Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

女仕事人話・完結編

前置き・リュウ

 

NOVA「さて、前回で『何でも屋の加代』の話に到達して続いたわけだが、現在の仕事人ではリュウが何でも屋と言うべき動き方をしている」

晶華「確かにそうね。wikipediaで調べると、見習い僧侶→賭場の雑役夫→蕎麦屋の手伝い→見習いテロリスト→治療院の患者(ケガをした後なので無職に見える)→庭師→屋台の蕎麦屋の手伝い→魚屋→橋工事の人足という職業遍歴を辿っているわ」

NOVA「転職RPGウォーハンマーだと、いろいろと細かい技能をかじってそうだな。ええと、アカデミックな方面で見習い僧侶から始めてみたはいいけど、道を踏み外して賭場で働いてみたが、どうも性に合わないので小料理屋の手伝いをしてみたら、何だか記憶を失って、おそらく、その時点でリセットされた。

「で、テロリストとして戦闘技能を強化した後で、身が軽いのを活かして庭師を務めながら、将来は花屋になろうかと思ったら、塾の先生が悪党なのを見てアカデミックな方面に嫌気が差して、肉体労働の方が向いていると開き直ってみたら、瓦屋さんに誘われて、蕎麦屋の手伝いもしていたことがあったから、これ幸いと屋台仕事を頑張ってみたら、鬼面風邪が流行して外食産業が厳しくなって、食材を売って自炊の方がマシかと川魚を運んで食いつないでいるうちに、川辺の橋作りに縁ができた……ってところだな。こういう経歴で、果たしてどんな技能を得たんだろう?」

翔花「見事に行き当たりばったりね。とりあえず、身が軽いから屋根の上でできる仕事として、瓦屋さんとか大工さんとか、建築関係が向いていると思うの」

NOVA「鳶職か。あとは火消しって方向性もいいかもな。一応、食べ物関係はグルメの涼次の伝手で紹介してもらった可能性があるし、僧侶系なら薬草治療の技能を習得していてもおかしくない」

晶華「TRPGなら、僧侶系だと回復呪文が使えるんだけど、必殺シリーズにはそういうのってないのね」

NOVA「呪文じゃないけど、坊主頭の鍼医者とか骨接ぎ師とかは初期の定番だったし、何よりも当時の僧職は知識人として故事来歴に詳しいとか、田舎の僧だと農業技術や治水技術などの実務漢籍を読み込んで村の生き字引的な尊敬を集めているケースもなくはない。リュウも多分、TRPG的な能力値は高い方だと思うが(体力、器用さ、知力、カリスマなど弱点らしい弱点がない)、幸運度は致命的に低いんだと思う」

翔花「え、幸運が低いの?」

NOVA「運が悪くなければ、着地に失敗して頭を打って記憶を失ったり、タガネ殺しでトドメが刺せなかったりしないって。たぶん、ダイスを振って、思いがけずピンゾロが出たんだな。キャラの幸運判定に失敗したのか、プレイヤーのダイス目がここぞというところでファンブルを起こしてしまうのか、背景の事情は分からんが、とにかく出目が荒れる傾向があるのは確かだ」

晶華「って、TRPG脳で考えるのはそれぐらいにして、NOVAちゃんはリュウ君にどうあって欲しいの?」

NOVA「定職に就けってのは、彼の個性をつぶしてしまう気がするな。シナリオの展開に合わせて、自由に職を転々とできるのは、彼の強みかもしれないと思い直した。でも、ただのリュウじゃ、仕事人としての箔が付かないので、何らかの二つ名が欲しいところだ」

翔花「フリーターのリュウ

NOVA「それで箔は付かないだろう。せめて日本語にしろよ。ええと、自由或売多(フリーアルバイター)のリュウとかどうだ?」

晶華「カタカナに無理やり漢字を当てはめているだけじゃない? ええと、無職のリュウ?」

NOVA「色が付かないという意味で、無色のリュウってのもいいかもな。『色即是空、我が色はすでに無なり、空なり。無ゆえにその存在は定まらず』とか言うと、元僧侶っぽく聞こえるし、忍者っぽくて格好いいかも」

翔花「無色のリュウねえ。意味を説明しないと分かりづらい二つ名はどうかと思う。それよりも演じる役者さんの名前になぞらえて、知念のリュウってのは? これはこれで僧侶らしいと思うし」

NOVA「なるほど。念仏の鉄がありなら、知念のリュウもありかもしれないな。少なくとも、アニメの一休さんの先輩たちは、秀念さんとか陳念さんとか黙念さんだったし(他は哲斉さんと哲梅さん)、念が付くのは僧侶っぽい。よし、ここでは以降、彼のことを特別に『知念のリュウ』と呼称することにする。これで始末人の『見習い大工のリュウ』とは区別が付くぞ」

