買い物タイムに向けて
NOVA「満を持して、エマ・ショーカのキャラを完成させるぞ」
翔花「わーい。とうとう、この日がやって来たのね。苦節何十時間の寄り道脱線を繰り返して、期待を裏切られ続けても、信じ続けた甲斐があった(涙目)」
NOVA「大げさな娘だな。せいぜい一週間足らずってことだろう」
晶華「と言うか、TRPGのキャラ作りに一週間も掛からないでしょ?」
NOVA「ソード・ワールドなら手慣れて早ければ、10分ぐらい。慣れていなくても30分あれば十分に作れて、それを記事にするにしても、2、3時間あれば、何とか書けるだろうな。まあ、余計な引き伸ばしをしたり、同時に何人もキャラ作りの記事を並行させて書いたり、途中で邪魔されて気を紛らわされたりしなければ」
晶華「子どもじゃないんだから、言い訳をしないの」
NOVA「問題解決のための状況分析と、その情報共有のための言い訳、弁明なら積極的に為すべきだと考えるが、そういう建設的な言い訳じゃなく、自己保身、自分は悪くないと訴えたいための言い訳は見苦しいってことだな。
「ここで大切なのは、『その情報を相手が聞くことが問題解決に役立つか』という判断だ。自分の事情を分かって欲しい、そのために言い訳をする。そういう気持ちは分かるが、相手にとって大切なのは、言い訳をしている本人が問題解決を図れるかどうかだ。問題の原因をきちんと分析して、対処手段とか、手段は見えなくても心構えや覚悟、決意を示してくれる弁明なら、それを聞く価値は十分にある。逆に、問題解決という考えに至らず、問題の責任は自分にはないという無責任な心根が露呈したなら、『そんな言い訳よりも、問題解決をどうするか考えろ』と怒られることになる。つまり、『言い訳をするのではなく、問題を解決するのにどうすればいいかという今後の方針を示せ』ということだな、大人だったら」
晶華「まあ、言い訳している人間は『自分の気持ちを分かって欲しい』って感情を訴えがちだけど、言い訳を嫌う人間は『お前の気持ちなんてどうでもいいから、お前の為すべきことをどう考えているか、を示せ』って言いたいわけ?」
NOVA「『言い訳するな』というのが口癖になっている上司もいるから、『いいえ。これは問題解決に必要な状況報告です。是非とも聞いてください』と返せれば、優秀な部下と言えるだろうな。あるいは、『では、言い訳を中断して、状況報告に移らせてもらいます』と宣言してから、先ほどの言い訳の続きをもう少し冷静に仕切り直す手もある」
翔花「でも、寄り道脱線に入っているよね」
NOVA「まあな。では、寄り道脱線を中断して、問題を報告させてもらおう。実は、キャラクター作りの次の段階は、買い物タイムなんだが、エマ・ショーカにお金をいくら渡したらいいのか、という判断に迷ってな」
晶華「初期設定は、1200ガメルよね」
NOVA「エマは筋力18のファイターだから、両手剣のファルシオンと金属鎧のチェインメイルを装備できる。だが、それだけで790+760=1550ガメルになってしまう」
晶華「初期段階では、そういう重武装はできないってことね。冒険してお金を稼いで、自分に合った装備を見繕えるようになるのが戦士の最初の目標となる」
NOVA「でも、7レベルだろう? 初期の冒険者みたいに金がないなんて景気の悪い話にはしたくない」
晶華「妖精郷では、お金が稼ぎにくいんですけど」
NOVA「それなんだ。基本ルールブックの3巻めには、高レベル冒険者を作成する指針が載ってある。7レベルだと、ざっと成長回数13〜17回、追加経験点2万〜2万7000点、所持金2万4000〜3万6000ガメル、ついでに名誉点250〜350というのが標準らしい」
翔花「ええと、エマさんは成長回数10回、経験点3万7000点で作ったから……」
晶華「成長回数の割に、経験点が多いってことよね。初期経験点は3000点からスタートだし。で、それよりも問題なのは、所持金2万とか3万ですって? 妖精郷では、そんなにお金を稼げていないわ。お姉ちゃんばかり、そんなにもらえるのはズルい。お姉ちゃんも、私たちみたいに赤貧生活に喘ぐべきだわ」
NOVA「と、他のプレイヤーキャラとの格差が、嫉妬を招きがちなんだよな。金がないと、ついついこういう思考になりがちなのかな、と思う」
