ここまでのIFルート
シロ「前回は、ブラックサンドでニカデマスさんからいろいろと説教されたりもしながら、ケマンダーの弟子として、鋼鉄ゴーレムと、それを復活させようとしている魔女ミューマ・バジオの手から世界を守るために決意を新たにしたマシロンだった」
晶華「これから地下遺跡のダンジョンに入るんだけど、実はニカデマスさんに会わなくても、攻略は可能なのよね。チャリスの街で、魔女ミューマが装っていた名家の娘ケイと出会いさえすれば入手できる〈指輪〉が重要フラグで、それとザックさんから聞いたダルミナートの酒場へ行くことで、ケイさんと再会して話しかけると、相手の正体を知っていたにも関わらず、またたぶらかされて捕まってしまう。そこから生け贄の場まで連行されるに任されたら、ダンジョン探索をショートカットして物語は一気にクライマックスに突入するの」
翔花「だけど、ニカデマスさんから情報を聞かないと、いろいろ謎が解明されないままにならない?」
晶華「一応、魔女ミューマも何が起こったか説明してくれるんだけどね。だから、本作を解くための必要最低限なフラグは、ザックと会うために西の森に行って彼を助けることと、チャリスの街でケイと会うことのみ(ケイの依頼は引き受けなくても〈指輪〉は入手可能)。ケイと会えない選択肢は、彼女の仕向けた強盗に対して抵抗せずにお金を差し出した場合。そうなると結果的に〈指輪〉も入手できなくて、攻略は失敗に終わるわ」
翔花「呪いの〈指輪〉だけど、攻略必須アイテムなのね」
009「ところで、ここまで攻略記事をつらねて、今ごろ気づいたんだが、『チャリスの街で、正体を隠した魔女の策略に乗って、世界を危機に陥れるアイテムを入手する手伝いをさせられる物語』って、そのまんまAFFリプレイの『タイタンふたたび』に流用されているんだな」
晶華「ああ、そっちではバルサスの妻の魔女ルクレチアさんが存在感のある悪役を務めていたけど、ケイさんこと魔女ミューマが彼女の原型に当たるのか」
009「ほぼ同じ大筋なのに、今の今まで気付かなかったわけだ。30年以上を経て気付かされた発見に、今回の攻略記事に携わった甲斐があったと満足している」
翔花「で、せっかくの解説だから、この機会にここまでのIFルートをチェックしない?」
009「とりあえず、チャリスからシルバートンへの一人旅の旅路で出会うランダムイベントの確認だな(パラグラフ96番)」
- ココモコア(小型の水棲爬虫人の種族)の集団に襲われる。倒すと、2個の宝石を入手。
- くすぐり草(ダークウッドのくびり草の亜種)に絡みつかれる。倒しても何も得られない。
- 2人組の野盗に襲われる。倒すと、金貨9枚を入手。
- 底なし沼にはまってダメージ。もちろん、何も得られない。
- 大トンボに襲われる。倒すと、〈大トンボの皮〉を入手。
- 何もイベントが起こらない。当然、何も得られない。
009「結果的に、戦利品のもらえる出目1、3、5が当たりなのかな、と思うが、入手アイテムを換金できるのはブラックサンドに着いてからなので、シルバートンで購入できるポーション類をまとめて買うのは難しい、という結論になる。それができるのは隊商ルートだけだから、間違いなく、それが最適解なんだろうな」
晶華「最初に隊商を助けることが結果的にお金につながって、お得だってことね」
009「あと、最初に野盗のボスを倒して攻撃力+1の〈腕輪〉を入手できれば、ずっと強い能力で戦えるが、ネイコーダさんから〈火酒〉がもらえない。その代わり、画家のヌードモデルになることで、運だめしを3回自動成功にしてくれる〈幸運のブローチ〉を入手できる。結果的には、こっちの方が得だろうという意見もあるな」
シロ「それよりも、ボクは冷凍攻撃無効の恩恵を重視したんだ」
009「一般的には、やはり攻撃力+1の方を重要視するだろうけどね」
ブラックサンドの地下ダンジョン
晶華「ブラックサンドの地下に、古代都市の廃墟ダンジョンがあるという設定は、『タイタン』が初出だっけ?」
009「そうなるな。だから、山本さんが本作の執筆に当たって、英語版の『タイタン』を読んでいたことは明らかだ。その意味で、本作は88年当時の日本のFF展開で重要な立ち位置を占めるんだが、まだファイティング・ファンタジーをTRPGとしてプレイする機運は高まっていなかったと思う。90年に『タイタン』やシナリオ『謎かけ盗賊』が発売されて、そこから発展系のTRPGシステム『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』に至ってようやく……って流れだが、結局は、T&Tやソード・ワールドの方にTRPGファンが群がったというか、91年に日本のFF展開は一旦終了してしまったからなあ」
シロ「結局、旧ウォーロック誌でもFFに代わって、『ウォーハンマー』をプッシュする流れになって、山本さんの『タイタンふたたび』を引き継いだ友野さんがリプレイ作家としても台頭し始める流れなのが90年代だ、と」
