本日はマイ・バースデイ
晶華「NOVAちゃん、誕生日おめでとう」
NOVA「お、おう。サンキューな(ソワソワ)」
晶華「ん? 何を挙動不審にキョロキョロしてるの?」
NOVA「いや、翔花の姿が見えないからな。いつ、不意討ちで『くらえ、花粉症バスター!』って飛んで来ないか、と警戒しているんだ」
晶華「お姉ちゃんなら、コンパーニュに遊びに行ったわよ」
NOVA「何故にコンパーニュに?」
晶華「ここで『王子の対決』記事を完成させたら、次はシロさんを呼んで、『暗黒の三つの顔』をプレイすることになっているから、その打ち合わせにね」
NOVA「いや、別にすぐに始めるわけじゃないんだが。それはともかく、コンパーニュでゲンさんの『D&Dモンク研究考察会』も参加しないといけないんだが、『王子の対決』の解析を優先したいわけで」
翔花「たっだいま〜♪」
晶華「あっ、帰って来た。お帰り」
翔花「はい、これ。シロちゃんが作った誕生日ケーキ」

NOVA「って言うか、グロックさんにこんなイメージイラストを描いてもらえるとはな」
晶華「だけど、この絵じゃダメね。NOVAちゃんのメガネは青枠だし、私たちの目の色は赤じゃないと」
翔花「だったら、これでどう?」

NOVA「まあ、『中年魔法使い風のメガネおじさんと、妖精風の娘2人のハッピーバースデイ』というテーマでいろいろイジってみると、こんな感じなのか、と納得」
翔花「わたしの髪は緑で……」
晶華「私はオレンジっぽい金髪で確定ね」
NOVA「何となくもやもやしていた脳内設定を、具体的なイメージに落とし込めるのは大きいな。とにかく、今夜はハッピーバースデイ気分ってことで」
解析始め(同行ルート1)
NOVA「それではケーキを食べてから、ゲームブックの解析を始めよう。まずは、『王女の対決』で通過したスカムダー橋までのイベントを再確認ってことで」
晶華「状態ナンバー3と行動ナンバー23で共に同行を選んだときだけ、このルートに入れるのね」
NOVA「一人プレイだと、状態あるいは行動ナンバーは1で固定。もしくはクローヴィスが一人旅を選択すると状態は2、ロタールが一人旅を選択すると行動が22となって、2人は別行動となる。この辺のフラグ管理の仕方が、ゲームブックでは随分と緻密でシステム的に面白いと感じた次第」
翔花「で、最初に小屋にたむろってるオークとの戦いになるわけだけど」
NOVA「扉と窓の二面作戦は、窓に仕掛けられたトラップのせいで失敗に終わるから、最適解は2人で共に扉から飛び込むことだ。オークのデータは技術点6〜8、体力点4〜6で、モンスター事典に載ってるデータ(技6、体5)よりも少し強い感じに設定されている」
晶華「ガンドバッドのオークは、アランシアのオークよりも凶暴性が増している感じね」
NOVA「オークにしては、技術点8というのは強敵って感じだな。アランシアだと、人狼とかサイ男、オーガーなんかが技術点8の代表で、並みの人間じゃ痛い目に合うというレベル」
翔花「FFシリーズの主人公だったら、鍛えられた剣士というのが定番で、技術点8がザコに思えてくるけど、冒険者志望の素人少年が技術点6という世界だもんね」
NOVA「ゴブリンが技術体力ともに5で、オークはそれに毛が生えた程度。本作はアランシア基準だと、技術点が1、2点ぐらい高く、逆に体力点が低めに設定されていることが多いようだ」
晶華「魔法使いキャラの技術点の期待値が8だから、8以上の相手とは戦いたくないんだけど、ロザリンは最高値の技術点10で始めたから、オークもザコの一つに過ぎないという認識になる」
NOVA「オークを倒して入手できる『赤い宝石』は何度か使用するタイミングがあるんだが、役に立つ試しがないというクズアイテムだ。なくてもどうでもいい」
晶華「宝石は宝石というだけで、持っていて幸せになれるってアナちゃんが言ってた。ただ、今作はアイテムがそこそこ出てくる割に、役立つ場面が少なかったと思う」
翔花「そう? 魔女のほうきの柄とか、透明薬とか、雪靴とか結構、使う機会が多かったと思うけど?」