 

晶華「で、前置きはどこまで続くの?」

NOVA「そろそろ、リュウの話にも結論を出しておこう。今年10年が経った知念のリュウ君だけど、仲間の死という経験は前回の陣八郎が初めてなんだな。小五郎、涼次、お菊は源太の死を経験しているけど、リュウだけはその気持ちをどう処理していいのか分からない。ここで、思い出すのは、MCUで『師匠格のアイアンマンのスタークさんを失ったスパイダーマンのピーター・パーカー』なんだけど、とりあえず陣八郎のタガネを使った殺しは、リュウなりの供養とか再出発の禊の儀式的な意味もあったのかもしれない。だけど、それで仕事を失敗したわけだから、仕事人を続けるか辞めるかまで、気持ちが追いつめられたりもする」

翔花「うん、だけど最後には復帰したわね」

NOVA「この復帰は、リュウの成長を描いているのかどうかは、次回作を見ないと分からないけど、少なくとも、『小五郎のピンチに助っ人に入った』のは事実だ。これまで、小五郎が仲間の誰かに仕事で助けられた描写はなかったので、今回のラストは『一番ベテランの仕事人が、一番のひよっ子に助けられた』ことになる。このことをもって、リュウが仕事人として一皮むけたと解釈することも可能かもしれないし、2014の登場編を除いて、ドラマ的接点の非常に薄かった小五郎とリュウの絡みが久々に描かれたことで、チームの雰囲気がまた変わる可能性もあるかもしれない。ただし、これで小五郎の退場になるなら、最後の絡みという形で新人がベテランを見送ったという象徴的な意味づけとも考えられる」

晶華「今回の描写の意味づけは、次回作以降の展開を見ないと、下手な断定はできないってことね」

 

おばさんの話

 

NOVA「で、リュウの話から、過去の仕事人の話に戻る。必殺シリーズで、おばさんと言えば、『うらごろし』の市原悦子さんと、それから西順之助が何でも屋の加代を称して言ったセリフがある。順之助は82年にデビューしたときに18才で、その時の加代さんは33才だったから、まあ確かにおばさん呼ばわりも納得できる年齢差だが、それでも必殺シリーズ数ある中で、レギュラーキャラにおばさん呼ばわりされた女性は、市原悦子さんと鮎川いずみさんのみだと記憶する」

晶華「市原悦子さんの役名は?」

NOVA「記憶を失っているから本名不明で、劇中では『おばさん』としか呼ばれない。『うらごろし』のレギュラーであだ名ではない、確実に本名だと思われるのは、火野正平さん演じる正十だけで(新・仕置人や商売人の正八と同一人物説もあるが)、鮎川さん演じる巫女の『おねむ』はいつも眠そうにしているから付けられたあだ名なのか本名なのかもはっきりしない」

翔花「そんなあやふやな設定でいいの?」

NOVA「『うらごろし』の先生、若、おばさんの3人は、所属する社会を持たないから、名前すら持たない(設定されていない)という作劇理由があるらしい。なお、本名不明で通称でしか呼ばれない登場人物ということなら、バカボンのパパとママがそうだし、最近の作品だとゴブリンスレイヤーが思いきりそうだな」

晶華「なるほど。ゴブリンスレイヤーさんは、『うらごろし』に通じるのか」

NOVA「あくまで、俺の中ではの話だがな。それはさておき、市原悦子さんと言えば、2012以降の仕事人のOPナレーションも担当している。御本人が2019年に亡くなっているのに、まだOPナレーションを継続使用しているのはどうかと思うが、EDの『鏡花水月』同様、次回作があれば心機一転、変わる可能性がある」

翔花「いろいろ変えずに、ここまで来たってことね」

NOVA「で、仕事人の加代さんの話をする前に、『うらごろし』の話をしたのは、主題歌の話をしたくてな」

翔花「主題歌?」

NOVA「そう、必殺シリーズの歴代主題歌は、しばしば殺しのテーマにアレンジされて、その番組の象徴とされることが多い。しかし、前期は主題歌歌手と役者が異なっていて(歌手が顔見せゲスト出演することはある)、初めて劇中レギュラー登場人物が主題歌を歌ったのが、和田アキ子さんだったんだよ。挿入歌なら、その前に火野正平さんが歌っていたんだが」