翔花「昔話はそれぐらいにして、そろそろ今の物語を先に進めましょう」
シロ→マシロン「そうだな。パラグラフ61番で、師匠の霊にも『今夜じゅうにゴーレムが復活するから急げ』と警告されたので、ランタンの明かりをつけて、近くのマンホールから地下に進入する」
晶華「明かりがあるなら問題なく、進むことができます。ケマンダーさんの霊が導いてくれたのか、やがて広い下水道の壁に赤い塗料で書かれた文字を発見しました」
汝の左手にかかげた心と剣が
一万と一の迷いを切り開き
正しき道にみちびく
マシロン「これは、ケマンダー師匠の筆跡だ。まちがいない」
翔花「どういう意味?」
マシロン「キーナンバーは師匠の遺した盾に描かれた7つのハートと、3つの剣。すなわち73だ」
翔花「では、パラグラフ73番に進みます。ええと、裏通りをぶらぶら歩いていると、出会った画家の人からヌードモデルになってくれ、と言われたので、断ります」
晶華「それじゃあ、話がつながってないでしょう。これは10001を73で割って、出てきた数字のパラグラフに進め、という謎解きなのよ」
翔花「5ケタ÷2ケタ! そんな高度な計算が、このわたしに解けるわけないじゃない! 終わったわ。粉杉翔花には、この山本さんのゲームブックは難解すぎて詰んでしまったわ。『暗黒の三つの顔』完。こうして、世界は魔女ミューマの野望から復活した鋼鉄ゴーレムの脅威にさらされて滅びてしまいました(涙目)。わたしは救世主になれませんでした」
マシロン「って、プレイヤーは翔花じゃないだろう!? 翔花には無理でも、ボクには解ける。行く先は137番だ」
翔花「さすがはシロちゃん。わたしには解けない高度な問題を難なくクリアするなんて、そこに痺れる憧れる」
マシロン「というか、これぐらいの割り算は小学校4年生レベルだろう?」
翔花「わたしはまだ7才だし。計算は九九で解ける割り算がせいぜいよ」
晶華「シーさん、お姉ちゃんに高学年の算数は期待しないで。とにかく、師匠の盾が光り輝き、無数の地下通路から正しき道が分かるように照らし出したってことで、話が先に進みます。しかし、よく見ると、通路には最近、人が通った形跡が見られますね」
マシロン「急がないとな。ゴーレムが目覚める前に、復活の儀式を止めないと大変なことになる」
晶華「そのとき、前方から青白い火の玉がふわふわ飛来してきました」
マシロン「何だ?」
晶華「師匠から聞いたことがあります。フェッチというエネルギー生命体の話を。地下をさまよい、魔法のエネルギーを吸いとる能力を持っています。おそらく、マシロン君の持っているマジックアイテムか、マシロン君自身の魔力を餌にしようとしているのでしょう。これを突破するには、マジックアイテム一つを与えなければいけません」
マシロン「よし、ここはシーナさんからもらった〈魔よけのペンダント〉の出番だ」
翔花「ちょっと待って。それがないと、グァンドゥムの声が聞こえなくなってしまう」
マシロン「いや、その逆だ。ここはグァンドゥムが言うんだよ。『この魔物はわたしが引き受けよう。そなたは先へ進めばいい』と。そして、首にかけたペンダントがふわりと浮かび、フェッチに向かって漂っていく。ペンダントに秘められた森の精霊の魔力をフェッチが貪っている間に、ボクは涙を流して、その場を後にする。グァンドゥム、君のことは忘れない(涙目)」
翔花「いやあっっ、わたしのグァンドゥムがーーーっ!」
晶華「大丈夫。ペンダントに秘められたのは、グァンドゥムの精霊パワーの一部だから。本体はまだ〈ヨーレの森〉にいて、健在なので。とにかく、ペンダントが文字どおり魔よけのパワーを発揮して、マシロン君は無事に先へと進みます」
なお、このフェッチというモンスターは、『モンスター事典』によると、氷系の呪文が弱点で、その魔力は吸収できないそうだ。強力な魔力の塊である鋼鉄ゴーレムを餌にしようとしないのは、そういう理由からであって、きちんと理にかなっているなあ、と感心。
晶華「次に遭遇するのは、岩妖怪です。技術点8、体力点11ですが、ナイフや剣では1点ずつしかダメージを与えられません。ハンマーを持っている場合のみ、一撃で3点ダメージを与えられます」
マシロン「ハンマーを買っておけば良かった……と初見では思うんだろうけど、こいつを倒すと『今後、この地下道では岩妖怪を呼ぶことができない』とあって気付かされる。獣じゃないモンスターも召喚できるんだって」
晶華「鋼鉄ゴーレムとの決戦では、召喚モンスターの使い方が攻略の鍵になるものね。手駒にできる魔物は多い方がいいってこと」
マシロン「だから、ここでは岩妖怪を倒さずに、操って追い払う方が正解なんだ」
晶華「体力を5点消耗します(20→15)。そして、普通の獣ではないので、あなたの能力が成功するかどうかは運次第です」
