Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

4月の読書(小説編)

 久々に、こちらの記事書きです。
 4月は、テレビ番組の追跡などで手一杯だったので、読んだ本について書く余裕がなかった……というか、RPGリプレイ本ばかり大量に読んでいて、小説など読むテンポが下がっていたし。
 それでも、ようやく、いくつか読了できたので、感想を挙げます。

ザンス18巻

ガーゴイルの誓い [魔法の国ザンス18] (ハヤカワ文庫FT)
 1月に購入したザンスの新刊。ようやく読了。
 読むのに、ずいぶん時間がかかった理由は、主人公パーティーへの感情移入がなかなかできずにいたから。テレビ番組なら、感情移入云々は関係なしに、勝手に終わってくれますが、読み物系はテンポに乗れないと、なかなか読み終わりません。
 いつもは、ザンスシリーズはテンポよく読めるのに、今回は厳しかった。
 理由は、主人公パーティーの構成を書けば伝わるかもしれません。

  • 主人公:ガーゴイル(石像怪物)の男ゲイリー。
  • 同行者1:気まぐれだけど調子の狂った女悪魔メンティア
  • 同行者2:めくらましの女魔法使いアイリス
  • 同行者3:冴えない中年ハイエイタス
  • 同行者4:幼い少女サプライズ

 ごく普通に感情移入できる「人間の若者」あるいは、少女マンガ風の「年頃の女の子」が一人も出てきません(笑)。
 ゲイリーは、途中で「人間」に変身させられますが、「人間とガーゴイルの身体感覚の違いに戸惑う」ばかりで、「人間とのラブロマンス」には無知だし、感情移入には遠く離れた存在*1
 女悪魔は、トリックスター的な役どころなので、当然感情移入対象ではないし、
 アイリスは、寿命の近い老魔女が若返った姿で、これまでのシリーズを読んでいる読者には、到底萌え対象にはならないし(笑)、
 自分に一番近い、と思われるハイエイタスは、昔「いたずらっ子」、今は「愛を失い、生きることにむなしさを覚えている皮肉屋の中年男」で、得意な魔法も「無生物に目や鼻などのパーツを付ける」という使い勝手の悪い代物だし*2
 サプライズは、「思いつきのままにいろいろな魔力が発動する」というザンスでは超越的な能力を持っていますが*3、自制心がまだ育っていないので、何が起こるか分からない、という危険な代物。


 本作では、そのサプライズに魔法の制御法を教えるために、ガーゴイルを始めとした大人たちが苦労する話。一方で、大人たちも各人の望みを持っており、その望みを達成するには、ザンスの「狂気地帯」に入って、そこの謎を解かないといけない、という流れ。
 ザンスの場合、主人公や同行の仲間の使える魔法の種類で、物語の面白さが変わってきます。1巻や2巻の主人公ビンクは、「魔法によっては肉体的に傷つけられないという隠された魔力」のために、いまいち地味なキャラクターでしたが*4
 3巻のドオア(ザンスの現国王)は「無生物と会話できる能力」が魅力。旅の同行者もそれぞれ固有の魔力を持っており、その組み合わせで冒険中の危険を乗り越えるのが、シリーズの魅力の一つです。


 で、今回のゲイリーですが、魔力がありません。というか、堅い体といったガーゴイル種特有の能力が、人間への変身によって無効になったため、何もできなくなっています。
 よって、頼れるのは、「変身や、煙になって消失する女悪魔」と、「幻覚を使いこなせるアイリス」のみ。
 話が進めば、ゲイリーにも、ガーゴイルとして「石から情報を得られる」という能力が使えることが分かるのですが、そこに至るまでが長く、前半は「ガーゴイルと人間の感じ方の違い」を楽しんで読めるかどうかが鍵かと。


 また、今回、「物理的な危険」はほとんど登場しません。
 「狂気地帯」の幻惑効果が最大の難関だったりしますので、幻覚に惑わされない意志の力と、幻覚を見分けられる専門家の視点、そして、その中で情報収集をいろいろ重ねる観察力、推理力が核となります。
 なんだか冒険物語よりも、魔法ミステリーといった趣ですな。