翔花「つまり、『うらごろし』って作品は、必殺初の主題歌歌手が殺し屋も演じたってことになるのね」

NOVA「ああ。そして、必殺史上、最多の主題歌数を誇るのが、鮎川いずみさんと西崎みどりさん、そして挿入歌がED主題歌として使用されたこともある三田村邦彦さんだ。それぞれ3曲を歌っている。主題歌+挿入歌なら、三田村さんと西崎さんの4曲が最高になるんだが、とにかく、俺が最初に聞いた必殺主題歌は鮎川さんの『冬の花』なので、そこはプッシュしたいわけだよ」

NOVA「『冬の花』が仕事人Ⅲで、『花の涙』がⅣで、『女は海』が激闘編」

晶華「元の演歌調の曲と、アップテンポにアレンジされた格好いいアクション曲の共通点と違いが聞いてて心地いいわね」

NOVA「ああ。毎作品で、今回の殺しのテーマはどんな感じかなあ、と思いながら、作品を追っていて、心の歌を口ずさむようにハミングしたりする。特に、鮎川3曲は原曲もしっとりしていいし、アレンジ具合も最高に近い。まあ、一番好きな殺しのテーマは、新・仕置人のこれなんだが」

NOVA「もう、必殺シリーズは殺しのテーマをメドレーで流すだけで、血が湧き立つぐらい元気が出るわけだよ。伊福部マーチと必殺メロディは魂に焼きついている。本当に『鏡花水月』も殺しのテーマっぽくアレンジしてくれたらなあ」

 

加代の仕事人遍歴

 

晶華「主題歌やBGM話はまた長くなりそうなので、話を元に戻します。ええと、何でも屋の加代さんの話よね」

NOVA「そうだ。仕事人のベストヒロインと言えば、もう加代さんを凌ぐキャラはない、と断言しちゃうほど、最高なんだな。役柄もいいが、歌もいい。もう、80年代の必殺仕事人シリーズは、中村主水の他に、彼女がいないと成立しないと思えるぐらい、八面六臂の大活躍だ。その証拠にサブタイトルの登場回数が挙げられる」

翔花「サブタイトル?」

NOVA「必殺シリーズは、毎作品のサブタイトルにも特徴があって、各話サブタイトルを挙げるだけで、作品名が分かるのが軽いマニアの証なんだが、新・仕事人は全部『主水 ◯◯する』で主水一色なのに対して、仕事人Ⅲは『殺しを見たのは受験生』というタイトルから始まり、『◯◯したのは(レギュラーの名前)』というフォーマットだ。これを全38話のうち、誰が何話使われているかをリストアップすると、こうなる」

 

  • 中村主水:12回
  • 加代:6回
  • 秀:5回
  • 勇次:4回
  • 順之助:2回(1話の受験生含む)
  • おりく:3回
  • せんとりつ:3回
  • 同級生:2回(実質、順之助の主役回)
  • 両替商:1回(第2話)

 

NOVA「回数だけでも中村主水に次いで2位だし、第1話『受験生』、第2話『両替商』、第3話『同級生』とフォーマットが固まっていない時期のあと、初めてタイトルに固有名詞が挙がったのが、第4話『火つけを見たのは二人のお加代』というタイトルだ」

翔花「すごい。W加代さんってこと? 花粉症ガールみたいに分裂した?」

NOVA「Wショーカと一緒にするな。単に、レギュラーの加代と、ゲスト出演のおかよがいて、事件に巻き込まれるってネタだ。ともあれ、5話で秀、6話でようやく主水がサブタイトルに挙がって、7話で勇次なんだが、仕事人Ⅲは新登場の順之助を除くと、加代がドラマの中心キャラとして動き回っていたことの傍証になるわけだ。

「その後も、Ⅳで7回、Ⅴで5回、激闘編で4回のサブタイトル採用がされて、幽霊になったり、エリマキトカゲを目撃したり、ゴリムリンという名のルービックキューブを売ったり、モグラ男夫婦にあてつけられたり、五千両の金塊を拾ったり、丸坊主になったり、求婚されたり、究極の美男に惚れたり、とサブタイトルだけでも大活躍だ」

翔花「仕事人って、変なサブタイトルがいっぱいね」

NOVA「サブタイトルを見るだけでワクワクしてくる作品が多いな。主水がキン肉男に会ったり、バースになったり、『新・仕事人』以降の主水のサブタイトル遊びは、ふざけるな、と思いつつも、そういう悪ふざけが小五郎やお菊だとないんだよな」

