Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

神の物語の話

物語と作者の想い

 

NOVA「スーパーヒーロー戦記と、ゴジラVSコングの映画を見てきたぞ」

晶華「NOVAちゃんだけズルい。私も一緒に見たかった……とは言わないわ」

翔花「うん、わたしたちはNOVAちゃんの契約精霊なんだから、心はいつも通じ合っているように契約が強化されたもんね」

NOVA「まあ、そういう時流だからな。新しい仮面ライダーが『悪魔と契約したバディ物』『一人で二人のライダー』というキャッチフレーズで、風呂に入るまで一緒な関係を示していたし」

晶華「すると、私たちもNOVAちゃんと一緒にお風呂に?」

NOVA「それはない。リバイとバイスほど、いつでも一緒って設定じゃないからな。風呂は別々、だけど映画を見るときは一緒に、というぐらいの距離感だ。やはり、その辺の線引きはしっかりしないとな。契約違反して、過剰に距離感を詰めて来るような輩はノーサンキューってことで」

翔花「一緒に映画を見るような仲って、どんな感じ?」

NOVA「そりゃあ、フィクションを一緒に堪能できるような関係だろう? 例えば、ネットで感想書き込みしていて、ああ、この人とは良い酒が飲めそうだってレベルの気持ちが通じ合える関係だったら、一緒に映画を見ても楽しそうだって思えてくる。まあ、実際は物理的な距離感とか、リアルで会うまでもなく、オンラインで感想やりとりしていれば十分な関係性を保ち得るわけだ。

「それでも、仮に共に映画を見る。感想会をする。そこで、こっちは楽しんでいるのに、相手からはネガティブな意見が出たら、せっかくの映画の楽しみが削がれる。やはり、同じ作品を見てもセンスの違いすぎる相手とは、一緒に映画を見たいとは思えないわけだよ」

晶華「だけど、何故か映画を共に見ることにこだわる人っているよね」

NOVA「その原因は3年前の春だな。一度だけ問題発言のコメント主と、共同創作の終了に関して、会って話をする機会を持ったんだ。俺としては、共同創作の縁オンリーの相手だという認識だったが、向こうは創作のみ、良くてフィクション感想のみの付き合いというレベルを逸脱して、リアルな話題をあれこれ持ち込んで、不必要な自己開示をしながら返答を要求してくる。まあ、こちらは必要な部分だけ答えて、『それ以上は関わる理由がない。創作感想と関係ない話には乗らない』というスタンスだった。

「まあ、向こうはリアルで問題をあれこれ抱えていて、話を聞いてくれそうな俺に相談相手になって欲しかったのかもしれないが、そういう絡み方になると、とりわけ死生観というレベルの話になって来ると、宗教の話になって来る。彼は宗教を否定しつつ、オカルトにハマりがちなところがあって、輪廻転生がどうこうとか、過去に戻って人生やり直しができたら的な話を振ってきて、俺はそういう話題は『フィクションとして面白いけど、リアルで突き詰めて考えようとは思わない』としながら、まあ、そういうネタの小説はプレゼントしたんだ」

NOVA「この小説は、過去の人生をもう一度やり直せたら、というテーマで、ちょうど彼のツボにドンピシャだったと思う。あらすじは、中年男性が人生をやり直して、別のやりたかった自分の人生を生き直して、でも失敗してやり直したり、ハッピーになったと思っても一定の年齢で強制的にリセットされて学生時代からやり直しさせられたり、何度も人生を生き直す経験を積み重ねる。その過程で自分と同じリプレイ能力者の女性と知り合って恋愛を育んだり、結局、それさえやり直しになるので、男女の愛情も冷めて距離を取りつつも相談相手程度の付き合いになったり、やり直し人生の夢と可能性と悲哀を描きながら、物語は展開する。

「そして数多くのリプレイ人生を経験しながら、どうしても、ある年齢が来ると死んでしまうようで、その先の未来に手を伸ばして必死につかみ取ろうとするんだけど、最後は奇跡的に死を乗り越えて、新たな未来が開かれるハッピーエンドだ。全てを読み終えると、リプレイ能力は現実なのか、それとも死にかけた間際に走馬灯のように浮かび上がった記憶と妄想の産物だったのか、どちらとも取れるんだけど、主人公の経験の後、同じようなリプレイ能力者が他にもいて……って形から、いろいろな続編めいた二次創作が紡ぎ出されるようになっていったわけだが」

晶華「そのアイデアの後継者が、仮面ライダー電王さんなのね」

NOVA「人生生き直しは、ドラえもんのタマシイムマシンとか、昨今のなろう小説でありがちな異世界転生ものとか、割と普遍的なSFテーマなんだけど、小説『リプレイ』はそのIF展開を幾重にも積み重ねて、結論が『過去のやり直しもいいけど、結局は悲喜こもごもで、自分の知らない未来への憧れの境地に至った主人公を肯定』する形で、まとまっているところが素晴らしい。何というか、彼の話がやたらと後ろ向きに感じたから、一つの指針になるんじゃないか、と思ったんだ」

翔花「で、その後、彼の後ろ向き人生はどうなったのかしらね」

NOVA「去年は、輪廻転生の修行中でいいところまで行っているとか、GTライフのコメントで書いてきたから、まあ、過去に戻りたい思いは断ち難いんだろうさ。どうも、俺は彼のオカルトサークルのやってることがうさん臭いし、突き詰めたら自殺して人生をやり直そう的な感じに思えたから、深入りは危険だと判断したんだな。彼がやたらと俺をその集いにも巻き込もうとする気があったので、『いや、俺は昔話は好きだけど、それらはフィクションだからいいのであって、リアルでは未来に憧れるし、自分の信仰は今をしっかり生きた先に未来があるから、君の戻りたい過去とは真逆だ』と断ったんだな」

晶華「その話が事実なら、彼の目的はNOVAちゃんを巻き込んで、無理やり過去に連れて行くって可能性があるわね」

NOVA「俺から見たら、無理心中みたいなものだが、彼視点では『親友だったら、自分の過去への冒険に付き合ってくれ』って感覚かもしれんし、時空魔術とかを謳っている人間だから、自分の話にも興味を示してくれるはずだとか、思うところはあるんだろうさ。まあ、俺視点では、彼を親友と見なすには、センスが違いすぎて通じ合えないにも程があるんだが」

