Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

主人公論(ロードスとかクリスタニアとか)

今回は会話モードで

 

NOVA「さて、私的創作論の第2弾は、『感情論』で行こうと思っていたんだが、結構、手間取りそうなので、番外編として『主人公論』というタイトルで、お前たちと話そうと思うんだ」

晶華「このブログの主人公を決めようって話ね」

翔花「花粉症ガール1号として、わたしが真の主人公ってことを示すときが来たのね」

NOVA「いや、俺たちの雑談には主人公なんていなくてもいいだろう。主人公が必要なのは、ストーリー作品だ。まあ、TRPGをしていれば、大体、PC1が主人公と言えるが、例外もある」

晶華「例外って?」

NOVA「ロードスの主人公は誰だ?」

晶華「作品にもよるけど、基本はロードスの聖騎士の称号を獲得したパーンさんね」

翔花「でも、アニメの『英雄騎士伝』の主人公は、スパーク君じゃないかしら」

NOVA「パーンはロードスリプレイ第1部のPC1、スパークは第3部のPC1だな。ロードス島戦記の大筋はリプレイに基づくストーリーを再構成したものだから、各部の主人公戦士やら騎士やらを中心に話を作っている」

翔花「第2部は?」

NOVA「狂戦士オルソンだな。火竜山の魔竜編の中心人物の一人だけど、小説の主人公にはなれなかった。物語の途中で戦死してしまったのと、人格がいろいろと安定しないのとで主人公としては描きにくかったのだと思える」

晶華「リプレイでは、〜だよん口調で話す色物戦士だったのよね」

NOVA「ジョジョDIO様ネタで、ウリーーッと戦闘中に叫ぶのを、小説では怒りの精霊フューリーに取り憑かれて感情制御がおかしくなった狂戦士という設定に改変して、情緒的、感動的な物語に仕立て直したんだな。最後に戦死した相棒に心を寄せる女戦士シーリスの視点で締めくくるエンディングは、星を見つけた魔法使いスレインの視点の第1巻エンディングと並んで、主人公以外の人物で締めくくる印象的な場面だ」

翔花「星を見つけたって?」

晶華「お姉ちゃん、ロードスの第1巻を読んでないの?」

翔花「これなら読んだわよ」

晶華「まずは、こっちを読むのがファンの常識よ」

翔花「今さら? 誓約の宝冠の2巻が出たら、改めて最初から読むわ。2巻が出なくて終わったものを、今から追いかける気にはなれないし」

晶華「お姉ちゃん、ロードスを読まないなんて、日本のファンタジー小説RPGファンとしては失格よ」

翔花「古典は読まなくても、今の時代のそれぞれの流行に合ったものを読めばいいって、山本弘先生もおっしゃっていた」

NOVA「それを言った山本さんって、まさか自分たちの作品が古典認定されるとは思ってもいなかったんじゃないかな。まあ、『指輪物語』を読まなくても、『ドラクエ』をプレイしたことがなくても、今の時代のファンタジーを楽しんだりはできるだろうけど、歴史を語るのに無知なのは恥ずかしいと思うな。ジャンルごとのバイブルはあるわけで、基礎教養も知らずしてジャンルを語るのは嘆かわしいと考えるのは、年寄りの愚痴なのかな、と」

翔花「いいわよ。わたしはゴブリンスレイヤーを楽しむから」

NOVA「それを楽しむにも、ロードスやゲームブックのFFシリーズは知っておいた方がいいんだが、まあ、軽く楽しむのも、深く楽しむのも、結局は読み手や受け手の自由だもんな。ただ、ネットで誰もが対等に発信できる場で、軽い(ライトな)ファン層と、深い(ディープな)マニア層じゃ、求める理想や楽しみ方が違うって話で、どっちが良いとか悪いとかで噛み合わないと荒れた議論になりやすい」

晶華「元々、ライトノベルって軽い小説って意味だったけど、90年代からジャンルが30年も経って、もう重厚感マシマシだもんね」

NOVA「そこで、ラノベ界隈でも、時代に合わせた軽さ、もしくはチープさを表現する俗語として、ネット小説由来の『なろう系』って言葉が生まれて、ええと、もう何年だっけ?」

