チャリスからの旅立ち
シロ→マシロン「今回は前置き抜きで、早速、話を進めよう」
晶華「前回は、チャリスの街で美少女ケイさんに騙されて、悪事の手伝いをさせられたマシロン君でした」
マシロン「ボクが手を貸さなくても、他の誰かが秘宝を入手して、彼女の計画を進行させるんだから、結果は同じじゃないか」
翔花「確か、ケイさんの正体が悪女で、タヌキかキツネの仮面の魔女で、マシロン君を陥れて、あまつさえ刺客を送り込んで、風呂場で抹殺しようとしたのよね」
晶華「大体、合ってる。だけど、タヌキやキツネを除いてね。少なくとも、それらの動物はアランシアにはいないと思うの」
009「旧世界なら、ファイア・フォックス(火炎キツネ)がいたぞ。『七匹の大蛇』のパラグラフ256番だ。それにタヌキは知らんが、ムジナならクール大陸にいる。『暗黒の三つの顔』のパラグラフ403番を見るといい」
晶華「いや、ナイン君。NOVAちゃんみたいに蘊蓄好きなのは分かるけど、今やってるゲームブックの先の先のネタバレはやめてよね。こっちはアランシア編を攻略中なんだから、クール大陸なんて早くても一月後、もしかすると秋になるかもしれないし」
マシロン「さすがに、秋までにはコンパーニュに帰りたいんだけどな」
晶華「そんなわけで、さっさと今の課題を終わらせるわよ。チャリスでのイベントは終了して、そこからブラックサンドまで、どうやって行くか決めないと」
マシロン「そいつはもう決まってるじゃないか。マシュウさんからシルバートン行きの隊商への〈紹介状〉をもらっているんだ。それを使って、隊商の護衛に雇ってもらえばいい」
晶華「それが一番、楽なのよね。事件が起こらないから面白みに欠けるけど」
マシロン「面白みよりも、安全第一だろうが」
晶華「ええと、シルバー川を下る交易船があるんだけど?」
マシロン「却下だ、却下。交易船に乗ると奴隷にされて、装備品とか全部奪われて、ひどい目にあうとグァンドゥムが言っている」
翔花「ここは森じゃないから聞こえないと思う」
マシロン「聞こえたんだよ。シーナさんからもらった〈魔法のペンダント〉を通じて」
晶華「設定がどんどん捏造されていくわね」
マシロン「TRPGって、そういうものだろう? プレイヤーが面白そうなことを言って、使えそうなネタならGMの裁量で後付け設定が構築されていく。会話で膨らむ物語世界って奴だ」
晶華「否定はしないけど、何でも要望が通ると思ったら間違いよ。GMやディレクターには拒否権だってあるんだから」
マシロン「プレイヤーにだってある。みすみす不幸な目にあって攻略にも支障をきたす交易船ルートを却下する権限がな。〈死の井戸〉の件は乗せられてやったが、本当はあれだってスルーしても問題なかったんだ。その方が、技術点1点を削られなくて済む」
晶華「仕方ないわね。もう一つ、一人旅で歩いてブラックサンドに向かう選択肢だってあるわよ」
マシロン「6種類のランダムエンカウントがあって、ゲームとしては楽しい面もあるかもしれないけど、そういうのはIFルートで後から解説してくれ。ボクは〈紹介状〉を活用して、安全確実に旅をしたいんだ」
晶華「安全確実な道を進みたいなら、冒険者なんて危険な稼業から身を引きなさいよ」
マシロン「いや、冒険者だからこそ、無用な危険からは距離を置いて、リスク管理をしっかりしないと生き残れないだろう。とにかく、ボクはマシュウさんの好意に感謝しながら、安全な最適解ルートを選びとる」
はい、安全な最適解ルートを選ぶと、平和にシルバートンに到着できます。
体力点も4点回復し(16→20)、しかも護衛の給金として金貨20枚ももらえるという(19枚から39枚)。そのうえ、運点も1点回復して、MAXの11点になるというありがたさ。
そして到着したのがシルバートンです。
シルバートンからブラックサンドへ