マシロン「ここで12が出たらキツい。(コロコロ)よし、ピンゾロだ♪🎲🎲 どうやら、ボクは救世主の天運に恵まれているらしい(運点残り10)」
晶華「岩妖怪は、あなたの思念に応じて、おとなしく道を通してくれました」
マシロン「気分はドラクエ5の天空の勇者……の父親だな。こっちの方が4年早いけど」
晶華「順調に地下ダンジョンを進んでいくマシロン君ですが、突然、闇の奥から魔法の投げ縄が飛んできて、全身に絡みつきます。投げ縄を放ったのは5体の骸骨男で、身動きのとれないあなたの武器を全部取り上げます」
マシロン「武器といってもナイフだけなんだけどね。盾は取り上げられない?」
晶華「骸骨は融通が利かないのか、それともケマンダーの盾が聖なる加護に守られているからか、手を出しません」
マシロン「だったら、いざとなれば盾で相手を殴ることもできそうだな。気分はキャプテン・アメリカってことで」
晶華「どう反撃しようかと策を練っているマシロン君ですが、縄に絡みつかれたままなので身動きとれないまま、ただ引きずられて行くしかないわけで、そのまま鋼鉄ゴーレムの封印場所まで連行されてしまいます」
そこは地底の石切り場のような広い場所だった。
四方の壁には魔法の明かりが並んでおり、血のように赤い光を室内に投げかけている。
部屋の中央に、黒っぽい金属でできた巨大な戦士像が横たわっていた。
額に空いた黒い穴。
それぞれに剣、三叉矛、ラッパ、水晶球を握った4本の腕。
これこそ例の鋼鉄ゴーレムに違いない!
像の左右にはたくさんの骸骨男が、整然と立ち並んでいて、まとめて相手どるのは難しいと察せられた。
そして横たわる像の頭部の横には、黒い仮面をかぶって、奇妙な黒い衣装を着た女が立っていた。
魔女ミューマ・バジオ


翔花「なるほど。イラストを比べると、仮面の魔女とケイさんが同一人物って想像できるわけか」
晶華「このイラストを描いた鈴木健介さんという方も、旧ウォーロック誌からいろいろと魅力的な絵をいっぱい描いてきた人だけど、残念ながら2018年7月に逝去されたそうなの。ウォーロックマガジンの3号で追悼特集が組まれたわ」
マシロン「今さらながら哀悼の意を表明しつつ、姿を見せた魔女に対して抵抗できないかな」
晶華「『GAK!』と女は短い妖術呪文を唱えます。すると、マシロン君の視線は魔女の仮面に吸い寄せられて、たちまち凄まじい恐怖に囚われます。全身ががたがたと震え出して、精神集中もできません」
翔花「どういうことか説明をプリーズ」
009「解説しよう。女が唱えたのは、『ソーサリー』というゲームブックに収録された48の呪文の一つだ。これを見るといいだろう」

翔花「黒い仮面もただのファッションだけでなく、実用的な意味があったのね。さすがは魔女。恐怖をもたらす呪文を使うなんて。だったら、わたしが今から魔女ミューマをプレイします」
晶華「それなら、パラグラフ58番のセリフを読んで」
仮面の魔女ミューマ(翔花)『フフ♪ これより儀式を始めましょう』
晶華「そう言って、彼女は近くにあった金属の箱から、ニワトリの卵よりも大きい巨大なルビーを取り出して、片手で頭上に高々と差し上げました」
ミューマ(翔花)『先日、ついにこのルビーを手に入れた……しかし、これだけではゴーレムを目覚めさせることはできなかった。ルビーに秘められた力を解放するには、若く健康な、そして素質のある魔法使いの心臓から流れる新鮮な血を吸わせなければならない。そう、あなたのようなね』
マシロン「やめるんだ、ケイさん。ゴーレムを目覚めさせても、制御することはできない。そんなことをしても、君の家を復興させることはできないんだ」
ミューマ(翔花)『……呆れた。あんな嘘をまだ信じていたと言うの? お人好しの田舎者だと思っていたけど、ここまでとはね。わたしの名前はミューマ・バジオ。泣いてばかりで弱いケイ・キノックスという女はこの世から消え去ったの』
晶華「お姉ちゃん、アドリブで話を膨らませなくていいから。ケイ、改め魔女ミューマの手には細いナイフが握られて、いよいよ、マシロン君の心臓に突き刺そうとしています」
もしも〈指輪〉を持っていなければ……取るに足りない臆病者など、ミューマは迷うことなく生け贄に捧げていただろう。
しかし、彼女はケマンダーの弟子マシロンという若者に興味を持ち、もう少し、会話でなぶる嗜虐心を抑えることができなかった。
『フフフ、名誉に思いなさい。師匠が封じた破壊の巨人を、弟子のあなたの新鮮な血が目覚めさせるのよ。そうすれば、偉大な師匠をあなたが超えることになるのかしら。そう、あなたの命がゴーレムに注がれ、あなたは師匠のできなかった〈世界の破壊者〉となる』
黒い仮面の女は楽しそうに、マシロンの耳元に囁いた。
まるで自分とともに暗黒神に従うよう、暗示をかけるように。
マシロンは恐怖のために身動き一つできず、魔女の蠱惑的な声に、ただ心の中で抵抗し続けるのみだった。
女のナイフが、若き獣使いの心臓に振り下ろされる!
