Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

ダークタワー4巻読了

刻の涙?

 

NOVA「スマン。今回もキャラ作りは延期して、別の記事だ」

晶華「フッ、私たちの期待を裏切ったNOVAちゃんを始末する時が来たようね。行くわよ、お姉ちゃん」

翔花「ええ。あまり気は進まないけど、時にケジメは付けないといけないこともある。準備OKよ」

晶華「知識のパワー!」

翔花「知恵のパワー!」

晶華「太陽サンサン、日輪の力を借りて」

翔花「緑の風に舞い散る花吹雪」

晶華「くらえ、必殺!」

翔花「ダブル花粉症……」

Wショーカ『バスタァーーーーッ!』

 

NOVA「SKシールド」

翔花「え、何?」

晶華「私たちの合体攻撃を防ぎ止めるなんて、その盾は一体!?」

NOVA「解説しよう。SKシールドとは、正式名称スティーヴン・キング・シールド。ダークタワー4巻は上下巻合わせて文庫サイズで1300ページを越える装甲を誇る頑丈さと、暗黒ホラーの多元世界エネルギーフィールドによって、かなりの防御力を備えているわけだ。季節外れの花粉攻撃など通用せん。そんなわけで、今回はようやく読み終わったダークタワー4巻の感想記事をお送りする」

翔花「ダークタワーって何?」

NOVA「妖精郷リプレイの裏で、密かに読み進めていた長編ファンタジー小説だ。これまでの感想記事は以下の通り」

晶華「3巻を読み終わったのは、昨年末から今年の年始にかけてね。で、今が5月の半ば過ぎだから、4ヶ月も経ったのか。ずいぶん時間が掛かったじゃない」

NOVA「まあ、単純に分量が多かったこともあるが、冬から春に掛けて、それなりにバタバタしていて、長編読書のペースが落ちていたんだよ。内容も重いし暗いし、主人公ローランドの恋人スーザンと死に別れる回想録で、悲劇の恋物語で、読めば読むほど、その先の悲劇を読みたくなくなるぐらい感情移入したわけだし、一気に読み進むと鬱モードに突入しそうだし、それに耐えられる精神状況を整えて、ようやくクリアした次第」

晶華「確か、今年中に全部読了を目指すって言ってなかった? 全部で何巻あるの?」

NOVA「7巻だが、このペースだと少し時間が足りないかもしれない。今年度中に読了を目指す、と修正した方がいいか」

晶華「まあ、読むのを断念してフェードアウトするよりも、ゆっくりでも読み続けて感想記事を書く方が望ましいんだけどね。仕方ないわ。スティーヴン・キングさんの盾に免じて、今回は感想記事を書くのを許してあげる。さっさと記事を仕上げて、それからエマ・ショーカのキャラを完成させなさいよね」

NOVA「お前、何だか偉そうだな」

晶華「妖精郷リプレイを愛する読者さんの声を代弁してあげたのよ」

NOVA「なお、キングさんの小説ファンは、1991年に刊行された3巻から、97年に刊行された4巻まで、6年間待たされたらしい。そして、早く続きを出せ、と脅迫メール、嘆願メールがいろいろと出されたというエピソード付き」

翔花「6年も待たされたのかあ」

NOVA「まあ、俺はダイ大のバラン編アニメ化まで30年待たされて感慨深しだけどな」

翔花「小説の新巻と、アニメ化では意味合いが違うと思うけど」

NOVA「さすがに30年間もずっと待ち続けたわけではないけどな。ほとんど諦めかけていて、期待すらしていなかったのに、令和に入っての復活に、マジかよ、どうせつまらない作品でお茶を濁すんじゃないんだろうな、とか期待半分、不安半分だったが、今は全力全開で期待100%で毎週ドアサを楽しみにしている現状だ」

晶華「あ、寄り道脱線注意報発令!」

NOVA「うっ、長年待ち続けたファン心理の話をしている。で、そろそろ2年待っているロードス新刊も続きが気になるが、とりあえず星矢ND新刊の6月刊行予定が正式に発表されたので、貼りつけておく」