シルバートン。
そこは盗賊都市ポート・ブラックサンドの最寄りの小都市として知られている。
リアルでも、アメリカのコロラド州やオーストラリアに同名の街があって、ググってもややこしいのだが、検索語句にアランシアを加えてみると、普通に見つかるだろう。
ゲームブック『盗賊都市』をプレイ済みなら、主人公が最初に立ち寄った街、ザンバー・ボーンの脅威にさらされて、ブラックサンドに向かう理由となった場所といえば、思い出せるかもしれない。
未プレイなら、こちらの攻略記事を読むのも一興かと思います。
既に読んでいただけている常連読者さまには、毎度ごひいきに、と申し上げつつ。
マシロン「今回、シルバートンでは、金貨2枚の食料のほかに、3種類のポーションを買うことができるんだな。とりあえず、2食を補充して、最初の5食に戻したあと(残り金貨35枚)、ぜいたくにポーションを3点セットで購入しておくか。金貨24枚使って、残り11枚ってことで、買い物タイム終了」
晶華「さっそくポーションを飲んで、技術点を回復させたりは?」
マシロン「今はまだしない。致命的な技術点判定が必要になったら、成功率を上げるために飲むことにする」
晶華「では、ついに噂の盗賊都市ポート・ブラックサンドに到達します。シルバートンから80キロの道のりで、旅人の健脚で2日歩くとたどり着けました。問題は、都市の内部にどうやって入るか、ですね」
マシロン「城門には衛兵がいるんだよな」
晶華「今回は、二つ頭のトカゲ男、カラコルムが衛兵になっていますね。選択肢は、正面から戦うか、金貨で買収するか、こっそり城壁を乗り越えるか、それともカラコルムの弱点のネズミを呼び出して脅すかの4択です」
翔花「ネズミが弱点だなんて、ネコ型ロボットのドラちゃんみたいね」
マシロン「ネズミは前回入手したアイテム〈骨の首飾り〉のおかげで、体力を消費しなくても操れるんだけど、それをするとカラコルムが大騒ぎをして、もっと強いトロール衛兵(技術点10)が現れるんだよな。ここは壁を乗り越えるのが正解だ。運だめしに成功すれば、あっさり乗り越えられる。(コロコロ)よし、3で難なく成功(残り運点10)」
翔花「失敗したら?」
マシロン「己の身の不幸を呪って、やむなく技術回復の薬を飲んで、カラコルムと戦っていたろうな。奴の技術点は9なので、こっちが8だと非常に苦戦することになる。FFゲームブックの戦闘のコツは、自分より技術点が高い相手とはできるだけ戦わない。どうしても戦わざるを得ない場合は、運だめしを活用して早期決着を図ることだ。相手の技術点が自分より2以上高ければ、よほどプレイヤーのダイス運が良くない限り、確率的に勝てないからな」
晶華「必須戦闘の敵の技術点が11とか12だったら、自分も最高技術点じゃないと攻略不能に近いからね」
マシロン「本作は、主人公が魔法使い仕様なので、D6+6ではなく、D6+4で最初の技術点を決めるから、最高でも技術点10にしかならない。それでも技術点9以上の敵には、魔法その他の解決手段が用意されていることが多いから、そういう搦め手の対処手段を上手く選んでいくのが攻略のコツだろうな。能力値頼りの脳筋プレイだと、攻略できないようになっている」
晶華「逆に、最適解はきちんと用意してくれているので、ゲームとしては非常にフェアなのよね。最適解を選んでも、ダイス運が非常に良くなければ攻略できないマゾゲーに比べると、簡単すぎず、難しすぎずバランスのいい難易度だと思うわ」
マシロン「そんなわけで、わざわざ危険なルートを押しつけるのはやめような。こっちは堅実に進めたいんだから」
潜入! 盗賊都市
マシロン「パラグラフ49番。ついにポート・ブラックサンドに入ることができた。運点も2点増えて、フル回復だ」
翔花「確かに、運の回復機会が多い感じね。他のFF作品に比べても」