翔花「興味はないの?」

NOVA「あるさ。だけど、過去への旅の物語は好きだけど、自分が体験したいとは思わない。物語を、リアルを生きる原動力にしたいとは思うけど、俺の好きな物語は未来を目指す前向きなストーリーだからな。過去に囚われて、前に進めない後ろ向きの主人公にはなりたくない。昔は良かったってレトロワルドな気持ちに感情移入はできるけど、それは歴史であって、教訓にはなっても、目指す道じゃない。過去の自分から、今の自分に至り、そして未来に向かうという流れは肯定したいわけだよ」

晶華「でも、彼は過去にこだわっているわけよね」

NOVA「彼のこだわる過去は、俺の過去じゃない。俺と彼の縁は、共同創作がスタート地点だから、彼が俺を誘う一番有効な手は、共同創作への思い出話で、自分が描きたかった物語を打ち明けてくれて、お互いの創作観を披露し合うことだったんだけどな。俺が彼と話したかった主目的はそこにあったわけだが、結果的には、『その縁を紡ぐきっかけとなった共同創作作品を、原案者であるはずの彼がほぼ全くと言っていいほど語るべきネタを持っていない』という事実に愕然としたんだな」

翔花「ラーリオスの思い出話だったら、一番通じると期待した相手が、そこにこだわりを見せず、NOVAちゃんと思い出を全く共有していない自分のやり直したい高校時代に、NOVAちゃんを引きずり込もうとするって、ちょっとしたホラーよね」

NOVA「俺は、高校時代はおおむね幸せに過ごした人間だから、それをやり直したいとは思わないわけだよ。幸せなあの時代に戻れたら、という思いもないわけではないが、戻って何がしたい? となると、例えばTRPGのサークルを学校に作って部長になるとか、今の技術で小説を書くとか、見逃した戦隊ものをしっかりビデオに録画して見るとか、もっと早く進路を理系から文系に決めて担任に迷惑を掛けないようにするとか、その程度の微調整しか思いつかん。劇的に自分の人生を変えるって気にはなれないんだよな。昔の後悔は、今、補完できていると思うし」

晶華「今の人生を投げうってまで変えたいような切実な過去は、NOVAちゃんにないってことね」

NOVA「強くてニューゲームを肯定するかどうかってことだな。まあ、今を十分に生ききっていないのに、過去に戻ったところでどうなのかなあって気にはなる。後悔がないわけではないが、例えば、共同企画のラーリオスで彼に絡まなければ、今こうやって迷惑を感じることもないんだろうが、その場合、彼を除くラーリオス企画で懇意になった人たちとの関わりも変わって来るし、ラーリオスの経験なしに花粉症ガールってキャラが生まれたのか、と考えると、過去の辛い出来事も、嫌な経験も、俺の糧だろう? 不味いものだけ吐き出そうと思っても、咀嚼してしまったものは良くも悪くも血肉なんだよな。まあ、新陳代謝で老廃物として自然に排出されるものもあるかもしれないが」

 

晶華「結論すると、彼は自分の世界にNOVAちゃんを引きずり込みたい。NOVAちゃんは、彼の世界に魅力を感じないので、距離を置こうとしているわけね」

NOVA「俺が何に魅力を感じるかは、ブログで書いているからな。俺のブログコメントに適切な書き込みをしてくれるなら、話が噛み合うセンスを見せてくれたら、そこで通じ合う関係を新しく構築できたかもしれないけど、『彼がコメントで何か書く→客人だから相応に応じてみせるが、問題発言が多いので、どうしても説教モードになる→俺から説教を引き出せたことで単純に喜び、彼は自分を肯定された気になる→全てを肯定されたと思い込んで、TPOを弁えずに自分本位な書き込みが増加する→注意されても、自分にはこういうやり方しかできないと言い張り、自分のやり方を押し付けようとする→場にあったやり方を学ぼうとしない相手に、NOVAはダメだこりゃ、と見切りをつける』って流れだな」

翔花「その状況を一番理解しているのは、おそらく、たさ様ね」

NOVA「他にも、何人か気にかけてもらえている御仁がいるけどな。各人各様のご意見を披露しながら、自分のことなのに一番、状況を理解していないように見えるのが当事者の彼ってことで、おそらく『自分はNOVAのブログにコメントをいっぱい書いて、欠かせない客人になっている→これだけ相手してくれているのだから、気持ちは通じ合えて、一緒に映画も見に行ってくれるはず』と幸せ妄想回路が機能しているのかもしれないけど、何故かコメントを拒否された。リカイフノウ、リカイフノウ……と壊れたコンピューター状態になっていても不思議じゃない。壊れたコンピューターだから、人間の感情を理解できないんだ、と考える方が、一番しっくり来るのかも」

翔花「まるで、出会ったばかりのKPちゃんね」

ケイP『ケピッ!? 一緒にしないで欲しいッピよ』

NOVA「まあ、お前にはアシモンとして必要な機能をしっかり学ばせたからな。せめて、彼にドゴラ並みの学習能力があれば」

ケイP『ドゴラの学習能力をナメないで欲しいッピ』

NOVA「まあ、彼も同じことを言うかもな。ドゴラと一緒にするなって」

晶華「そうとも限らないわよ。ドゴラって何かよく知らない可能性だってゼロじゃない。別に怪獣優生思想でも、特撮優生思想でもないんだろうし」

NOVA「ともあれ、映画は趣味において気の合う友人と一緒に見れば何倍も楽しめるけど、気の合わない他人に気遣いしながら見ても、つまらないって話だな」

晶華「わざわざお金と時間をかけて、つまらない体験はしたくないものね」

 

NOVA「そんなわけで、ヨホホイと映画感想を書こうと思ったんだが、ネタバレするのは時期尚早かな、と感じたから、映画のテーマと言える『物語と作者の想い』について、寄り道駄文を書いてみたわけだ」