晶華「だったら、リュウさんで遊ぶのはどう? 『リュウ、記憶喪失になる』とか『リュウ蕎麦屋の屋台を手伝う』とか『リュウ、仕事を外される』とか」

NOVA「まあ、ここではリュウイジりをしているけど、劇中では真面目な彼を順之助みたいなギャグキャラとしては描いていなくて、役柄でのコメディ担当は涼次と陣八郎ぐらいだもんな……って、今はリュウの話じゃなくて、加代さんの話だよ。80年代の仕事人シリーズは、主水の家と職場の定番いびられコント(たまに反撃するのが楽しいことも)以外に、加代と順之助がコメディリリーフとして機能していて、ゲスト被害者の悲劇一色にはならないよう、バランス良い作劇で暗さを緩和していたんだな。それとアクション活劇の盛り上がりで、涙あり、笑いあり、シリアスあり、迫力ある殺陣の格好良さありで、中学生を楽しませてくれていた。今の仕事人は、果たして中学生を楽しませる作品になっているだろうか?」

翔花「教え子に聞いたらどう? 『必殺仕事人』について、どう思う?って」

NOVA「公私混同はしないようにな。まあ、去年は『大河ドラマの家康』の話をしたこともあったが、今の必殺は毎週放送じゃないし、そもそも年末年始しか話題に挙げるタイミングがないからなあ。歴史を教えても、絡めることは難しいだろう。からくり人ネタで『東海道五十三次殺し旅』の話をしたり、安東(歌川)広重や高野長英など史実キャラの話ができた時代とは違う。最近の仕事人に、歴史人物は登場しないから、歴史の授業とはつなげる余地がない」

晶華「だったら、水戸黄門暴れん坊将軍の方がネタにしやすいわね」

NOVA「それも世代が違うからなあ。最近の中学生は、徳川吉宗暴れん坊将軍がつながって来ないし、町奉行大岡越前も知らないし、水戸黄門徳川綱吉がつながって来ないからな。御三家が尾張・水戸・紀伊という定番の知識すらピンと来ないわけだよ。たぶん、『打ち首獄門の刑に処す』と言われても、どういう意味か分からないだろうなあ」

翔花「ネットで調べると、こういうロックバンドのサイトが見つかったけど」

NOVA「よく分からないものを、勝手に貼り付けるんじゃありません。うちは別にロックバンドを追いかけるブログじゃないんだから」

晶華「だったら、『必殺シリーズ ロックアレンジ』で検索すると、こんな動画も見つかった♪」

NOVA「俺は、こういう記事を見つけたけどな」

 

NOVA「……と、加代さんの話をしているのに、記事が寄り道を繰り返すので、『必殺何でも屋』的なバリエーション豊かな記事になっている気がする。ええと、とにかく、俺は仕事人Ⅲから激闘編まで4年間ぐらい加代さんをリアルタイムで視聴追跡した後で、最初の仕事人と新・仕事人、そして鮎川いずみさんのゲスト出演からの流れを知るようになったんだな。

「鮎川さんが必殺シリーズに初出演したのは、中村主水のデビューと同じ『必殺仕置人』の10話。ゲスト出演で殺される被害者の役からスタートだ。その後、シリーズで4回のゲスト出演を重ねてから、『商売人』の秀英尼としてレギュラー出演、殺し屋チームの仲間ではないが、尼さんコスプレで活躍した後、最終回で殺し屋の娘であることを明かして、敵に追われたおせいさんを助ける美味しい役どころを担う。次に『うらごろし』のおねむ役で、今度は巫女コスプレをして、あくびをしながら眠そうに熊野権現のお札を売り歩くキャラだ。殺しには関係しないのに、なぜか先生たちの殺し旅に付かず離れず付いてきて、事件を目撃したりしなかったりする中途半端な役割。基本的に火野正平さんとの絡みが多いな」

翔花「その後で、仕事人に出演するのね」

NOVA「最初の『必殺仕事人』は79年5月からのスタートだが、加代の登場は放送開始から半年を経た29話からだ。仕事人は6クール84話におよぶシリーズ最長話数の番組になって、言わば最初の仮面ライダーやゴレンジャーに匹敵する2年近い放送期間を誇っている。当初は男ばかり5人体制で、元締めの鹿蔵、密偵半吉と、主水、左門、秀の3人殺し屋という原点回帰、あまり派手なところのない手堅い作風だった」

晶華「派手じゃない?」

NOVA「まず、殺し技が主水と左門が刀で、秀がかんざしではなくて作業道具のノミだ。当然、お馴染みのシャキンと回す演出もなくて、激情のままにノミを首筋に叩きつける荒々しい技だったりする。左門が仕掛人の西村左内をモチーフにして、秀が仕置人の棺桶の錠をモチーフにしたキャラらしいが、6話で元締めの鹿蔵が降板して、7話から山田五十鈴さんのおとわ(鹿蔵の妻という設定)が2代め元締めとなったが、21話で降板。さらに26話で密偵半吉が悪女の罠にハマって死亡するなど、初期体制が完全に崩壊する」