晶華「ん? ちょっと待って。お金は天下の回りもの。お姉ちゃんのエマさんは仲間なんだから、お姉ちゃんのお金は私のもの。私のお金は私のもの。だったら、お姉ちゃんがたくさんお金をもらえると、それは私の利になる。嫉妬心なんて醜い感情は、ゴミ箱にポイよ。お姉ちゃんに3万ガメルを渡してあげて。そうすれば、それはパーティー財産として流用可能になる。パーティー全員が赤貧に喘ぐよりも、仲間に金持ちが一人でもいる方が全員の幸せに通じる。そうよ、それがいい」
NOVA「それが資本主義の論理だな。そして、金持ちがお金を積極的に社会に還元して、持てる者が公共投資とか大義のために動けば世の中良くなるし、逆に持てる者が自分だけ良ければいいと小市民感覚に甘んじてケチ臭くなれば、世の中全てがケチだらけになって、さもしい社会になる。金持ちが世の中を動かすのは資本主義の原則だが、その世の中の動かし方が公のためでなく、自己の利益に汲々として、貧乏人から搾取するようになれば、社会主義の方がいいという考えになるわけで。今一度、資本主義経済の長所と欠点、そして、そういう思想を人間の幸せにどう結実できるかを考えたくなった」
翔花「それって寄り道脱線よね」
NOVA「いや、TRPGのプロが語る経済学というのは、成功例が一つあるんだがな」
晶華「ああ、『アルシャード』のゲームデザイナーさんは、今、経済関係の評論活動をやっているのね」
NOVA「まあ、マンガで世の中の問題を分かりやすく解説した本というのは、複雑な問題に一方的でバランスを欠いた主張になりがちだとは考えるが(作者の主観がどういう主義主張に軸足を置いているかは理解しないといけない)、それが全ての正解ではない一作者の入門書、入り口という認識で読めば、害悪にはならないだろう。それが全てで他が目に入らないという盲信に陥らなければいいという意見だ」
翔花「マンガの作者を神さまのように崇めて、世の中の問題を語るのに、それしか知らないというのでは、ダメってことね」
NOVA「マンガを分かりやすいテキストにするのはいいけど、そこで思考停止して疑問を感じなくなれば、それ一辺倒でしか物を考えられなくなれば、宗教は阿片と言ったマルクスと同じで、愚かな極論に走りがちになる。こういうのは20代なら世間知らずに突き進むのもハシカのような物だけど、30過ぎた後でも一面的なものの見方しかできないようじゃ、落ち目になっていく証拠かな」
晶華「で、NOVAちゃんはどういう経済主義なの?」
NOVA「質素倹約の精神で文化風俗を取り締まる寛政の改革や天保の改革みたいな政策はダメだなあ。元禄文化にせよ、化政文化にせよ、庶民が元気に活性化できる時代がベストだと思いつつ、俺は経済の素人だからな。あまり大上段に構えた論議はしたくない。せいぜい庶民感情として、暗くて重い話はフィクション以外では楽しくないので、現実逃避でもいいから、明るくなれる話を求めたいってところだな。お金を回せという意見には賛成。お金を動かしている人間は素直に尊敬する。お金をケチる人間には魅力がないからな。俺ができないことをしてくれて、俺に快や利益、知見を与えてくれる人間に、変な嫉妬意識で批判しても仕方ないだろう。『さすがは○○、俺にできないことをしてのける。そこに痺れる憧れる』って言葉はどんどん使いたいね」
晶華「さすがはNOVAちゃん、私にはできない脱線寄り道暴走を平然としてのける。そこに痺れるけど憧れない。さっさとソード・ワールドのキャラ作りをしなさいよね」
翔花「うん、前置き終了」
ようやく買い物タイム
翔花「ということで、最初の所持金は3万ガメルをもらうことになりました。武器はファルシオン、鎧はチェインメイル、次は何を買おうかな〜」
晶華「3万ガメル、私も欲しい」
翔花「私が欲しいものや必要なものを一通り買って、お金が余ったら、アキちゃんにも何か買ってあげるね。だから、私の買い物アドバイスをいろいろお願い」
晶華「そうね。他の人の買い物に付き合って、一緒にワクワクしながら、あわよくば何かを奢ってもらうという手があった。金がなくて欲しい物が手に入らないなら、それを持ってる人と仲良く付き合って、あわよくばおこぼれを頂けるようにすれば自分も幸せになれる。金も情報も、高いところから低いところに流れるもの。貧しさは誇れるものではないし、いちいちアピールするのも愚かしいけど、それが習い性な口癖、思考パターンになってしまってはいけないわ。心は錦、武士は食わねど高楊枝、そうよ、私はシンデレラを目指す。魔法の力で、王子さまのハートをゲットするの」
