今回の話は、特に当たり外れを感じない、仕込みの回だと思った。
気になったのは、物語開始時のナレーション。
「人と関わる生き方を貫こうとするカノンだったが、現実の厳しさに打ちのめされる。しかし、その中で『たくましさ』と『したたかさ』を身に付けていくのだった」(趣旨)
「たくましさ」は、理解できる。いやなことがあっても、タイヘイたちオンバケに励まされながら、自分の信じる道を貫くのは、物語の主人公として共感できる要素だ。
でも、「したたかさ」って何?
「利害得失を敏感に判断し、身の安全を図るように事態を処する、経験豊富な知恵者」といった言葉のイメージなんだけど、カノンの場合、「猪突猛進で、後先考えずに突き進んでは、痛い目にあって、それでも懲りない」感じだと思うなあ。失敗から学ばない、というか、「善意で事に当たれば、相手にもいつか想いが伝わる」という純情一途な精神で動いていて、「どうすれば自分が損をしないか」あるいは「相手に自分の想いを伝えるにはどうすれば効果的か」といった方策を考えることはしないキャラ。本当に「したたか」だったら、もう少し危なげなく見ていられるんだけどな。
それとも、カノンは、ぼくが思う以上に、知恵を働かせているんだろうか?
インターネットを使って、歌をアップロードしたり、他人のプロフをチェックするのが、したたかさ?
それとも、実は「反省しない幸太郎の悪事を、こっそり警察に通報していた」とか? だったら、すげえぜ、カノン。純情な表カノンの影で、目的のためには手段を選ばない裏カノンが存在する? そういうヒロインの「始末屋稼業」的なドラマなら、自分はもっとヨイショするんだけどなあ。手足として働きそうな妖怪はいるんだしさ。「カノン妖怪事件簿」的な話なら好み。
あるいは、くららやかなめに関わったのは、本心からの感情移入ではなく、実は「祈り歌アレンジのためのネタ探し」というのが本音? 彼女たちの問題をうまく解決できなかったとしても、まあ、その経験が歌を考える材料になればいいか、という創作者的思惑が内心にあった?
ぼく自身は、自分の善意をそれほど信じていない。というか、善意って結構、気まぐれに揺れ動くものなので、「善意そのものを行動動機」にしてしまうと、ちょっとした感情の揺れで、「こっちがこんなにしてやってるのに」とネガティブな気持ちに駆られてしまうケースがある。自分を善人と信じて疑わない人間ほど始末の悪いものはなくて、彼らは自分の善意が受け入れられないと、その相手を簡単に悪人と断罪しかねない。
だから、自分が人と付き合い、フォローするための行動動機は「あやふやな善意」よりも、「この人とは趣味が合うから」とか「一緒にいると楽しく話せるから」とか「相手からいろいろ学べるから」あるいは「お互いにいい刺激を与え合えるから」といった、間接的に「自分の利益」も得られるように意識している。
そして、イヤなことがあっても、「ま、話のネタになるから」ぐらいに考えて、割り切るなり、自分を慰めるなりしていた時期があったり。そういうイヤな思いも創作の糧と考えていた自分は、確かにいた。
ま、カノンというキャラが、そういう創作家精神をむきだしにした割り切り方をしているとは思えないんだけど*1、ぼくにとって「したたかさ」ってのは、そういうことだと考えている。
オンバケ地方編
さて、待望のキリノハさんの登場した今回。
コミック版だと、「人の愛から生まれたオンバケなのに、人を信じない一匹狼」ぶりが一種のツンデレ的萌え要素でしたが、
ドラマ版の方は、単純に「戦闘経験の豊富な頼れるお姉さん」って感じです。ハシタカが妹キャラ風なので、バトルヒロインが2人になった、というのは、アクション物としては悪くありません。ただ、アクションを期待すると、この番組、肩すかしを受けるんですけど。
それでも、もう終盤なんだから、そろそろ毎回のように、見せ場となるアクションを見たいですよ、本当に。
あと、気になるんですけど、ユモンジさんや、カエンジさんたちは何をしているの? 何だか、新キャラが出てきては、それ以前の助っ人がいなくなっていて、戦力が一向に強化されないんですけど。
イパダダはどんどん強くなっているらしいのに(相変わらず逃げてばっかりだけど)、味方があまり強くなっていないので、その強さがどうも実感できません。味方の数がどんどん増えて、戦力が明らかに増強されているのに、それでも太刀打ちできないって絵を見せてこそ、イパダダの成長も実感できるはずです。それに、役者に払う出演料とか、スケジュール調整がうまくいかなくて……なんて言い訳ができる番組でもないのですから*2。
ま、今回はキリノハさんの顔見せだけで、納得しておきます。
あと、イケチヨ姐さんがトモスケ連れて、タイヘイだけ残して、どこかに行ったんだけど、最後は、「オンバケ全員集合して、イパダダと大決戦」的な絵を見せてくれるのかな?
父親の再婚相手
くららの話のときに気になっていたカノンの母親。
死んだのか、離婚したのかは定かではありませんが、父親のばろくが「再婚相手を求めて」東京に来たことが判明した回。
山形出身の老人介護施設で働く女の人・あかり(演・有森也実)が、父親の思い人だったのですが、偶然、街を徘徊していた老人をカノンが見つけたことから、知り合うことに。
このあかりが何かの傷を抱えていて、本話の最後に「父親のプロポーズを断った」わけですが、まあ、こういう話だと、カノンが関わっていく理由も納得できるというもの。「町でたまたま知り合った歌好きの女の子」とか「元恋人と付き合っている、あまり付き合いのない友人未満のクラスメート」とかだったら、心情的にどうして、そこまでお節介に関わっていこうとするの? と思っていましたが*3、自分の母親になるかも知れない女性*4だったら、関わる理由として十分かな、と思います。
うん、この回、久々にカノンの行動理由に共感できたりして。まあ、次回で崩されないことを願いつつ。
巫崎家の秘密
ええと、カノンの父親ばろく、老人ホームの噂話によると「落選したばかり」だとか。地方議員でもしていたのか?
一方、母親も含めた家族写真。背景に「石になったブジンサマ」が写っていて、実は「巫崎家とブジンサマの接点」を初めて、カノンが自覚します。ちなみに、この情報、視聴者にとっても初の情報。これでようやく、「カノンが歌姫でなければならない理由」もはっきりするのかな。まあ、血筋になんだろうけど。
この辺の情報が今後、終盤を迎えて一気に明らかになることを期待するものの、できれば、もっと早めに小出しにして欲しかったなあ。展開の遅さは相変わらず。