晶華「小説投稿サイトの『小説家になろう』が生まれたのが2004年で、なろう系ってジャンル名になったのは、2010年代前半だと言われているわね」

NOVA「すると、今がなろう系というジャンル成立10年めぐらいか。十年一昔って言うが、もうそんなになるんだな」

翔花「わたしたちの物語は、なろう系?」

NOVA「さあ。書いている本人はそういう自覚がないが、少なからず影響は受けているのかもな。自分のイメージとしては、異世界転移ではなくて、エブリデイマジックの方向性と考えているが*1

晶華「ジャンルの話や、ファンの軽さや深さの話はひとまず置いておいて、主人公の話に戻りましょう。PC1なのに主人公じゃないケースって何?」

 

クリスタニアの主人公話

 

NOVA「PC1ってのは、テーブルトークRPG用語なんだが、物語の登場人物であるキャラクターを作る前の中の人(プレイヤー)のうち最初に発言した者を、リプレイ記事でそう記述する慣習から始まった」

翔花「別に主人公と決まっていたわけじゃないのよね」

NOVA「ロードスの作者の水野さんは、『英雄とは戦士である』との価値観から、PC1を主人公戦士として書く傾向があるけど、ロードスの続編のクリスタニアの中でゲームらしい事故が発生した」

晶華「『漂流伝説』に次ぐ、2作めのリプレイ『蟻帝伝説』の話ね」

NOVA「いきなり、そんなタイトルがポンと出るなんて、マニアかよ!?」

晶華「マニアの親のNOVAちゃんに言われたくない」

翔花「??? わたしには付いていけない世界ね」

NOVA「ええと、クリスタニアはロードスの続編で、同じ世界フォーセリアの別大陸の話なんだが、最初のリプレイ『漂流伝説』はロードスRPGを使って、同じような設定の半島王国ダナーンから、クリスタニア本土に入る話なんだ」

晶華「ダナーン半島とクリスタニア本土は、断崖絶壁で阻まれていて、行き来ができなくなっていたのよね」

NOVA「その壁を作ったのが、クリスタニアの神、獣の姿に身を変えた神獣の一柱ルーミスだったんだが、典型的ファンタジー世界のロードス(およびソード・ワールドアレクラスト大陸)に対して、クリスタニアは神獣を祀る獣人たちの未開拓な世界だったんだ」

翔花「つまり、わんだふるな世界ってことね。ニコガーデンみたいな」

NOVA「ずいぶん違うと思うんだが、クリスタニアのルールだと、こむぎはともかく、ユキことニャミーは再現できるかもしれないな」

翔花「こむぎが再現できないなんて、わんだふるじゃない」

NOVA「だって、猫の神獣はいるけど、犬の神獣がいないんだから仕方ないだろう。狼の神獣でいいなら、こむぎも再現できるだろうが」

翔花「つまり、獣から人に変身できるってことね」

NOVA「ゲーム上は、逆だけどな。普段は人間で、戦闘時に獣人形態でパワーアップできるのがクリスタニア在来の『神獣の民』だ。最初に、ロードスRPGのキャラたちが、神獣の民の娘マリス(NPCヒロイン)と遭遇して、狼に変身できる彼女を魔物と勘違いしたりしながらも、クリスタニアという世界への理解を深めていくのが『漂流伝説』なんだけど、そもそも、この物語が小説では完結していないんだ」

翔花「最初の話なのに?」

NOVA「クリスタニアは、メディアミックスの悪い面が露骨に出た作品で、リプレイと小説とラジオドラマと劇場版アニメとがほぼ同時並行で進んで、それぞれが同一世界ながら、別々の時代の物語を描いて、全体構造をつかむのに非常に手間の掛かる作品シリーズだったんだな。リアルタイムで追って行くと、新作が別メディアで登場するたびに世界の新しい秘密が分かって(ロードスとの物語リンクとか)、深いネタの宝庫なんだけど、後から追っかけると、とにかく入り口が分かりにくい。物語のスタートがどの作品なのかを考えると、一番分かりやすいのがTRPGのルールブックを読め、という」

