Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

仕事人2009・第1話感想

 ええと、待望のレギュラー放送ですが、第1話は「新春スペシャル」に力を注いだ結果、「出がらしのお茶」みたいに感じました。
 いや、まあ、「ゲストたちのドラマ」としては成立しているんだけど、そこにレギュラーキャラがほとんど絡んでこず、「頼み人の恨み」に仕事人たちがほとんど共感せずに、淡々と仕事するという「仕事人としては、全く心の通わないエピソード」になってしまった、と。
 そんなわけで、今回は過去の名作と比べながら、辛口批評をしてまいりたいと思います。

若き仕事人・秀の言葉

 「体中がカーッと熱くなって、それでいて妙にウキウキして、殺った後はスカッと……何も残らねえもんだ」

 今を去ること30年前、『必殺仕事人』第2話にて、中村主水を前に、三田村邦彦演じる秀は、若手仕事人として仕事の感覚をそう宣言しました。
 それに対して、主水さんは、共に初仕事をした後で、依頼人の悲しみに触れた秀に諭すのです。

 「どうだ若えの、気分がスカッとしたかい。おめえが今までやってきたのは仕事じゃねえ、ただのガキの遊びよ。本当の殺しってのは、いつもこんなに苦えもんだ……分かったかい?」

 依頼人の恨みつらみのこもった銭を受け止め、涙や怒りといった情と共に晴らせぬ恨みを晴らす裏稼業。それが「仕事人の王道」と言えるものですな。

必殺の原点

 必殺シリーズは、1972年の「必殺仕掛人」からスタートするわけですが、当初は「厳格な掟に縛られたプロの殺し屋」の物語でした。
 きちんとした元締めから、大金を仕掛け料として受け取り、隠された悪事を暴きながら、難敵をしっかり倒す過程を描く。その中で、仕掛けの的が、実は知り合いであったり、生き別れの肉親であったりすることが判明し、苦悩にさいなまれることはあっても、最終的には「情よりも掟」を優先して、許せぬ悪を消すドラマ。これが基本形でした。
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 続く2作目「必殺仕置人」で、中村主水が登場します。
 ここに出てくる殺し屋は、組織に縛られたプロではありません。彼らは、役人の主水を除けば、貧乏長屋に住む庶民たちで、主戦力の「念仏の鉄」「棺桶の錠」は、どちらも佐渡流罪を経験した元罪人のアウトロー。しかし、佐渡の金山役人であった主水と意気投合して、江戸に舞い戻った後も、立場を越えた交友関係を結んでいたのでした。
 そんな彼らが、悪人に虐げられた被害者の恨みを晴らすため、「悪人の上を行く極悪の立場で、法の網をかいくぐった悪人を闇に裁いて仕置きする」 これが仕置人の原点です。決して、正義ではないのですね。
 仕掛人はプロフェッショナルな稼業ですが、仕置人の場合は、メンバーの合議制。そのため、悪人に対する怒りが頂点に達したときに動くパターン。ある意味、秀が主水と知り合う前に経験した「体中がカーッと熱くなって、それでいて妙にウキウキして、殺った後はスカッと何も残らない」殺しというのを、主水は仕置人時代に経験していたと言えるでしょう。
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 これ以降の必殺シリーズは、「殺しのプロ」路線と、「人情」路線の間を行き来しながら、多彩な殺し屋組織や、幕末、江戸以外の地方巡業、悪の組織との抗争劇、心霊怪奇現象(笑)など数々のドラマを描き、また「人の命をいただくからは、いずれ私も地獄道」と言われるように、殺し屋の悲惨な末路なども語りきって、『必殺仕事人』まで14作品が続けられていくのです。
 その過程で、中村主水も、義兄弟・糸井貢との死別を始め、盟友「念仏の鉄」を含む多数の仲間の死を見届け、いつしかプロとしての仕事の高みに達して行ったわけです。

人情路線にシフトした仕事人

 そして1979年に始まった『必殺仕事人』は、当初、『仕掛人』を踏襲した殺しのプロ路線を示しましたが、元締めの交替などを契機に、次第に「人情メインの話」が増えてきます。
 人情メインとはすなわち、以下の物語パターンが中心となります。


1.仕事人が日常生活を送っているときに、ゲストと知り合う。ゲストとの交流に、多くの時間をついやす。また、悪人との因縁も同様に描かれることも多い。
2.ゲストが悪人に殺され、死の間際に駆けつけた仕事人の誰か*1に「恨みを晴らしてください」と言い残して、頼み料を払う*2
3.仕事人メンバーが集まって、それぞれの立場から知った情報をまとめて、悪人のしてきた所業を語り合う。そして「許せない気持ち」を表明しながら、頼み料を受け取る。
4.出陣→殺し→日常生活への帰還