NOVA「ファイナルエディションを買うかどうかは迷っている最中だが、画像ぐらいは貼りつけても罰は当たるまい」

NOVA「てっきり、風魔の小次郎のこのバージョンみたいな大型本(2640円)になるかと思ったけど、1冊1100円なら、手頃で買いやすいかも、と画像貼り付けして、思った次第」

翔花「楽しみがいっぱいなのはいいことね。だけど、星矢さんの話がしたければ、また記事を改める方がいいかも」

NOVA「いや、実のところ、星矢話をメインにすると、また『金がないと貧乏人アピールするのに余念がない鬱男がネガティブコメントを書いてくる可能性』があって、うんざりさせられるかもしれないので、あくまでこれはダークタワーとか、別記事のおまけ程度にする方がいいんだよ。どうして、あやつは素直に楽しむコメントを書いて、人をワクワクさせられないのかね?」

晶華「NOVAちゃんの説教中毒に陥っているからじゃない? わざとうんざりさせて、NOVAちゃんの説教を誘発して、皮肉たっぷりの説教をされることに快感を覚える体質に調教されちゃったとか?」

NOVA「蓼食う虫も好き好きって言うもんな。俺は別にしたくて説教しているわけじゃないし、普通に楽しく趣味話で盛り上がるコメントを期待しているんだが、そういう陽性のコメントがどうしても書けないようなら、うんざりポイントを貯めて、一定量に達したら書き込み禁止に追い込んで、俺の心をスッキリさせる可能性も示唆しておこう。下手な批判はせずに、素直にファンとして楽しめるコメントなら歓迎。鬱で貧乏臭さ全開の辛気臭いコメントで趣味のワクワク気分を台無しにされるのは、ノーサンキューってことで」

 

殺人ウィルスで崩壊した世界

 

NOVA「で、ダークタワー感想に戻るんだが、3巻のラストで、狂ったコンピューター・ブレインの操作する高速列車に乗って、ブレインとのなぞなぞ対決が開始されるぞってところで、話が終了していたんだな。それで6年間放置されていたのがアメリカのキングファンだったらしいが、4巻の頭でダジャレやナンセンスギャグまみれのジョークなぞなぞ連発で、コンピューターの処理能力をオーバーさせるエディの機転で、相手を撃退するのに成功したわけだ」

晶華「90年代のコンピューターには、人間のお笑いは分からなかったみたいね」

NOVA「まあ、ターミネータースカイネットがまだ大型コンピューターの時代だったからな。そして、高速列車から脱出したローランド一行が次に直面したのが『ザ・スタンド』の世界なんだ」

ザ・スタンド(1) (文春文庫)
 
スティーブン・キングのザ・スタンド [DVD]

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翔花「どんな世界?」

NOVA「殺人インフルエンザによって、世界の人口の90%が死に絶えていく世界だ」

晶華「ちょっ、それって、新型コロ……」

NOVA「はい、リアルを持ち込むのは禁止。本気で怖くなっちゃうから。原作は1978年に刊行されたもので、別に今の状況を予見した話ではないけど、昨年末に時流に合わせるかのように、TVドラマ版が再映像化されているらしい」

翔花「スタンドってタイトルだから、JOJOに関係あると思うけど」

NOVA「関係あるぞ。というか、JOJOがキングのホラー作品をイメージソースの一つにしているのは、作者が公言しているからな」

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

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NOVA「なお、『ダークタワー』はキングの各作品をリンクさせる壮大なクロスオーバー作品でもあるわけだが、俺はそこまでキング作品を追っかけていたわけじゃないので、後書き解説とか、ネットでの事後勉強で、その一端に触れている程度でしかないことを述べておく。

「で、『ザ・スタンド』のラスボスであるランドル・フラッグが、ローランドの宿命の敵である黒衣の魔道師ウォルターの別名で、ウォルターは他にマーリンとかマーテンという様々な名前を持って、キングの多元世界のいろいろな場所に出没し、暗躍しているという設定になっている。そんなウォルターあるいはフラッグの仕える巨悪がクリムゾン・キングという名前で、『ダークタワー』4巻で初めて、その名前をローランドが知ることになる。つまり、この4巻からシリーズのラスボスが浮かび上がって来たわけだ」 