翔花「でも、つまらない寄り道脱線よりも、面白い寄り道脱線を、お客さんは期待してるわよ」

晶華「いいえ、期待してるのは、面白い王道よ。寄り道脱線に期待する人は、少数派だと思うわ」

NOVA「まあ、つまらない王道よりは、面白い寄り道脱線を選ぶ男だからな、俺は」

晶華「だったら、今までの話が、面白い寄り道脱線だとでも?」

NOVA「いや、今のはただの前置きに過ぎん。面白くなるのは、これからだ。ただし、ネタバレ注意と一応、警告は促しておいて」

 

物語の神の話

 

NOVA「スーパーヒーロー戦記は、一言で言えば、歴史あるヒーローシリーズの元祖を生み出した石ノ森章太郎さんを根幹に、同じ物語作者の仮面ライダーセイバーこと神山飛羽真が作家の生みの苦しみとか、物語の意味とか、真のヒーローとか、そういうテーマに踏み込む『ペンは剣より強し』な一大巨篇だ。セイバーのテーマがここに集約されたと言ってもいい」

晶華「ゼンカイジャーは?」

NOVA「彼らはコメディ担当だから、ヒーロー満載のお祭り映画にヒーロー来たーと盛り上げる役どころだな。子供たちはゼンカイジャーのお祭りゼンカイ話を楽しみ、大人たちは石ノ森ヒーローの歴史を振り返って本作のメタフィクション構造に感じ入り、子どもの心を持った大人であり、かつ創作魂を持った俺は、うおー、俺のブログ時空の方向性は間違っていなかったぜえ、と歓喜全開な映画だったわけだ」

翔花「確かにそうよね。真のヒーローは強い力で悪を倒すだけじゃない、弱い自分、悪に陥りそうな自分の内面と葛藤しながら、それでも苦難を乗り越える人間そのものであるべきだ、という石ノ森イズムがテーマの一つだもんね。正に光と闇の果てしないバトルであって、自分にもある弱さを知れば本当のヒーローだから、変身できなくても心は……と言うことね」

NOVA「心の中の戦いを、どう表現するかだな。そして、物語世界の神というのがキーワードで、セイバーの飛羽真も作家として、いきなりスランプに陥る」

晶華「最近、NOVAちゃんは言っていたものね。作家としての神山飛羽真の欠点は想像力の欠如で、自分の経験したことしか描けないって」

NOVA「これは作家のスタイルにも通じる部分だが、俺は言葉というものに敏感なところがあって、逆に言葉にしないとイメージができないという欠点がある。絵だけじゃ膨らまないんだな。絵を誰かが解説してくれたら、初めてその絵の意味が見えてくるとか、言葉を見て物事が浮かび上がってくる。逆に、言葉を聞くだけでもダメなんだな。聞いたことを書いて、初めて理解するとかで、あらかじめ予習せずに相手の話を聞いても、頭の中でつながって来ない。もちろん、今はそういう欠点も改善されているから教師をできているんだが、書いたものを見ることによって、イメージが何倍も膨れ上がるのが俺の武器の一つだ」

翔花「NOVAちゃんは文字や言葉に重きを置く人で、飛羽真さんはそうじゃない?」

NOVA「彼の物語は、絵を大事にするんだな。言葉や文字という材料ではなく、いきなりシーンが浮かび上がってくる。だから、イメージを膨らませるために、飛羽真はまずジオラマを構築したりして、ビジュアル面を重視する。これはもちろんセイバーが映像作品だからという演出でもあるんだが、人の話を受け止めたり、リドル的な設問を解いたり、あらかじめ説明を聞いてみたりしても、飛羽真は作家にしては非常に察しが悪いように描かれている」

晶華「それって、人生経験にも理由があるんじゃない? だって長い間、記憶喪失だったんだし、まだ若い新人作家なんだし」

NOVA「そうだな。俺の初期の飛羽真のイメージで期待したのは、古今東西の書物に通暁し、知略とアイデアでチームを率いる頭脳派リーダーであることなんだが、結果として、そのポジションは光の剣のユーリが担うことになった。昔の人なので、多少、考え方が古く固まっている部分もあるが、素早く現代の習俗を学びとり、時代の変化を受け入れ、飛羽真の信念を受け止めるだけの柔軟さはある。それに比べて飛羽真は……と思うこともしきりだったが、彼は天才直観型の作家で、物語が見えたときは丸ごと筋書きが浮かび上がってくるタイプなんだ。推論を積み重ねるタイプの思考はしていない」

翔花「NOVAちゃんとは違うわね。NOVAちゃんは言葉を積み重ねながら、世界を探って行くタイプで、飛羽真さんは先に全体像がパッと見えるタイプ?」

NOVA「それこそ、絵描きに近いんだな。もしかすると、メインライターの福田さんがそういうタイプの舞台作家なのかもしれないし、文芸としては長谷川さんの方が言葉の力を重視するタイプだと思う」

翔花「でも、今度の映画は毛利さんだったわね」

NOVA「毛利さんは複数処理ができる人で、その分、物語を錯綜させるのが得意な人っぽい。一点集中型じゃないんだな。だから、まとまりが悪いようにも見えるけど、それぞれが意外と緻密に結びついて、強引に感じながらも、きちんと収束させて来る。これでもう少し情念がこもったら、井上敏樹スタイルになるんだけど、そこまで重くはならず、むしろ軽い。だから、ヒーローいっぱいのお祭り騒ぎで個々の個性を面白く見せる手法は備えているんだけど、欠点があるとしたら、地に足ついたリアルさが感じにくい。子ども番組としては面白いんだけど、フワフワしている?」

晶華「つまり、NOVAちゃんね」

NOVA「俺は毛利さんタイプ? 言われてみれば、そうかもしれない。今、ここまで書いて初めて気づいたや」

晶華「書くまで気づかなかったの?」

NOVA「言葉を積み重ねながら、世界を探るって、こういうことなんだよ。とにかく、作家にもいろいろなタイプがいるってことだ。もちろん、書きながら手法が変化していくこともあるし、誰かの影響を受けて、違う手法を試すこともあるだろう。まあ、締め切りに追われるプロ作家は手法そのものまで試行錯誤を重ねている余裕はないだろうが」

