これで最後の必殺ヒロイン話
NOVA「非・仕事人のヒロイン話も今回で終わりだ。仕舞人(81年)から橋掛人(85年)までの5年間、5作品は西崎みどりさんをレギュラーにした作品が続き、中村主水の仕事人シリーズよりも女性にスポットを当てた小品を基軸に、主水シリーズで描きにくいテーマを補完する役割を果たしたと言える」
晶華「ある意味、仕事人を表とするなら、非・仕事人が裏ということになるわね」
NOVA「仕舞人で元締めの坂東京山をチームの母親とするなら、若手の踊り子リーダーのおはなが娘に相当するし、非・主水シリーズは殺し屋チームの中での母娘関係や夫婦関係などの家族愛にスポットを当てた作風だと総じて言えるだろう。仕事人では、三味線屋のおりくさんと勇次の母子関係や、秀とお民ちゃんの年の離れた兄妹関係など、義理の家族模様を描いてはいたけど、政と竜の時代から壱弐参のはぐれ仕事人の時代にかけて、一匹狼的な仕事人キャラが定番になるのと比べると、その時期の非・主水シリーズの方がよりレギュラー男女の日常的な情愛が描かれやすい感じだな」
翔花「中村主水さんの夫婦関係は、情愛というよりもホームコメディ的な扱いだもんね」
NOVA「今の時代では、昭和のステロタイプ性別像と批判されるかもしれないが、女元締めはウェットな情に流されやすく、主水も含む父系組織の方が掟とか義といったハードな物語になりやすいという作品傾向がある。まあ、女殺し屋として散った、からくり人の元締め仇吉や、うらごろしのおばさんなどは、それぞれハードな最終回だったけど、結末はともかく女性が中心のチームは総体的に人情路線のストーリーになりやすいってことだ」
晶華「今の小五郎さんのシリーズは?」
NOVA「元締めは和久井映見さんのお菊さんだけど、彼女がチームのリーダーシップを積極的にとっているようには描かれていないよな。形式上のリーダーではあるけれど、どちらかと言えば受付嬢的な立場で、チーム運営については放任主義というか、元は主水さんの秘書とかマネージャー的なポジションから、惰性的に続けている気がする。
「脚本的にも、お菊さんをメインにした人情劇とかは、これまでも描かれて来なくて、小五郎と涼次だけだと意見が対立しがちなのをマイルドに仲裁する役どころ。でも、本人はあまり強く自己主張する姿勢は見せず、歴代の女元締めの中で最も押しが弱い感じだ。女性リーダーなんだけど、決して強いリーダーシップをとるわけじゃない。ただ、ドラマとして描かれていない範囲で、表でも裏でも顔が非常に広く、それなりに財力も持っていることが示唆されているから、チームのマネージメントはしっかりできているんだろう」
翔花「ビジネス的な関係ってこと?」
NOVA「何しろ、今のチームって成立過程が描かれていないからなあ。2007年にシリーズが始まった時点で、主水、小五郎、涼次、お菊のチームがすでに仕事していて、そこに新入りの源太や匳、リュウ、陣八郎の参入や退場エピソードが入ってくる。主水さんがいなくなった後で、小五郎、涼次、お菊の関係性が深く掘り下げられることもなく、ダラダラ付かず離れずのドラマを継続してきたわけだ。ここで小五郎が退場したら、お菊さんがリーダーシップをとることを期待するんだが、棗の参入によっても、チームの雰囲気がマイルドな方向になる可能性が高いなあ」
晶華「次があれば、女性主導の仕事人チームに変わるかもってことね」
NOVA「だから、過去のモデルケースを参考に、復習して来たわけだ。ただ、ここまでの小五郎シリーズの傾向としては、レギュラーの女仕事人とか人情重視ドラマを切り捨てる方向で、仕事人の80年代よりも70年代に時代を逆行していたような作風だから、ここで男女の殺し屋の数のバランスをとることで、作風がどう変わるかは気になる。役者を変えての2代め小五郎続投なら、キャラ配置は変わらないのだろうけど、現時点では何が正解かは分からない」
翔花「NOVAちゃんの希望は?」
NOVA「ゲスト出演でいいから、旧必殺俳優が出て来ることだな。涼次の忍者時代の師匠として京本政樹さんが出るとか、お菊さんの昔馴染みの女元締めとして工藤夕貴さんが出るとか、ちょっとぐらい昔の必殺作品とのリンクを匂わせるキャスティングがあれば嬉しいな。あるいは、谷村美月さんが成長した如月役として出ると、シリーズの歴史を大切にしている風で感じ入ると思うな」
晶華「NOVAちゃんの願望が実現したら、また祭り記事を書くとして、今回は昭和のレギュラー放送最後の2作について語って終わるのよね」
NOVA「ああ、ある意味、シリーズ内の異色作3本に入るであろう『必殺まっしぐら!』(86年)と『必殺剣劇人』(87年)だな。最大の異色作は『翔べ!必殺うらごろし』(78年)であることは言うまでもないとして」
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