晶華「そう言えば、JOJO第5部のラスボスが使うスタンド名が、キングクリムゾンだったわね」

NOVA「元ネタは、60年代から活動しているロックバンド名で、スティーヴン・キングもその名前から流用したんだと思われるが、同時に自分自身を投影したラスボスでもあるのだろう」

翔花「ああ、キングさんの小説に登場する究極の悪がキングということね」

NOVA「小説家は時に、自分を主人公に投影したり、敵役に投影したりするものだからな。自分の中の光を体現したのが主人公なら、闇を体現したのが敵役だと考えるなら分かりやすい」

晶華「つまり、クリムゾン・キングが殺人インフルエンザで世界を滅ぼそうとしているので、それをローランドさんが守ろうとする話ってことね」

NOVA「いや、違う。『ザ・スタンド』のウィルス崩壊世界は、たまたまローランド一行が立ち寄った世界に過ぎず、本作ではただの通過地点であまり掘り下げられることもない」

翔花「すると、別に『ザ・スタンド』を読まなくても、話には付いて行ける、と?」

NOVA「まあ、そっちは日常が崩壊する過程がじわじわ描かれているらしいがな。ローランドが訪れたときは、すでに崩壊した後だから、後日譚ということになるようだ。ローランドよりも困惑するのは我々の現実世界の住人設定のエディたちの方だな。自分たちの世界の未来が崩壊しているんじゃないか、と恐怖に駆られて、あちこち調査した結果、『ザ・スタンド』の世界はエディたちの世界とはよく似ているけど、細部が微妙に違うパラレルワールドであることが判明する」

晶華「そんなことがどうして分かるのよ?」

NOVA「主に、車とかの企業名が違うってことだな。80年代のエディ、60年代のスザンナ、70年代のジェイクはそれぞれ違う時代からローランドに召喚されて仲間になったんだけど、彼らの元いた世界が同じ時間軸にあることは共通の歴史文化を確認することで分かる。例えば、同じ童話とか映画とかを知っているって話だな」

翔花「ああ、時代は変わっても、同じゴジラウルトラマン仮面ライダースーパー戦隊などで話が噛み合うってことね」

NOVA「例えば、俺がタイムスリップして、2030年に行ったとしよう。もちろん、10年間の時間差で知らないことはいっぱいだろうけど、『へえ、新作ウルトラマンはまだ続いているんだなあ。え? Zさんが師匠と呼ばれてるって? するとゼロさんの孫弟子かあ。そいつは驚いた』って感じの反応になると思う。

「だけど、もしも2030年と言われていても、『え? 誰もウルトラマンを知らない? この世界で1966年に作られた空想特撮シリーズはレッドマンだって? その後、レッドセブンとか、レッドジャックとか、レッドマンA、レッドマンタロウ、レッドマンレオって続いていて、しかもスーパー戦隊のリーダーが赤じゃなくて緑がデフォで、仮面ライダーはそもそも存在しないだと? スカルマンがライダーの代わりにシリーズ化されている? そりゃ、俺の知ってる世界じゃねえ』って反応になるだろう」

晶華「そもそも特撮ヒーロー番組が作られていること前提なのね」

NOVA「あくまで、俺がまだ受け入れやすい一例ってことだよ。仮に円谷プロや石ノ森さんが誕生しなくて、日本に特撮ヒーローというジャンルが生まれていなくて、活劇ヒーローはアニメの世界にしか存在せず、実写番組はヒーロー不在の怪奇ホラーか不思議コメディーみたいな作品群しか存在しないとか、そもそも映像作品が誕生していなくて、娯楽文化が発展しなかった未来とか、可能性を考えるとキリがない」

翔花「1999年で、本当に大災厄で滅びた後の世界とかね」

NOVA「北斗の拳みたいにモヒカンがヒャッハーッとバイクで荒野を駆け回る世界になっていたら、それは単純に未来にタイムスリップしたというよりも、そういう異世界に来ちゃったと考える方が受け入れやすい。さすがに、10年後とか20年後に自分の世界がそうなっていると考えるよりも、ここは自分の世界と異なるモヒカントピアだな、と解釈する方が納得できるってもんだ」