翔花「石ノ森さんはマンガ家だけど、絵を描きながら設定やストーリーを考えて、手を動かしながら見えて来るタイプの人らしいわね」

NOVA「とにかく、凄い速さで描きながら設定が浮かび上がるらしいな。マンガ家さんや絵描きさんは先に見えている人と、描きながら見える人のケースがあって、雨宮監督は頭の中にビジュアルイメージが先に浮かび上がっていて、それに筆を走らせて実体化させるタイプの人らしいし、どっちも凄いと思うんだよな」

 

晶華「今回は敵の作戦が面白いわね。普通は、物語の作者が死ねばヒーローは生まれまいと考えて、石ノ森さんを狙って来るものだけど」

翔花「石ノ森さんにたくさんのヒーローの戦っている姿を見せて、『あれもこれも本当に凄いんだけど、ぼくの描きたいヒーローはこれじゃないんだ。自分のヒーローが見えなくなっちゃった。もうヒーローが描けない!』とスランプに陥らせて創作意欲を失わせる作戦って、よくこんなの思いつくわね」

NOVA「さすが毛利さん、と笑った。だけど、気持ちはよく分かる。石ノ森さんが若い時に今の時代にタイムスリップしたら、たくさんあるヒーローの姿にワクワクしちゃうだろうけど、こんなにたくさんいたら、もう自分が描かなくてもいいんじゃね? と、ヒーロー物以外の人間ドラマに軸足を移したくなるって。ないものを新しく作り上げるのと、前例がいっぱいあるのをアレンジしながら個性づけするのとでは、違う創作センスが必要とされるしな」

晶華「原作者の創作意欲を失わせて、作品世界を乗っ取る作戦って、まるでラーリオスね」

NOVA「いや、人聞きの悪いことを言うな。俺はそんなことを狙ってない。結果として、たまたまそうなってしまって、負担が全て俺の方にのしかかって苦労したのはこっちなんだから。原案者の創作意欲の面倒までこっちが見られるか。大作書いたけど、誰も感想を書いてくれないので、お願いだから感想書いて……なんて情けないことを言う奴に付き合ってられるかっての」

翔花「飛羽真さんは付き合ったわよ、スランプで自分を見失った石ノ森さんに」

NOVA「凄いよなあ、この場面。自分の描いた仮面ライダーの後継者に作者が励まされる構図。飛羽真さんも同じスランプを抱えていたんだけど、スランプの理由がまた納得できる」

晶華「自分の書き綴る物語で、自分の愛するキャラクターが傷つくのが耐えられないってことだしね」

NOVA「まあ、それも俺は経験あるから、大いに納得したんだよな。描きたいものは見えているのに、ストーリープロットはあるのに、キャラに感情移入しすぎて、不幸な目に合わせるのが忍びないって奴。いや、まあ、主役が死んでも、その想いは続編の主人公に受け継がれて英霊になる……的なプロットで始めたのに、続編というか本編を大言壮語して書くと言った原案者が逃げてしまって、はしごを外された形になったからな」

晶華「ああ、NOVAちゃんもはしごを外されたのか」

NOVA「いやあ、スーパーヒーロー戦記を見ていたら、いろいろなネタが自分の経験に突き刺さって来るんだよ。面白いぐらいに。これって、創作経験者が見れば、物凄く身悶えする映画じゃないかなあ。俺、今までセイバーの毛利脚本回を見てきて、あまり評価していなかったんだけど、この映画とそれから、前回のゼンカイコラボを見て、ああ、こっちの方が毛利さんらしい仕事だ、と強く感じたもん」

翔花「毛利さんらしい仕事って?」

NOVA「いわゆるメタフィクション。いろいろコラボして、ボケとツッコミの応酬を描きながら、視聴者の方も笑い転げてツッコミ入れる作品。でも、テーマはそこそこマジメで良いこと言ってるの」

晶華「なるほど、NOVAちゃんね」

NOVA「とにかく、飛羽真は物語の人物が、作者=神である自分の手で不幸な目に合うのが耐えられないと考えるわけだな。だけど、今回の敵の陰謀で、自分自身も物語の登場人物であることを知って、石ノ森さんのスランプに巻き込まれて消えてしまうんだな」

翔花「最後の希望の主役が消えた時は、どうなるかと思ったわよ」

NOVA「で、物語から消えると、飛羽真は現実世界にいるんだよな。そこでは大人になったルナがいて、賢人と一緒に3人で、幸せな現実世界を築いていた。ここで飛羽真は気づくんだ。『そうか、物語世界の主役の自分は苦労ばかりするけど、現実に戻って来たら、こんなに幸せなんだ。現実っていいなあ』」

晶華「よくある物語では『現実で辛い目にあったから、フィクションやゲームの世界に現実逃避して、辛い現実を忘れて楽しむんだけど、それでも現実に戻ってくる決断をするか、一生架空世界でハッピーライフを続けるか』が定番なんだけどね」

翔花「物語のキャラクターが、『物語が過酷なので、平和な現実世界に逃避します』って逆転の構図よね。斬新というか」

NOVA「でも、花粉症ガールの世界も近くはないか。日常編の晶華と、バトル編の翔花って二つの物語に分かれたのが、今はバトル編の翔花が日常編に帰ってきて、スーパー雑談タイムになっているという」

翔花「ああ、わたしにとって、NOVAちゃんとのお喋りタイムが現実なのか」

NOVA「まあ、どこまで現実で、どこまで物語なのか曖昧なのが、うちのブログ時空だけどな。今回のライダー映画もそういうメタフィクションで、何だか物語の構造が、俺と毛利さんの間で通じ合った気がする」

晶華「NOVAちゃん、それは妄想……と言いきれないのが今回の映画なのね」

NOVA「で、現実の世界に逃避した飛羽真さんが、だけど……と思い直すんだよな。自分は物語の作者だ。作者である以上、物語はちゃんと終わらせないと、約束は果たせない。どんなに辛くても、物語の結末は俺が決める、と作者ではなく、物語の主人公として自発的に世界を守ろうとする。そして、石ノ森さんのところに行って、一緒にスーパーヒーロー戦記という物語を考えるんだ」

翔花「同時に、石ノ森さんも仮面ライダー秘密戦隊ゴレンジャーのイメージをひらめくのね。ゼロワンさんの映画で否定された『原点にして頂点の最初の1号ライダー』が帰ってくるわけで」