翔花「小説から入っても、アニメから入っても、分かりにくいってこと?」

NOVA「小説は、水野さんの『漂流伝説』から入るのが分かりやすいんだけど、他の伝説タイトルは、水野さんの直系の弟子と言うべきクリスタニア班の河添省吾さんや白井英さん、それと俺の同期の栗原聡志くんがそれぞれ書いて、チームで一つの世界観をいろいろな角度から描く、いわゆるシェアード・ワールド形式で進めて行った」

晶華「ソード・ワールドの短編小説集みたいな形ね」

NOVA「この作家がバラバラの作品集という形式だから、後から復刻しようとしても、すでに引退している人だらけだから、水野さん一人ではどうしようもないんだな。ロードスや、ソード・ワールドリウイは水野さん一人で書いたから、電子書籍などでも復刻しやすいのだけど、クリスタニアは水野さんが監修しつつも、作家は別々だから復刻障壁も、そしてファンの参入障壁も非常に高い作品ということになる。クリスタニアを追いかけるには、前提としてロードスを履修しないといけないし、そもそも当時は出版社さえ角川とメディアワークスで(系列企業とは言え)違っていたから、メディアミックス展開が後の時代の復活を邪魔した形になる」

翔花「小説から入る難しさは分かった。アニメは?」

NOVA「『はじまりの冒険者たち レジェンド・オブ・クリスタニア』というタイトルなんだが、『漂流伝説』の主人公レイルズたちの10年前に、ダナーンからクリスタニアに渡った先代冒険者レードンたちの物語だ。とりあえず、クリスタニアの主人公を挙げるとしたら、レードン、レイルズ、そしてガオガイガー以前に〈承認〉のワードを連発した獅子の戦士リュースの3人ということになるな」

晶華「ええ? 神王バルバスの憑依先となった漂流王さまは?」

NOVA「ずっと眠っている黒衣の騎士のどこが主人公だ?」

晶華「ずっと眠っているのだったら、星矢さんだって同じじゃない?」

NOVA「今週、起きるはずだから。しかし、クリスタニアは作品そのものがエタったから、アシュラム様が目を覚ますことは望めないだろうな」

晶華「水野さまが、目覚めしアシュラム様を主人公にした『未来フォーセリアSF編』を書いてくれたら、ワンチャンある!」

NOVA「公式が許すか! どう聞いても、同人ネタだ。水野さんがそんなのを書いたら、お願いですから、『誓約の宝冠』の2巻を書いてください、と土下座して頼むロードスファンは俺一人ではあるまい」

翔花「よく分からないけど、クリスタニアの主人公は一人じゃないってことね。はじまりの冒険者に1人、漂流伝説に1人、もう1人は何伝説?」

NOVA「リュースは、封印伝説、暗黒伝説、傭兵伝説、秘境伝説まで4作品においてPC1相当の立ち位置だったんじゃないかな。まあ、傭兵伝説では傭兵団の団長として、読者から募集した傭兵たちを冒険に派遣する形式だったから、主人公と言っていいのか微妙だけど、作品世界の中心を担ったのは間違いない」

晶華「冒険者から、冒険者を統べるギルドの長みたいな立ち位置に出世したってことね」

NOVA「クラシックD&Dで言うなら、エキスパートレベルの冒険で戦士がお城を作って、地方領主になったから、その後は地方領主らしい規模の大きい冒険を続けるか、それとも自分の家臣の騎士見習いとか、後見してる若者をプレイするように切り替えて、彼らが解決できない問題が発生した場合に、満を持して高レベルの領主PCが再登場するかはGMとプレイヤーの考え次第。そういうプレイスタイルを提示したということで、傭兵伝説リプレイは団長リュースを中心にした若き傭兵団員たちのアンソロジー的な物語になったわけだ」