晶華「核戦争で崩壊したホクトピアで、ホクトワルドが暗殺拳法でアタタタタと暴れ回って、ヒデブ〜とかアベシ〜とかタワバ〜って爆裂四散しちゃう世界ねホクト」

翔花「だったら、似て非なる世界で、鎧を装着した少年が拳を連続で撃ち放つセイントピアってのがあっても不思議じゃないわね。セイントワルドが女神を守るために戦って、小宇宙を高めるセイント」

NOVA「そいつらの戦う世界は、我々とは違う異世界だよな。いくら年号があって、現実世界の延長のように見えても、どこかで時間軸の歯車がズレて、我々とは異なる物理法則、文化や歴史観で世界が動いている」

晶華「で、『ザ・スタンド』の世界も、そういう異世界なのね」

NOVA「いや、違うって。殺人インフルで滅んだ以外は、エディたちの世界とほとんど同じで、ほぼ違和感を伴わないリアルな世界だ。だからこそ愕然とするわけだし、それでも探索するにつれて、やはり違うという結論に達するわけだ。

「一見、似ているけど、PSの代わりにセガ・サターンが覇権をとっているとか、

「駐車場に止まっている車の製造会社がトヨタなんかじゃなくて、ツブラヤやニンテンドーになっているとか、

「書店に行ってもジャンプやマガジン、サンデーなどの少年雑誌が見当たらなくて、ジャックとかマックスとかサンシャインなんて漫画雑誌が店頭に置かれているとか、

「文化文明レベルはほぼ同じでも、固有名詞が明確に違う世界で、自分たちのいた場所とは違うと気づくわけだ」

翔花「つまり、花粉症ガールがいなくて、NOVAちゃんが暗黒吸血美女の執事役として、ブログを書いているような世界ね」

NOVA「……そいつは当ブログの企画没案だ。花粉症ガールの目が赤いという設定が、微妙に名残となっている」

 

晶華「とにかく、ウィルスで死滅した世界というのは、自分たちの未来ではなく、似て非なる世界だと判明したわけね。それから?」

NOVA「時が来たって感じで、ローランドがおもむろに昔話を始める。と言うのも、世界の周りは『希薄』という不思議オーロラに包まれ、どこにも行けそうにないことが分かったので、物語の魔力で状況打開のヒントを探るべく、仲間同士の情報共有を図ろうという流れらしい。まあ、作者のストーリーテラーとしての強引な理屈でしかないんだが、物語展開のための多少は粗のあるお膳立てに、ケチを付けても始まらないんだよな」

晶華「普通に、自然に考えたら、ウィルスで死滅した世界でのんびり焚き火を囲んで昔話なんて、しようと思わないものね」

NOVA「逆に言えば、普通じゃない状況、不自然な状況で『冷静に理屈立てて考えたら』という仮定を立てること自体が、そういうツッコミを入れる者の読解力の偏狭さ、感情移入能力の低さを露呈しているんだけどな。異常な状況では、『気を休めるために、ちょっと昔話でもして、それから現実に対処する力を取り戻そう』という提案をチームリーダーがして、仲間もローランドの過去は気になっていたから、一息つくために約1000ページ分の昔話に耳を傾けるんだ」

翔花「ちょっと昔話じゃ済まないわね」

NOVA「ラノベ3冊を優に越える分量だからな」

 

ちょっとした昔話

 

NOVA「30代の外見を持つ300年の時間を越えたローランドが、ガンスリンガーとなったばかりの14歳の頃、親友のカスバートとアランと共に、父親の領主から辺境の調査の任務に派遣される。父親の意図としては、反乱軍との戦争が迫っており、血気盛んで傲慢な若者たちが無茶をしないよう安全な僻地に避難させたというのが本音だが、その僻地と思われた場所で、反乱軍の秘密計画がこっそり進められており、それに気付いたローランドたちが敵の秘密計画を叩きつぶすというのが大筋だ」