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ49)
・技術点8/9
・体力点20/22
・運点11
・食料:3→5
・金貨:11枚
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、魔よけのペンダント、紹介状、骨の髪飾り(ネズミとコウモリをただで召喚可能)、銅の指輪(呪われていて外せない)、技の薬、力の薬、ツキ薬
・手がかり:ブラックサンドでは、ダルミナートの酒場に寄ること
ブラックサンドでは、魔法使いのニカデマスを訪ねること
鋼鉄ゴーレムは冷凍光線を放つ
ケイは報酬をチョロまかした悪女
晶華「〈宮殿通り〉から〈糸通り〉を経て、市場に出るんだけど、途中で酒場があります。入りますか?」
マシロン「入らない。この酒場はギャンブルで一儲けすることができるんだけど、金貨20枚以上に儲けすぎると袋叩きにされて、有り金全部巻き上げられる恐ろしいところなんだ。田舎者のボクとしては、そういう都会の闇には触れない方がいいと思う」
晶華「では、市場です。買いたい物はありますか?」
マシロン「〈ランタンと火口箱〉を未購入なら、ここが最後のチャンスだけど、それ以外で必須アイテムは特にないかな。〈大トンボの皮〉とか〈宝石〉とかを道中で手に入れていたら、ここで高値で売れるけど、今のボクには関係のない話だ」
晶華「そうするうちに市場を通り過ぎて、下町に入りました。〈腕輪〉を持っていますか?」
マシロン「最初の野盗のボスを倒したか倒していないかの確認だな。ここで〈腕輪〉をはめていなければ、野盗が健在ってことで、連中の姿を見かけることになるので、尾行するという選択肢が出る。忍びらしく、追跡する」
晶華「シーさんは忍びかもしれないけど、マシロン君は違うはず」
マシロン「う〜ん、野外の忍び歩きは得意だと思うけど、都会では勝手が違うのかな。だけど、聞き耳なんかも得意なはずだし、何とかなるだろう」
晶華「まだAFFの時代と違うから、本作では技能ルールは採用されていないけど、何とかはなりました。野盗のアジトらしい家まで追跡できて、中の会話をこっそり盗み聞きすると、『医者のネイコーダという人物の家を襲撃する』計画らしいです」
翔花「大変。正義の味方としては止めないと」
マシロン「そうだな。少なくとも、ネイコーダさんのところに、危険を知らせることぐらいはしたい」
三つの探索パズル
晶華「さて、パラグラフ67番です。ブラックサンドに夕暮れが迫っています。これから真夜中になると、盗賊たちの動きが活発になるでしょう。マシロン君はここで行きたいところがあれば、心当たりを探ることができます」
マシロン「もちろんある。今、聞いたネイコーダさんの家と、魔術師ニカデマスさんの家と、ザックから聞いたダルミナートの酒場だ」
晶華「その3ヶ所に向かうには、パラグラフ・ジャンプの仕掛けをクリアしないといけません」
翔花「手がかりを得ていないと、そこに行けない仕様なのね」
晶華「仕掛けは簡単……なのかな。いろは歌です」
翔花「いろは歌というと、『いろはにほへとちりぬるを』って奴?」
晶華「漢字で書くと『色は匂えど散りぬるを』ってことですね。『色付く花は良い匂いがするけれど、すぐに散ってしまう』って意味です」
マシロン「続きは『わかよたれそつねならむ』。『我が世誰ぞ常ならむ』すなわち『この世の中では誰が永遠でいられようか』って意味なんだな。昭和の日本人ならどこかで聞いたことのありそうな一般教養なんだが、外国人や令和の日本人なら難しい言語依存のパズルだと思う」
翔花「80年代当時の和製ゲームブックならではの仕掛けってことね。でも今の時代だったら、インターネットで検索すれば何とか」