翔花「すると、レードンさんが始めて、レイルズさんが後を継いで、リュースさんが神獣の民の立場でクリスタニアの中心人物になって行ったって流れ?」

NOVA「歴史的にはそうだけど、リアルでの追跡では、レイルズが始めて、レードンが過去と現在をつなぐキーパーソンになって、リュース主人公の時期がシリーズの安定に至ったんだが、TRPG冬の時代に巻き込まれて、南クリスタニアへの旅立ちで中断されたということになる。ゲームのルールの復刻は、ファンの熱意でされたけど、物語の再起動は為されないまま、水野さんの終了宣言が公式に出た、と」

晶華「でも、NOVAちゃんは、100年後という時代背景でのロードス新展開で、クリスタニアへのミッシングリンクが少しでも描かれることを期待していたのね」

NOVA「だって、ダナーン王国はロードスの亡国の民が新天地を求めて漂流した先で、大白鳥の神獣フーズィーの導きで成立したという設定なんだから、ダナーンの元になったロードスの亡国というのが具体的にどこなのか気になるじゃないか」

晶華「その答えは、水野さんだけが知っているってこと?」

NOVA「直接メールして聞くという手もなくはないんだが、こういうのは作品の中で示される方がファンとしては感じ入るんだよな。作者の脳内裏設定よりも、作品の中で描かれる物語を大事にしたい」

 

翔花「で、『漂流伝説』が完結していないとか、『蟻帝伝説』のPC1の話はどうなったの?」

NOVA「ああ、レードン、レイルズ、リュースの3大主人公の話に夢中になって、その辺を飛ばしていたようだな。項目改めるわ」

 

未完の主人公レイルズと、薄幸の主人公テューレ

 

NOVA「誤解を招かないように言うと、『漂流伝説』の物語自体は完結している。ダナーン半島から、開いた壁を抜けてクリスタニア本土に旅立ったレイルズ一行が、勝手の違う神獣たちの民と異文化交流の冒険を繰り広げる中で、クリスタニアの世界の理を見聞して、暗黒国家ベルディア*2との戦いを経てから故郷に帰るまでの物語として終了している」

翔花「だったら、未完って言うのは、NOVAちゃんの勝手な決めつけね」

NOVA「いや、違う。クリスタニアの歴史の中では、その後、レイルズがダナーン王国の幽閉された王女を救出してから、彼が王女を娶って国王になって大白鳥の民(新しき民)として世界の一翼を担う物語が設定されていて、水野さんもそういうレイルズ主人公の『漂流伝説・続編』を書く構想はあったんだけど、ロードスやソード・ワールドの仕事を優先した結果、レイルズ続編は実現できなくなってしまったんだ」

晶華「ああ、『漂流伝説』は完結したけど、レイルズさんの物語は続きを書く予定があったのか」

NOVA「そう。だから、レイルズは最初のリプレイや本家小説の主人公であるにも関わらず、その後の物語の中ではパッとしない位置づけで、レードンやリュースほどの人気を獲得しなかったのだと思う。まあ、リプレイではただの女好きのエロ主人公でしかなかったのも災いしているのかもしれないが。イラストでもヒロインのハーフエルフ少女サイアや、銀狼娘のマリスと二股かけた描かれ方が目立っていたが、結局はダナーンの王女と引っ付いたという女の敵みたいなキャラ付けで、その主人公設定が後のソード・ワールド小説のリウイに継承されたのかもしれない」

晶華「水野さんの描く主人公で、最終的に王女さまと結ばれる英雄ってレアだもんね」

NOVA「主人公じゃなければ、ファリス神官のエトが有名だけど、基本的に水野さんは逆玉の王さまよりも、己の剣の腕で玉座を勝ち取る勇者を王にしたがるもんな。3人のヒロインとの恋愛模様を描く必要がある『漂流伝説』続編は、90年代時点では相当にハードルが高いんじゃなかったかな。21世紀になると、ロードスのニースとリーフのスパークをめぐる微妙な三角関係とか、リウイとか、他の作品でも積極的に女性にモテるタイプのハーレム系主人公を描くようになるけど」

翔花「女の子がいっぱいの方が、多くのファンに受けるってこと?」

NOVA「編集さんはそう要望するんだろうな。で、水野さんは1対1の悲恋っぽいラブロマンス(英雄に恋した女の子の結ばれない恋)は描けるんだけど、ハーレム系の主人公をめぐるドタバタラブコメはかなり試行錯誤していたようにも思える。それで、主人公とヒロインの1対1の関係を複数ヒロインそれぞれの視点で描いたのがリウイということになる」

