Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

必殺仕事人(2023)感想

1月8日が過ぎて

 

NOVA「いやあ、昨日のニチアサ以降のTV視聴は、なかなかハードな展開だったなあ。少なくとも、ハッピーとは言えない過酷な話ばかりだ」

晶華「血まみれエアリアルとか、地獄の狼(信長)に狙われた白ウサギ(元康)とか、レギュラーキャラの仁王立ち退場劇とか、ハードシリアスな物語と絵面が目白押しだったもんね」

翔花「血まみれタヌキかあ。『モンスターの逆襲』みたいね」

NOVA「まあ、ブラッディーな展開には慣れているから、ビジュアル的にショッキングということはないんだが、過酷なのは『人間関係の破壊ドラマ』だよな」

晶華「どういうこと?」

NOVA「ドラマ作りで大事な要素の一つは、『異なる世界観、相容れない信念の持ち主が、友人や恋人と思って信頼していたのに、そのハードな裏の顔を知って、関係性の危機、もしくは崩壊につながる急転直下』だからな。幸せだったものが崩れ去ることでショックを味わわせ、それをどう乗り越えるかでハラハラさせるなり、乗り越えられずにガーンと落とすカタストロフィーなり、悲哀として叙情的にしみじみ終わらせるお涙頂戴劇など、人間の感情を揺さぶる話だ。まさに、『君ならどうする?』って突きつけてくる展開とも言えよう」

晶華「『君ならどうする?』って突きつけられても、ゲームブックTRPGみたいに自分が主人公になれると楽しいけどね。アニメやドラマだと、そういうのはないでしょう。作り手から受け手への一方通行なんだし」

NOVA「まあ、今の情報社会では、受け手の感想の渦がSNSTwitterまとめサイトなどで可視化されていて、それが作り手サイドにも影響を与える局面も多いんだけどな。言わば、インタラクティブ(双方向)の情報のやり取りで、作り手も自分の作品の影響を知りやすいし、受け手も作り手の意図を推測しやすいという時代だ」

 

翔花「で、NOVAちゃんは今回の『水星の魔女』を見て、どう思った?」

NOVA「いや、今回のメインはそっちじゃないんだが、必殺風に例えるなら、こんな感じだな」

 

半兵衛(緒方拳)『俺、人殺しなんだ。今からまた、人を殺してくる』

お春(中尾ミエ)『そんな……。近寄らないで。あんたの顔なんて見たくもない。あんたの子どもができなくて良かった』

 

NOVA「必殺必中仕事屋稼業の終盤の一幕だが、堅気のそば屋(趣味の博打うち)から裏稼業に手を染めた半兵衛さんが、内縁の妻のお春に裏稼業がバレた後のドラマが終盤の盛り上がりを見せる内容」

晶華「愛する人が、人殺しの自分を受け入れてくれるならハッピー、拒絶されたら悲劇って展開ね」

NOVA「同じ局面で、あっさり仲間になる作品もあったりするんだが、普通は堅気の世界の住人が殺しの裏稼業を知って、拒絶反応を起こすのも当然なんだな。だから、そういう秘密はヒーローにしても、殺し屋にしても明かさないのが普通なわけで」

翔花「ヒーローと殺し屋を一緒にするなんて!」

NOVA「非日常の存在で、日常生活、私生活を脅かすトラブルの起因になるという意味では同じだ。違うのは、人助けという善行か、人殺しという悪行かだが、『誰かの命を守るために、他者の命を奪うのは善行か悪行か』という哲学的テーマにもなり得る。ただ、それとは別に、もっぱら感情面の要素も大きいな。『血に濡れた手で誰かを抱き、あるいは抱かれるという行為』を受け入れられるかどうか。まあ、そういう背徳的な刺激を求めるキャラもいるだろうが、ここでは『血塗られた道とは無縁の一般人』という視点で見ると、目の前で人を殺して笑顔でいられるのは怖いよなあ、と」

晶華「水星の魔女は、日常学園ものから非日常な戦場に物語が移って、1期が幕ってことね」

NOVA「2期は『それから数ヶ月後』という時間の流れを経て、一応の日常の営みは回復しつつも、ギクシャクした関係で事後処理に忙殺されている状況が描かれてからの新たな事件が勃発ってなりそうだな」