 人情路線の欠点は、「悪人の描き方がステロタイプになりやすい」「仕事人の知り合いが毎週殺され、事件が起こる前に未然に解決することができない」などがありますが、
 仕事人がきちんとドラマに絡むため、いわゆる「仇討ち」として視聴者の感情移入がしやすい、という決定的な長所があります。


 それに対して、今回の「仕事人2009」第1話は、仕事人のメンバーがほとんどゲストと絡むことがなかったため、「仇討ち」ものとしてのドラマが全く成立していない、という致命的な欠点が見られました。 少なくとも、「殺し屋の物語である必殺シリーズ」ではあっても、「人情路線がメインだった仕事人シリーズ」ではないな、と。

 スペシャル版の前2作は、『2007』が源太が恋人の仇討ちをすることで裏稼業に足を踏み入れる話、『2009新春スペシャル』が裏稼業を続けることを迷っていた源太が、老人たちの悲劇に直面して、やはり許せぬ悪がいることを悟って仕事人であることを決意する話として成立していた*3のに対し、
 第1話は、まったく、そういう話にならずに、ゲストだけで物語が進み、仕事人がゲストに感情移入するドラマがほとんど描かれていなかったわけです。

新作は、プロフェッショナルを描く?

 もちろん、人情路線であることが絶対ではありません。
 たとえば、中村主水必殺シリーズ第6作『必殺仕置屋稼業』で、頼み人の悲しみに接することを嫌い、純粋にプロフェッショナルの殺し屋として裏稼業を続けることを決断しております。これは物語の流れとしては、主水シリーズの前作『暗闇仕留人』で、情に流されたために命を落とした義弟・糸井貢の最期に接したため、と言われています。
 確かに、プロとして裏稼業を続けるなら、いちいち情に流されていては、長生きできません。仕事人シリーズが、旧来の必殺マニアの批判を受ける理由の一つも、「情に流されすぎ」という点ですが、
 ただ「情に流されない」というのと、「レギュラーキャラがドラマにまったく絡まない」というのは話が別ですし、
 ドライさを描くなら、全員がドライに振る舞うよりも、「ドライなキャラ」と「情に流されやすいキャラ」を対立させて、「ドライなキャラ」の理屈が通る作劇手法を示すのが王道、というか従来の必殺シリーズでは、そうしてきたわけですな。


 また、人情を描くよりも、むしろ仕事の段取りに時間を割く描き方も考えられます。
 物語が始まった時点で、すでに仕事は請け負っている。しかし、その仕事を果たすために、必要な調査(事件の黒幕は誰か? 難敵をどうやって仕留めるか? 厳重な警戒をどうやって切り抜けるか? などなど)を行うミッションクリア型の話なら、プロっぽいと思います。
 今回の第1話も、そういう要素を一部、描こうとしている節はあるのですが、「源太の調査も素人丸出しで中途半端」だし、「涼次は如月との絡みだけで、まったく行動しなかった」し、「役人の小五郎も、主水も、自分の持ち場で間接的に美形庵の噂をしているだけで、調査らしい調査をまったくしていない」し、「女元締めも『沽券に関わる』という感情的理由だけで、頼み人の依頼をあまりまともに取り合わなかった」し、裏稼業のチームとしては下調べ的な活動がほとんど機能していない、と言えます。
 実は、このチーム、元・忍びの涼次が動かないと、情報収集能力が全くないのでは? いわゆる調査係のキャラがいないわけだし*4
 プロを描きたいなら、それを支える下調べキャラは必要だと考えますし、
 偶然、悪の実態が判明するような物語を志向するなら、やはりゲストとの絡みをもっと増やすべきだし、
 少なくとも、1話ではその点の描き方が中途半端。もしかして、2時間スペシャルの分量感覚で、濃密なドラマを描こうと意気込んだら、1時間の枠内では描ききれなかった? 

如月をどう扱うか?

 新春スペシャルの玉櫛退場劇に「苦いもの」を残したまま、如月の扱いが果たしてどうなるか? を期待していたのですが……、
 なるほど、「剣劇人のお七」(工藤夕貴)ですな。世間知らずの田舎娘が、勝手の知らない江戸で悪人の陰謀による悲劇に出会って、義憤に駆られて包丁持って、仇討ちにおもむく。それに気付いた彼女の父親役の「世直し3人組」が、娘の願望をかなえるために、バッタバッタと大活劇の末に悪人退治するのが、『剣劇人』の基本ストーリーなのですが、
 如月のキャラは、「世間知らずの田舎娘」がドタバタに巻き込まれる、という点で、お七を踏襲。
 ついでに言うなら、非業の死を遂げた玉櫛も、「義憤に駆られて刃を持って、仇討ちにおもむく」という点で、お七の要素を備えています。ただ、こちらには「世直し3人組」はいなかったので、ああいう結末を迎えてしまったのですが。