晶華「とにかく行きたい場所の固有名詞の頭2文字を、いろは歌の順番に基づいて数字に変換し、その合計のパラグラフ番号に進めってことね」
翔花「ええと、ネイコーダさんの家なら、ネイの2文字を取り出して、ネが20番め、イが1番めだから、合計21番に進めってこと?」
マシロン「正解だ。ネイコーダさんは下町で有名な人らしくて、通行人に道を尋ねると、すぐに教えてくれた。そして、盗賊に狙われていますよ、と警告すると、はい、アッキー、続きをどうぞ」
ネイコーダ(晶華)『おお、警告ありがとう。だが、なあに、心配にはおよばないよ。私はいろいろと魔法の心得もあるからね。身の程知らずの盗賊どもには、準備万端整えて、たっぷり思い知らせてやろう』
晶華「そう言って、ネイコーダさんはにっこり微笑みました。そして、お礼に〈魔法の火酒〉をくれます。これを飲むと、冷凍攻撃を無効化できます。1回しか使えませんが、『冷凍攻撃を受けたパラグラフ番号に70を加えた先に進めばいい』のです」
翔花「1回だけ真の救世主ゴジュウポーラーになれるってことね」
マシロン「タイミングよく、ネタかぶりしたな、と思ったよ。パラグラフ・ジャンプの材料が次々と集まってくるのもゲームとして快感だ。山本さんのゲームブックは、こういう仕掛けが職人芸と評された部分だな」
魔術師アラコール・ニカデマス(旧称ニコデマス)
晶華「問題は、次のニカデマスさんなのよね」
翔花「何が問題? ニカでニ(4)とカ(14)の合計18番に行けばいいんじゃないの?」
マシロン「そのパラグラフに行くと、チャリスに戻ってしまうんだ。話がつながっていない」
晶華「実はニカデマスさんって、88年当時はニコデマスさんと表記されていて、ニ(4)とコ(33)を足した37番に進まないと、このパズルは解けないのよね」
009「解説しよう。90年に出版されたワールドガイドの『タイタン』ではニカデマス表記になっていて、以降はそう呼ばれるようになっているんだが、それ以前の社会思想社版FFゲームブック(『盗賊都市』『雪の魔女の洞窟』『真夜中の盗賊』)では全てニコデマス表記だ。だから、今作の『暗黒の三つの顔』でも元々はニコデマス表記だったのが、固有名詞を現代風に置き換えたために、パズルが成立しなくなっている。よって、当時の背景事情を知る者でないと、ストレートに解けなくなっているんだな。これは山本さんのミスではなくて、追悼本の製作者のミスだ」
翔花「パズルを解くのに、88年当時の表記まで知らないといけないなんて」
009「昔、インディー・ジョーンズの映画で、『神の名の頭文字』を問う謎があって、現代英語のJを選ぶとトラップ発動、十字軍時代に使われたラテン語ではIが正解というネタを思い出した次第」
晶華「謎解きのためには、その謎が作られた当時の時代背景まで考えないといけないなんて、いかにもな冒険物語って感じね」
009「図らずも、山本さんのゲームブックがそういう古典的名著として扱われることに、当時からのファンとして感無量だったりする」
翔花「で、ニカデマスさんとは上手く会えたわけね」
マシロン「探すのに苦労したよ。何せ、橋の下の掘っ建て小屋に有名な大魔術師さまが住んでいるなんて、こっちは思いも寄らないし。しかも、出会った瞬間に魔法で攻撃されるんだからな」
ニカデマス『ミューマ・バジオの手先め! お前などに用はない、立ち去れ!』
マシロン「ミューマ・バジオって誰だそれ? と思いながら、とっさに反撃しようとすると、バッドエンドなんだな。逃げてもダメで、ここは何もせずに、様子を見守るのが正解」
晶華「ニカデマスさんの放った緑の炎がマシロン君に直撃しますが、不思議なことに、ちっとも熱くありません。ニカデマスさんも驚いているようで、首をかしげています」