翔花「『あれから10年。大人になったスレッタとミオリネは……』って話かもしれないわよ」

NOVA「いや、そこまで時間が経ったら、違う物語だと思うが、何にせよ『血塗れエアリアル&スレッタの直後』ということはなく、物語の上でもインターバルを挟むだろうと思う。それがリアルの時間通りに数ヶ月後か、数年後かはさておき」

晶華「とにかく、スレミオの関係性が修復されるのかが見どころね」

NOVA「結局のところ、2人のパートナーシップがどうなるかがポイントだからな。仮に、スレッタが戦場で人を殺しても、気を取り直したミオリネがそれをあっさり受け入れて、『取り乱して悪かったわね。助けてくれて、ありがとう。こうなったら、お父さまの仇を討たせてもらうわ。あなたも協力してくれるわね、スレッタ』『はい、ミオリネさん、喜んで。悪いガンダムにはお仕置きしないと(ニッコリ)』って流れる可能性も考えられるし」

翔花「それこそ、1期の引きは何なのよってならない?」

NOVA「いや、今の時代、そういう展開の早さ、鬱な感情をいつまでも引っ張らない切り替えの早さが求められているんじゃないだろうか。そのための感情の整理のインターバルってことで」

 

晶華「その答え合わせは3ヶ月後にしましょ」

NOVA「そうだな。次回からはテロリストのマフティーの話だ」

 

改めて必殺話

 

NOVA「さて、水星の魔女のインパクトがあまりに大きかったので、せっかくのエンケンさん退場の仕事人のインパクトがさほどでもない、と感じた俺がいる」

晶華「あれ? じゃあ、駄作?」

NOVA「いや、一人の仕事人の退場劇を久々にきちんと過不足なく描いてくれて、十分な佳作だと思うぞ。きちんと話をまとめてくれたし、満足して見れた。ただし、インパクトがそれほどでもないのは、エンケンさんの退場が最初から分かっていたからだな。前情報なしだと、ハラハラドキドキしていたろう」

翔花「仕事人の退場劇って久しぶりよね」

NOVA「いや。去年に善児が娘のトウにとどめを刺されたからな」

晶華「それはシリーズが違うでしょう」

NOVA「まあ、必殺鎌倉人は、本家の仕事人以上に、光と闇のコントラストを感じさせてくれたからなあ。鎌倉人のインパクトに比べると、本家が予定調和で、ドラマ的インパクトの薄さを覚えても仕方ないというか、その中でエンケンさん演じる陣八郎は健闘していたと思うんだ」

翔花「陣八郎さんの退場劇というのが一番のポイントってことね」

NOVA「ああ、この作品の一番の見どころは、これまでが割とサブキャラ扱いで、ドラマの焦点が当たりにくかった名バイプレイヤーの最期の見せ場ってんで、まずはそこを語っておかないと、作品鑑賞で見る目がないと思う。たぶん、今回の放送が一番、エンケンさんが画面に映っている時間が長かったんじゃないか」

晶華「陣八郎さんが病気で死んじゃうのよね」

NOVA「嘘をつくな、嘘を。病気にはなったが、あくまで演出で、直接の死因は悪堕ちした幼なじみ医者の刃を腹に受けて、半ば無理心中的な相討ちで、最期は仁王立ちのまま仲間に見送られる。もう、自分の仕事は果たし終えた納得の死に様なんだ。薬はもらっていたのに、それを飲まずに覚悟の討ち死にだね。武士じゃないけど武士道っぽい死に方で、仕事人の退場劇としては久々に当たりを見せてもらったと思う」

晶華「前に亡くなったのは、2009の源太さんだっけ」

NOVA「ドラマとして花道を描いてもらったのはな。それ以降は、役者が亡くなったり、不祥事で降板したりして、ドラマの物語とは関係ない退場の仕方だったので、『ドラマ内におけるキャラの死を考察するテキスト』にはならなかったというわけで」