NOVA「惜しむらくは、今回の映画で菊池俊輔さんのBGMが一切使われなかったことだな。できれば、何曲か使って、故人を偲ぶ献辞も付けて欲しかったんだが、まあ、50周年記念のお祭り映画に湿っぽくするのもどうかという意見もあるし、この辺はファンとしての細やかな気持ちで個人的に菊池BGMを流せばいいだろう」

NOVA「ともあれ、藤岡さん声の旧1号が歴代ライダーを消失した歴史から召喚し、アカレンジャーが歴代戦隊レッドを同じく召喚し、クライマックスバトルが開始される。まあ、戦いながら、一人一言ずつ決め台詞を述べたりしつつ、タイトルロゴと共に流して行く作業展開だが、面白いのはモチーフごとの組み合わせだな。

「分かりやすいのは『マジーヌ、マジレンジャー、ウィザード』の魔法組とか、『スーパー1、フォーゼ、フラッシュマンキュウレンジャー』の宇宙組とか、他にも忍者組、野獣組、ドラゴン組、車組など、いろいろあって、まあ、次から次へと流れて来るので、すぐには分からないものもあったし、後から映像ソフトでも買って補完しようと思ったが、とにかく歴代戦士のバトルと、歴代メカが飛び交う映像とか派手に行ってくれたなあ、と」

翔花「今回のゴレンジャーメカは、バリドリーンだったわね」

NOVA「10年前はバリブルーンで、次の機会はバリドリーンも見たいなあ、と思っていたが、その希望が今回ようやく叶ったわけだ」

NOVA「順番は前後したが、創作テーマはセイバー中心だけど、そこに至る前の西遊記八犬伝の物語がまたネタとして楽しめた」

晶華「西遊記は、電王さんチームがメインね」

NOVA「だが、俺が一番笑ったのが、お釈迦さま役で巨大なオーマジオウが登場したことだな。まさか、魔王が仏陀、お釈迦さまの役をやりますか」

晶華「一応、NOVAちゃんも仏教徒なのよね」

NOVA「仏道修行の行き着く先がオーマジオウだったら、この道を突き進んでいいのだろうかって気にもなるが、まあ、グランドジオウの別名が仏壇フォームだからなあ。つながらないこともないわけで」

S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーグランドジオウ 約145mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

NOVA「ジオウのBGMも、インドのカレー風味をイメージしたと作曲家さんも述べていたので、ようやく伏線回収されたかなって気分になった。天竺の経典がライドブックだったというオチも含めて、この辺はお祭り気分だった」

翔花「八犬伝は、地獄の番犬デカマスターさんとか、シンケングリーンさんとか、キラメイブルーさんとか剣士キャラがいろいろと」

NOVA「ゼロワンの或人社長が、ワシピンクのラプター283を相方にギャグをするとかは、アンドロイド少女というつながりもあるが、何よりも声優がアイちゃんだからな」

翔花「M・A・Oさんも特撮御用達声優になったからね」

晶華「そう言えば、前回、戦隊ヒロインで掛け持ち女優はいないってNOVAちゃんは言ってたけど、一人見つけたわ」

NOVA「何? まさか、はぐれ暴魔キリカとダイレンジャークジャクを演じた森下雅子さんとは言うまいな。広い意味では、彼女も戦隊ヒロインと言えなくもないが、やはり正規メンバーでないのは認めん」

晶華「だったら、デカイエロー・ジャスミンさんが、2代めキョウリュウシアンさんになったという事実は?」

NOVA「うおっ、それなら出合正幸さんも入れないとな。ボウケンシルバーとキョウリュウグレー、さらにグレーの2代めを演じてらっしゃる」

翔花「それにしても、ゼロワンさんがなぜ犬士?」

NOVA「名前にワンが付いているからじゃないか?」

翔花「ああ、納得」

 

NOVA「そんなわけで、数々の物語が融合して、ヒーローたちがいっぱい集結したら、その多勢のヒーロー群に圧倒されて、石ノ森さんがスランプに陥るという流れなんだよな。だけど、セイバーの助力もあって藤岡さんが蘇って、変身を解除した後、若き日の石ノ森さんに感極まって、『先生! あなたの想いは多くのヒーローたちに託され、時代を越えて受け伝えられています』的な話をして、『君は本郷猛。そうか、ぼくは死ぬんだね』と神たる章太郎少年が一瞬、寂しい顔になりつつ、すぐに笑顔になって、『でも嬉しいよ。ぼくがいなくなっても、仮面ライダーも戦隊も続いて行くんだね。未来につながるヒーローを作れたんだ』という流れは、素直に涙だよ。うん、俺が石ノ森さんでも、これは感じ入るだろう」

翔花「花粉症ガール50周年記念映画なんて、まず無理だもんね」

NOVA「映画が1本できただけで、俺は感涙するぜ」

晶華「メガネンジャーだって、非公認だもんね」

NOVA「おっと、そう言えば、非公認戦隊も映画に出てきたな」

NOVA「まさか、ネタとしてアキバレンジャーギアを作った動画主も、映画で採用されるとは思わなかっただろうなあ。まさに重妄想って気分だろう」

晶華「妄想パワーで戦う非公認戦隊が映画に出られるなら、メガネンジャーだって、アキカイザーだって、映画に出られる可能性はゼロじゃないわね」

NOVA「ゼロじゃないけど、限りなくゼロに近いと思うぞ」

晶華「大丈夫。足りない分は勇気で補うのが勇者ってものよ。そんなわけで、勇気で充填はお願いね、お姉ちゃん」

翔花「え? わたし? 他人任せ? どうして、わたしがアキちゃんのヒーロー戦隊のためになけなしの勇気を振り絞らないといけないの? そんな勇気があるのなら、わたしは花粉ライターJUHOのために全力全開で行くんだから」

NOVA「いや、それはやめてくれ。JUHOの時代になると、令和が終わってしまう。俺はゼロワン、セイバーが守り、リバイスに受け継がれる予定の令和が好きなんだ。さらにはケボーンだったり、キラメンタルだったり、全力全開の令和もな。今の状態で令和が終わってしまえば、単にコロナ禍で大変だっただけの令和になってしまう。