 今回は如月、美形庵に誘い込まれ、キャーキャー騒ぐだけで終わってしまいましたが、それでも「スリ」の技能は持っているし、今後、裏稼業に入るなら、「下調べキャラ」の素質は十分ありそうですな。
 逆に、裏稼業を知らないままでいるなら、事件に巻き込まれて、何だかんだと文句を言いつつ、涼次が動くきっかけになるのでしょうが、それだと、ただの賑やかしキャラに終わるよなあ。
 第1話の段階で、彼女の騒ぎっぷりを見た後では、どうもシリアスに描きたい通常ドラマとのギャップが大きくなりすぎるので、もう少し方向性を整えて欲しいな、と思います。

主水の役どころ

 新春スペシャルの時は、それほど感じなかったですが、やはり、藤田さん、やつれた感じに見えました。体力面も考えると、そのうち、山田五十鈴さんみたいに、出たり出なかったりになりそう。でも、簡単に旅に出すわけにもいかないからなあ。


 どっちにせよ、見回り任務や、同心部屋での上司・同僚とのやり取りは、完全に小五郎に取られたので、本人の役割は家庭でのコントを除けば、「自身番屋での、お菊との逢引(?)」に限られていたり。
 もう少し、小五郎との絡みを作って、キャラの違いをはっきりさせて欲しいなあ、と思っております。今のままだと、単に「中村主水が中途半端に2つに分裂しただけ」でしかない。

小五郎の役どころ

 この人と、主水の最大の違いは、主水が三枚目面(馬顔)のコメディアン出身で、小五郎が美形のアイドル出身ということ。
 よって、小五郎が「美形庵のホスト」に嫉妬している、というのが無理がありすぎて、ギャグ描写もいまいち。まだ、「昔は自分もあれくらい美形で……」と中年に近づいた現状を愚痴るぐらいなら、感情移入できたかな(苦笑)。


 ともあれ、小五郎ってやはり美形キャラだから、昼行灯みたいなギャグ描写も、あまりしっくり来ないです。無理に主水と同じような設定にしなくても、他に描き方があるはず。
 主水が出ている以上、主水と同じことをしても、どうしても比べてしまうわけだし、同じようなキャラとして描くなら、さっさと跡目を譲って無理に主水を出すべきではない。
 とりあえず、番宣効果もあって主水をどうしても出す必要があるのなら、小五郎と主水の違いをはっきり示して、一人のキャラとして確立させてから、改めて主水引退後に、小五郎を主水化させていけばいい。
 今のままだと、「かんざしの秀」を引退させずに「花屋の政」を登場させ、「三味線屋の勇次」を引退させずに「組紐屋の竜」を登場させたようなもの。

評価点と、今後の期待

 さんざん文句を書いた気もしますが、ドラマとしては一応、凝っているのですね。
 最初に犯行を描き、人情ドラマで包み込み、犯人が改心して……となるかと思いきや、人情を利用して逃走を図る犯人……しかし、仕事人の目はごまかせず、ギリギリのところで仕事は完遂される。まあ、ちょっとしたどんでん返しですな。
 ミステリーとして、犯人の運命がどうなるかなあ? という視点では、なかなか面白かった。
 仕事人サイドのドラマよりも、謎解きとか、どんでん返しを楽しむ方向性と見なすべき? 


 ただ、まあ、NOVAとしては、それよりも「仕事人のドラマ」が見たいわけで。人情路線でも、プロフェッショナルでも、かまわない。
 情にながされる源太と、クールな涼次の対決でも、
 町人と役人の対立でも、
 主水と小五郎のぶつかり合いでも、
 とにかく、仕事人メンバーが主体となって、ストーリーを紡ぎあげてくれないと、面白くない。
 ミステリーなら、事件が進展して、最後にそれまで動かなかった探偵さんが唐突に出てきて、事件を解決するってのはありかもしれないけど、必殺で「安楽椅子探偵」みたいなのは見たくないなあ、と。
 ま、主水さんに無理して動け、とは言わないから。
 若手がバタバタ動いて、解決しない事件を、主水さんが知恵を出して解決する話なら、新路線としてOKかも。

*1:あるいは、死の間際に最後の力を振り絞って、仕事人の誰かの自宅におもむく場合もあり。

*2:あるいは、前もって頼み料を払っている場合もあり。

*3:これに涼次や、小五郎それぞれの物語が加わり、物語が複合化しているわけですが。

*4:秋野太作とか、渡辺篤史とか、火野正平とか、鮎川いずみとかの演じたキャラが代表例。