ありえたかもしれない可能性
晶華「ねえねえ、NOVAちゃん。大変だよ。モニターを見て」
NOVA「何だ? 俺当てに通信だと? とうとう動いたか。タイムジャッカーの奴ら」
キング「吾輩はタイムジャッカーのキング」
ダイアナ「そして、あたしはダイアナ・ジャックよン」
NOVA「お前たちがタイムジャッカーだと? うちの娘を苦しめたという……」
キング「お前の娘は、吾らのクイーンなのだ。返してもらおう」
NOVA「断る。人の娘を拉致し、あまつさえ洗脳改造して吸血蝙蝠怪人に仕立て上げるなど、正に悪魔の所業。そんなことは、決してこの俺が許さん!」
キング「ならば、これを見よ!」
ダイアナ「フフフ。この男に見覚えがないかしら」
晶華「誰、それ? 私は知らないわ」
人質A「翔花ちゃん、それはないぜ。俺は粉杉翔花ファンクラブ会員ナンバー2のアスト。明日も斗う僕らの明日斗、と謳われた男だ。読者Aと聞けば、分かるんじゃないか」
晶華「??? よく分からない。何だか思い出せそうだけど、うう、頭が痛い……」
NOVA「娘は洗脳が解けたばかりで、記憶が不完全だからな。しかし、俺は覚えているぜ。読者A、娘へのストーカーの罪で、俺が未来送りにした男だったな。どうして、そんなところに?」
アスト「すまねえ、NOVAさん。未来の世界で何とか生き延びた俺だったが、悪の組織に捕まって、あんた達を誘き出すための人質にされてしまったんだ」
キング「ええい、黙らんか!(ドガッ)」
アスト「グハッ!」
ダイアナ「ちょ、ちょっと、あまり乱暴なことは……せっかくの人質を傷つけて、どうするのよ?」
キング「所詮は、ただの一般市民。使えなくなっても、代わりはいくらでもいる」
NOVA「ちょっと待て。腐っても、その男はうちのブログの読者だった男だ。娘のファンクラブの会員ナンバー2を早々無下にはできん。どうすれば返してもらえるんだ?」
キング「ほう。この男が大事か。ならば、White NOVA、お前がクイーンとケイPを連れて、吾らのアジトまで来い。メガネンジャーや他の仲間を連れてくるのはダメだ」
NOVA「俺と晶華、バットクイーンとケイPでいいんだな。分かった。言うとおりにする」
アスト「NOVAさん、すまねえ。俺のために(内心ニヤリ)」
スピードA「何だ、この茶番は?」
NOVA「バトルストーリー・VSタイムジャッカー編の導入部の初期プロットだな。まだ、タイムジャッカーの4人目が読者A改めスピードAだと明かしていない段階の話。お前たちは、読者Aを人質だと偽って俺たちを誘き出し、そして現場で正体を現す予定だったのだ」
スピードA「なるほど。『フハハハハ、騙されたな。このオレこそが、タイムジャッカーのリーダー、読者Aが改造された瞬足戦士スピードA(エース)だったのだ』とやりたかったわけだな」
NOVA「しかし、この展開は、諸事情あってボツになった」
エース「どんな事情だよ?」
NOVA「どうして、この俺が読者Aのために、娘を危機にさらさなければならないんだ? 俺にとっての価値は、どう考えても『娘>読者A』だろうが」
エース「いや、そこはやっぱり、翔花ちゃんがオレのために涙目になってくれて、『NOVAちゃん、やっぱりアストさんを見捨てるわけにはいかないわ。私はどうなってもいいから、大切な読者の人を助けに行きましょう』と、あんたを説得するのが王道ストーリーというものではないか?」
NOVA「いや、晶華だったら、そんなことは言わないはず。『アストさん? 誰それ? そんな人、知らない』って言うか、『ええ? 人質救出? どうして私がそんな面倒なことをしないといけないの? 私は家でゴロゴロして、ロードスの小説を読んでいたいんだから』って言うか、『人質救出をしないのね。NOVAちゃんがそう決めたなら、それでいいわよ。別に、私に迷惑がかかるわけじゃないし』と言うに違いない」
エース「ちょっ、オレの翔花ちゃんは、そんな薄情なキャラだっけ?」
NOVA「2号の晶華はそうなんだよ。1号の翔花だったら、もっと熱血で無邪気で単純明快な王道ヒロイン路線だから、『NOVAちゃん、人質はしっかり助けないと、ヒーロー好きの名がすたるというものよ』と俺を説得しようとする可能性も少なからずあるかもしれんが」