晶華「クリスタニア初代主人公レイルズさんの物語は、中途半端で終わったけど、そのエッセンスの一部は後年に反映されたってことね」

 

NOVA「さて、次に『蟻帝伝説』だが、この蟻帝というのは蟻の神獣クロイセのことであり、また、その代理役として『真紅の皇帝』の称号を与えられたレードンのことでもある。蟻帝伝説は、ダナーン国王レイルズの時代に冒険を始めたプレイヤーキャラが、他国への侵略活動を続ける蟻の帝国と対立しながら、その内情を知って、武闘派の皇帝レードンと対決する革命劇。最終的には皇帝の退位と、穏健派が主流を占めるようになった帝国との和平で帰結する」

翔花「いろいろとややこしい政治ドラマが展開されるのね」

NOVA「小説のロードスほどじゃない。部族レベルあるいは都市国家レベルの陰謀劇をシナリオに落とし込むのは、割と水野さんの十八番だったと思うし、個人視点の冒険者の物語を、一段高い国家視点で考えるのが『ロードス島戦記』の特徴だったとも言える。

「それに対して、個人視点を日常生活まで含めて軽妙に描いたのが、山本さんのソード・ワールド・リプレイ。パッと見、高尚っぽいのが水野さんの話で、だけど、これはゲームのシナリオとしてプレイはしにくい。GMが世界の大きな動きを語る吟遊詩人みたいな役割を果たしがちなのに対し、山本さんの方はプレイヤー主導で冒険者視点、GMも国家を大上段に語るのではなくて、NPCとしての個人視点で物語を語る傾向があるな、と」

晶華「水野GMと、山本GMはリプレイの書き方が違うって話?」

NOVA「そう。その違いは端的に言えば、為政者視点の水野GMと、反為政者的というか個人視点が濃厚な山本GMとなって、それは御二人の書く小説にも表れていたな、と。いずれにせよ、ゲームとして真似しやすいのは山本さんの手法だと思うけど。友野さんや別会社のきくたけさんは山本流の後継者で、一方、水野流の傾向があるのは清松さんや鈴吹社長だと思う」

翔花「う〜ん、ゲームデザイナーさんの名前をいろいろ挙げられても、わたしには付いて行けないよ」

晶華「きくたけさんや鈴吹社長については、最近、コンパーニュでリナ老師と語っていたよね」

NOVA「ロードスやソード・ワールドを語る機会は多かったんだが、クリスタニアはハードルが高いと思っていた。でも、90年代のTRPGリプレイ話を語るのに、それをスルーしてちゃ重要なピースを落としてしまうからな」

翔花「つまり、蟻帝伝説の主人公は、真紅の皇帝レードンさんね」

NOVA「何でそうなる? 確かにGMの水野さんの視点ではそうかもしれないんだけど、ここでは敵ボスとしての登場で、しかも、かつてのアシュラムVSカシュー王みたいな、プレイヤーが見ているだけのボス対決劇になってしまう。PCのレベルでは、皇帝となった先代、いや先々代の冒険者には勝てないからな。

「あくまで直接対決ではなくて、NPCを直接対決のできる土俵に連れて行くのがPCのお仕事なわけだ。両勢力の主張を聞きながら、その平行線の意見に横槍をはさんで、自分たちの結論を下すのがプレイヤーのお仕事。サイコロを振った戦闘ゲームじゃなくて、立場を踏まえたロールプレイが中心となるプレイスタイルだな。正直、世界観さえあれば、ゲームは何でもいい(最低限の判定ルールさえあれば)という決着のつけ方だった」

晶華「はじまりの冒険者を敵役として登場させて、今後の展開(過去編)への伏線にするってやり方ね」

NOVA「で、ここまでは前振りなんだ」

翔花「ちょっと、これだけ長く喋っていて、まだ前振りなの?」

NOVA「お前がクリスタニアの素人だからな。どんな作品か解説の必要を感じた」

 