NOVA「クローディアは魔法が使えないから、アイテムで状況解決って場面が多かったのだと思う。一方のロザリンは、魔法での状況解決が多いから、アイテムの有用度が落ちているのかもしれないな」
晶華「何が有用アイテムで、何がゴミアイテムなのかも改めてチェックしていくのね」
NOVA「姉妹いっしょだと、あっさり到着するスカムダー川だが……」
翔花「一人旅だとすぐには来れないわけ?」
NOVA「それを後から確認するわけだ」
晶華「橋の上では、塔の階段に登って探索するか、中の通路をまっすぐ抜けるかの選択があって、私たちは登ることにした」
NOVA「そこで巨大蛾と遭遇したわけだな。クローディアが不意を打たれて動きを封じられて、ロザリンが何とかしないといけない局面になる」
晶華「相手の技術点が7、体力点が10なので、タフだけど強くはない。技術点10で挑んだのに、2回もダメージを受けるなんて、ダイス運が悪かったわね」
NOVA「その前に、魔法をかけるのにも、6を出して失敗していたな。初魔法がいきなり失敗するというドジっ娘魔女はこの時からだったんだ」
翔花「そこがロザリンちゃんの可愛いところなのよ」
晶華「あまり嬉しくないんだけどね」
NOVA「ここで使える魔法と効果は以下の3つだ。( )内は消費魔法点な」
- 透明(1):自分は隠れて、クローヴィス一人に状況解決を任せる。クローヴィスから見たら、卑怯に感じられるかも。
- 変身(3):運だめしを要求される。成功なら、蛾は小さな野ウサギに化けて逃げていく。失敗なら、蛾は巨大なファイア・ドラゴンに化けて、2人とも焼き滅ぼされてバッドエンド。
- 発火(1):クローヴィスは火傷で1点ダメージを受けるが、蛾は一瞬で燃え尽きるので、戦闘を短縮できる最も効率のいい魔法。呪文発動に成功さえしていれば。
晶華「消費の大きい魔法が必ずしも効果的とは限らないわけね。術者は適切な魔法の使用を見極める必要がある」
NOVA「結果的に、ここでは魔法を使わずに杖で殴りかかるのが最適解だな。まあ、技術点が5とか6とか低い数値でない限りは」
晶華「さすがに、そんなに低い技術点じゃ生き残れないでしょう、このゲーム。魔法使いでも、最低8はないと」
NOVA「最高の10でも苦戦していたもんな」
晶華「それは敵のダイスを振ったNOVAちゃんにも責任がある。記事では結果だけを書いてたけど、ずいぶん意地悪な目を出していたと思うわ」
NOVA「それでも、戦闘での敗北死はなかったんだからいいじゃないか」
翔花「どちらかと言えば、運だめし失敗での即死が多い印象なのね、FFって」
晶華「あと、魔法の発動失敗とか、不適切な魔法使用による事故死とか、魔法使いは実にトラブルが多い感じ。上手くハマれば、劇的な効果を発揮するんだけど」
NOVA「戦士と魔法使いの対比という意味では、本作が〈ミニ・ソーサリー〉の趣きがあると俺は思ってる。作者のアンドリュー・チャップマンは、スティーブ・ジャクソンを相当に意識して、ジャクソンの模倣をより手堅く作り上げた節が見られるが、本作を仕上げてジャクソンの後を追っかけているだけじゃダメと感じたのか、あるいはジャクソンが86年の『モンスター誕生』でゲームブック作家の道を一時終了したのを見て、自分も辞め時だと感じたのか、複雑な諸事情があったと推察される」
晶華「一応、本人がブログでいろいろ語っているんじゃない?」
NOVA「ああ。それによると、自身の評価がジャクソンやリビングストンによって(他の作家よりも)不当に低く見下されたと感じたりもして、より自分の才能を発揮できる場を求めて……という告白もあって、FFファンから見ると残念な気もするが、自分のハンドルを自分で握ろうとして違う世界に飛び出した、と見ることもできる」
翔花「FF作家としての活躍期間は85年と86年のわずか2年間だけど、印象的な作品をいくつも残しているのね」
NOVA「『王子の対決』の成立についても、書いている記事があって、『戦士の書』はマーティン・アレンが、『魔法使いの書』はチャップマン自身が主に書いたらしい」
晶華「あれ? NOVAちゃんの予想とは逆じゃない?」