ヒーローの出番です
晶華「あなたは、ダルミナートの酒場に立ち寄ったことがありますか?」
マシロン「ここでノーと答えたら、バッドエンドなんだよね。だけど、答えはイエスだ。ヒーローは遅れて駆けつけるんだよな」
翔花「ヒーローは、マシロン君じゃないの?」
マシロン「ボクより、よほどヒーローらしい男がいるんだよ。囚われて、ピンチのヒロインみたいになってしまったボクを助けに来てくれる美味しいキャラがね」
晶華「突然、すさまじい白光があたりに満ちあふれました。まるで室内に太陽が出現したかのよう。その光を浴びて、骸骨男たちはがらがらと崩れて行きます」
翔花「何? どうしたというの!?」
晶華「魔女は突然の異変に、おろおろと周囲を見渡しました。どこからか石が飛んできて、女の仮面を真っ二つに割ります。仮面の下から現れた素顔は、いつか見たケイという娘のものです。冷酷な雰囲気が一転、動揺をあらわにしていました」
翔花「ええと、わたしはこのまま魔女の役を続けていていいのかしら? とりあえず、こう言うわね。『何者なの!? 姿を見せなさい』」
晶華「やがて、光が薄れて消えると、たくさんいた骸骨男たちは全滅していました。床の上に散乱する骨のかけらを踏みながら現れたのは……ナイン君、出番よ」
009「……ということで、ぼくが担当することになったのが、ハンサム剣士にして真の救世主ザカレミイことザックだ。いやあ、実に美味しいNPCだと昔から思っていたんだよねえ。技術点12の凄腕剣士で、能力値的には魔法使いの主人公よりもはっきり強い。しかも、本家のFFシリーズだと、主人公の同行者NPCってしばしば道半ばに死ぬ傾向があるのに、このザックは死んでしまうと攻略不能になるという意味で、主人公と同じくらい重要キャラと来たもんだ。ある意味、FFシリーズ最強の『主人公の同行者NPC』だと思うぞ。そんなザックを演じることができるなんて、NOVAの代役のNOVA2009としては嬉しすぎる」
マシロン「新星さま代理人のナインさんがザックを担当するなんて、心強いですよ」
009→ザック「ははは、こっちこそよろしくな。ええと、ザックのセリフを読むぞ。『どうだい、すごい威力だろう? アンデッドにだけ効果のある魔法の花火だ。ダークウッドのヤズトロモって魔法使いから買ったのさ。ずいぶん高かったがな! 助け料を請求したいぐらいだ』」
マシロン「助け料の一文は原作にはないでしょう」
ザック(009)「おっと、最近の救世主は金を請求するらしいからな。とにかく、マシロンを縛っている縄を剣で切って、解放してやる。そして予備のナイフを渡してやろう。ここからは、俺とお前でダブル救世主としゃれ込もうじゃないか」
マシロン「魔女の仮面が割れたから、恐怖の呪文も効果をなくしたってことでいいね」
晶華「それでいいわよ」
マシロン「ところで、ザック。どうして、ここが分かったんだ?」
ザック「ああ、酒場の主人に、お前さんがブラックサンドに来たが、魔女ミューマの後を追ったらしいって聞いてな。それにヤズトロモのおっさんから会うように言われたニカデマスって旦那からも、お前さんを助けたら世界が救えるって話を聞いたんだが……どうして年寄りの魔法使い連中はああも人使いが荒いのかね? とにかく、魔女の手下が目についたので、とっちめて、この場所を吐かせたんだ。いやあ、危機一髪ってところだったな」
マシロン「本当に助かったよ。君は命の恩人だ」
ザック「こっちも、お前さんには土魔人の件で借りがあるからな。それよりも、おい、ミューマ」
翔花「え? わたしにまだ話を振る? ええと、ミューマさんは青ざめた表情で立ち尽くしているみたい」
ザック「俺は女を斬る趣味はないからな。今日のところは許してやる。これにこりて、もうつまらん悪事はよせ」
翔花「わたしとしても、ここで改心して、あなたたちの仲間に入れて下さい、と頼みたいのはやまやまだけど、ゲームブックのセリフ通りに話を進めます。『気安いぞ、戦士! 私は世界に暗黒の時代をもたらし、暗黒の女王となるのだ! お前たちごときに邪魔はさせん! GOB!』」
晶華「ミューマさんは懐からゴブリンの歯を取り出して呪文を唱えると、8体のゴブリンがPONPOPONと出現しました」
マシロン「召喚には召喚だ。亡霊からもらった〈骨の髪飾り〉に手を当てて念じると、無数のネズミが地下の穴倉から飛び出してきて、ゴブリンどもを食い散らかすってことで」