翔花「で、本題は何?」

NOVA「PC1が主人公ではない、という珍しいケースの例示だ。ロードス第3部以降、水野さんのリプレイではPC1の戦士が、何かと不幸属性をイジられるケースが多く見られるが、その中でも不幸中の最大不幸が、蟻帝伝説の初代主人公テューレだ。彼の名前を聞いて、反応できる人間とは、良いお酒が呑めて、昔話をたっぷり語れそうだ。逆に、テューレの名で反応できないのは、リアルタイムのクリスタニアファンとは言い難い」

晶華「アニメしか知らない人は無理でしょう」

NOVA「今からでも遅くない。リプレイを買いたまえ」

翔花「明らかに旧世紀の遺物なので、今さら遅いと思うけど(漂流伝説と違って電子書籍にもなってないみたいだし)、テューレって人の何がそんなに不幸なの?」

NOVA「商業リプレイ史上初の『最初の冒険で死んで、主人公の座から脱落した主人公』だ。それを読んで、多くの業界人が絶賛したという」

晶華「絶賛って何で?」

NOVA「それまでのリプレイの常識では、実際のゲームのプレイ中でキャラが死んでも、記事の中では死ななかったことにして、適当に辻褄合わせをするのが常識と思われていたんだ。ましてや、主人公と目されていた戦士がいきなり死ぬと、話を続けられないじゃないか。それを、水野さんは正直にゲームのプレイどおりに殺した記事を書いて、さあ、どうしよう? ってところで続く、としたわけだ」

翔花「教会に行けば、復活させてもらえるでしょ?」

NOVA「それには金もないし、クリスタニアの世界は部族社会で、教会という文明的な施設もない。結果的に、テューレを復活させてくれそうな大司祭は、敵の帝国に捕まっている。冒険のテーマが、帝国の侵略活動を何とかするの他に、死んじゃった元主人公を生き返らせることまで加わった」

晶華「それって、今の聖闘士星矢さんね」

NOVA「! 本当だ。時を超えて、聖闘士星矢クリスタニアの物語がつながったや。凄え」

晶華「ここまで考えて、話したんじゃないの?」

NOVA「いや、晶華に指摘されて、初めて気がついた。偉いぞ、晶華」

晶華「私が偉いのは、今さら言うまでもないとして、とにかくテューレさんを生き返らせることが、『蟻帝伝説』の目的ってことね」

NOVA「これをリアルタイムで読んでた業界人の方々は、この時の水野さんの対応を話題に酒飲み話で盛り上がるわけだよ。まさに嘘偽りない理想的なGMのあり方だって。死んだキャラを物語の都合で安易に復活させず、それをシナリオのネタとして、何とか話を紡いでみせる。しかも雑誌連載の記事で、それをしたのは凄いとヨイショされまくり放題。あの飲みパーティーは楽しかったなあ」

翔花「NOVAちゃんの遠い昔の思い出ってことね」

NOVA「で、そのエピソードには続きがあって、当人は覚えてらっしゃらないかも知れないが、当時(90年代の半ば)、まだセブン=フォートレスを出版する前だったリプレイ書きのきくたけさんが、いつかああいうシチュエーション(ダイス目による不慮の事故で、ゲームならではの思いがけない展開)で読者を驚かせたいという趣旨のことをおっしゃっていたと記憶する。それが後に『ダイス目による不慮の事故で、最終決戦で主人公勇者が死んでしまい、世界が滅亡した(冥魔に支配された)』というリプレイに結実したんだ」

NOVA「日本のTRPGリプレイの先駆者は、ロードスおよびクリスタニア水野良さんで、その後、ソード・ワールドの山本さんや、他社の方々が数多くのゲームリプレイを書いてきて、俺もその人たちの影響をいっぱい受けて来たのが当記事でも明らかなんだが、じゃあ、誰が日本一かとなった時に、先駆者は小説の方をメインにして、リプレイ執筆は旧世紀止まりだった中で、最近までリプレイを書いて、20年以上続けている人は友野さんとか、きくたけさんとかになるかな。執筆期間は友野さんがウォーロックマガジンでAFF2版のリプレイを書いて最長だと思うけど、執筆作品数はおそらく、きくたけさんがトップだと思う」