NOVA「いやいや、女王さまの後継者じゃなかったのかよ」
晶華「ああ、そうだった。とにかく、お金はなくてもキラメンタルで生きないとね。笑う門には福来たるってものよ。ホホホホホ」
翔花「とにかく、必要なのは冒険者セットに、アステリア様の聖印に、一応、マギテック用のマギスフィア(小)1つに、保存食一週間分。これだけあれば、冒険者の基本装備としては、十分かしら」
NOVA「あとは、ポーションとか薬草の類だな。プリーストなので回復魔法は自前で賄えるから、MP回復手段とかMP消費を代替できる魔晶石があれば心強い」
晶華「それよ、お姉ちゃん。私に5点魔晶石(500ガメル)を買ってちょうだい。今まではそれがなかったから、【サモンフェアリー】の呪文が使えなかったの。騎獣代のことばかり考えて、妖精魔法に必要なものを疎かにしていたわ。エマ様がカシュミーラに5点魔晶石をプレゼントしてくれたら、ミリィはエマ様に喜んでお仕えします」
NOVA「500ガメルで忠義を尽くすのか。意外と安い女だな」
晶華「仕方ないじゃない。妖精郷って本当に、お金が手に入らないんだから」
NOVA「経済が発展していない、素朴な童話の世界だからな。おとぎ話の世界で、お金がどうこうってのは夢がないだろう」
翔花「だけど、日本のおとぎ話って、鬼を退治して宝を奪ったとか、うちでの小槌とか、裏の畑を掘ったらお金がザックザクとか、お宝ゲットの童話が多いよね」
NOVA「西洋でも、お宝ゲットの話は多いけど、女の子が主人公だと、最初からお姫さまとか、王子さまに見染められるゴールが多くて、地位や身分でお金も付いてくる話になるのかな。日本だと、貧しい女の子がお城の若君に見染められて身分差を乗り越えて、幸せになるという話が少ないと思うし」
翔花「むしろ求愛する貴族の若君を袖にする、かぐや姫の物語が印象強いけど」
NOVA「世俗とは違う世界に生きてるヒロインが目立つな。恩返しする鶴とか、羽衣を盗まれる天女とか、竜宮城の乙姫とか。日本の昔話のヒロインって、金に汲々しない人外が多いことに今、初めて気がついた」
晶華「とにかく、『童話の世界の経済論』ってテーマも面白いかもしれないけど、これまた脱線寄り道よね」
NOVA「とりあえず、買い物の話は、これぐらいにしておこう。最低必要なものだけ買って、後はプレイ中に考えればいいだろう」
プロフィール(背景情報)をまとめる
翔花「プロフィールは、基本ルールブックにあるのを使うのね」
NOVA「ああ。キャラビルドブックだと、幼少期の生い立ちから始まって、事件とキャラのデータが連動して決まっていく仕組みだけど、基本ルールだと数値データとロールプレイ用の背景情報は別々に決まるからな。とりあえず、ランダムに振ってみて、自分のイメージに合わなければ、自由に振り直しOKとしよう」
翔花「じゃあ、経歴その1行きます。1ー3ー4」
NOVA「本来とは異なる性別として育てられた」
翔花「ええと、男として育てられたってこと?」
NOVA「まるで、リボンの騎士だな。女の子なのに男の子として育てられたとか」
翔花「う〜ん、ロールプレイがややこしくなりそうなので、却下したいんだけど」
NOVA「じゃあ、振り直すといい」
翔花「では、経歴その1、2回め。2ー2ー2」
NOVA「全部2かよ。裕福な家に生まれた」
翔花「ああ、それは納得ね。エマお嬢さまだし。次は経歴その2。6ー1ー3」
NOVA「目標としている人がいる(いた)」
翔花「妖精神アステリア様かな。私も女神さまみたいになる」
NOVA「あるいは、アラマユさんでもいいかも」
翔花「経歴その3は、1ー2ー6」
NOVA「大失恋したことがある」
翔花「そんなの嫌だ。振り直して、5ー4ー4」
NOVA「冒険に誘われたことがある」
翔花「悪くないわね。じゃあ、次に冒険に出た理由表を振ります。2ー6」
NOVA「最強の存在になるため」
晶華「凄い、お姉ちゃん。正に神を目指す女」