翔花「つまり、少年勇者と仲間たちが、世界の平和を脅かす悪党の卑劣な陰謀を叩き潰す派手な活劇ロマンということね」

NOVA「最後の最後はな。少年3人が200人の敵軍を相手に、こっそり暗殺して回ったり、好敵手の老ぼれ悪党ガンマンと決着をつけたり、火薬玉を石油貯蔵施設に投げて大爆発させたり、『希薄』という魔空間に敵軍勢を誘い込んで壊滅させたり、バトル展開そのものは悪くない。むしろ痛快大活劇と言えるんだが……」

晶華「残念な結果になったということ?」

NOVA「ローランドは敵との大活劇に赴く前に、それまでの調査活動で恋愛感情を育んだ協力者のスーザンを後に残すんだな。そのスーザンは、ローランドたちが戦っている間に、別行動をとっていた敵の男や、ローランドに恨みを持つ老魔女に見つかって、最終的に火炙りの刑にされるんだ。ローランドたちが敵の陣地を燃やしているのと同じ頃に、大切な想い人も炎に焼かれる。ハッピーエンドではなく、大義のために個人的な幸せを失ったビターエンドの回想譚なんだ。

「ローランドが恋人のスーザンを助けることができなかったために、非情のガンスリンガーになったという過去はそれまで断片的に触れられてはいたんだが、その恋愛劇を情感たっぷりに描いた後で、最後に全てが燃え尽きるというハードボイルドな結末。分かっているけど、止められない悲劇ということで、正に刻の涙を感じながら読んでいた次第」

ダークタワー IV 魔道師と水晶球 下 (角川文庫)

NOVA「本作のスーザンは、ローランドが派遣された辺境の村の牧場主の娘。父親は村で暗躍する悪党の陰謀に気付いたために殺害されていて、彼女は叔母に養われているんだが、この叔母はスーザンの若さに嫉妬したり、スーザンを年寄りの村長の妾にして、大金をせしめようと企てるなど、かなりの性悪女と化して、最終的に老魔女の先鋒を担いでスーザン処刑に一役買った挙句、狂死してしまう」

晶華「最低じゃない」

NOVA「ああ、キングの小説は美しいものも醜いものも、丁寧な筆致で生々しく描くから、悪に堕ちた人間心理の描写も細かいんだな。決して悪人じゃない叔母が、それでも自分の衰え行く美貌に不安を掻き立てられ、そこに悪党の手練手管に絆されて、悪いのはスーザンであり、彼女をたぶらかしたディアボーン(ローランドの偽名)であり、二人は堕落した恋路に身を焦がし、物の道理を見失ったから罰を与えないといけないという理屈に絡め取られてしまう」

翔花「善人が悪事に身を染めてしまう過程がじっくり描かれているってこと?」

NOVA「善人というか、ごく普通の真面目で品行方正なおばさんって感じだな。ただ、姪に嫉妬したり、一方で恩着せがましくて口うるさく、反抗的な態度をとられることで、ますますヒステリックになっていく薄汚い大人のようにも描かれている。潔癖症で、女一人で生きていくために金への執着心が強く、父親(彼女にとっての兄)の死後に孤児となった娘を育ててあげたんだから、その美貌で村長の妾になって恩返しするのは当然だ、という歪んだ物の考え方をしている」

晶華「自分は潔癖症なのに、姪を妾に出すことには抵抗ないなんて、身勝手よね」

NOVA「それが姪にとっても幸せになるはず、と心から信じているんだな。まあ、村の中では一番の権力者相手の玉の輿だから、時代劇で言うなら、大奥に入るような感覚なんだろうが、スーザンはローランドと恋することで、そういう状況を変えたいと願うようになる」

翔花「ローランドは白馬に乗った王子さまって感じ?」

NOVA「実際、身分を隠した領主の息子だからな。グレンダイザーのデュークフリードと、ヒロインの牧葉ひかるの立ち位置が近いけど、実のところローランドが14歳で、スーザンは16歳という年の差もあって、訳者後書きによれば、大人びた男子中学生と女子高生の情熱的な恋愛物語という見方だ」