翔花「変動の激しいシリーズってことね」

NOVA「で、元締めなし、密偵なしの実働3人体制で仕事を続けるわけだが、29話で完全仕切り直しで、3人めの元締め、木更津の六蔵と配下のおしま&お加代(2人で質屋の上総屋を経営し、元締めとの連絡、アジトの提供、仕事の下調べなどを行う)と合流する形だ。左門さんも浪人生活をやめて、おでん屋の屋台を営んで、殺し技も腰骨外しに切り替わり、まもなく秀の武器もかんざしに変わって、例のシャキンが演出に加わり、殺しのBGMも主題歌アレンジから、新・仕置人の出陣テーマになって重厚感を増した。主水のバラード殺しが定番にもなって、後の仕事人に通じる演出への過渡期となっていく」

NOVA「仕事人の28話以前は、サブタイトルの最後に『?』が付く疑問文形式だったのが、29話以降は『◯◯技◎◎』というフォーマットになるので、路線変更なんかも含めて分かりやすい。例えば、6話の『主水は葵の紋を斬れるか?』は意欲的な筋書きだし、25話の『裏の裏のそのまた裏に何があるのか?』はいかにもどんでん返しのドラマって感じで、類型を外したエピソードが続くのが、初期の仕事人。

「そこから29話の『新技腰骨はずし』から始まる展開で、少しずつコミカルなサブタイトルが散見されたりもする。『飛技万才踊り攻め』とか『偽技浮かれ囃子攻め』とか、一体どういう技やねん、とツッコミ入れたくはなるが、総じて怪談調のおどろおどろしさがサブタイトルに溢れているな。前期が真面目なミステリーっぽいタイトルなのに対して、中期から後期は煽情的な芝居めいたものが目立つかな。『呪い技怪談怨霊攻め』なんて、そのままの奴もあるし、『誘い技死霊からくり岩山落し』とか『念じ技偽説法ざんげ斬り』とか、どんな技なのか見たくなるサブタイトルだ。そして格好いい技もあって、『断絶技!激走一直線刺し』とかな」

晶華「技を剣に置き換えると、戦隊ロボの必殺技になるわね。『断絶剣!激走一直線刺し』とか」

NOVA「だったら、『太陽剣オーロラプラズマ返し』もアレンジすると、仕事人タイトルに使えそうだな。ええと、『太陽技!幻光放電返し』……ってダメだ。ただの技名であって、ドラマを感じない。ええと、『太陽技!幻霊怨念返し』だったら行けそうか」

翔花「それじゃあ、仕事人じゃなくて、前番組の『うらごろし』っぽいわね。よく知らないけど」

 

NOVA「ともあれ、こういう長い物語を経て、最後に『散り技仕事人危機激進斬り』で仕事人は終結し、左門さんが退場して、その後で水戸黄門の格さんになったんだ(83〜2000年)。俺は先に伊吹吾郎さんは格さんで知って、後から左門さんの登場した仕事人を見たから、格さん→左門さんと勘違いしていた時期があったんだが、仕事人→水戸黄門の格さんの順番だったんだな」

晶華「で、81年の新・仕事人から、三味線屋の勇次さんとおりくさんが登場して、主水さん、秀さん、加代さんのチームに加わるわけね」

NOVA「初期の勇次は関西弁で喋ったり、三味線の糸で先に絞め輪を作っておいてから、敵の頭上から首に投げ落としてから引っ掛けて吊るすという段取りを踏んでいたんだが(よく言えばリアル、悪く言えばまどろっこしい)、だんだん手際良くなって行く。そのうち、秀との殺し技の連携が見られて、秀・勇次の黄金コンビが成立する流れが見どころだったりするし、現在の仕事人フォーマットは新・仕事人で完成したと言えるな。BGMもそうだし」

晶華「確かに、この辺の曲は今の仕事人でもよく聞くわね」

NOVA「新・仕事人の哀しみのテーマは定番曲の一つだし、出陣のテーマもやはりシリーズをまたいだ定番だし、三田村邦彦の歌う『想い出の糸車』アレンジの殺しのBGMは涼次が受け継いでいるし、主水さんのバラード曲も小五郎が受け継いだ。仕事人の王道音楽がここに出揃っている。おかげで、今の仕事人では『冬の花』『花の涙』『さよならさざんか』『女は海』などの名曲は一切使われていない。他の殺しのテーマは、元祖の『荒野の果てに』を初めとする前期曲からの流用メインだけど、流用のパターンがあまり斬新とは言いにくくなっているからな。2009の時は、結構、違う曲をあれこれ採用して盛り上げてくれたんだが、スペシャルドラマになって、かえって音楽的にはマンネリと化してしまった」