クラブキング「つまり、読者Aには人質の価値がないということだな」
エース「てめえ、キング、このオレに価値がないだと?」
ダイアナ・ジャック「まあまあ、エースちゃん。あくまで、これはIFの話でしょう? 実際には、あたしたちはエースちゃんを人質に見せかけて、相手を騙すような姑息なマネをしていないんだし、仮定の話で怒っても仕方ないわ」
NOVA「ダイアナは、チームの知恵袋なんだな。まあ、とにかく、このプロットは無理があるということでボツになった。大体、俺と読者Aの間には、ろくな人間関係も構築されていないんだぜ。親友とか大切な身内であるならともかく、命をかけて助けないといけない義理はないわけで」
エース「そんな冷たいことを言うなよ。あんた、作者じゃねえか。作者なら、自分の作品やブログのファンのために一肌脱いで当然、とは思わないのかよ」
NOVA「勘違いするなよ。それは『お客さまは神さま』理論と同じで、サービスの提供主に求めすぎ、甘えすぎって奴だ。『店は金をもらって、商品やサービスを提供する』『客は金を払って、商品やサービスを享受する』ここまではいい。商品やサービス内容に不備があれば、客がクレームを入れるのもいい。だがしかし、『金を払っているのだから、店は客を尊重し、一切の不快をなくすべきだ』という思考に陥ってはならない。客の尊重を店に求めるなら、店員への尊重が客にも求められる。自分は店から尊重されることを求めるが、店で働く従業員を尊重しようとしないような精神性は、質が悪いと考えるがどうか?」
エース「何の話だよ? ここは店か? オレは金を払う客か? そんなことはないだろうが」
NOVA「店と客の関係を、作者と読者の関係に置き換えて考えてくれよ。作者は、作品を提供する。読者は、作品を堪能する。ここまではいい。作品の内容に不備があれば、あるいは気に入らなければ、読者が不満を表明して批評するのも構わない。だがしかし、『作品を読んでいるんだから、作者は読者を尊重し、一切の不快をなくすべきだ』という思考に陥ってはならないだろう。ましてや、『読者なんだから、作者が読者に奉仕すべし』って考えは何それ? って思わずにはいられない。行き過ぎたサービス精神が、ファンや読者を増長させ、勘違いさせる元になるのではないか、と考えたりする」
エース「つまり、あんたは作者だが、読者Aを助ける義理はないって言いたいんだな」
NOVA「ああ。読者A、アストという特定個人とは、それほどの人間関係を構築していないからな。もちろん、毎日うちのブログに来てくれる常連の一般読者さんや、検索などを通じて通りすがってくれる一見読者さんは、ありがたいと思っているよ。たまにコメント書いてもらえると嬉しいときもあるし、まあ、書かれたことに対しては、何らかの反応を返さなきゃ、と思ったりもする。ただし、コメント内容次第では、良かれ悪しかれ、ブログの記事内容に反映することも多いし、俺はインタラクティブという言葉が好きだからな」
エース「何だよ、インタラクティブって?」
NOVA「やられたらやり返す、双方向のやり取りってことだな。俺は割と自己完結型の人間だと自覚しているが、それには長所と短所があって、『人の話を聞かない自己中な性格』と見なされると、自己の世界が狭くなるというデメリットがある。そこから、どう受容と幅広い関心をもって、自己の世界を面白く広げて構築していくか、あるいは他者の世界と絡み合わせて行くかが鍵だと考えているんだが、それにはインタラクティブな関係というのが理想的だ」
エース「つまり、どういうことだってばよ?」
NOVA「ぶっちゃければ、面白くて柔軟な考えを持った人間とは喜んで付き合いたいし、自分もそうありたいってことだな。読者Aよ、お前はそういう男か?」
エース「柔軟だと? ふざけるな。オレはこのブログに登場した時から、翔花ちゃん一筋だったんだ。会員ナンバー2番はダテじゃね。この想いだけは曲げるわけにはいかねえ。それを邪魔する奴は、全てぶっ飛ばすぞォォォ! 」
NOVA「やれやれ。だったら、別のプロット案をお見せしよう」
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