晶華「でも、破滅に向かう恋だと」

NOVA「まあ、その未来は分かっていたから、淡々と読もうと思ったんだけど、俺がキングの筆致に絡められて、思いがけずスーザンに感情移入してしまったんだ。彼女が白馬の騎士風のローランドに恋し、だけど老村長の妾になるはずの自分の立場を慮って、すぐには受け入れられず、散々悩みながらも、ローランドに心惹かれていき、やがてローランドの正体が分かって、彼の調査活動に協力するうちに、自分の父親の死の真相が分かって、親切ぶった顔をした村人の一部の裏の顔を知って、その陰謀を潰して、父の仇討ちを考えるようにもなる」

翔花「情熱的な娘なのね」

NOVA「父親が義侠心篤くて、誇り高い男なので、娘もそういう性根を引き継いでいる。そして、自分が村長の妾になることで、村長の年老いた妻の立場に同情したり、いろいろと気遣いも示せる良い娘なんだけど、ローランドとの付き合いで狭い村の娘から、もっと大義を考えるように目覚めて、その結果、敵に捕まったローランドたち3人を助け出すべく、アクションヒロインと化して、ローランドの銃で保安官と助手を射殺するという罪を犯してしまう」

晶華「それは罪なの? 保安官も悪党の仲間だったなら、それを倒すのは正義でしょ?」

NOVA「物語の善悪論で言うなら、悪党に加担した者を殺すことは罪か否か、という命題が成り立つが、ここではスーザンの立場に注目しよう。ローランドたちはガンスリンガーの訓練を受けていて、殺人を忌避しないプロの戦士だったんだが、スーザンは勇気があって誇り高いとは言え、殺人訓練など受けていない一般人だ。それが恋人を助けるために人を殺してしまったので、結果的に村人から処刑される大義名分を与えてしまう。言わば、スーザンは愛に殉じたわけで、感情移入した分、ダメージが大きかったな、と実感(涙目)」

晶華「感情移入しなければいいのに……ってわけにはいかないのね」

NOVA「理屈では分かってても、時としてままならないのが感情ってものだろう? その辺は、あまり感情移入しないでおこうって考えていても、結局は感情移入させられたことで、やるな、スティーヴン・キング。この俺にここまで感じ入らせるとは! と作者を褒めてあげたい」

晶華「何を上から目線になっているのよ。向こうの方が、圧倒的に格上なんだから」

NOVA「それはそうなんだが、この小説4巻めを書いたときは、キングさんは48歳で、今の俺より2歳下だ。つまり、年齢的には同じような感性を持ち得るんだ。そして、キングさんの後書きが面白くてな。そちらにも感じ入った次第だ」

翔花「どんなことが書いてあったの?」

NOVA「ローランドの恋愛物語を最初にイメージしたのは17歳の時らしいんだ。だけど、今の自分は48歳で、10代の恋愛物語を感情移入して書くなんて、できっこない。おっさんの夫婦生活や成熟した愛情はイメージできるけど、そんな瑞々しい感性は自分の中には残っていない。だから、4巻がなかなか書けずにいたんだけど、ある時、ふと10代の自分の声が聞こえて来て『ぼくが手伝ってあげるよ』と若者の気持ちを思い出させてくれた。彼の想いをきちんと受け止めていれば、この物語は成功だ。もしも、失敗したとすれば、彼の想いを受け止めきれなかった私の咎である……的なことをキングさんは後書きに書いてあるんだな」

晶華「つまり、10代の自分を別人のように見ているってこと?」

NOVA「キングさんのイメージでは、そうなんだろうな。昔の色褪せた想いを経験豊富なプロ作家の技術で機械的に再現することを良しとせず、その時の想いが蘇ってくるというよりは、過去からの声という霊媒的な感覚で、想いを再現したから書けた作品ということになる。言わば、昔のピュアな想いと、今の老成した創作技術の結晶ということだ」