 そして切り札は、サプライズ。
 彼女の魔法の力は何でもできますが、「(ネタバレ注意)*5」という制約が、物語の途中で判明します。
 この制約も踏まえて、どういう魔法の使い方をすれば目的を達成できるか、本当に頭を使うストーリーに仕上がっている、と思います。
 アクション要素が多くてハラハラドキドキの冒険行の多い、いつものザンスと違って、緻密な謎解きが好きな人向けかも。
 もちろん、最後はハッピーエンドがザンス風味。童話的なロマンスと、恋愛成就*6がシリーズの肝だし。

ドラル国戦史3巻

神託の夢 - ドラル国戦史 (3) (ハヤカワ文庫FT)
 エディングスの3巻めです。
 こちらは、あっさり読み終わりました。


 2巻まででは、ドラル国の西方に侵入した化物ヴラーとの戦いが描かれましたが、
 今巻と次巻は、ドラル国の南方が舞台となります。あと、東方と北方の戦いを描いて、全8巻になるようですね。


 狩猟社会で、狩人中心の西方に対し、南方の住人は農夫と羊飼い。これでどうやってヴラーと戦うんだ! ということで、各地から集められた傭兵集団が必要になります。
 西の大陸の海賊マーグ人と、南の大陸の兵士トログ人。
 今回は南方が舞台ということで、トログ人の各キャラの過去話なども交えて、ヴラーとの戦いの準備が行なわれる過程が描かれます。


 農夫や羊飼いは、戦闘技能は持ちませんが、土地勘があり、また兵士とは異なる視点でのアイデアを提供します。
 普通の槍を初めて見た農夫が、農耕器具の熊手と組み合わせて、「穂先を3本にしてはどうか?」と提案し、兵士の方が「そんなこと、考えもしなかった」と驚く描写は、異文化交流の面白さを擬似的に感じられました。


 あと、ヴラーの方も進化していて、今回、初めて「コウモリと組み合わせた怪物」が登場します。飛行能力を持った敵の出現は初めてなので、「これまでの陸戦の常識が通用しないことが予想され、戸惑う兵士たち」という構図は、ミリタリー的にも楽しい要素になるか、と。
 コウモリ怪物は進化の途上なので、今はまだ偵察にしか用いられていない、というのも現実の飛行機の進化を示しているようで、興味深いです。


 そして、今回の敵はヴラーだけではありません。
 欲に狂ったトログ人の堕落した宗教家が、南方から海軍を率いて、ドラグ国に侵攻してきます。名誉ある兵士の代表であるトログのナラサンとの対比も味わい深い。
 ナラサンにとっては、「故郷の堕落した宗教家どもより、異国の海賊や蛮族の方がよほど名誉の概念を持った良き戦友と言える」らしく、こういうオープンなグローバリズム感覚もいいなあ、と。


 あと、北方の騎馬部族や、東方の島のアマゾネス部族が傭兵集団として顔見せ的に登場しております。
 何だか、こう書くと、ファンタジーシミュレーションゲーム的な楽しさがある作品と言えますね。いろんな性能のユニットを協力させて、モンスター軍団の侵攻を食い止めるため、あれこれ知恵をめぐらせる物語。


 次巻は5月発売なので、楽しみに待つとして。

*1:まあ、これまでも、このシリーズでは、人食い鬼とか、馬とか、ゴーレムとか、ゴブリン娘とか、人外種族の主人公はいっぱい出ていたけど。

*2:幼少期はそれで人々を驚かせていた。本作では、方向案内など地味に活用。うまく使えば、スパイ活動なんかをさせられそうだけど、そういう使い方はされていない。

*3:ザンスの魔法能力は「一人一種類」が原則。

*4:戦士としては有能だし、多くの事物が魔力を帯びているザンス世界では無敵そのもの。ただ、当初は自分の力を自覚していないので、ピンチに陥るわけで。どれだけピンチに陥っても「運よく窮地を逃れる」という物語描写が、実はそうした「魔力のおかげ」という設定には、初めて読んだとき感心した。

*5:一つの種類の力は、一生で一度しか使えない

*6:そして、その子孫が後の主人公になったり。