ザック「ヒュー、そんなことができたんだ。やるな、相棒」
ミューマ(翔花)「『かくなるうえは、わが身に代えても鋼鉄ゴーレムを復活させてみせる。地上に破壊と混乱をもたらし、大いなる暗黒の時代を到来させるために!』……って、いかにも昭和の悪役っぽいセリフよね。ええと、手にしたナイフで自分の心臓を突き刺して、ほとばしる血をルビーに浴びせます。80年代スプラッターホラーのノリかしら」
晶華「お姉ちゃん、おつかれさま。魔女の血を受けたルビーの奥で、不気味な光が脈動を始めます。ミューマは息絶える寸前、身を横たえた巨人像の顔に覆いかぶさるように倒れ、最後の力で額の穴に活性化したルビーをはめ込みました」
マシロン「慌ててルビーを外そうとするけど、ゴーレムの起動には間に合わないんだな」
鋼鉄ゴーレムとの決戦
晶華「あなた方の目の前でついに立ち上がった鋼鉄ゴーレム。その姿は鈴木健介さんの描いた本作の表紙絵を見るといいでしょう」

マシロン「何だか女性らしいシルエットなんだな」
ザック「こいつは今の時代になぞらえると……テガジューンみたいなものか? やばいぞ、逃げたほうがいい!」
鋼鉄ゴーレム(翔花)『この暗黒の女王を前にして、逃げられると思ったかい?』
マシロン「ゴーレムが喋った!?」
晶華「ちょっと、お姉ちゃん!? 何を勝手にゴーレムに喋らせてるのよ? そんなの原作ゲームブックには書いてないわよ」
翔花「だって、ここまで来て、最終決戦を見ているだけなんて、つまらないじゃない? このゴーレムが女性体型なのは、血を通じてゴーレムに注がれたミューマ・バジオ、いいえ、本名ケイ・キノックスの魂が宿って、それに合わせてモーフィングしたのよね。21世紀のCGモーフィング技術を使えば、昭和の時代の着ぐるみにできなかった演出だって簡単にできるんだから」
晶華「本名ケイって、どういうこと?」
翔花「わたしが勝手に考えた魔女の背景設定だけど、家族を殺されたケイさんは復讐のために妖術を習得し、名前を捨てて魔女ミューマになったのね。マシロン君には嘘だって言ったけど、チャリスで語った身の上話は本当のこと。そして世界への復讐心が強かったので、その魂とか血に宿った残留思念みたいなものが鋼鉄ゴーレムの制御を可能にした。今のわたしは、ケイの魂を宿した鋼鉄ゴーレム、すなわち人の心を加えた無敵のスーパーロボット・鋼鉄ゴーレムKとして覚醒した……ってことでどう?」
晶華「ああ、山本弘さんが書いてない話をよくもそうベラベラと」
翔花「原作シナリオ・山本弘なのを、粉杉翔花とNOVAちゃんの関係者一同で2次創作したってことで、ディレクター役のアキちゃんが認めたら、OKになるわ」
晶華「山本弘先生、ゴメンなさい。だけど、『シナリオ創作講座』にもあるように、RPGのシナリオは料理である。料理を食べながら、自分の好みに合うような味付け、フレーバーを加えることも、食べる人の選択にゆだねて構わないですよね。プレイヤーの意思を尊重しようってことも書いてらっしゃいますし」
マシロン「だったら、ラスボス翔花かよ」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『フフフ、かかってらっしゃい。まずは第1の武器、〈黄金のラッパ〉を使うわ。この音波を浴びると、殺戮本能を掻き立てられて、どんなに強い戦士でもわたしに従う狂戦士になるの。我が下僕として、ともに地上を蹂躙するがいい』
マシロン「ノリノリだな、翔花」
晶華「ディレクター役も乗っ取られた気分だけど、ここで選択肢を与えます。コウモリを呼ぶか、岩妖怪を呼ぶか、フェッチを呼ぶか、それともほかに何か方法がないか考える、の4択です。なお、この鋼鉄ゴーレムK戦では、召喚したモンスターは一回きりしか使えません。ゴーレムの能力にどのモンスターで対応するかを考えるのがゲーム性ってことです」
ザック「特殊音波で相手を洗脳する。要はプロフェッサー・ギルの笛の音だろう。だったら、音には音で対応するのがセオリーってことだな」
マシロン「そういうことなら、〈骨の髪飾り〉でコウモリを召喚する。コウモリの超音波でラッパの音を打ち消す」