NOVA「恥ずかしながら、そうだな。作者本人のブログという一次情報があるから、ここで訂正しておく。何でも、この2人用のゲームブックは一人で書くには壮大なプロジェクトだから、共作者を求めて友人のゲーム仲間のマーティン・アレンを誘い込んだそうだ。そして、アレンはこれがゲームブック初参加になるから、シンプルな『戦士の書』を任せて、自分が『魔法使いの書』を書きながら、全体の舵取りも担ったとか」
晶華「つまり、魔法が6分の1の確率で失敗するという不安定さも、アレンさんの責任ではなくて、チャップマンさんのせいということね」
NOVA「そういうことだな。まあ、俺は『アーロック』のネガティブな印象から、欠陥システムはアレンの手によるもの、という偏見があるが、もしかするとアレンがチャップマンの『魔法使いの書』から影響を受けたという可能性もある」
翔花「これでアレンさんがFFゲームブック作家として大成していれば、チャップマンさんもアレンさんの紹介者としての株が上がっていたかもしれないけど、残念ながらそうではなかったみたいね」
NOVA「まあ、アレンさんの話はさておき、チャップマンさんはFFシリーズに縛られることなく、一人の作家としてファンタジー小説をいろいろ発表し続けているわけだから、相応の成功を収めた御仁と言えるだろうな」
NOVA「現実問題、ゲームブック作家という肩書きだけで食って行ける人間なんてのは非常に限られているわけだから、FFゲームブックの作者という土台から、どうキャリアを積み上げて行ったか、今もゲームやファンタジーの世界に軸足を置いているのか、それとも他の道を見出したのかは大変興味深い情報に感じる。その中で、チャップマンさんは80年代のわずか2年で名を挙げて、その作品が別に復刻される機会がなかったにも関わらず、愛され語られるほどの足跡を残しているんだからな。日本では知られざるキャリアだけど、旧作懐古で縁ができたわけだから、作品紹介ぐらいしてもいいと思うんだ」
晶華「でも、チャップマンさんの小説は読んでいないのよね」
NOVA「あらすじ程度はチラ読みしたが、今はそれを語っている時間がない。それより、『王子の対決』の続きだ」
翔花「ええと、巨大蛾を倒した後、繭を剣で切り裂くと毒液が飛び散ってダメージを受けるので、それは避けて『絹糸』を入手するのが正解ね。結局、使う機会はなかったけど」
NOVA「ロープ代わりに使えるから、役立つ場面はあったんだが、そういうルートを通らなかったんだな」
晶華「そして、絹糸を手に入れた同じパラグラフ(106)で落とし穴の罠にハマり、私のロザリンちゃんは川に落ちて、どんぶらこ〜と流される羽目に」
NOVA「そこから一人旅ルート2で別行動になるわけだな」
翔花「じゃあ、次は塔の階段を登らなかった場合のイベントをチェックするね」
NOVA「そこでは2体のグレムリン(技8と7、体4)の襲撃を受けるんだ。しかも相手が素早いので、魔法をかける間もない」
晶華「まあ、技術点8ならザコの部類よね。普通に杖で殴り倒せると思うわ」
NOVA「問題は、2体を倒しても、さらに無数のグレムリンが集まってきて、退避を余儀なくされるんだ。階段から上に登って巨大蛾イベントに進むか、辺りの樽の中に隠れるかの選択になる」
晶華「樽に入ると?」
NOVA「グレムリンは君たちの存在に気づかないが、仲間の死体を見て大騒ぎして、そのドサクサでロタールの入った樽だけがポチャンと川に落ちてしまう」
晶華「結局、川落ち一人旅ルートに入ってしまうわけね」
ロタール1人旅ルート1
NOVA「では、時間を巻き戻して、それぞれの一人旅ルート1を見て行こう。まずはロタールの方から」
晶華「こっちでは、いきなり技術点9、体力点8のオーガー2体に出会うわけね。しかも、魔法を使わせてくれない」
翔花「それって厳しくない?」
晶華「負けても有り金を全部奪われるだけで、失った体力点の半分は戻って来るから、死ぬことはないんだけどね。追いはぎオーガーを倒すと、金貨5枚ゲットできるんだけど、その後はクローヴィスと再会するためにスカムダー橋に向かうか、一人で森を抜けるルートの選択をすることに」