ニカデマス『妙じゃな。この炎にふれたら、わしに敵意をいだく者はすべて、一瞬で燃えつきるはずなのじゃが……おぬしはミューマ・バジオの手先ではないのか? どうしてその指輪をしておるのじゃ?』
マシロン「指輪? これはボクを襲撃した魔物が身につけていた物で、うっかり身につけたら外れなくなってしまって……」
ニカデマス『ふう。やれやれ、まぎらわしい……その指輪は魔女ミューマの手先が身につけているものなのじゃよ。最近この街で勢力を伸ばしてきている、あやしげな連中じゃ……もっとも、この街の住人はみんなあやしげなのだがな』
マシロン「とにかく、自分の素性や使命について、正直にニカデマスさんに打ち明けます」
晶華「それを受けて、ニカデマスさんも長々と、いろいろ話してくれますが、パラグラフ134番は本当に長いので割愛して、内容を箇条書きで要約することにします」
- 友人のケマンダーの死に哀悼の言葉を告げる。
- ケマンダーから依頼されていた「鋼鉄ゴーレムの動力源のルビー」の処分だが、うかつに破壊すると大爆発が起こるので、頑丈な金属の箱に入れて、チャリスの街はずれの〈死の井戸〉の底に隠し、守護者の亡霊に委ねた。井戸の中では、魔法の力が封じられているために、絶好の隠し場所だと考えた。
- しかし、3日前、チャリスに住む知り合いの魔術師が、「何者かの手によって、〈死の井戸〉からルビーが盗み出された」という連絡をしてきた。もしかすると、鋼鉄ゴーレムの復活を目論む輩の仕業かもしれん。
- ポートブラックサンドの地下には、カーセポリスという古代都市の廃墟がある。鋼鉄ゴーレムは古の〈魔法大戦〉の末期に、混沌の軍勢に対する決戦兵器として大魔法使いミッドウッド・ワンローが創造したものだが、動き始めたら最後、誰も制御できないという欠陥が見つかったため、使用されることなく封印された。
- 古文書によると、鋼鉄ゴーレムには4つの恐ろしい武器が装備されているという。
- 1つは殺戮本能をかき立てる音波を発する〈黄金のラッパ〉
- 2つは冷凍光線を発する〈水晶球〉
- 3つは電撃を発する〈三叉矛〉
- 4つは接近戦無双の〈巨大剣〉
- その封印場所を知る者は数少ない。ニカデマスの知るのはケマンダーのみ。彼は鋼鉄ゴーレムの封印を解こうとする邪悪の手の者を撃退したが、鋼鉄ゴーレムそのものは破壊できなかったそうだ。
翔花「なるほど。どうやら、マシロン君はケイさんに騙されて、〈死の井戸〉から秘宝のルビーを回収する手伝いをさせられたみたいね」
マシロン「こうなるのが分かっていたから、依頼を断りたかったんだけどな」
晶華「だけど、そういう因縁は重ねておく方が、物語としては面白くなるのよね。初見のプレイヤーさんは、親切心でケイさんを助けて、後から騙されたと知って、悔しがることも含めてのストーリーゲーム体験だと思うわ」
マシロン「で、あの亡霊さんはニカデマスさんと契約して、ルビーの入った箱を守っていたんだな」
晶華「ええ。契約内容は、ニカデマスさん自身か、ケマンダーが来るまで箱を守れ、というもの。ケマンダーの弟子が来たので、賭けごとで勝ったら弟子と認めて、箱を渡すというオリジナル設定を原作に付け加えさせてもらったわ」
マシロン「ボクが箱を手に入れなくても、ケイ、いや、魔女ミューマに雇われた強者が銀のナイフを使って、そのうち亡霊を撃退していただろうな」
翔花「とにかく、今回のストーリーではマシロン君が魔女の色香にたぶらかされて、鋼鉄ゴーレムの復活に力を貸したことになるのね。師匠のケマンダーさんが『何をしておるのか、このバカ弟子が!?』と草葉の陰で怒っていると思うわ」
マシロン「ううっ。師匠、申し訳ない。自分の失態を洗いざらいニカデマスさんに打ち明けます。そして、必ずや鋼鉄ゴーレムを撃退することを改めて誓うぞ」