翔花「それを20年後のNOVAちゃんが刻の涙で感じ入りながら読んだってことね」

NOVA「やっぱ、一流の作家のこういう後書きは、味があっていいよなあ、と思う。過去の若き日の自分が、今の自分を助けてくれて、それに感謝を捧げるなんて、清々しいイメージの塊じゃないか(キングさんは、狂気の最中と自嘲していたが、自分には理解できる程度の狂気だ)。もちろん、編集さんへの感謝とか、最大の感謝は奥さんにあるとか、そういう人間愛や作品愛が濃厚に描かれた後書きで、良い本を読んだって感じに浸らせてくれたわけで」

 

魔道師と水晶球

 

NOVA「さて、サブタイトルだけど、まず水晶球から語ると、強力な魔力を宿した千里眼の能力を持っていて、人間の魂を引きずり込み、人々の苦痛をエネルギーとする呪われた品のように描かれているな。最初は、村外れの森に住む邪悪な老魔女リーアの持ち物になっていて、可愛がっていた使い魔の蛇をローランドに殺されたことで、魔女の恨みを買うことになる」

翔花「魔女が魔道師?」

NOVA「いや、魔道師は4巻の最後の方に再登場した黒衣のウォルターもしくはフラッグで、彼の水晶球の魔力で、魔女も操られていたに過ぎない。水晶球はローランドにも働きかけ、ダークタワーの幻影を見せて、そこに至るためのヒントを散りばめていたりする」

晶華「邪悪な力を秘めて、破滅に導くアイテムなんだけど、ヒントもくれる、と」

NOVA「この魔女もかなり性悪で、最終的に村人を扇動してスーザンを処刑させたのみならず、その後日譚において幻影の魔術を駆使して、ローランドに母親を殺させるよう仕向け、彼のトラウマ製造機になっていく。ただ、ローランドが自分のトラウマから逃げずに向き合うことで、水晶球の力が彼に導きを与え(より多くの苦痛が得られるように)、オズの魔法使いを手掛かりにした道が開かれる」

翔花「オズの魔法使いって、ローランドさんは知っているの?」

NOVA「異世界出自の彼は知らないけど、現実世界出自のエディたちは知っていて、その謎を解いて、次に向かうルートがはっきりするんだ。そして、最後に黒衣のウォルターもしくはフラッグが、童話の魔法使い役として登場し、クリムゾンキングの警告『これ以上、ダークタワーの探索を続けるな。従わないなら仲間が次々と死ぬことになるぞ』を伝える。でも、ローランドの仲間は皆、旅の継続を誓い合って次に続いた、と」

晶華「魔道師と水晶球はどうなったのよ?」

NOVA「警告しただけで、消えた。あと、3巻で機械都市ラドの支配者の悪党チクタクマンが、ウォルターに救出されていたんだが、本作のラストシーンで登場して、あっさり倒されている。何のために出て来たのか、よく分からないが、まあ代わりに老魔女リーアという新たな悪幹部に置き換わったものと見なす。

「正直、チクタクマンは大物ぶった小物でしかないので、使えるかな、と思って生き延びさせたけど、やっぱり使えないと作者から見限られたんだろう。この辺、キングはすごく丁寧に描写した挙句、十分感じ入らせてから、あっさり殺害することで、読者に悲鳴を上げさせる手法を得意としていて、チクタクマンは時計マニアというキャラ付け以外はさほど魅力がないし、感情移入もさせにくいから、逆に何で前作で生き延びさせたんだろう? って気になった。もしかすると、何かの重要な役割があったのかもしれないけど、それは他のキャラでも十分果たせると判断したのかな」

晶華「一応、クトゥルフ神話におけるニャルラトテップの化身の一つみたいね。91年にチクタクマンブームでもあったんじゃないの?」

ミッキーマウス チクタクタウン

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  • 発売日: 2012/11/06
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NOVA「ゲームのチクタクバンバンは82年だから関係ないと思うが、93年にはキングと同じモダンホラー作家のクーンツも『ドラゴン・ティアーズ』という作品の敵役でチクタクマンという名の魔物を登場させている」 

翔花「時間を操る機械神ということで、チクタクマンというイメージがその時期にあったのかもね」

NOVA「時空魔術師としては、気になる存在だが、これ以上チクタクマンにこだわっても仕方ないので、この辺で感想記事は終わりにしよう。次はこれを読む予定」

(当記事 完)