いや、今はのんびり本を読んでいるほど暇じゃないので、一部は6月末に読んだものも含めております。
ドラル国戦史4巻
エディングスの4巻め。
4月に出た3巻から、2ヶ月を経ての新刊でした。
原書が二分冊されているので、こちらは後編となります。
この巻のポイントは、農夫の嫁アーラ。
実は神にも匹敵する、すごい力を秘めた魔女キャラでして、
兵士が地道にヴラーの化物と戦う一方で、いろいろ画策しております。こういうキャラが動いて、戦場に介入してしまうと、前回感じた「ミリタリー的に楽しめる」要素は激減してしまうのですが、まあ、この小説はファンタジーですから、「神々の介入」は必然か、と。
同じ作者のベルガリアード・シリーズや、スパーホーク・シリーズでは、「神の力を秘めたマジックアイテムで武装する戦士」が主人公でしたが、本作の戦士連中はそれなりに有能であるものの、魔法のような決定力からは無縁の存在。
また、神々も「直接手を下しての殺戮」は世界律により禁じられているため、どうしても影でこそこそ戦士たちをバックアップする形になるんですね。
よって、戦士サイドからは「敵か味方かよく分からない謎の力が介入して、自分たちの作戦行動を大きくかき回しているようなサスペンス」が描かれ、
神サイドからは「せっかくフォローしようとしているのに、戦士たちが思うように動いてくれず、いささかやきもきする苛立ち」が描かれています。
これはこれで、何だかコンピューター・シミュレーションゲーム的かと。
プレイヤーは神視点で、幾分の制約はあっても、超威力の魔法が使える一方で、自軍のユニットを直接は操作できず、遠回しの指令しか与えることができない。「ああ、どうして、この部隊はノコノコ前線に飛び出すかな? ほら、あっさりやられた。おい、司令官、さっさと撤退命令を出すんだよ」っていったプレイ感覚。
それはともかく、この魔女アーラ。農夫の嫁とのことから、前巻では「美人だけど、ふくよかなタイプのおばさんキャラ」と想像しておりました。ちょうど、ベルガリアードの魔女ポルガラが、長らく「ポルおばさん」と呼ばれていたために、後に『女魔術師ポルガラ』シリーズで美形の表紙イラストを見るまで、おばさんイメージを捨てられなかったように。
でも、今巻の表紙で、アーラのキャライメージが大きく変わりましたね。
3巻で、悪党のジャルカンがイヤらしい言葉をかけて絡んだ場面がありましたが、この表紙を見て大いに納得。この下腹部と太腿むきだしの赤い短衣は、煽情感むきだしですって(苦笑)。
「この女召使いを見ただけで、おれは血が煮えたぎってきた。ベッドに連れこめるなら、大枚はたいてもいいぜ」とはジャルカンのセリフですが、3巻の時点では共感できなかった彼にも、4巻の表紙イラストのアーラを見た瞬間、同情の余地はあるな、と(笑)。
しかも、そのジャルカンのセリフも、実はアーラが、悪党の意識を若干操作して言わせたものだということが示され、つくづく、魔女ってのは恐ろしいな、と思いました。
ともあれ、アーラの介入により、ドラル国南部の戦いも勝利。
続く5巻は、9月発売とのこと。忙しい夏の時期は避けてくれたのが幸いです。