晶華「ニカデマスさんはため息をついて、こう言います。『やれやれ。ケマンダーの奴も、もう少し利口な弟子を育てられんかったものかのう。師匠に倒せなかった無敵のゴーレムを、お前さんがどうやって倒すと言うのじゃ? 何か策でも考えておるのか?』」
マシロン「冷凍光線だけなら、手持ちの〈魔法の火酒〉の力で対処できます。あとは、音波を封じて、電撃を封じて、〈巨大剣〉を受け止めてくれる壁役の屈強な戦士がいれば、隙をついて動力源のルビーを奪いとることで何とかできるはず。つきましては、ニカデマスさんに音波を封じて、電撃を封じる呪文で、お手伝い願えないでしょうか?」
晶華「無理じゃ、とニカデマスさんは断ります。『若い頃ならいざ知らず、この老骨にカーセポリスの地下遺跡に乗り込んで行って、伝説のゴーレムの相手をせよ、などとは言ってくれるな。とても体力が保たんわ』と説明します」
マシロン「そんな〜。世界のピンチなんですよ〜」
晶華「『それを何とかするために、ケマンダーはおぬしに託したんじゃろうが。ならば、おぬしこそがヒーロー、世界を救う勇者とならずしてどうする?』と、ニカデマスさんは叱咤激励の言葉をつなげます。『ケマンダーは、かつて世界に光をもたらす大魔術師を目指しておった。それゆえに、3つの大陸を巡って、その地の暗黒を封じて回ったのじゃ。その男の遺した弟子が、師匠の想いを踏みにじって何とする? おぬしにはおぬしにしかできぬ技と絆と運命の力が秘められておる。それを見極めたのがケマンダーなら、それに磨きをかけるのがお前さん自身じゃろう。自らの力を恃(たの)まぬ者に、このニカデマス、貸す手などないわ』」
マシロン「……そんなセリフ、ゲームブックにはなかったよな」
晶華「アドリブよ。とにかく、ニカデマスさんは、マシロン君が決意を示すのを待っているの」
マシロン「よし。世界を救う勇者になるのは、他ならないボクなんだ。為すべきことを為す。そのために地下遺跡を今から目指します」
晶華「拙速は大事だけど、無謀と勇気を履き違えないでね。絆の力を大事にするなら、もう一つ行くべき場所があるはずよ」
マシロン「おっと、そうだな。旅は道連れ、こういう時の友がザカレミイ、ザックだ。技術点12は史上最強の戦士の1人として、申し分ない。彼の力がなければ、ゴーレムを倒すことは不可能だ。ダルミナートの酒場こそ、勝利の鍵だとグァンドゥムも言っている」
翔花「言ってないし」
マシロン「シーナのペンダントから声が聞こえてきたんだよ」
晶華「それは妄想よ」
マシロン「妄想から勇気が生まれることもある。『未来の救世主』ってキーワードも妄想かもしれないけど、その言葉を胸に、本当に世界を救えば、人、それを奇跡という。師匠の教えだ」
翔花「本当に?」
マシロン「今、そう決めた。ケマンダー師は言っていた。『言ったもん勝ち』と」
晶華「そんなこと、ゲームブックには書いてないし」
マシロン「ボクの心の中のケマンダー語録には書いてあるんだよ。そして師曰く、『魔術の世界では、想いの強い者が勝つ。負けたと思うまで人間は負けない』とも」
翔花「ああ、それは言ってそう。『運命は自分で切り開け。甘えてはいけない』とか書いてるかもね」
晶華「メタルダーの歌詞は、山本さんも当時の著作で引用していたわね」*1
晶華「ともあれ、マシロン君が決意を固めたのを見て、ニカデマスさんは『餞別じゃ。これを持って行け』と、小さな銀色の盾を手渡します。その表面には7つのハートと3本の剣の模様が刻まれていますね」
マシロン「これは?」
晶華「『ケマンダーからの預かりものだ。彼が死んだ以上、弟子のおぬしに持つ権利がある。どうかルビーを取り戻し、ゴーレムの復活を阻止してくれ。今なら、まだ間に合うはずじゃ』と伝えます。なお、この盾を持っているなら、ゴーレムと戦うことになっても、相手の攻撃力から2点を引くことができます」