翔花「で、陣八郎さんの死をNOVAちゃんはどのように考察するの?」

NOVA「まず、刃を腹に刺されてからの反撃という見せ方は、『念仏の鉄』『はぐれ仕事人の壱』『鍛冶屋の政』など前例はいくつもあるし、BGM的にも仕置人オマージュで、旧作のきれいな焼き直しと言っていい。ノスタルジックな演出は、俺みたいな旧作ファンのツボをきちんと突いてくれて、しかも今風なのは、仲間一人一人がきちんと別れの言葉をかけてくれたり、リュウが形見の殺し道具を受け取ってくれたことだな。昔なら、のたれ死んでいてもおかしくないが、今回は仲間としての見送りを描いてくれた形になる。これが寺田脚本だったら、たぶん陣八郎は人知れず死んでいたんじゃないかなあ」

晶華「今の西田脚本は違うの?」

NOVA「割と、仕事人同士の横の交流というか、仲間意識を描いてくれている感じだな。いつまでも涼次が小五郎をクソ役人呼ばわりするギクシャクさを続けなくなった感じだ」

翔花「だけど、涼次さんが陣八郎さんを見舞いに行ったとき、陣八郎さんは悪態をついて追い出していたよね」

NOVA「ああいう仲間同士で心配するシーンは、今まではなかったな。西田脚本は、仕事人チームも人情寄りになって来た気がする。もちろん、陣八郎にスポットが当たる機会が比較的少なくて、初登場でドラマのメインを張った2015を除けば、2017年の話で涼次と共に記憶喪失のリュウの正気を取り戻させるために奮闘し、2022でリュウと屋台のそば屋を営むなど、リュウとの絡みが印象的だったな」

晶華「あまり、ゲスト被害者に絡まない一歩引いた立ち位置として描かれていた感じ」

NOVA「レギュラーというよりは、準レギュラーみたいな位置付けだな。それでも、役者の存在感とか、コミカルな殺し演出などで、楽しませてくれた。いるだけで、チームの潤滑剤みたいなベテランポジションだったんだ。ある意味、藤田まことさんが持っていた『小五郎に欠けていた三枚目要素』をかもし出していた役者さんかもしれない。だから、彼の退場で次作がどうなるかな、と雰囲気の変化が気になるところだ」

晶華「ジャニーズだらけの中に紛れ込んだ別方面の役者さんだもんね。後釜になれる人は誰かなあ」

NOVA「次作は、新仕事人の登場を期待したいなあ。とにかく、新しい殺し技を見てみたいわけだし。クライマックスの技がマンネリだと、必殺としての魅力に欠けるわけで」

翔花「どんな技がいい?」

NOVA「やはり、飛び道具とか、糸や紐を使った絞殺系が欲しいな。瓦屋さんも、時には瓦を投げてくれたら良かったのに」

 

鬼面風邪の話

 

NOVA「さて、ドラマのメインのエンケンさん語りはこれぐらいにして、次に時事問題ネタの鬼面風邪について見て行こう」

晶華「特効薬の名前が『鬼滅丸』というのが笑いました」

NOVA「そのワクチンならぬ特効薬を作ったのは、医者ではなくて助手の女魔戒法師というのが、さすがだなあ、と感じたり」

晶華「そのお父さん役がガッツ石松さんで……」

NOVA「この人は84年に制作された必殺風現代劇の『ザ新撰組』で、古谷一行さんや京本政樹さんらとチームを組んで、元ボクサーの坊主として、京都の平和を守る裏の仕事をしていたんだな。必殺出演歴はないが、娘の仇を討つために一回だけのゲスト仕事人として戦ってくれても良かったと思う」

晶華「NOVAちゃんは、この人が鬼面風邪の犠牲者になると思っていたもんね」

NOVA「劇中で、鬼面風邪にかかっていたのに、娘が調合した鬼滅丸で回復するという展開に驚いたな。てっきり、親父さんが亡くなって仇討ちのために娘さんが……という展開を予想していたら、逆だったという。さすがはガッツさんだ、鬼面風邪から生還したぜ、と感じ入ったり」

翔花「で、鬼滅丸は『ちゃんと効くワクチン』として、劇中で描かれた、と」

NOVA「インチキ薬の話にはならなくて、反ワク万歳な話とは違ったことを確認しつつ、『特効薬を飲んで回復(ガッツさん)』と『特効薬を飲まずに死亡(エンケンさん)』という、俺的に納得する形に収まった、と」