晶華「ゲームブックでは、そういう記述じゃなくて、群がるコウモリがラッパの中に潜り込んで、管を塞ぐような描写なのよね。まあ、とにかくコウモリが正解ってことで」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『おのれ、未熟な獣使いごときがいまいましい。ならば、第2の武器、青い〈水晶球〉から冷凍光線発射!』
マシロン「それはすでに対策済みだ。ネイコーダさんからもらった〈魔法の火酒〉を飲んで、冷凍攻撃への耐性を得る。今のパラグラフは12番。70を足して、82へ進むのが最適解だ」
晶華「火酒を飲んで、体がポカポカと温まったので体力点も4回復します(15→19)。マシロン君はザックさんをかばって前に進み出て、ゴーレムの放つ冷凍光線をまともに身に受けますが、まったく寒さを感じません」
マシロン「そのような氷など、シロクマ🐻❄️の加護を受けし救世主には通用しない。落ち着いて石を投げて、水晶球を割るぞ」
晶華「パリーンと研究施設のバリアのように水晶球は割れました」
ザック「ファンタジー世界で、その例えはどうかと思うが」
晶華「だったら、どう言えと?」
ザック「う〜ん、ここ最近のウインクバリアーのように?」
晶華「それこそ、今現在のニチアサ界隈でしか通じない、普遍性に欠けた例えじゃない」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『例えなんて、どうだっていい。次、行くわ。第3の武器、電撃を放つ〈三叉矛〉よ。これでもくらえ!』
マシロン「岩妖怪を呼んで盾にする」
晶華「体力点を5消費してください(19→14)。岩妖怪は電撃を受けて、あっという間にこなごなに砕け散ってしまいました」
マシロン「あれ? この選択肢は外れだったか?」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『フフフ。どうやら、ここで詰みのようね』
マシロン「まだだ、まだ終わらんよ。もうダメかと思いかけたその時、グァンドゥムの声が聞こえてくる。『わたしを召喚せよ』と」
晶華「って、森の精霊グァンドゥムを召喚する力なんて、マシロン君にはないはずですけど?」
マシロン「しかし、エネルギー生命体のフェッチを召喚する選択肢ならある。グァンドゥムの魔力を吸収したフェッチは、グァンドゥムの意思を宿したフェッチ・グァンドゥムとして、このボクの召喚モンスターに進化したって演出でお願い」
晶華「まあ、ゲームブックの選択肢にあるからね。ルール上は問題ない。その代わり、体力点を6消費してください」
マシロン「残り8点。さあ、新たな召喚獣Fグァンドゥムよ。悪の鋼鉄ゴーレムKを倒すのだ」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『おのれ、グァンドゥム。わたしのキャラだったのに、裏切って敵に回るなんて』
ザック「いやいや、それはプレイヤー発言だろう。自然を守る森の精霊が、世界を壊そうとする鋼鉄ゴーレムの味方になる道理がない」
晶華「扱うキャラが多すぎると、たまにごっちゃになるのよね。TRPGあるあるってことで、とにかく〈三叉矛〉の電撃パワーは全てフェッチに吸収されてしまいました」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『こうなったら、最後の武器〈巨大剣〉、いいえ、〈スーパーメタルKソード〉で叩き斬ってやる』
マシロン「さて、ここで召喚獣は打ち止めなんだよな。フェッチを最後まで温存していれば、最後はフェッチが鋼鉄ゴーレムの魔力を全部吸収して、戦うことなく勝利を収めることができるんだけど」
晶華「選択肢にはもう一つ、〈鉄食(てつぐら)い〉というアメーバ生物がいるんだけどね」
マシロン「そんなの、どこで出てきた?」
ザック(009)「プレイヤーとして解説してやろう。もしも前回、ミューマに話しかけて、あっさり捕まるという選択肢を選んだ場合、捕まった牢獄から脱出する際に〈鉄食い〉を召喚するイベントがあったんだ。そこをスルーしたので、マシロンは〈鉄食い〉を知らないという話になる。しかし、この最終決戦では選択肢で〈鉄食い〉を召喚できるようになっていて、〈三叉矛〉に対処するために活用できる。たぶん、そこで〈鉄食い〉を使用して、最後にフェッチを召喚するようにすれば、楽に攻略できる最適解だったんだろうがな」
マシロン「だけど、ボクは〈鉄食い〉と出会ったことがないので、そういうのを召喚してもいいのだろうか?」