翔花「一人旅の方が、選択肢が多彩で分岐も多いみたい」
NOVA「結局のところ、そっちがメインルートとなるわけだからな。合流ルートは、おそらくチャップマンさんが担当して、アレンの『戦士の書』とも絡めるように指揮をとったと思われ」
晶華「つまり、ロタールがクローヴィスに嫌がらせを仕掛ける元凶も、アレンさんではなくて、チャップマンさんの仕業、と。オーガーと戦うのは分が悪いと感じたロタールは、口八丁でオーガーを騙そうと試みることもできる。自分は強盗に襲われたばかりだから、金の持ち合わせは少ない。自分よりも、金を持ってる強盗を襲った方がお得だ。その強盗を倒してくれると約束してくれたら、なけなしの金貨1枚を支払いましょう、と」
翔花「そうやって、厄介ごとをクローヴィスに押しつけようってことね」
NOVA「一応、運だめしが必要だけどな。失敗すれば、結局、オーガーと戦うことになる。成功すれば、オーガーはクローヴィスの方に行き、ロタールの行動ナンバーは26になって、しばらく待機した後、一人旅ルート2に入る仕掛けだ」
晶華「そっちに進むと、クローヴィスとは再会しないまま、旅を続けることになるわね。オーガーを倒して森を抜けるルートを選んでも、行動ナンバーが25になって、一人旅ルート2に入るのは同じ。同行ルート2に入るには、もう少し頑張らないといけない」
NOVA「そっちに進むと、邪悪な樹木の妖精(ウッド・スプライト)の罠を乗り越えないといけないんだな。うかつに樹の中の階段に踏み込むと、樹に締めつけられ押しつぶされそうになって、魔法で上手く対処できないとバッドエンドだ」
- 巨体(1):体を大きくしてから、締めつけを一時的に押さえこみ、その後、身を縮めてできた隙間から上手く脱出することに成功。
- 停止(1):樹の締めつけるスピードが緩まるが、脱出できない状況に変わりはないまま、バッドエンド。
- 体力増加(2):増加した体力も、樹の締めつける力にはかなわない。あえなくバッドエンド。
翔花「3分の2の確率でバッドエンドかあ」
NOVA「実際には、魔法発動失敗によるバッドエンドもあるから、樹の中に誘い込まれた際の生存率は18分の5、すなわち3割以下の確率でかなり厳しいわけだ」
晶華「外側から樹に登るなら、運だめしに成功するだけで良くて、失敗しても飛行の術で魔法点を3点消費することで、落下を免れるわ」
NOVA「そもそも、樹木の妖精(ウッド・スプライト)を最初からスルーすればいいという結論なんだが、『ガンドバッドの宝石について話してやろう』と誘われたら、無視もできないんだよな」
翔花「それで、情報をくれるわけ?」
NOVA「『愚か者め。お前はわしの樹に食われるのじゃ』と襲われるだけ。枝に絡みつかれて身動きがとれず、魔法で対処するしかなくて、発動に失敗すると死あるのみだ」
晶華「もう、最初からハードモードもいいところね。同行ルート2に入るのって、異常に難しいっぽい」
- 発火(1):樹に火をつけたはいいものの、自分も枝に捕まったまま、いっしょに焼死する。バッドエンド。
- 縮小(2):枝を小さい小枝に変えて、容易に脱出成功。
- 弱体化(1):枝の拘束力を弱める。サイコロ3個を振って、体力点以下なら脱出成功。体力点より大きければ、脱出できずにバッドエンド。
NOVA「この後、技6、体6の妖精を倒して、ようやくイベント終了だ。戦利品として、『樹液』が手に入るが、これもいまいち役に立たなかったと思う」
晶華「アイテムに関しては、ゴミアイテム率が高いのが本作の特徴かも」
NOVA「アイテムにこだわりが強いのは、ジャクソンよりも、リビングストンの方だからな。ジャクソンも、ソーサリーを除けば、キーアイテム以外の扱いは割と雑な印象がある。まあ、リビングストンの場合は、キーアイテムの数が多すぎて、攻略難易度を上げている傾向があるわけだが、攻略記事を書く上では、『ここで、このアイテムが入手できて、ここで役立つからお勧め』と書ける楽しさがある。本作では、苦労したけど役に立たないアイテムってのが多すぎて、そこは何だかなあ、と思わなくもない」
