総長も、か
009『VRVマスターに続いて、ボーゾックのガイナモ総長まで逝ってしまうとは、カーレンジャーファンとして悲しすぎる』
ジョエル『カーレンジャーのガイナモ総長って、大竹宏さんですか』
009『おっ、知ってるのか?』
ジョエル『そりゃそうでしょう。パーマン2号とニコチャン大王、それにピンポンパンのカータンで有名じゃないですか』
009『って、何でそんな人外キャラばっかり。もっとあるだろうが、ボスとかブタゴリラとか……』
ジョエル『ブタゴリラだって人外じゃないですか』
009『いや、ブタゴリラはあだ名で、本名は熊田薫だ。いわゆるジャイアン系のガキ大将キャラなんだが……』
ジョエル『何の作品です?』
009『キテレツ大百科だが』
ジョエル『ああ、読んだことはあります。コロ助とか出て来るんですよね』
009『それだそれ』
ジョエル『アニメ化はされていませんよね』
009『されてるよ。1988年……って、ああそうか。87年脳だと知らなくても仕方ないのか』
ジョエル『なるほど。確かにニコチャン大王の声ですね』
009『まあ、87年脳だからアニメのキテレツを知らないのはやむを得まい。でも、ボスぐらいは分かるだろう?』
ジョエル『ボス……と言えば、これですね』
009『その作品にも確かにアーサーの連れで、ボスって名前の3枚目巨漢キャラは登場するが、別人だ』
ジョエル『確かに、ボスマンの声優は大塚周夫さんですね。これ、何て読むんですか?』
009『おおつか・ちかおさんだな。ルパンファミリーの初代・石川五右衛門やねずみ男、バビル2世のヨミなどの声で有名で、ガンダム0083のシナプス艦長として息子の大塚明夫演じるアナベル・ガトーと敵対したこともある』
ジョエル『ガンダム0083……知らない作品ですね』
009『面倒くさいな、87年脳。ええと、大塚周夫さんじゃなくて、今回は大竹宏さんの話だ。マジンガーZのボスといえば分かるだろう?』
ジョエル『ああ、ボスボロットでしたっけ?』
009『それだそれ。スペシャルDXゴールデンデリシャス(以下略)ボロットパンチのボスボロットだよ』
ジョエル『何ですか、それ? ぼく、マジンガーZは本で読んだだけで、主題歌ぐらいは歌えるけど、おおよそしか分かってないんですよ。小さい時に最初に見たのはグレートマジンガーで、中学生の時に再放送されていたのも、ちょっとだけ見た覚えがあります。剣鉄也のバイクがロケットパンチを発射するのを見て、変だと思いました』
009『ジェットバイか。ロボはあれこれ復刻するけど、ポピニカのバイクはあまり復刻されないレア玩具だな。スパロボにも登場しないし』
ジョエル『グレートマジンガーにもボスボロットは出てましたけど、あまりきちんと見ていないので、声までははっきり覚えていませんね。剣鉄也の声が一休さんの新右衛門さんの声だってのは知ってますけど……』
009『やれやれ。高校時代の自分のマニア知識はそれほど大したことはないんだな。どちらかと言えば、大学に入ってから、いろいろ勉強したから、意外と高校時代の自分に分かるように話すのは難しいと実感した』
スパロボでのボス
009『とにかく、スパロボ者にとって、ボスの声を90年代からゼロ年代にかけて、改めて蘇らせた大竹宏さんの偉業はいっぱい語りまくれるわけだ。まずはコミカル声優としてのボスのお笑い芸を鑑賞しろ』
ジョエル『なるほど。スパロボの中でもムードメーカー的位置付けなんですね』
009『マジンカイザー版と真マジンガー版のボスは声優さんが変わってるから、大竹宏さんのボスが聞けるのは、最初のスパロボZまでだな。つまり、大竹版ボスは神谷ゲッターと同時に引退したことになる』
ジョエル『兜甲児の声優さんはどうなんです?』
009『石丸博也さんは、マジンカイザー版で続いているから、現在のDDでは石丸版甲児なので、スパロボの中では現役だな。真マジンガーの赤羽根健治さんと、INFINITYの森久保祥太郎さんが後継者なんだが、それにしても今年はマジンガーZ50周年という記念すべき年なのに、関係者が次々と亡くなるのは寂しくて悲しい』
ジョエル『そりゃあ、50周年だったら、関係者も鬼籍に入られても不思議ではないでしょうに』