晶華「選択肢に出ているんだから、面倒くさいことを言わずに召喚しなさいよ。そうでないと、技術点16のゴーレムには勝てないでしょう」
ザック(009)「よし、ここはグァンドゥムになって、こう言うぞ。『さっき、地下通路で出会ったので、鋼鉄ゴーレム戦で役立つだろうと思って、連れてきた。しっかり活用してやってくれ』と」
マシロン「さすがはグァンドゥムさん。よし、行け、〈鉄食い〉。悪いゴーレムをやっつけろ」
晶華「体力点を2消費してください」
マシロン「残り体力点6点。岩妖怪でむだ使いしてしまったのが悔やまれる」
晶華「すると、アメーバ生物の〈鉄食い〉が天井からポタリと落ちてきて、鋼鉄ゴーレムの〈巨大剣〉をボロボロに溶かしてしまいます」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『キャー、わたしの〈スーパーメタルKソード〉が!? おのれ、こうなったら素手でも戦ってやるわ。この鋼の拳でグーデバーンと粉砕してくれる」
マシロン「グーデバーンは救世主のメカだ。破壊神だったら、テガナグールと言い換えるといい」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『それもどうかと思ったので、もっと普遍的な名前の〈スーパーメタルKナックル〉で勝負よ』
晶華「武器を失った鋼鉄ゴーレムの戦闘力は4減って、技術点12、体力点25になりました」
マシロン「さらに、師匠の盾の効果で、そっちの技術点が2減る計算になる」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『どんどん、弱体化されていく(涙目)。技術点10になってしまったわ』
マシロン「それでも、こっちの技術点は8なんだよな」
ザック「俺が共闘することで、技術点+2のボーナスが加わる」
マシロン「よし、これで技術点10になった。ところで、接近戦に突入する前に、ポーションを飲んでもかまわないだろうか? 今のボクには体力点が6しか残っていない。体力を全快させて戦いたいんだが」
晶華「認めましょう。ただし、飲めるポーションは1本だけです」
マシロン「技の薬を飲んで、技術点を1点回復させたかったんだが、それよりも体力点に余裕が欲しい。よし、技術点は同じになったんだ。あとは体力と運で競り勝ってみせる」
晶華「それでは戦闘準備が整ったところで、この戦闘の特別ルールです」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『無敵の鉄拳〈スーパーメタルKナックル〉が命中すると、相手は即死する』
晶華「そんな無茶なルールには、山本さんはしていません。本国のリビングストンさんのゲームブックでは、『2回連続でラスボスの攻撃が命中すると、主人公が死ぬ』という特別ルールがあったそうで、戦闘前のセーブがほぼ必須だったらしいですが」
ザック(009)「FF30巻では、ザコ戦で一撃戦闘ってのがあって、文字どおり一撃受けると崖から落ちて死亡というシチュエーションが何度かあって、なかなか難儀させられた記憶があるが」
マシロン「イギリスのFFの方が無茶じゃないか」
晶華「とにかく、今作のルールでは、鋼鉄ゴーレムの体は無敵の超合金装甲でできているので、あなた方の武器では傷一つ付けることができません。体力点25と明記されていますが、ゲーム上は意味のない数字です」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)『無敵なのは拳じゃなくて、ボディだったのね』
晶華「そんな敵を倒す手段はただ一つ。その巨体に登って、額のルビーを取り外すことです。そのためには、2連続で攻撃を命中させないといけません」
マシロン「こっちの体力がゼロになる前に、2回連続で攻撃を当てろってか。技術点が同じだから、純粋にダイス目勝負となるわけだな」
晶華「そうです。救世主が勝つか、破壊神が勝つか。お互いにダイスを振り合ってください」
こうして、世界の命運をかけたバトルが始まった。
1ラウンドめ。ゴーレム7、マシロン2で、ゴーレムの勝ち(マシロンの残り体力20点)。
2ラウンドめ。ゴーレム7、マシロン6で、ゴーレムの勝ち(残り体力18点)。
3ラウンドめ。ゴーレム8、マシロン8で引き分け。