晶華「その点で、『ワクチン作ってインチキ商売』って話にはならなかったわけね」

NOVA「そんな話にすると、制作スタッフの良識を疑うと俺は主張していたが、良識はきちんと示してくれたようで何より。もちろん、ドラマのメインは『疫病患者の水増しによる給付金をせしめる話』として役人と商人、一部の医者が結託して、『病気でない娘を狭い牢に隔離して、医者にあるまじき所業をした』という療養所の暗黒面を描きつつ、仕事人に始末されるのが中盤までの筋書きとなった」

翔花「問題は後半ね」

NOVA「2時間ドラマの筋書きとして、善人だったキャラが中盤過ぎに闇堕ちすることで、どんでん返しの意外性を示すのは、今の必殺の定番だからな。単純な勧善懲悪の話だけで、今の必殺を考えると外してしまう。俺に『ほう、なるほどな』と感じ入らせる予想をするなら、『善人がいかなる理由で、悪に転向して、仕事人の的になるか』という流れを考えてこそ、ストーリーテラーとして分かっているってことになる。そもそも、裏と表の境界線を描く必殺の物語を語るのに、『単純に世の中の白黒を一面的に決めつけるような短絡さ』を露呈していては、面白い予想とは言えないってことさ」

晶華「そもそも、東庵先生は悪人じゃなかったし、理想に燃えた名医という風に描かれていたのよね」

NOVA「ただし、役者がリバイスの準ラスボスと言うべき赤石長官だったからな。悪堕ちする臭いは最初からプンプンしていたんだが、赤石長官も別に悪人として描かれていたわけじゃないし、本人は終始、善意の塊として行動していたんだ」

翔花「え? 今さらリバイスさんの話?」

NOVA「リバイスはまだ終わってないぞ。こういうVシネも予定されているし」

晶華「TVの後の話は置いておいて、赤石長官の話はもう終わってるわよね」

NOVA「赤石長官は、『ギフの力に人類は勝てないから、全面降伏して進化を望まないのがベストだ』って思想的正義で行動した人物だ。ギフの恩恵にすがり、停滞した文明で分を守って生活するのが人類にとっての幸せであり、そのために『ギフの餌となる人の中の悪魔を抽出して、ギフに捧げようとする』考えでバイスタンプを押して、徹底的に管理された社会である方舟で人類を幸せな家畜として養おうとする善意の計画を進めたわけだ」

翔花「ギフさんを神とする神権政治を打ち立てようとしたわけね」

NOVA「そのためのバイスタンプを押す活動が、タイミング的にワクチン接種の光景にかぶったらしく、『仮面ライダーの敵役がワクチン接種を進めて、ライダーはそれに反抗している。つまり、反ワクが正義で、ワクチンが悪だと証明されたじゃないですか』という趣旨のメールを昨年夏に送られたんだが、こっちに言わせれば一言。『この男はどれだけリバイスの物語を理解していないんだ!?』と呆れた次第」

晶華「ええと、リバイスさんは『悪魔の力で、人類の自由と未来のために戦っていた』という話よね」

翔花「『正義のためと言っているのは、赤石長官の軍門に下った当時の大二さん』で、『勝てない戦いに抗って犠牲者を増やすのは間違っている』という言い分で、レジスタンスを抑えつけようとした、と」

NOVA「結論として、『赤石長官はギフに愛されていなかった』ということで、その思想も歪な圧制者の、時代遅れな神権政治でしかなくて、前提条件の『人類はギフに勝てない』という考えも、ギフの遺伝子で進化したライダーと悪魔の力でギフが撃退されて覆されたって話になる」

晶華「そういう物語内の思想テーマ的な話は、メールで主張したの?」

NOVA「いや、彼の頭には『反ワク思想をフィクションとリンクさせて訴えること』しかなくて、どうにもこうにも言っていることが短絡的でつまらないんだな。仮面ライダーの話をするにしても、必殺の話をするにしても、いちいち反ワク主張につなげずにはいられない困ったちゃんなので、こちらとしては作品鑑賞するのに、そういう面でしか語れない輩とまともに趣味の話はできないだろう、と考えるわけだ。もっと、作品鑑賞を楽しむためのポイントがあるはずなのに、そういう視点を示せないんだからな」