009『冷静に考えるとそうなんだろうけど、今年は4月に弓さやか役の松島みのりさんが、6月に作曲家の渡辺宙明さんが、そして8月にボス役の大竹宏さんが亡くなって、ぼくの中のマジンガーZ愛が泣いているんだよ』
ジョエル『そのマジンガー愛は、ぼくには理解できませんね』
009『だったら、お前には何の愛があるんだ?』
ジョエル『そうですね。ガンダム愛と、ウルトラ愛と、必殺シリーズ愛でしょうか。あとD&Dとかロードスとかゲームブックが旬……と言ったところ』
009『たぶん、30年経っても、それらの旬は続くぞ。必殺は年一ぐらいの時期限定だし、ロードスは続くのかどうか怪しいが、まだ期待はされている。マジンガーについては、スパロボから再入門したから90年代に学び直した感じだな。ぼく的には、マジンガーよりもコンVとかボルテス、グレンダイザーにゲッターG、ザンボットとか70年代後半当たりが原体験だから、マジンガー愛そのものは大人になってからの復刻やリメイクで染められたんだと思う』
ジョエル『だったら、ぼくがマジンガー愛を会得するのは、これからでも遅くはないんですね』
009『ああ、大竹宏さんの代表キャラを聞かれたら、やはりボスとガイナモ総長と答えるのが、スパロボ脳であり、特撮脳だと答える。あと、オーレンジャーのバラクロース回は傑作だ。水着的にも、悪堕ち洗脳的にも』
ジョエル『どういう話なんですか?』
大竹宏声の怪人
009『大竹宏さんの声で喋る怪人バラクローズは、人の服に洗脳光線を放射する能力を持っていて、それを着た者は服が機械っぽく変わったメタル人間に変わって、バラクローズの手下になってしまうんだな。その能力で、バラクローズはまずオーレンジャーの男性陣を洗脳し、残った女性2人の服にも洗脳光線を放とうと、更衣室に侵入しようとするんだ』
ジョエル『なるほど。エロ怪人なんですね』
009『元々、敵の機械帝国バラノイアは「心を持たないマシン獣」という設定だったんだが、中盤のその辺りまで来ると、初期設定はなかったことになって、そのうち敵幹部までラブラブ夫婦が登場して、関智一声の王子がラスボス格になる』
ジョエル『関智一って誰……という質問はしません。普通に、このブログの会話を聞いてたら、分かりますからね。ガンダムの主人公だったら、興味の範囲内です』
009『それで、どうして前回、スパロボって何? って質問が出たのかは謎なんだが』
ジョエル『データ的な知識としては知っていても、実感を伴わないので、マニアの話し相手にはなれないってことです。じっさい、ぼくには関智一さんの声を聞いても分からないレベルですからね。生きた知識と、机上の知識のギャップは大きいわけで』
009『まあいい。今は関さんじゃなくて、大竹さんの話だ。オーレンジャー女性陣の服に洗脳光線を浴びせようと、更衣室に侵入しようとした大竹さん声の怪人は、女性2人に気づかれてしまい、エロ怪人だと誤解されて叩き出されてしまう。ただのスケベ心じゃなくて、あくまで真面目な作戦遂行をしてるんだから、誤解するな! と言い訳しながらな』
ジョエル『二重の意味でドキドキしますね。エロ的なニュアンスと、ヒーロー・ヒロインが洗脳されてしまう危険と』
009『なお、この回の脚本家は、今も輝く井上敏樹大先生だ』
ジョエル『なるほど、ドンブラ脳につながるんですね』
009『さて、バラクローズの女子更衣室潜入作戦は失敗したので、次は洗脳した男性陣を利用する正統派作戦に切り替える。怪人を倒そうと男メンバーに合流したヒロインコンビのピンクとイエロー。しかし、仲間だと油断したピンクの隙をついて、男3人がピンクを取り押さえ、日頃は真面目な隊長レッドもニヤニヤしながら、大竹さん怪人が洗脳光線を浴びせるのを手助けする。こうして、ヒロインの1人も大竹さんに忠誠を誓う悪堕ちメカ人間になって、残ったイエローを仲間にしようと迫って来るんだ』
ジョエル『それはドキドキです』
009『昔の戦隊では、時々、仲間の1人か2人が怪人に洗脳されて、メンバーが全員揃わずにピンチって回があるんだが、1人を除いて全員が敵に回る展開は、ぼくが知る限り、フラッシュマン38話と、オーレンジャー23話しかない。どちらも脚本家は井上敏樹大先生で、要は「仲間が全員敵に回って、孤軍奮闘する戦士」を強調したエピソードだな。フラッシュマンの場合は、リーダーのレッド以外が全員敵になって孤軍奮闘するが、オーレンジャーの場合はヒロイン1人が後に残されるというわけで、ここからミリタリースキルを持ったヒロインの起死回生の逆転劇が始まるわけだな。変身アイテムも奪われた中で、どこから持って来たか分からない銃砲を駆使しての反撃が始まる』