晶華「結果的に、ここでのイベントは、イヤでも魔法点を浪費するだけって感じね」
NOVA「最適解は、樹の外側を登って運だめしに成功→縮小、が、魔法点2消費と運点1消費で最もリスクが少ないと思うな。まあ、体力点が高ければ、弱体化で魔法点消費を1で抑える手もあるが」
晶華「それで、行動ナンバーが24になって、スカムダー川に到着、と」
- 行動24:オーガー撃退と樹木の妖精イベントを経る。唯一、同行ルート2に入る道だけど、難易度は最も高い。
- 行動25:オーガーを撃退するも、一人旅を選択。一人旅ルート2へ。
- 行動26:オーガーをクローヴィスに差し向ける。一人旅ルート2へ。最も容易な道。
クローヴィス1人旅ルート1
NOVA「次に、クローヴィスの方だが、最初にコボルド3体に襲われている女の人を助けるところからスタートだ。ここでビックリなのは、コボルドのデータだな。リーダーが技術点9で、体力点6。部下2体が技術点8、体力点4。D&Dやソード・ワールドに慣れていると、コボルドってゴブリン以下のザコって印象が強いが、本作のコボルドはトロールに匹敵する強さを持っていて、ええ? と驚かされる」
晶華「ガンドバッド産のコボルドだけ、特別仕様なのかしら」
NOVA「『真モンスター事典』によると、タイタンのコボルドはオークやゴブリン、トロールの血を複雑に混ぜた混血種ということらしい。D&Dの竜の血を引く従僕種族とか、ソード・ワールドの子犬風蛮族とは違う、臆病ながらも凶悪な連中だな。技術点8が標準仕様」
晶華「オークムート島では、コボルド集団に囲まれて、酷い目にあわされたわ。タイタンのコボルドは、ゴブリンとは比べ物にならないくらい危険。オーガーやトロールに匹敵するような能力の連中が集団で襲って来るなんて、悪夢もいいところね」
翔花「最初の敵が技術点9だなんて、一人旅ルートは明らかに同行ルートよりも厳しい旅ってことね」
NOVA「それでも、戦士だから技術点は最低10はあるだろうという前提なら、普通に勝てるな。9以下なら最初からキツいとも思うが、とにかく勇者らしく戦って、女性を助けるのがクローヴィスの道。そして、女の人に『いっしょに修道院へ行ってくれるように頼まれる』わけだ。彼女に付き合うなら、ロタールと再会できずに一人旅ルート2へ行くことになり、彼女の頼みよりもロタールとの約束を重んじるなら、同行ルート2に入るかもしれない」
翔花「かもしれないってのは、ロタールさんの行動が25か26だったら、橋での再会ができないってことね」
NOVA「修道院へ行くなら、状態ナンバーが5になって、行かないなら紆余曲折を経て、状態4になる。なお、俺の一人旅初プレイでは、ロタールとの約束を守ろうとしている途中で立ち入った洞窟で、唐突にバッドエンドを迎えて、本書をクソゲーと認定した過去がある。なるほど、あの時に感じたクソゲー感覚は、マーティン・アレンの仕業だったのか。どうも、マーティン・アレンのゲームは、俺とは相性が最悪らしい」
晶華「というか、前は『魔法使いの書』がアレンさんっぽいって言っていたでしょう? 事実が違っていたからって、手のひら返し?」
NOVA「まあ、君子豹変す、というか、自分の想像と事実が違っていたら、事実に合わせて認識を改めるのが誠実な態度ってものだろう? 『戦士の書』のメインライターがアレンさんだと分かったなら、自分の見識のなさを反省して、修正するのもやぶさかではないぜ。もっとも、俺は言うほど、アレンさんの作風の専門家ではないし(アーロック一作しかプレイしていないので)、チャップマンのゲームブックも昔々の思い出で語っているに過ぎないが。一応、『宇宙の暗殺者』だけは最近、フローチャートを完成させてはいて、大学ノートに5ページほどになった」
翔花「『王子の対決』は?」
NOVA「大学ノートに10ページだ。結構、苦労した成果が、今の記事だ」
翔花「とにかく、修道院に行くの? それとも昔のバッドエンドを再体験する?」