 

晶華「で、赤石長官役の橋本じゅんさんが演じたのが酒井東庵先生だけど、最初は善人だったのよね。どうして悪堕ちしたの?」

NOVA「鬼面風邪の特効薬を作るための資金が足りなくなったんだな。そこで資金を工面しようと、今回の事件の黒幕の役人に掛け合ったところ、悪事の片棒をかつげと誘い込まれた。『特効薬を作った後の金儲け』も誘惑材料だったが、何よりも東庵の心を満たしたのは『医師としての名誉欲』だった。『金と名誉のために、人助けという初心を見失ったこと』が闇堕ちの原因になる」

翔花「金と名誉かあ。そんなに大切なもの?」

NOVA「社会で生きて、大業を成すためにはどちらも必要にはなるだろうな。薬を作るには、材料費がかかるし、そもそも貧乏な暮らしでは医療活動など行えない。慈善活動のための寄付金や公金は必要になるだろうが、それを別の活動に流用したり、欲深く私服を肥やすようになると、問題になる。何にせよ、社会で何かの活動をするには、金が必要で、それを使うことで経済を回せる人間がいてこそ、社会が回るのも間違いない。

「一方で、名誉というのは、お金以外の社会的信用、世間で評価される実績や地位・役職だな。ベストセラー小説の作者というのは一つの名誉だし、『売れている本』『面白い本』の作者は、ファンからすれば尊敬できる人間で、神さまみたいに崇めたりすることもある。名誉というのは、敬意であり、社会的影響力をも意味する。東庵先生は、金銭欲よりも名誉欲を刺激されて、悪人の誘いに乗ったように描かれているんだ」

晶華「自分のような優秀な医者が然るべき地位に就けば、もっと多くの人間を助けられるはずだ。だから、自分の功績が認められることこそが、世のため人のためになるはず……って考えたわけね」

NOVA「で、そんな優秀な東庵先生も特効薬作りに失敗し続けて、憔悴して行くわけだ。そんな中、助手が『父親の病を治すための試行錯誤を経て、特効薬の鬼滅丸を完成』させたんだ。そこで東庵先生は助手の功績を、自分のものとして世間に発表することを決める。既に名声ある自分の名前で世に出した方が多くの人に薬が行き渡るという理屈でな」

晶華「つまり、他人の功績をパクって、自分の名を上げようって話ね」

NOVA「助手の娘は別に名誉欲なんてないので、『それで多くの人が救われるなら』という真心で東庵先生に薬の処方帳を託すんだが、『せっかくの鬼滅丸が高価な値段で売られて、庶民に渡らなくなっている』という状況に抗議するんだな。自分がもっと安く売るとまで言って、悪党の商売の邪魔になるから殺される形に」

翔花「医者が悪党に転じて、ワクチンを利用した金儲けに走る……という意味では、部分的に正解の予想とも言えるわね」

NOVA「まあ、何もかも外れと言うつもりはないさ。ただ、反ワク思想を前提にしたために、『インチキなワクチンを作って売る』という部分が外れで、鬼滅丸はインチキではなく、その処方帳を仕事人が回収することで、鬼面風邪の問題が解決したという話になる。

「そして、これを現実につなげると、ワクチンは無料接種で打てるようになっているんだから、高価で庶民に行き渡らないという状況ではないし、ドラマの展開とは的外れな話になるわけだな。ともあれ、ドラマ的落としどころとして、ワクチンがインチキなら疫病が収まらないので、そういう発想をしてしまう時点で、ドラマ作りの創作センスが欠如していることにもなる。思いつき発言はしたものの、上手い落としどころが見えていないというか、結論まで構築できないタイプかな、と」

 

ドラマ内での医療と経済の話

 

NOVA「ドラマ的落としどころとしては、東庵先生が『名誉欲に駆られて、悪人と結託して、助手の娘を殺した』というところから仕事の的になってしまうわけだが、それでもなお、陣八郎を心配して手持ちの鬼滅丸を渡したり、医者としての善意を完全に見失っているわけではないのがポイントだな」

