前回は、『ウルトラマンマックス』に登場した2種のバルタン星人のうち、
「善良な魔法少女」タイニーバルタンについて考察し、それを許容するのがマックスの世界観だと論じました。
ただ、「善良」「魔法少女」という2つの属性は、バルタン星人というキャラにとっては異端である、とも述べました。
そこで、今度は「正統なバルタン星人」の後継者、ダークバルタンについて書いてみるつもり。ただし、そもそも「正統」というからには、やはり過去のバルタンの系譜を振り返る必要もあるので、先ずはそこから。
初代ウルトラマンにおけるバルタン
ウルトラマンファンにとっては常識ですが、バルタン星人が初めて登場したのは、放送第2話『侵略者を撃て』の回において。
この回は、製作第1話に当たり、ウルトラマンの必殺技スペシウム光線が命名されるなど、ウルトラマン史においても重要極まりない回。
バルタン星人のスーツが『ウルトラQ』でガラモンを操ったチルソニア遊星人(通称・セミ人間)の改造で、昆虫をモチーフにしたデザインであること。また、その「フォフォフォ」という特徴的な笑い声が、東宝映画『マタンゴ』から採られたことなど、視覚的・聴覚的な要素としては完全にオリジナルと言いがたいことを差し引いたとしても、
地球人とは異なる生命概念。分身の術に見られるようなトリッキーな映像描写。巨大なハサミ状の手から放つ赤色冷凍光線や光弾。アラシ隊員に憑依して「君の宇宙語は分かりにくい」と地球語を話す知的ぶりの披露など、未知の惑星から来た別文明の異星人ぶりをたっぷりアピールしました。
次に、よりシャープなデザインの2代目バルタン星人が、R惑星を新たな故郷として登場(第16話『科特隊宇宙へ』)。
ウルトラマンに復讐するために、重力嵐や、光線対策の目的で胸に備えたスペルゲン反射鏡など、宇宙忍者の異名にふさわしい技巧者ぶりを示します。一方のウルトラマンも、テレポーテーションや、八つ裂き光輪などの新技を披露して対抗。
また、人類も新兵器マルス133(その威力はスペシウム光線に匹敵するという設定)を開発し、異星人同士の超能力と人類の科学の戦いが、視覚描写たっぷりに描かれました。
その後のバルタン
今回のダークバルタンについて語る基礎情報は、これでほぼ十分なんですが、一応、薀蓄までに、この後のバルタン史を見ていくと、
●3代目:メフィラス星人の手下として、ザラブ星人やケムール人と共に一瞬登場。メフィラスの作った幻影にすぎない、という説もある。
●Jr:『帰ってきたウルトラマン』に登場。ロボット怪獣ビルガモを操るが、本人はあっさり倒され、あまり知的にも見えない。ただ、Jrと名乗る辺りから親子関係を想起させ、この辺りから、バルタンの擬人化が為されている、と推察される。
●アニメ版:『ザ☆ウルトラマン』に登場。囮怪獣ミコノスを操り、ウルトラマンの戦力を分析する点は知的とも言えるが、あまり強さは感じられない。アニメ作品ということもあって、マイナーな存在。他にアニメ版だと、『ウルトラマンキッズ』などにもディフォルメキャラが登場しており、バルタンの知名度を高めている。
●5〜6代目:『ウルトラマン80』に登場。「動物園作戦」とか、「偽UFOの写真作戦」とか、昔からのファンに「どうしたバルタン?」と思わせるほど、トンデモ作戦を展開し、結局、80に敗れる。この作品のバルタンは、「お釈迦様でも気がつくめえ」と日本語を完全に使いこなしており、初期の異質な宇宙人の要素は雲散霧消した。
●パワードバルタン(サイコバルタン):『ウルトラマンパワード』に登場。第1話に登場し、さらに最終回でゼットンを操るなど、強敵ぶり、仇敵ぶりを発揮し、バルタンの尊厳を大いに取り戻した。
●ネオバルタン:劇場版『ウルトラマンコスモス』に登場した、通常バルタンの強化形態(前回、メカバルタンと勘違いしていましたが、そちらは『アンドロメロス』に登場したものなので、訂正しました)。モチーフはクワガタ虫で、シルビィを初めとするチャイルドバルタンの親に当たる。強化前(ベーシカルバージョン)は、子守唄で眠ってしまうという呑気さも示している。
他には『ウルトラファイト』『レッドマン』『ウルころ』『チビラくん』『シュシュトリアン』などの作品に登場しています。
さて、それでは以上の歴史を踏まえた上で、ダークバルタンについての考察を……おや? 時間が尽きた(苦笑……ということでつづく)。