翔花「ええと、まとめると『裕福な家に生まれた』『目標としている人がいる』『冒険に誘われたことがある』そして冒険の目的は『最強の存在になるため』」
NOVA「エマお嬢さまは、裕福な騎手の家に生まれたんだけど、妖精神アステリアの啓示を受け、自分が妖精女王アラマユの生まれ変わりであることを知る。最強の聖戦士を目指して、従者のキャプテン・マークスと修行の旅をしている途中で、自分一人だけ先に妖精郷に転移してしまった。まあ、後はマークスの設定とすり合わせたらいいんじゃないかな」
晶華「失恋と違う性別はなかったことになるのね」
翔花「自分がロールプレイして楽しいと思わないもん」
NOVA「まあ、熟練ロールプレイヤーを自認するなら、何とか演じようと頑張るのも一興だが、無理に演じてギクシャクするのも楽しめないからなあ。じゃあ、次はビルドブックを使って、信条と矜持/執着を決めておこうか」
翔花「ええと、信条は2つのキーワードを決めて、肯定か否定を表すのね。1つめは64」
NOVA「栄光だ」
翔花「当然、肯定よ。2つめは55」
NOVA「努力」
翔花「それも肯定」
晶華「栄光(肯定)と努力(肯定)かあ。正に主人公らしく、キラキラしてるわね」
翔花「矜持/執着は66」
NOVA「自分の生命、利益を優先する」
翔花「それはちょっと……」
晶華「実は生き汚いとか?」
NOVA「自分を自分たちに替えると、ちょっと格好よくなる」
翔花「自分たちの生命、利益を優先する。あっ、チームリーダーとして頼り甲斐がありそう」
晶華「みんな、必ず生きて帰りましょう! とか、目的を果たすまでは負けるわけにはいかないの! とか、チーム中心で考えるなら、ただの自己中じゃなくなるわね」
翔花「大体、仲間を見捨てて、自分だけが良ければいいって考えじゃ、光の神さまは目指せないもん。私と同じぐらい、私の仲間は大切なの。仲間あってこその栄光を目指すって感じ?」
晶華「それは正に矜持ね」
キャラ完成
●エマ・ショーカ・ローズワース
ヴァルキリーの神官騎士(冒険者レベル7)
信条:栄光(肯定)、努力(肯定)
矜恃:自分たちの生命、利益を優先する
冒険者技能:ファイター7レベル、プリースト(アステリア)7レベル、ライダー6レベル、マギテック1レベル、セージ2レベル、レンジャー1レベル(残り経験点1500点)
所持金:2万8000ガメル
器用17、敏捷15、筋力18、生命20、知力15、精神18
HP56、MP42
技巧3、運動3、観察3、知識4、魔物知識8
生命抵抗10、精神抵抗10
神聖魔法魔力9、魔動機術魔力3
戦闘特技:《魔法拡大/数》《薙ぎ払い》《マルチアクション》《MP軽減/プリースト》《タフネス》
騎芸:【高所攻撃】【タンデム】【騎獣強化】【チャージ】【人馬一体】【特殊能力解放】
種族特徴:〈戦乙女の光羽〉〈戦乙女の祝福:強化〉〈暗視〉〈太陽光での弱体化〉(後ろ2つは吸血鬼の呪い効果)
習得言語:地方語、交易共通語、妖精語会話、ノスフェラトウ語会話
武器:ファルシオン(命中9、威力28、追加ダメージ+10(騎乗時+11)、クリティカル値10)
防具:チェインメイル(回避8、防護点6)
所持品:冒険者セット、保存食7日分、聖印(アステリア)、マギスフィア(小)
NOVA「とりあえず、おおよその形は完成したな。後はプレイしながら、必要なアイテムを買い揃えたり、キャラの性格の細部なんかが見えてくるだろう」
翔花「所持金が2万8000ガメルも残っているのね。そんな大金、私一人じゃ、どう使っていいのかよく分からない。パーティーの4人で山分けしたら、7000ガメルずつになるから、みんなにお金を分配したいと思うんだけど?」
晶華「本当に!? 何て神さまみたいなお姉ちゃん!」
翔花「だって、エマってお金にあまり執着しなさそうだし、ソード・ワールド初心者の私には、7000ガメルもあったら十分だもん」
NOVA「その辺のロールプレイは、エマが吸血鬼の呪いから実際に目覚めたときにすればいいだろう。そもそも、3万ガメルもの大金をエマがどうやって所持していたかの話を、つじつま合わせしたいとも思うし。一応、キャラを作っておいてから、エマが仲間として正式参加するまでの物語を、次回はプレイする予定ってことで、キャラ作りタイム終了」
翔花「実際のプレイが楽しみ(ワクワク)」
(当記事 完)