲームブックの代表と言うべきサー・リビングストンは戦士専門なんだが、彼の作品で珍しく主人公が魔法を扱えるのがFF14巻の『恐怖の神殿』だ。ルール部分には魔法のことが書いていないので、いつもの戦士かと思いきや、序盤にパトロンの大魔法使いヤズトロモさんが『運命の森』でマジックアイテムを売ってくれるのと同じような感覚で、魔法を伝授してくれる。だから、『恐怖の神殿』の主人公は魔法戦士として旅立つことになる。この作品で魔法が使えることは、意外と盲点だったりするな」
晶華「『恐怖の神殿』はまだ、コレクションには収録されていないのよね」
NOVA「来年か、再来年には復刻することを期待するが、その次に魔法だと28巻の『恐怖の幻影』でエルフの魔法戦士をプレイすることができる。また、FFコレクション2に収録された34巻の『魂を盗むもの』では、主人公の戦士が救出した魔法使いから少しばかりの魔法を授けられて、最終決戦の異空間に突入することになるな」
翔花「『恐怖の幻影』もFFコレクションに収録されるのを待っているんだ」
NOVA「作者のウォーターフィールドさんとの交渉が進行中という話を以前に聞いたからな。さておき、最近作ではやはりジャクソンの70巻『サラモニスの秘密』において、綴り魔法という言葉パズル的な魔法を習得できて面白い。冒険者志望の少年主人公の成長物語だが、ルート選択によっては『バルサスの要塞』の魔法戦士になるという未来にもつながって、シリーズの絡みからも非常に面白い記念作だった。とりあえず、翻訳分ではこんなところか。いや、もう一つあったな」
晶華「忘れられた一冊?」
NOVA「いや、忘れていたわけではないんだが、FFコレクション5に収録された『火吹山の魔法使いの伝説』において、主人公は4人の中から1人を選ぶ仕様になっていて、そのうちの1人が魔術師サラザールなんだ」
翔花「他の3人は?」
NOVA「蛮人アンバー、戦士ブラクサス、ドワーフのスタッブルだが、今、初めてルールの中身を読んでいる」
晶華「2月に購入していて、今、初めて読むなんて何をしていたのよ!?」
NOVA「そりゃあ、『王子の対決』の解析と、『サソリ沼の迷路』と『狼男の雄叫び』をいろいろチェックしていたからな。さすがに一度に何もかもはできないさ。『火吹山の魔法使いの伝説』はすぐにプレイする気もなかったので、中身を開いたのも今が初めてだ。ええと、〈アマリリアの呪文書〉というものがルールに記載されていて、13種類の魔法が使えるようになっているな」
晶華「13種類かあ。ロタールさんの戦闘呪文は12種類だったから、サラザールさんの方が優秀なのかしら?」
NOVA「まあ、6分の1で発動失敗するリスクがない分は、ロタールよりもサラザールの方が優秀とも言えるが、単純に数だけで言うなら、ロタールの使える呪文数は、ソーサリーの48種類に次ぐ37種類だからなあ。使える呪文のヴァリエーションは歴代FF主人公の中でもナンバー2という快挙だ。その種類の豊富さを今からチェックしようって記事だよ」
消費魔法点1の魔法
NOVA「まず、手軽に使える系の魔法だな。全部で12種類ある」
- 発火:4回使用
- 透明:3回使用
- 弱体化:2回使用
- 跳躍:2回使用
- 眠り:2回使用
- 発見
- 巨体
- 停止
- 浮揚
- 沸騰
- 影
- 真実を語る
NOVA「《弱体化》《眠り》《影》は戦闘用呪文リストともかぶるが、通常使用だと若干、効果が違うようにも描写されている。《弱体化》は通常使用だと魔法点1で使えるが、戦闘時に使うと魔法点2に消費が増えているので、同じ名前の別呪文と見なすことにした」
晶華「4回使用ってのは、呪文使用のパラグラフに登場する回数ってことね」
NOVA「『王子の対決』の魔法ルールの特徴に、プレイヤーが前もって覚える呪文を記録しておく必要がなくて、その都度、パラグラフの選択肢に3つか、稀に4つの呪文選択肢が出るわけだ。その中には、《沸騰》のようにたった1回の使用機会にも関わらず、状況解決には寄与しない残念呪文もあるわけだが、《発火》や《透明》は何度か使用機会があって、ロタールにとってよく馴染んだ使い慣れている呪文だと伺わせる」
晶華「火炎系と、幻惑系、それと移動系の呪文が充実している感じね」
消費魔法点2の魔法
NOVA「続いて、消費魔法点2の呪文を見てみよう。こちらは7種類だ」
- 縮小:3回使用
- 幻影:3回使用
- 水上歩行:2回使用
- 呼吸強化:2回使用
- 火の玉
- 体力増加
- 魅惑
晶華「戦闘用呪文に《体力強化》(ダメージ+1)と《活力増加》(技術点+1)があって、《体力増加》と紛らわしいんですけど?」
NOVA「複数回使う4番までと違って、後半は使ってみたけど、有効ではありませんでしたってイメージが強いなあ。《水上歩行》は毒魚の泳いでいる湖を渡るには役立ったけど、溶岩プールを渡るには有効でないとか、良し悪しがはっきりしている」