「俺はアフターコロナな令和が見たいんだ。後から歴史を振り返って、『ああ、令和ね。最初はコロナとかで、どうなるかと思ったけど、その後はハッピーに盛り返したな。うん、令和もいい時代だったよ。平成みたいに瞬間瞬間を必死で生きてきて、醜い時代だったけど、それでも面白かった』と言える令和であって欲しいぜ」

翔花「そう? 珠保の方が絶対楽しいって」

NOVA「花粉ライターの時代ってことは、仮面ライダーが終わるってことじゃないか」

翔花「花粉ライターの時代になったら、NOVAちゃんが石ノ森さんみたいに神の座に就けるんだって」

NOVA「いやいや、俺は石ノ森ヒーローが永遠に続くことを願っているんだから、それにとって代わろうなんて、大それたことは考えていないんだって。分不相応な夢は身の破滅を招く。悪魔のような誘惑はやめるんだ!」

 

悪魔の話

 

晶華「それで、初代ライダーの本郷猛さんが、石ノ森章太郎先生の役の子に、感慨深いお話をして、昭和の特撮ファンが感涙に潤んでいると、悪魔が出現するのよね」

NOVA「てっきり、本編後のおまけで顔見せ程度だと思っていたんだ。そうしたら、やけに長く続いて、最後まで見ると、しっかりエンディングが流れる。見終わってから、これが実は2本立ての映画だったのか、と気づくサプライズ。MOVIE大戦の時の2つの映画が1つにつながる演出以来の驚きだったぜ。正に、一つで二つの映画体験だったと言えようか」

翔花「つまり、花粉症ガールみたいに分裂しちゃったのね」

NOVA「俺の花粉症から、精霊と契約したら翔花が生まれて、その後、分裂した翔花2号が今の晶華になって、その後、たささんが3人めの日野木アリナ姐さんをネタ提供してくれて、何だかんだ言って、書いててハマったので、いつしかコンパーニュの主になって、適当に綴って行ったら、いつの間にかNOVAバースというか、花粉症バースというものに広がって行くような匂いを、リバイとバイスに感じているぜ。

「いやあ、精霊と契約した俺が、悪魔と契約したヒーローを見て、時代がまたまた俺に追いついて来たような感覚を覚えているわけだ。何だか、ジオウの時といい、セイバーの時といい、設定的に俺を喜ばせてくれるなあ、と」

晶華「まあ、いっぱい書いていたら、それなりに当たることもあるって」

NOVA「ここで、俺の考えた設定をパクりやがって、と激怒するのがあまり幸せになれない人で、俺の考えた設定は時流をつかんでいるんだ、さすがだぜ、とスマイルになれるのがハッピーに生きるコツってことだな」

晶華「でも、いくら時流をつかんでも、お金にはならないのが残念なところね」

NOVA「これは、創作家の金言だが、いくら設定を考えても、お金にはならないんだって。商品として展開できる作品に仕上げないとな。大体、公式には、ボツになった設定も数多くあって、考えたことが全て発表されるとは限らないわけだ。企画を通すためのブレーンストーミングを重ねて、すでに実績のあるライターにプロデューサーさんが声掛けして、この人だったら、こういう仕事ができるはずだと信頼感を獲得してるからこそ、日の目が当たるわけで」

NOVA「リバイスの脚本家の木下半太氏は、悪夢シリーズ10巻分を初めとする小説家としての実績があって、すでに15年で、今回が初の特撮脚本家としての採用だが、他にも劇団経営とか映像関連に関わってきた前歴があって、なかなか異色の風といった感じだ」

晶華「どういう作風の人?」

NOVA「現在の裏社会のダークサスペンス設定と、コメディタッチのノリとバイオレンス風味で、意外な展開のどんでん返しで、頭軽くして読むべきおバカ小説といった印象か。整合性とかを期待する作家じゃないようだが、ジェットコースター的な勢いがあれば映像化の素材としては悪くないという意見もあるわけだし、小難しいことをあまり考えずに気楽に読める方が大衆ウケするという逆・山本弘理論もあったりする」

晶華「何それ?」

NOVA「最近、山本さんのこの本を読んだわけだが」

NOVA「昔、山本さんところの掲示板絡みで、いろいろあって、俺的にはSNE関連で世話になったこともあった人だけど、山本さんが仮面ライダー555批判をした時期に、いろいろトラブって袂を分かったりもしたんだな。それで、NOVAは山本さんを恨んでいるとか言われたりもしたけど、それは事実誤認。

「ただ、俺は特撮サイトの管理人としての立場もあって、平成ライダーをあからさまに批判する人とは仲良くできないという状況にもなったし、付き合いにくい人間と付き合うよりは、自分のスタンスを維持したいという気持ちの方が強かったから、疎遠になったわけ」

翔花「疎遠にはなったけど、ファンとして作品は追っかけたりしていたわけ?」

NOVA「たまたま本屋で目について、さっとあらすじ見て、面白そうだと思えば時々買ったし、だけど積極的に追いかけたわけじゃないな。ラーリオス書くのに忙しかった時期は、SFよりもハードボイルドにハマっていたり、未練たらしいのも嫌だったし、一度、切れた縁を紡ぎ直すのも……と思っていたし、例えば、山本さんには山本さんの創作スタイルがあって、それで山本さん定義で善悪を決めたりして、だけど山本さんがダメと見なした作品が世の中で受けて、山本さんが『どうして、この本が受けたか分からない』と心底、訴える話があって、こっちは一つの答えを持っていたけど、それを口に出すと袋叩きにされる空気があったから、黙っていた」

晶華「どういう答え?」

NOVA「娯楽本やアニメに、山本さんみたいな小難しい理屈を考えて鑑賞する読者は、比較的少数派だからってこと。まあ、俺はその少数派だと自認していたけど、山本さんはその少数派の理解者以外の多くを愚かだと見下す発言もしていたから、まあ、それは作家であり、マニアゆえのプライドもあったのだろうし、創作家としては自分のスタイルをころころ変えるわけにもいかなかったろうから、その場で事実、あるいは仮説を指摘しても意味があるとは思えなかった。ただ、最近、山本さんの御病気の話を聞いて、俺なりに心配していたのも事実なんだ」