翔花「何が来たら、NOVAちゃんは感じ入るのかしら?」

NOVA「殺しのテーマに『あかね雲』が来たら素直に感じ入るが、仕事屋とか仕置屋が来ると、おおって唸るな」

晶華「と言うか、NOVAちゃんを唸らせるものってことはマニアックすぎて、一般の必殺ファンには付いて来れないと思うけど」

NOVA「いや、棗さんが今回、仕業人の出陣曲(いざ行かん)で殺しを担当したのは、おおって気になったんだけどな。源太の旅愁アレンジもおおって来たし、匳のBGM(夜霧を裂いて)もいい。ただ、リュウは殺しのテーマも定番がないんだよな。リュウに挿入歌でも歌わせて、それを殺しのテーマにアレンジすれば、制作陣が彼をプッシュしようとしてるのが分かるんじゃないか?」

翔花「NOVAちゃんは本当にリュウ君のことが好きなのね」

NOVA「いや、彼に順之助みたいなピュアさを感じて、何だか持ち上げてやりたいって気になってんだよ。それはともかく、加代さんは順之助の保護者をしながら、自分の表の仕事を手伝わせたりしていたし、順之助のお守りが済んだ激闘編ではチームの代表として、闇の会に参加して、寅の会の念仏の鉄と同じポジションに付いていたんだよ。何だかんだ言って、主水に次ぐ古参が加代だったわけだからな」

晶華「でも、加代さんの出番はそれで終わったわけね」

NOVA「ああ。86年に激闘編が終了すると、加代は現代にタイムスリップして87年にハングマンに転職したんだ」

 

加代の後に

 

NOVA「加代さんが仕事人からハングマンに転職したので、86〜87年の旋風編と風雲竜虎編に登場したのが便利屋お玉(演・かとうかずこ)だ。なお、この人は後に世紀の変わり目にウルトラ映画やガメラ映画、ゴジラ映画にも出演して、特撮女優と言ってもいい。特にガメラ3ではヒロインの母親役で、父親役の三田村邦彦さんと共にガメラのせいで殺されてしまっている。そのために、娘の前田愛が晴らせぬ恨みを晴らすために、イリスに身を捧げてガメラを仕置きしようって話になったんだ。裏稼業の因縁は、こうして受け継がれて行くんだなあ」

晶華「って、必殺から突然、ガメラに話が飛ぶの?」

NOVA「なお、前田愛さんは必殺シリーズの出演経験はないが、夫の叔父さんが仕事人・時計屋の夢次だし、妹の前田亜季さんは仕事人2010のゲストヒロインとして裏切った恋人に殺されている。つまり、周りが必殺関係者ばかりなんだな」

翔花「前田愛さんはともかく、女仕事人なのはかとうかずこさんってことね」

NOVA「そう、彼女が演じるお玉は、上方の元締め・虎の娘という設定で、主水は新・仕置人の虎とは面識がないんだが、仕事人Ⅲの1話の前に放送されたスペシャル版で、上方の虎と対面している。とにかく、過去シリーズの元締めの娘で、新たな仕事人の夜鶴の銀平と共に、主水、政、順之助のチームと合流している。そして、何でも屋の加代の後継者として順之助のバズーカ殺しのサポートをしていた。悪人を誘き寄せてバズーカの射程範囲まで引きつけると、自分は抜群の跳躍力で逃れて順之助に撃ち殺させていたわけだ。たぶん、体術的には加代よりも強いと思われ、劇場版の必殺4では拳銃を装備して、ラスボスの真田広之に苦戦する中村主水に支援射撃を行って逆転のきっかけを与えている」

晶華「バズーカとか拳銃とか、必殺の世界観じゃないわよね」

NOVA「まあ、それ以前に、映画の必殺2では敵の外国人軍団が銃を撃ちまくっていたから、南蛮渡来と言えばOKなんだろうけどな。ただ、やはりバズーカの火薬は危険ってことで、旋風編のラストで炎に包まれた百軒長屋から脱出する際に、銀平と順之助は爆発事故に巻き込まれて退場した。思いがけず突然終わった旋風編の次の週に始まった風雲龍虎編は、BGMを全く変えることなく、一部の登場人物と設定だけ変更することで、新番組となった」