4ラウンドめ。ゴーレム4、マシロン10で、マシロンの勝ち。次も勝てば、世界が救われるということで、気合いが入る。
5ラウンドめ。ゴーレム7に対し、気合いを込めたマシロンの出目は3。ダメだこりゃ(残り体力16点)。
6ラウンドめ。ゴーレム6、マシロン7で、再びチャンスが巡ってくる。
ラッキー7の7ラウンドめ。ゴーレム4で、マシロンは……(コロコロ)5。最後は、比較的、低レベルな出目争いだったものの、何とか無事に主人公の勝ちとなったのである。
晶華「何度か傷つきながらも、マシロン君は鋼鉄ゴーレムの腕をかいくぐって、その頭部に飛びつくことに成功しました。ゴーレムに払い落とされようとする寸前に、額のルビーに手をかけ、力いっぱい引っ張ります。ルビーはぽろりと取れ、マシロン君とともに地面に落下します」
ザック「おい、大丈夫か」
マシロン「ああ、何とか受け身には成功した。ゴーレムは?」
鋼鉄ゴーレムK(翔花)「動きを止めて、完全に沈黙しました。そのままバランスを崩して、背中から大音響とともに地面に倒れます。わたしの戦いは終わった」
ザック「やったぜ! と歓声をあげて、マシロンの背中をバシッと叩く」
マシロン「イタタ。こっちは怪我したんだから、手荒なマネはしないでくれよ」
ザック「悪い悪い。とにかく、これで世界は救われたんだな」
マシロン「ああ、これで一仕事は完了だ。残りは二つ」
パラグラフ200番・改
こうして、鋼鉄ゴーレムを巡る物語はハッピーエンドに終わった。
ゴーレムの体の眠る地下室の入り口は岩で塞がれ、ルビーだけが魔術師ニカデマスの元に届けられた。
ニカデマスは、2人の救世主に感謝の言葉を述べ、怪我が治るまで橋の下の掘っ立て小屋に泊めてくれた。
マシロンは完全に元の健康体に回復してから、次の目的地、旧世界の大陸に向かう準備を整えた。幸い、ザックの知り合いの船長が、異郷の地に交易船を出してくれるという。そして、マシロンと意気投合したザックは、救世のための冒険の旅に付き合うぜ、と宣言した。
「無敵の戦士の俺と、偉大な魔法使いの弟子のお前が力を合わせれば、どんな冒険だってこなせるはずさ」
出発の日、ニカデマスはマシロンにルビーを渡した。
「これはおぬしが持って行くといい。ミューマは死んだが、その思念はどうも宝石に宿っていると思われる。ゴーレムの近くにあれば、またいつ復活するか分からん。人の手の届かない海の底にでも捨てるのがいいじゃろう」
マシロンはルビーを受け取った。
魔女の思念を宿した赤い宝石を見つめるが、今は何も聞こえない。
邪悪な女だったが、もしも違う出会いをしたら、救いを与えることができたろうか。世界は救ったが、一人の女の運命は救うことができなかった。
師匠は精霊の言葉をいつでも聞くことができたが、未熟な自分にはたまにしか聞こえない。それでも、森の精霊や獣の声は聞けるのだし、亡き師匠の魂も左手の盾に宿っているようだ。
ミューマ、いや、魔女になる前の令嬢ケイの魂にも、平穏が与えられんことを。
やがて船は出航した。
マシロンはルビーを船べりから投げ捨てようとして、心を変えた。
ケイの思念に感化されたのか?
それとも、別の予感からか?
ニカデマスの助言に逆らうことになるのを承知で、マシロンは因縁ある宝石の入った箱を背負い袋にしまった。
すさまじい破壊力を秘めた宝石ゆえ、しっかり管理しないといけないだろう。
あるいは杖か何かの形で加工するのもいいかもしれない。
旧世界の魔法職人であれば、アランシアにない魔術の精髄を修めた者もいると聞く。
果たして、そこではどんな冒険が待ち受けているだろうか。
期待と不安を胸に、救世主を名乗る若者は海風に乗った鳥の歌を感じとっていた。
遥けき大地を懐かしむ歌を。
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ200)
・技術点9
・体力点22
・運点11
・食料:5
・金貨:11枚
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、魔よけのペンダント、骨の髪飾り(ネズミとコウモリをただで召喚可能)、銅の指輪(呪われていて外せない)、技の薬、力の薬、ツキ薬、魔法の火酒(冷凍攻撃の際にパラグラフ+70)、銀の盾(7つのハートと3本の剣の模様、鋼鉄ゴーレムの攻撃力2点減少)、ケイのルビー
(当記事 完)