ジョエル『お色気ギャグ回なんだから、細かいツッコミは野暮ですね』
009『うむ。大事なのは、シチュエーションの面白さだからな。水着を中心にしたヒロインコスプレ回の一種だと思えば、突然着ている服が変わっても、気にするな。とにかく、孤軍奮闘するオーイエローだが、次第に追い詰められて、洗脳光線を浴びせられてしまう』
ジョエル『浴びせられるんだ』
009『バラクローズの洗脳光線は、本人ではなくて、着ている服を通じて発動するので、服を脱げば洗脳魔力から逃れられる。水着🩱を脱いだオーイエローに、怪人と視聴者の視線が注目する中、画面狭しと飛び出したのはナイスバディのビキニ👙。これがサブタイトルの「最後の水着……」なんだな。大竹さんと井上敏樹さんは夏らしい、いい仕事をしてくれた。1995年8月4日の放送回だ』
ジョエル『で、その後はどうなるんです?』
009『大竹さん怪人は、ヒロインのダイナマイトボディーにエロモード全開になって、油断が生じて洗脳電波を放つ角を破壊されてしまう。ここから正気に戻った戦隊メンバーがイエロー中心に逆転して、いつものパターンで怪人倒して、巨大戦も終わってハッピーエンド。最後は、迷惑をかけた男性メンバーを女性2人が奴隷のようにこき使って、めでたしめでたしだな』
ジョエル『その回は是非見たいです』
009『DVDならあるぞ。それにしても、真面目なミリタリー路線で始まったオーレンジャーなのに、完全にキャラ崩壊しているなあ。井上敏樹さん回だと、他に9話のバラダーツ回が傑作で、こっちはオーイエローが悪堕ち演技を見せてくれる』
ジョエル『敏樹さんは、オーイエローが好きなんですか』
009『ぼくも好きだぞ』
ジョエル『って言うか、今回は大竹宏さんの追悼記事のはずでしょう? どうして、水着ヒロインのピンチ回の話を嬉々としているんですか?』
009『いや、大竹さんって、そういうコミカルなキャラの印象があるからなあ。故人を偲ぼうとキャラクターを登場させたら、エロ怪人だったということで、その路線が翌年のカーレンジャーのガイナモ総長になって、色気美女のゾンネットに鼻の下を伸ばす番長キャラを演じるのは、大竹さんの真骨頂だと思うぞ』
ジョエル『つまり、湿っぽいのは大竹さんには似合わない、と?』
009『コミカルだけど、義侠心のあるキャラで、怪人をやっても憎めないんだよな。あと、今調べて気付いたんだけど、バラダーツの声って小林清志さんなんだな。つまり、小林清志さんと大竹宏さんは、オーレンジャーの井上敏樹脚本で、オーイエローを巡る悪堕ち回を担当して、ぼくのツボを突き、翌年カーレンジャーで重要な役を担当するわけだ。タイミングよくつながった気分だ』
ジョエル『キャラクターのタイプは違うけど、大竹宏さんが90歳で、小林清志さんが89歳。どちらも同世代の名声優さんだったんですね。謹んで御冥福を祈ります』
そしてGガンダムの歌手も
009『で、小林清志さんに次いで、大竹宏さんの訃報もガーンと来たのに、即座に鵜島仁文さんの訃報まで聞くとは』
ジョエル『ええと、その人もぼくは知らないですね』
009『そりゃあ、活動期間が94年からだからな。しかし、スパロボ者としては重要アーティストだ』
009『まあ、スパロボでの戦闘時は、この人の主題歌ではなくて、田中公平さん作曲のバトルBGMが定番なんだが、いろいろとプロデューサーをしてきた寺田さん曰く、Gガンの登場作品を製作中は、しばしばこの歌を聞いていた、とのこと』
ジョエル『スパロボはよく分からないけど、関係者の訃報がこうも立て続くと、プロデューサーさんも思い出話とか大変でしょうね』
009『本当に、今年だけで松島みのりさん、渡辺宙明さん、小林清志さん、大竹宏さん、鵜島仁文さんで5人か。それぞれの関連作品のファンとしても、感じ入れる思い出をありがとうと感謝しながら、敬意と愛着を持って記憶し記録するのが一つの喜びであり、義務とか責任めいた矜持かなと考える次第』
ジョエル『作品との出会いも大切な縁でしょうから、声や曲を聞いて、縁を覚るのもまた仏教かな、と思います』
(当記事 完)