翔花「ええと、全14話ってことは、仕事人シリーズで一番短命に終わった作品になるのね」

NOVA「で、今度はお玉が新しく南京玉すだれを操る、かげろうの影太郎を連れて来た」

晶華「南京玉すだれって、こういうのね」

NOVA「南京玉すだれはコンパクトなすだれが瞬時に長く伸びて、遠距離から先端に突いた針で相手の額を突き刺す技として、インパクトある殺し技だったな。その前の銀平が、釣り竿の先端に銀の折鶴を付けて、相手の首に糸を巻きつけた後、糸を引っ張ると鶴のくちばしに仕込んだ針が相手の首を刺すという、何だかまどろっこしい技を使っていたんだが、その後継者が源太のからくり蛇だと思う。勇次の糸や、竜の紐と区別するために、ただの絞殺技にしなかったのだろうけど、技としては少しまどろっこしいと思ったな」

晶華「糸を巻きつけた後、絞めるのではなくて突くのだったら、最初から鶴を糸で遠隔操作して、直接首筋を突く方が見栄えがすると思うの」

NOVA「それに比べて、玉すだれは非常に斬新なアイデアで、しかもスピーディー。遠隔攻撃でありながら、巻きつけるアクションを省いて、直接刺すという技。そして単に刺すだけだと、演出の間が持たないと考えたからか、サポート役のお玉が金粉を撒いて、相手を幻惑するという段取りが挟まって、その金粉越しに相手の額を突くという華麗さを魅せた。銀平と影太郎の技のどっちが洗練されているかと比べたら、影太郎の玉すだれに軍配が上がるんだよな」

翔花「で、お玉さんは金粉を撒くだけ?」

NOVA「登場作品が少ないのと、主題歌を歌っていないのと、コメディーに振り切れなかったことで、何でも屋の加代の後継者としては大人しすぎて、視聴者に浸透する前に終わってしまったな。サブタイトルも、影太郎はあるのに、お玉は一つもないし、さらにレギュラーシリーズ終了後の2時間スペシャル『大老殺し』(87年10月)で、加代がハングマンから帰って来るんだな」

晶華「つまり、お玉さんは加代さんの代役にはなっても、後継者にはなれなかったという形なのね」

NOVA「その後、加代は90年秋の『オール江戸警察』まで、9本の必殺ワイドおよびスペシャルに出演することになる。必殺スペシャルは、あと91年に1本、レギュラー番組の『激突!』放送中の92年正月番組に作られた1本の合計2本で終結し、鮎川さんも92年に芸能界を引退したみたいだから、加代役は79年から90年までの11年間続けたことになるな」

 

最後に『激突!』

 

NOVA「劇場版やTVスペシャルでも数多くの女仕事人がゲスト的に登場し、華々しく活躍したり、無惨に殺されたりしていったのだけど、それらはこういう本に載っている」

晶華「すごいお宝本ね」

NOVA「2001年出版だから、さすがに2007年以降の小五郎シリーズは載ってないけどな。小五郎シリーズのマニアックな研究本が出るのはこれからだろうが、例えば、中村主水と渡辺小五郎の比較とか、切り口はいろいろあると思う。ただ、小五郎シリーズは『流しの仕事人』という設定で、元締めを持たないフリーな連中を導入できる世界観なのに、あまり仕事人同士の対決劇は描かれていないんだよな。今回の雪丸戦で、初めて仕事人VS仕事人が本格的に戦った形になる」

翔花「仕事人のグループって、今のシリーズではお菊さんところのチームしか登場していないよね」

NOVA「最初の仕掛人は、いろいろな元締め組織があって、時には仕掛人チームの暗闘が描かれている。次の仕置人は主水と鉄たちのチームだけだ。助け人も清兵衛さんところだけで、それ以外に盗賊組織の闇世界があるらしい。仕留人は主水さんところだけになるが、敵対組織に仕上げ屋ってのが登場して、抗争に発展した。仕事屋、仕置屋、仕業人、からくり人は主人公チームだけの固有名詞だが、別の殺し屋組織は登場している。

「そして、新・仕置人で世界観が大きく変わって、最初の仕置人は主水と鉄たちの作った固有名詞だったのが、この作品では全ての殺し屋が仕置人を名乗るようになって、仕置人が一般名詞として定着し、その設定が仕事人にも引き継がれた。仕掛人と、新・仕置人と、仕事人の激闘編は江戸に複数のチームがあって、元締め同士が縄張りを持っていたり、競りで的を奪い合ったり、同業者同士の掟が厳しかったりしていたが、多くの仕事人の世界観では江戸にある仕事人組織は主水のチームだけで、たまに上方とか別の地域から仕事人組織が進出して来て縄張り争いに発展したり、『京都の仕事人組織が謎の殺し屋組織に襲撃されてピンチやから、腕の立つ江戸の仕事人はんに助けておくれやす』と出張仕事を要請されたりもする」