NOVA「先にトラウマを解消しよう。弟との先約を守ることを優先した俺は、困っている女の人を見捨てて、悪夢のルートに突入するのだった。前方に進むと、黒い塔があった。嫌な予感がしつつも、黒い塔に近づいてみると、高さ10メートルの巨大蟻塚だと分かった」
翔花「蟻塚って、そんなに大きくなるものなの?」
NOVA「まあ、リアルだと、3メートルとか4メートルぐらいみたいだな。とにかく、ここでの選択肢がアリの巣穴に入ってみるか、それとも外側を剣で叩いてみるか、とあったので、さすがにアリの巣にいきなり入る勇気はなかったから、剣で叩いてみたわけだよ」
晶華「スルーするって選択肢はなかったの?」
NOVA「いや、最初から近づかないという選択肢を選んだら、それはそれで酷い目にあうんだが、後述だ。とりあえず、蟻塚を外から叩くと技術点判定を要求された。難なく成功すると、蟻塚が不意に崩れてきて、俺は押しつぶされて死んだ。バッドエンドだ。これが俺の『王子の対決』初体験だ」
翔花「何てバカな死に方(呆)」
NOVA「とりあえず、蟻塚を崩すと死ぬことが分かった。技術点判定に失敗しても、固い壁を剣で打った衝撃で手の筋を痛めて、技術点マイナス1になる。ろくな目に合わないな、と思いながら、ここは蟻塚に入るのが正解だと思って、穴に入ると技術点10、体力点6の凶暴なチャドという獣に襲われる」
翔花「チャドって?」
NOVA「よく分からん。モンスター事典のシリーズにも載っていない。こんな感じのホラー映画があったんだが、地下に住む謎の怪物程度の意味らしい」
翔花「蟻塚に入ったら、蟻じゃなくて、チャドっていう謎の獣に襲われたってことね」
NOVA「何とか強敵チャドを撃退した俺は、さらに謎を探るために地下深くに潜って行ったんだが、突然、不意討ちをくらって、首をねじ切られてしまって、バッドエンドだ」
晶華「意味が分からない」
NOVA「まあ、この場は撤退するしかないと割り切って、何の収穫もなく脱出して、謎は謎のまま残した形だが、だったら最初からスルーして、塔には近づくなよ、と自己ツッコミしながら、塔から距離を置いて進むと、今度は地面に穴が開いて、馬ごと5メートル落下。これで馬が死んで、俺は技術点8、体力点8の蟻ライオンに襲われる」
翔花「蟻ライオン?」
NOVA「たぶん、アリジゴクだと思うんだが、どうして、そんな妙な訳なんだろうな? モンスター事典にも載ってないし、まあ、チャドよりはマシだと思って撃退する。その後、死んだ馬から装備を回収しようと近づくと、大バエの群れ(技8、体4)に襲われて、撃退したはいいが、わずかな戦いの中で卵を植え付けられたりして、技術点1と体力点1点を失ってしまう」
晶華「ひどいゲームね」
NOVA「そう、本当に酷いんだよ。死んだ馬をスルーすると、背負い袋に入れてあった全ての金貨と食料を失うペナルティーだったりして、もう何を選んでも酷い目にあうルートだ、これ。一番マシなのが、蟻塚に入ってチャドと戦って、深入りせずに撤退することだという展開で、ロタールと再会する道は非常に難儀だな、と。ここまででパラグラフ番号が60で、状態ナンバーが4になる」
修道院イベント
NOVA「蟻塚イベントは茨の道なので、やはり女の人を見捨てたのが問題なのか、と思って、修道院ルートの方が正解だろう、と判断する。これを選ぶと、状態ナンバーが5になって、弟との再会が先送りになるわけだが、一人旅だと問題ない。ともかく、コボルドから助けた女性曰く、『病気の弟の命を助けるために、修道院の聖水が必要だ。お礼のお金を払うので、ご同行をお願いします』と来たもんだ。まあ、これを聞いて、見捨てたんだから天罰が当たっても不思議ではないかな、と割り切って、弟との約束は破ることを選択するべきなんだろう」
翔花「修道院に入るメリットは?」
NOVA「たぶん、最大のメリットは『銀の鏡』をゲットできることだと思う。まあ、攻略必須ではないんだが、これがないとバッドエンド確定の場所があるからな」
翔花「願いの井戸の北ね」