マシロン「よし、これさえあれば、ゴーレムごとき恐れるに足りん」
翔花「本当に?」
晶華「実は、鋼鉄ゴーレムの能力値って、技術点16、体力点25なの。だから、この盾だけだと、勝ち目はないのよね」
マシロン「もっと、弱体化させる手段を講じないといけないんだな。とにかく、ニカデマスさんに感謝を示してから、酒場へ向かうとしよう」
晶華「健闘を祈っておるぞ、という老魔術師の言葉を背に、マシロン君は〈歌う橋〉の下の掘っ立て小屋を後にするのでした」
酒場での再会
晶華「何だか、ニカデマスさんのところが長くなったけど、物語上は重要な場所だったのよね。次のダルミナートの酒場も、攻略上必須の重要地点だけど」
翔花「ダはタ扱いで16番め、ルは11番めだから、合わせてパラグラフ27番に行きます」
マシロン「って、翔花が話を進めているし」
翔花「わたしはグァンドゥム。今はペンダントを通じて、話しかけているってことで」
マシロン「森の精霊が酒場まで導いてくれたんだな、きっと。ザックはいるかな?」
晶華「酒場の主人曰く、ザックはまだ街に戻って来ていないようです。代わりに、指輪のフラグが立っているので、カウンターの隅に見たことのある男女の姿を目撃しました」
翔花「わたしはシーナ。お兄さんもいっしょよ。マシロンさんを追いかけて来たの」
晶華「そんな訳がありません。ここで登場したのは、ケイとそれから猫に顔を引っ掻かれた強盗です」
翔花「2人はつるんでいたの!?」
マシロン「どうやら、そうらしい」
晶華「酒場の主人曰く、『気をつけた方がいいぜ。かわいい顔をしているが、あの娘は暗黒神を崇拝する魔女だって噂だ。手下もたくさんいるらしい。あの男もその1人さ』」
翔花「わたしはケイ。あら、マシロン君じゃない。こんなところで会うなんて奇遇ね。これも運命のイタズラって奴かしら。ちょっと、こっちに来て、いっしょに酒でも飲みかわさない? と、うまく誘いをかけて、眠り薬を飲ませてから、暗黒神の生け贄にします」
マシロン「どうして、そんなにすらすらと悪女プレイができるんだ!? ゲームブックには、そんなセリフは書いていないだろう」
晶華「大体、お姉ちゃんが勝手に話を進めないで。ケイさんはマシロン君の存在に気付かないの。マシロン君から話しかけない限りね」
マシロン「ここで下手に話しかけようものなら、流れは少し違うけど、あっさり捕まって、本当に生け贄にされそうになるんだな。それで、いろいろショートカットされるんだけど、攻略記事のためにはイベントはしっかりチェックしておきたいわけで」
晶華「わざと捕まって、ゴーレムの儀式の場に連行されていく方が話は早いんだけどね」
マシロン「今回は、きちんと探索したうえで、じっくり話を進めるさ。ケイ、いや、魔女ミューマの手下に不意打ちで気絶させられないルートを選ぶ」
晶華「では、次回から地下探検からのクライマックスに突入ってことで」
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ61)
・技術点8/9
・体力点20/22
・運点11
・食料:5
・金貨:11枚
・所持品:背負い袋、ナイフ、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、魔よけのペンダント、骨の髪飾り(ネズミとコウモリをただで召喚可能)、銅の指輪(呪われていて外せない)、技の薬、力の薬、ツキ薬、魔法の火酒(冷凍攻撃の際にパラグラフ+70)、銀の盾(7つのハートと3本の剣の模様、鋼鉄ゴーレムの攻撃力2点減少)
・手がかり:ダルミナートの酒場には寄った
魔法使いのニカデマスから、いろいろな話を聞いた
鋼鉄ゴーレムは冷凍光線を放つ
ケイは報酬をチョロまかした悪女。その正体は魔女ミューマ。鋼鉄ゴーレムの復活をもくろんでいる。
(当記事 完)