晶華「何で、そんな出張仕事をしないといけないのよ?」

NOVA「裏の世界には裏の世界の仁義とか人付き合いってのがあるんだよ。まあ、そういう仕事を加代が引き受けて、主水が文句を言ったりするんだけどな。奉行所勤めの彼は、他の自由度が高い町人の仲間と違って、簡単に遠出はできないんだけど、それでも物語を成立させるために、神隠しにあったり、たまたま偶然に奉行所の出張仕事を仰せつかったり、いろいろと脚本家がアイデアを披露するわけだ。ともあれ、出張仕事とか、同業殺し屋との抗争劇とかは、普段の晴らせぬ恨みを晴らすマンネリ話のルーティンの中で、たまに盛り上がるイベント編になったりする。そういうのが今の仕事人にはないんだよな。2時間で『恨みを晴らす定番の物語の2本立て』を中盤の善人闇落ちどんでん返しで1つにつなげてドラマチックに見せている。昔のスペシャルはそうじゃなかった」

翔花「どうなの?」

NOVA「スペシャルだから、毎回がチーム崩壊の危機とか、出張仕事とか、ゲスト仕事人が多数出演して散って行くとか、とにかく劇場版的な派手さを売りにしていたわけだな。外に強大な敵や厄介な状況があるから、チームの中でもめてる場合じゃない。誰が犯人かみたいなサスペンスでなく、敵が誰かは分かっているけど、強大すぎるのでどうやって立ち向かえばいいのか、という展開で盛り上げる。そういう活劇的に骨太な脚本が書けないのは、制作費の問題なのか、そういう話のノウハウが欠けているのか、どうなんだろうね」

晶華「ところで、これって『激突!』よね」

NOVA「ああ、91年に始まった『必殺仕事人 激突!』って作品は初期設定が凄くて、まず、元締めが大奥にいる中臈・初瀬さま(演・酒井和歌子)。歴代必殺の中で、最も権力の中枢にいる元締めだ。ほとんど隠密同心的な世界観だ。一方、奉行所が対仕事人狩り組織をこっそり結成して、6話までは組織VS組織の抗争劇を背景にしながら、晴らせぬ恨みを晴らす仕事を遂行しなければいけない。非常に意欲的な初期設定と言える」

翔花「スペシャルの勢いで、作ったような設定ね」

NOVA「で、仕事人狩りの設定は6話までで終わる。と言うか、6話が第1部終了の最終回と言ってもいいだろうな。中盤で路線変更して、従来の晴らせぬ恨みを晴らすルーティンに戻って、元締めの初瀬さんも登場しなくなる。全21話中、9話から20話まで初瀬さんが登場しなかったわけだから、当初に考えた設定が中盤で使いにくいと切り捨てて、最後だけ初瀬さんを登場させて、彼女が大奥の悪女を始末する形で物語を締めくくった。元締めがその罪で大奥を追放されて、流罪になったから仕事も終了という形だな」

晶華「他にない意欲的な設定も、それで上手く話を展開できなければ、切り捨てるしかないってことね」

NOVA「91年だと、シリーズ構成的な仕事をする体制もなかったのかもな。まあ、激闘編の時も最初はハードな設定で緊迫感あるドラマだったけど、制作を続けているうちに気が抜けるというか、視聴者がそこまでハードな物を求めていなくて、現場でも揺れ戻しが起こったのかもしれない。ともあれ、加代の後継者というテーマだと、元締め役の初瀬さんと、もう1人、女殺し屋の『百化けのお歌』(演・光本幸子)がいるな。

「光本さんは90年のTVスペシャル『オール江戸警察』で加代に雇われた仕事人『芸者の駒吉』として出演し、南町奉行鳥居耀蔵に捕まって処刑される役を担ったが、翌年にレギュラー仕事人の地位を勝ち得たことになる。今回も仕事人狩りに捕まって拷問されたりもするが、主水に助けられて生還できた。殺し技は、狐面を相手の顔に投げ被せることで目眩しにした後で、短刀で切り裂くこと。狐面は、鮎川さんの歌う『花の涙』の歌詞にもあるので、何となく後継者としてつながっている気もする」

翔花「『激突!』で旧世紀の必殺TVシリーズが終了して、16年ぶりに復活したのが『2007』と」

NOVA「そこから、お菊が登場して、16年ぶりに棗が登場して、女仕事人の系譜が受け継がれた、と。最後に『激突!』の主題歌を流して、仕事人の話は終了。次回は、仕舞人以降の非主水シリーズの女殺し屋話をする予定」

晶華「まだ続けるの?」

NOVA「女仕事人の話はいつかしたいと思っていたからな。棗登場の今以上の好機はないわけで」

(当記事 完)