メタ視点の話
ケイP『さて、コンパーニュの塔のエピソードを中心に、花粉症ガールの物語を振り返ろうって話をしたいんだけど……』
シロ「うん。そのために、ボクとリトルが協力しようってことだな。まずは、ゲンブ、それからアリナ様や、セイリュウ師匠について、来し方や今後の展望をメタ視点で書くつもりだった」
リトル「メタ視点って何?」
ケイP『これは多元宇宙の考え方に通じるんだけど、「この世界、もしくは宇宙の外に別の世界、ないし宇宙がある」というのが基本。昔からの伝承で言うなら、「人間の世界の他に、神々の世界があったり、死者の世界があったり、海の底に竜宮があったり」などなど、物語の中で数々の異世界があって、人々をワクワクさせてきたッピ』
リトル「うん。確かに自分の知らない世界の物語を聞くのはワクワクするですぅ」
ケイP『そうすると、物語の中に登場する人物と、その物語を話したり聞いたりする人物に分かれるッピよ。話し手自身が物語に登場して自分の経験として語る自伝スタイルもあれば、話し手の友人・知人が登場する伝聞調のスタイル、時には聞き手が物語世界に誘われて擬似的に冒険するようなアリスないしゲームブック調のスタイルもあるわけで』
シロ「『主人公は君だ』ってキャッチフレーズは、昔のゲームブックやコンピューターゲームではよく見られたな」
ケイP『ドラクエや初期のFFもそのスタイルでピね。これはウルティマの影響もあると思うんだけど、ウルティマでは「モニターの外のプレイヤーが世界を救う勇者(後の聖者アバター)として召喚される」という物語なんだ。それがドラクエでは伝説の勇者ロトの子孫であったり、FFではクリスタルに導かれた光の戦士だったりして、「プレイヤー自身がその世界に召喚された役割(世界にとっての異物)」としての主人公が描かれるッピ』
シロ「役割はあるけど、物語世界では『無色透明な君』という位置づけだな。最近は、主人公の設定が昔よりも濃くなったというか、ゲーム物語が映画化して、プレイヤーと異なる作品世界内のキャラクターとして確立されて、必ずしも「主人公=プレイヤーの君」と感じさせなくなった感じだけど」
ケイP『それでも「プレイヤー自身が分身として構築するアバター」という形で、「自分そのものではないけど、自分が感情移入できる、あるいは可愛く愛でることのできる、自分だけの主人公」を設定したりするゲームも多いッピ』
シロ「とにかく、物語の話し手や聞き手は物語世界の外から世界を見つめ、時には世界の中の人物になったりすることもあるけど、あくまで『物語として、その世界を上から見て考える』わけだな。これがメタ視点という奴だ。とりわけ、インタラクティブ性の大きな作品によく見られる」
リトル「つまり、リウたちの生きているこの世界の外に、ぼくたちを見ている誰かがいて、ぼくたちのことを創作物語の登場人物と考えているのがメタ視点ってこと?」
ケイP『そうだッピ。具体的には、マスターNOVAがメタ視点の持ち主そのものだし、劇中の登場人物が『作者や読者を意識したセリフ』を発言しだしたら、世界の壁が崩れ始めていると考えられるッピよ。作者に対して、「自分はこういう設定のキャラなんだから、こんな発言はあり得んだろう。書き直しを要求する」などと発言したら、メタ視点の末期症状と思ってもいいッピね。まじめに物語世界に没入していた読者からすると、いきなりそのようなギャグに走られたら、ガッカリするケースも考えられる』
リトル「確かに、普通の人は『自分がこの物語の主人公だ』とか『読者の応援に感謝する』とか『自分の設定はこれこれこうだ』とか言ったりしませんよね」
ケイP『例外は、その人物設定がショービジネスやお芝居に関係しているとか、劇中劇の構図になっているとか、のケースが考えられるッピ。リアルでも、マスターNOVAのように創作の作り手である場合は、日頃の思考回路で「自分が主人公」「自分のキャラ設定」なんかを考えて、あたかも物語世界のようにリアル世界を見るような妄想を考えつつ、リアルはリアルと受け止める別視点と共有しながら、IF世界を楽しく満喫しているッピよ』
シロ「逆に、架空世界に埋没しすぎて、リアルに戻って来れなくなった通称・廃人とか、リアルに根差しすぎて架空世界の娯楽をやたらと忌み嫌う『夢を忘れた古い地球人』とか、バランスの欠けたケースも見られるよな」
ケイP『架空世界のファンタジーが現実に侵食してくるのを拒絶する勢力と、リアルに背を向けて自己のファンタジー世界だけに没入する勢力と、リアルの大地に足を下ろしながら架空世界に夢の翼を広げている勢力の三国大戦の構図だッピ』
リトル「とにかく、二人の話にはよく分からないことも多いけど、今回の話にはメタ視点が必要だということはよく分かった気がします」
ケイP『そもそも、劇中登場人物が創作設定を語る以上は、メタ視点にならざるを得ないッピ』
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