翔花「御病気って、どういう?」

NOVA「友野さんのTwitterとかで断片的に流れてきて、状況を知ったんだけど、どこまで公開している情報か判断できなくて、わざわざ騒ぎ立てようとは思わなかった。他人の病気というのはデリケートな話だから、中途半端な立場で無責任なことを吹聴したくはなかったからな。ただ、今回読んだ著書の後書きに書いてあったから、多少は触れてもいいかな、と」

翔花「著書の後書きを読めばいいってことね」

NOVA「そうだな。何でも記憶に関係することで、作家としてはかなりショッキングで絶望したりもしたそうだけど(俺が話を聞いたのはその辺りの時期)、ご家族や友人・知人の励ましで何とか立て直しを図っているらしい。

「創作講座の本に関しては、昔、雑誌に連載されていた記事をまとめたものらしく、娘さんの助けを借りながら、一部改稿に留めたらしく、まだ全面復帰を果たせるわけではなさそうだけど、内容は山本さんの創作観や技術のご披露と、ご自分の著作の自画自賛的な思い出話、そしていろいろな自伝的エピソードで、俺も含む山本弘ファンには興味深い情報群かな、と。ああ、あの時、こういうことを考えて、こういう話を書いていたのね、とか、こちらも懐かしんだり、SNEの最初の入社試験の概要とか、友野さんへのエールとか、そういうのは興味深く読めた。その後の世代については触れられず、また掲示板運営の話も特になく、まあ、こんなものかと(多少は読んでてドキドキしたけど)。

「ともあれ、俺も下手な突つき方をすると、おかしな感情が吹き荒れる可能性があったから、触れて来なかったけど、行き違いはあったにせよ、時効って気持ちもあったし、袂を分かった時点で失礼を詫びたし、未練がましいストーカーになるのも、そう思われるのも嫌だったから、自分の言葉(ネットでは二度と関わらない)も守ったし、それでも悪感情は残してないことは表明したいと思ったわけで」

晶華「でも、どうして今、この話題に流れたの?」

NOVA「リバイスの脚本家経歴とか、作品の概要をネットで見ながら、ああ、山本さんだったら受けつけないタイプの作家だな、と思ったから。俺も、作品内容を見ると、好きになれなさそうな作風と感じたけど、まあ、作品を読んでもいないうちに決めつけるのは早計だな、と。山本さんも嫌いなものは相当酷く、酷評するけど、酷評するために徹底的に分析してからツッコミ入れるし、読まずにツッコむことはしないというポリシーはあって、俺もそういうところは信頼してる。

「ただ、酷評したあと、『どうしてこんな駄作を楽しめるのか、ぼくには分からない』と言ってしまうのは、悪い癖だと思うし、それは本作でも変わっていないなあ、と感じた。当然、山本さんと違う見方で楽しんでいる人もいるわけで、エンタメって楽しめた人の勝ちだから、山本さんが楽しめないものを楽しめる人が多くいるというだけなのに、エンタメを高尚なものと位置付けすぎて、それに付いて来てくれる人だけをターゲットにしていたら、そりゃあ、マニアしか読まない作品しか書けないわけで」

晶華「それでも、山本さんも30年以上、作家を続けて来た人だから、NOVAちゃんが否定する道理はないのよね」

NOVA「まあな。そういうマニア受けのいいこと、選民思想にも通じたことを言えるのが山本さんなわけだし、久々に読んだ本も相変わらずの山本さんらしさが溢れていて、安心したというか、それでもずいぶん丸くなったというか、自分自身の粗探し的な部分、反省材料的な部分もあって、そういう自己矛盾的な反省点を小説ではなく、自分のこととしてエッセイ文で残せるようになったところは成長点かなと思ったり(生意気な上から目線)」

翔花「そういう上から目線は、先達に対してはどうなのかしら?」

NOVA「いや、SF創作技能は当然、山本さんの方が上だし、今回の本でも、絵心的な部分は俺には決してマネできないし、この部分は俺も考えてるなとか、この部分はさすが山本さんだ、凄いなあとか、この部分は少し違うなあとか、ただ一つ明らかにこちらの才能を評価されたようなのが、『キャラが勝手に自己主張して、お話を紡いでくれる』という能力は、山本さんには分からなくて、でも、そういうことができる作家を何人も知っていて、彼らは天才だから羨ましいと言ってもらえたこと」

晶華「へえ、NOVAちゃんは山本さんも認める天才なんだ」

NOVA「ただ、俺もそういうことが普通にできていると山本さんに告白したことはないから、あくまで能力が天才というだけで、俺個人が天才と見なされたわけじゃないんだけどな。まあ、これはやはり個人差って奴で、俺も自分のそういう奇異な経験が、特殊なものだという意識は持たずに来たからな。むしろ、若いときは、脳内でいろいろな人格がざわついているのが普通だって考えていたぐらいだし」

翔花「多重人格とは違うのよね」

NOVA「よく、創作ものである頭の中で天使と悪魔が口論してるイメージが近くて、でも、どっちが天使で、どっちが悪魔かはキャラ立てできてないというか、天使と悪魔が入れ替わったり、がっちり握手したり、分裂したり、ヒャッハーとバイクで走って可哀想な老人を追い回したりしていたら、老人が正体を表して実は竜王だったりして、北大路欣也さんの顔が浮かび上がったりするのはしょっちゅうだ」

翔花「しょっちゅうなの!?」

NOVA「最近はな。ヒャッハーな連中は、竜王の吐く火に焼かれて、自分たちが汚物焼却されてしまうオチ付き」

晶華「前に、NOVAちゃんの脳内にあしゅら男爵がいるとか言ってたけど、まさかジョークじゃなくて、本当にいるわけ?」

NOVA「今は、奥に引っ込んでいるぞ。とにかく、俺の脳内はいつもざわざわと何かが騒いでいて、きっかけがあったらPONと出てくるのを狙っている。だから、ランダムに悪霊が飛び出して来ないように、今は花粉症ガールにガード役を任せているわけだ」