NOVA「まあ、あのイベントもなかなか酷いので、避けて通るのが正解なんだが、とりあえず修道院の攻略だ。まず、正面から乗り込むか、横に開いた裂け目から入るかの2択で、正解は前者だ。正面→礼拝堂→鏡という選択肢を通って、2体のガーゴイル(技8と9、体8)を倒してから、聖水をフラスコに汲むと、娘はお礼に金貨10枚をくれる。その後は、一人旅ルート2に物語は流れる次第だ」
翔花「他の選択肢もあるのでしょう?」
NOVA「正面から入ると、水たまりを見つけて、それが聖水かと思って、汲もうとするという選択肢もある。しかし、運だめしをして失敗すると、水たまりから伸びてきた腕によって、水中に引きずり込まれて窒息死する展開に」
翔花「運だめし一発で死ぬトラップかあ」
NOVA「いわゆる初見殺しだな。もちろん、運だめしに成功すれば危険は避けることができて、礼拝堂に行くことになる。水たまりはスルー推奨だろう。礼拝堂では、鏡をスルーして、先に聖水をフラスコに汲むこともできるし、それだと戦闘を避けることができるので、リスクを最小限にするなら最適解と言える。鏡が欲しいか、どうかにもよるな」
翔花「裂け目から入るのは外れってこと?」
NOVA「鏡が入手できないことと、遭遇する敵が強いというリスクがあるな。裂け目→階段→左の石で瓦礫が崩れてきて、バッドエンド。裂け目→階段→右の石で『銀の斧』をゲット。裂け目から直接、あるいは階段が通れないことを確認した後、扉を開けると二頭の人狼(技10と9、体6)に襲われるが、銀の斧があれば自分の技術点を+2できるので、有利に戦える。その後は、噴水から出て来る聖水をゲットして、ミッションクリアだ」
翔花「『銀の鏡』か『銀の斧』の2択ってことね」
NOVA「修道院はバッドエンドの罠が2ヶ所あることを除けば、割とオーソドックスなショートダンジョン探索が楽しめるな。少なくとも、理不尽な蟻塚イベントよりはリスクとメリットのバランスが良くて楽しめる」
スカムダー川の橋にて
NOVA「さて、スカムダー川で待ち合わせよう、と約束した兄弟だったが、再会できるのはクローヴィスが4、ロタールが24を選んだ時だけだ」
晶華「それにはリスクの大きい蟻塚イベントと、樹木の妖精イベントをそれぞれ通過しないといけないのね」
NOVA「2人が苦労して、再会にこぎつけると、橋の番人のトロール(技9、体10)が出現する。素直に金貨2枚ずつの通行料を払って通してもらうのが無難だが、戦って倒すと、トロールの番小屋で宝箱をゲットできる。宝箱には罠が仕掛けられているため、開けた人間は技術点1を失うことになる」
翔花「そこまでリスクを侵して、手に入れたいお宝って何?」
NOVA「ぶどう酒と金貨8枚だ。ぶどう酒は、同行ルート2に進んだときだけ使うかもしれないな」
晶華「ロタールの行動ナンバーが25番で、クローヴィスの状態ナンバーが4番の場合、クローヴィスが2体のオーガーに襲撃されるイベントが挿入されるのよね」
NOVA「オーガーには、ビルとバートという名前が付けられている。ビルは技7で体8。バートは技8で体8。ロタールが遭遇したオーガーは技術点9だったから、少し弱体化しているようだ」
翔花「ビルとバートの組み合わせって、どこかで聞いたような気が……」
NOVA「『ホビットの冒険』に登場したトロール3人組の名前が、ビルとバートとトムだったが、それのパロディなのかもしれないな。とにかく、ロタールから送り込まれた2体のオーガーが、クローヴィスにとっては、ほぼザコ同然なので、ロタールの悪意に気付かないか、あるいは気づいても、戦利品の金貨5枚をありがとう、と感謝するか、と言ったところか」
晶華「そして、ロタールが一人旅を選んだら、クローヴィスが蟻塚イベントを苦労して乗り越えた意味がないし、逆にクローヴィスが修道院イベントを選んだら、ロタールも苦労して橋まで来た意味がない、と」
NOVA「双方、一人旅ルート2を進むことになるわけだ。つまり、同行ルート2というのは本当にレアなイベントで、しかも、そちらに進むと、羊皮紙と指輪をそれぞれ取り逃がすという点で攻略失敗の非推奨ルートということになる」
翔花「じゃあ、次回はその同行ルート2から始まって、一人旅ルート2の通らなかった選択肢を中心に見ていきましょう」
(当記事 完)