晶華「そりゃあ、溶岩の上を歩いて火傷するのは当たり前でしょう。無事に渡れると思う方がどうかしていると思うわ」
NOVA「水中活動で便利な《呼吸強化》は人魚の試練に挑む際には必須だな。あと、溶岩イベントで思ったのは、《耐熱》とか防御向きの呪文は習得しないんだ、ロタールって。飛んでくる矢をそらしたり、防壁を作ったりする呪文は使わない。ソーサリーの妖術が割とそういう防御呪文が充実しているのと比べても、前のめりで攻撃重視な呪文体系に思える」
消費魔法点3の魔法
NOVA「そして、ロタールにとっての最高魔力の呪文が以下の6種類だ」
- 飛行:5回使用
- 凍結:3回使用
- 変身:3回使用
- 腐食:2回使用
- いぶりだし
- 転倒(または反転)
晶華「ロタールのお気に入り呪文は、〈飛行〉だったりもする。海賊から飛んで逃げたり、奴隷商人から飛んで逃げたり、とりあえず飛んで逃げる、あるいは飛んで湖などを渡る機会は何度もあって、シーンによっては派手なイメージを味わえる」
翔花「でも、クローヴィスは魔女のほうきで飛んだり、ペガサスで飛んだり、不思議な塔の魔力で空中からロタールの前に飛来したりしたのよね」
NOVA「ロタールが船で海を越えようとして、いろいろ危険な目に遭っている最中に、クローヴィスは妖精の森でさまよい歩いているうちに、何とか森を脱出したら不意に空に飛ばされて、ロタールに追い付いて来るという、実にファンタジーなイベントだ。あのシーンで仮にクローヴィスが『オークムート島へ行きたい』とか『生き別れの弟に会いたい』とか願っての転移だったら、納得できるドラマにもなるが、どうして兄が飛んで来たのかロタールも驚いているし、クローヴィスにもよく分かっていないという再会劇は、まさに作者のご都合主義的に仕込まれた運命としか言いようがない」
魔法使用のパラグラフ数
NOVA「ともあれシリーズ屈指の種類の魔法を使いこなせるロタールだが、魔法が使える選択肢が出るパラグラフ数は17回と少ない」
晶華「それぞれのパラグラフで3つの選択肢が出るなら、呪文の結果が51パラグラフに分岐して、呪文関係だけでパラグラフ容量が多くなるのよね」
NOVA「それでも、『バルサスの要塞』では呪文が使えるパラグラフが56種類もあって充実しているし、ソーサリー1巻の『シャムタンティ丘陵』でも33種類もあって、それぞれが5つに分岐するから、呪文関係だけで150種類の結果パラグラフが用意されているわけだ」
翔花「つまり、『バルサス』やソーサリーはパラグラフ数的にも魔法の使用に力を入れているけど、『王子の対決』のロタール編は意外と魔法を使える機会が少なめってこと?」
NOVA「使える呪文の種類が豊富な割に、使う機会が少ないので、解析してみると勿体なさを感じるのがロタールの魔法ルールだな、と。一応、戦闘呪文が使えるパラグラフ数は28あるので、それを加算すると、45回の魔法使用チャンスはあるんだが、魔法点が決して潤沢にあるわけでもなく、回復しやすいわけでもないから、例えば『数日間の旅をしたので、魔法点を3点回復してもいい』とか『食料を食べたら、体力点2に加えて、魔法点を1点回復できる』という風に、魔法点を定期的に回復できるルールでも付け加えたら、もっと派手で面白いゲームになったかもしれない」
晶華「何よりも使いにくいのは《回復》の術ね。魔法点を3:2で体力点に変換できるって言っても、回復効率が悪すぎる。体力点は食料でも回復できるから、絶対に魔法点の方が貴重なのに、魔法点の方を余分に消費してしまうのでは、ただの無駄使いにしか思えない」
NOVA「せめて2:3で逆なら、まだ使えたかもしれんな。他のFFゲームブックでは、『1回の回復呪文の消費で体力点が全回復する』というポーション並みの回復効果があるので、ガンドバッドの回復呪文は食料と同じで、回復効率が悪いということになるな」
晶華「それでも何とかクリアできたからいいんだけど、終盤の魔法点の枯渇は本当にハラハラドキドキしたわ」
NOVA「80年代のTRPGは、魔法をチマチマ節約しながら使うのが魔法使いのたしなみだったな。MPの回復効率が上がったり、小休憩などで魔法の使用回数が回復しやすくなったのも、21世紀以降のゲームの特徴だと思う」
晶華「古い時代のゲームだと、魔法の連発は難しいので、チマチマ節約しながら、ここぞというところで大技を放つべきってことね」
NOVA「まあ、本作はそのここぞというところで発動失敗してギャーとなるシステムだから、魔法だけに頼らずとも、確実に状況解決できるアイテムを入手して、リスクを少しでも減らすのがロタールの最適解なんだろうな。〈魔法のじゅうたん〉の入手と、人魚の試練ルートを選ぶことで攻略記事でロザリンが陥った事故は避け得たはずだ」
晶華「解析によって、最適解まで見つけたことで、この一連の記事もいよいよ終了ね」
翔花「おつかれさまでした」
NOVA「ああ。しばらくは、他のブログの記事に移らせてもらうわ。次は、3月27日のお前たちの7才の誕生日祝いをする予定」
(当記事 完)