翔花「だから、花粉症ガールは悪霊退治の専門家なのね」

NOVA「で、俺はもしかしたら、山本さんも同じタイプかと思っていた時期があったんだ」

翔花「どうして?」

NOVA「『妖魔夜行』の小説を書いていたから」

晶華「それは、確か女の子の中に悪魔が潜んでいて、悪魔の力で悪の妖怪と戦う話だったと思う」

NOVA「リバイスの設定に通じる部分があるよな。内面に潜んでいた別人格が実体化して、主人公を脅かすのを上手くコントロールして、敵と戦う力に変えるって設定は、俺には割と自然に思えるんだよな。で、今回のリバイスの設定を知って、昔の妖魔夜行の小説群が浮かび上がって、山本さんだったら今度の脚本家をどう評価するだろうと妄想していたら、先日読んだ本とつながってしまったんだよ。本当は、山本さんのことを未練たらしく書くつもりもなかったんだけど、この期に想いを精算しておくのもいいかな、と思った」

翔花「作家の中に眠る神と、悪魔の両面の話ね」

NOVA「まあ、好きとか嫌いとかの域を越えて、SNE草創期の作家の人たちって、憧れに近い想いもあったし、創作に関して俺にいろいろと影響を与えているのは間違いない。距離を置くのは良くても、完全に切り捨てることはできないんだよな。

「ただ、当たり前のことなんだけど、俺にできないこと、分からないことを山本さんはできるし、凄く良く知っている。そういう面では素直に敬服できるわけだよ。でも、今となっては逆もしかり、と普通に考えられるようになって、そりゃあ、こちらが年齢や経験を重ねたこともあるし、SNEとの自分なりの理想的な距離感をつかめるように意識できたこともある。この点では、いろいろ感情が入り乱れる状態が長年続いて、平成が終わるという頃合いで、ようやく時効だと割り切って自己客観視で、立ち位置を定められるようにもなったわけで」

翔花「そこで、自分の感情を暴走させないようにするために、ブレーキになるキャラが必要だと思ったわけ?」

NOVA「そこまで緻密に考えたわけじゃないけど、まあ、娘がいたら、それに恥じない父親モードを構築できるかな、と思った。恋人がいれば、恥ずかしい自分を見せられないと気持ちが引き締まるケースはあるが、俺はどうもそんな自分を縛る彼女キャラはいらないと考えがちで、持つなら、彼女より娘だろうという契約だ」

晶華「思いがけず、花粉症ガール誕生の背景が語られました」

NOVA「いやあ、登場したばかりのリバイスに対して、ハッピーバースデー! と鴻上会長も祝ってくれたしな。ウォズといい、祝い系キャラってセリフを聞くだけで、幸せになれるのは俺だけかな」

翔花「とにかく、新しいライダーの誕生を祝って、サプライズ映画が作られたって話ね」

NOVA「主人公が銭湯経営者で、名前が一輝。しかも、リバイスのシステムを作った組織の名前がFENIXだから、フェニックスの一輝兄さんになるわけだ。弟と妹がいるし」

晶華「一輝兄さんが悪魔と契約して、ピンクのライダーになるのよね」

NOVA「カラーリングも含めて、いろいろインパクト大なんだが、とにかく、風呂好きの悪魔バイスがよく喋る。変身しないとバイスは実体化できないので、一輝がリバイに変身して、そのまま一緒に入浴することを求めてくるわけだ」

翔花「スーツのまま、風呂に入る2人のライダーって最後のシーンがなかなかシュールよね」

NOVA「その隣の女湯では、妹のさくらが入浴していて、初登場がいきなり入浴シーンというのはデカレンジャーウメコ以来かな、と思ったり。ウメコのお気に入りの3つのアヒル人形も、むちゃくちゃ増殖していたし、明らかに小道具さん、狙ってますねえ、と感じた」

晶華「海だけじゃなくて、温泉や銭湯も時流なのかもしれないわね」

NOVA「俺の楽しさやハッピー、ラッキーを決めるのは俺だから、俺は自分の感じられるハッピーを追求したいし、それを邪魔する違うセンスの人間は、気にかけないのが吉かと思うわけで。まあ、たまにイラッと来て、毒を吐くかもしれないけど、そうして後から自己嫌悪に陥るのもバカらしいからな。せいぜい俺の好きなものを攻撃してきたら、専守防衛で過剰に言葉の暴力をネチネチ振るって、ネタにするのが今の俺スタイルかな」

晶華「確か3倍返しだっけ?」

NOVA「それは昔だな。今は書くスピードが上がって、30倍返しぐらいにはなっている気がする。まあ、あまりに不毛な文で、自分で読んでても笑えない部分は途中で切ってボツにしているが」

翔花「確かに、作家が自分で読んで楽しめない文章が、人様にお見せして評価されるとは思えないもんね」

NOVA「もちろん、自分で読んで楽しめるからって、万人受けするとも限らないわけだが、この作品のこういう部分は面白いって記事は、評論の基本だからな。この辺は、グルメ雑誌とかを見ても、つまらない料理をバカにするような文章は需要がない。そういうのは、面白いものをたくさん知っている人が、たまに小ネタとして挿入するから笑えるのであって、エンタメにはノリと勢い、評論には知性と筋道が必要で、テンポの悪いエンタメや、知性を感じない評論が駄作と呼ばれるものだ」

晶華「じゃあ、ノリと勢いで寄り道脱線しまくるのは?」

NOVA「小説だったら推敲して、寄り道脱線部分を削って、もっとスッキリした文章にしろって、俺が編集だったら注意するな。お前の無駄話に読者は金を出してるんじゃないとか。でも、リバイスって、何だかそういうタイプの作品みたいなんだな、俺がみたところ。つまり、戦いながらムダ話をまくし立てて、どこに転がるか分からずに暴走して、強引にオチとケリをつける方向性」

翔花「つまり、花粉症ガールのファンは、リバイスを楽しめる可能性が大ってことね」

NOVA「しかし、リバイスの作風に合わせるなら、ソード・ワールドだと魔神使いのデーモンルーラー技能の出番が必要なんだな。妖精郷だと推奨できないけど」

 

(当記事 完。コングの感想は、コンパーニュの方で)