晶華「ちょっとした悪事に手を染めても、100%黒に染まったわけじゃない、と?」

NOVA「『医は仁術』という言葉に対して『医は算術』って考えも一理あるんだ。この場合、『薬の値段はいくらが適切か?』という問題があって、劇中ではその辺をボカしていたが、処方帳があっても薬の量産態勢がどれぐらい整えられるか、また材料費とか流通にかかる経費とか、需要と供給のバランスとか、現実の諸問題を無視して、薬ができたらあっさり問題解決しているわけだな」

翔花「そりゃあドラマだもん。あまりに複雑な話にはできないでしょう」

NOVA「じっさい、鬼面風邪はコロナよりも『おたふく風邪の変異種』かな、とも思うし、丸薬一粒で治る程度だから、薬さえあれば問題なく治る代物だな。ウィルスが変異するわけでもなく、薬に副反応が見られるわけでもない。あと、江戸の町人の暮らしを見ていると、最初こそマスクをしている人も見られたが、仕事人役者も含めて、マスク率は決して高くない」

晶華「それでも閉店しているお店とか多いように描かれていたわよ」

NOVA「罹患人数が4649人とかだろう? だけど養生所で閉じ込められているのは10人単位でしかいないし、相当に水増しされているよなあ。江戸にああいう養生所が一体、何軒設置されたんだろうか?」

晶華「いや、そういうことを気にし始めると、キリがないし」

NOVA「まあ、『ドラマ作りも算術』だろうな。リアルに考えると、明らかにおかしな部分があって、その辺をどう違和感なく見せるか、そしてマニアとしてはツッコミ入れて白けてしまう部分を、どれだけ粗探しせずに見流して、ドラマの醍醐味を適度に味わえるかなど考えないといけない」

晶華「いや、マニアは粗探しするのが筋ってものじゃないの?」

NOVA「江戸時代にサングラスをかけたラッパーがいた場合に、俺は思いきり白けてしまったぞ。まあ、しかし、そこは『芸人の顔見せ出演だし、グラサン外すとファンは誰なのか分からなくなるかもしれないから、敢えてグラサンを付けたまま面白くノリで演技して、しかも殺しのシーンでわざとグラサン外した顔を見せてやって、ファンのツボを突く』ようなメイキング事情でもあるのだろう、と補完するのがマニアってものじゃないか?

「リアルに考えるとおかしい……ってドラマに揚げ足とるのもマニアなら、『いや、おかしいのは分かっているけど、そこは敢えてそう演出しているんだよ。芸人のお遊びや分かりやすさを重視してな。ドラマはエンタメなんだから、リアルにやってもつまらない物をどう面白く演出するかが大事。リアルが全てじゃねえ』って反論するのもマニアってことだ」

翔花「いろいろなタイプのマニアがいるってことね」

NOVA「要は、自分がそのドラマのどこを楽しむか、というこだわりを示せるのが、ファンであり、マニアってものだって話だ。まあ、俺にはグラサン付けたラッパーが江戸時代にいるのは受け入れられなかったが、そういう時空を超越した異物はさっさとエンケンさんに始末されてホッとしたわけだ。こんなのがいつまでものさばっていてはいけない。闇にさばいて仕置きしないとな」

晶華「そこまで、ラッパーを敵視しないでもいいのに」

NOVA「でも、まあ、中学時代の俺は、江戸にエリマキトカゲが出ても、キン肉男たちがゆでたまごを投げても、ピラミッドやターザンが出現しても、中村主水が髭面バースになっても、楽しんでいたんだ。だったら、江戸の町にグラサンラッパーが現れても、それを楽しめる若者がいるんだろうと思いながら、ファンとして受け入れるのが年季の入った通の道だと思い込むことにした。まあ、ツッコミ芸が楽しければ、そうしたらいいわけで」

翔花「通は作品をいろいろな観点で楽しめるってことね」

NOVA「そういう楽しみ方ができなくなったら、素直にファンをやめればいいんだし、今、楽しんでいるファンの楽しみを妨害するのは、大人気ないかな、と思う次第」

 

そしてREVENGER

 

NOVA「何だか、必殺風のアニメが始まったと教えていただいたので、1話は見逃したが、チェックを入れてみる次第」

NOVA「毎週木曜日のBS日テレの夜12時半が見やすいかなあ、と思いながら、楽しめることを期待」

(当記事 完)