翔花「そんなに凄い人なんだ」

NOVA「他の人が小説を書いている間も、リプレイを書き続けて、Wikipediaに掲載されているのだと50冊近い。載ってない単発作品が、アリアンロッドとかナイトウィザード3版とかであるから、50冊は確実に超えているだろうな。うちの本棚にも、きくたけリプレイは結構あるけど(40冊近く)、これを量で越えるリプレイ作家は他にいるだろうか」

晶華「実は、NOVAちゃんは菊池たけしさんの大ファンだった、と」

NOVA「TRPGリプレイファンを自称するなら、必然的にそうなる。まあ、きくたけ作品の話は現在コンパーニュで語っているし、まだ語るつもりなので、こちらの今はクリスタニアに戻る。ええと、テューレが初回で討ち死にして、主人公の座から脱落したので、後を継いだのが知識神ラーダの女神官フィランヌだ。水野リプレイ初の女性リーダーで、しかも初の戦士でない聖職者リーダーだ。戦死したテューレのプレイヤーは、新人戦士のカルーアを作って続投はしたんだけど、一人だけレベルが1つ低くなってしまったこともあり、パーティー内のヒエラルキーが一番下だ。

「おまけに、パーティーメンバーはみんな『どうしてテューレを生き返らせるのに、こんなに苦労をしなければいけないんだ?』と冗談半分、ネタ半分でイジりからかうのに対し、カルーア君は『いや、皆さん、そんなことを言わずに頑張ってテューレさんを復活させましょうよ。だって、大切なお仲間なんでしょ?』と涙目で訴える様は、まさに前例のないシチュエーションだ」

翔花「主人公脱落して、かわいそう(笑)」

NOVA「かわいそうと言って、(涙目)じゃなくて、(笑)となるのがリプレイの軽妙さだな。『他人の不幸は蜜の味』って名言が出たのもクリスタニアだし。シリアスな物語でそんなことを言ってたら、人間関係がギスギスして仕方ない。ゲームプレイという遊びの場だからこそ、関係者の了解のもとで許される暴言やネタがあるってことだな。まあ、許されなかった事例は、きくたけさんが砦リプレイの一作で正直に描いているけど」

晶華「前半と後半で、プレイヤーさんの内部事情で登場キャラが入れ替わったりした作品ね」

NOVA「業界人同士の暗黙の了解で、お仕事として行われるリプレイ収録が主流なんだが、GM個人の人間関係で素人さんを巻き込んだ形のプレイもたまにあって、その中でいろいろとトラブった実例だからな。本来は黒歴史になっていてもおかしくないのを、比較的赤裸々に公開して、それすら物語世界の歴史に組み込んだ作品だ。まあ、この素人的な生々しさも含めてのきくたけ節だと思う」

翔花「きくたけさんは素人なの?」

NOVA「90年代はまだな。ただ、3作めの『リーンの闇砦』からプロっぽい技の冴えを見せるようになって、ノリと勢いとグダグダ感の砦初期2作が、ノリと勢いと緻密な伏線回収芸と、あとプレイヤーの暴走すら巧みに受け止めて話を上手くまとめる職人芸に達するのが3作め。きくたけさんに限らず、この時期(90年代からゼロ年代)のTRPGリプレイは前代未聞のオンパレードで、非常に刺激的な物語が量産されていく中で、次第に成熟する過程が楽しめたなあ」

 

晶華「すぐに寄り道したがるグダグダ感は、NOVAちゃんの素人っぽさってことで、クリスタニアに話を戻します」

NOVA「お、おう。プロの文章なら、本筋から外れた寄り道をいっぱい削って短く切りつめることも考えるんだけどな。文量にも制限があることだし。

「でも、今はプロじゃないってことで、自由気ままの本題はクリスタニアのテューレだ。『蟻帝伝説』のラストでめでたく復活したテューレさんは、これもリプレイ史上初のPCの2シリーズ続投となって、次の『黄金伝説』の主役に返り咲くことになったわけだ。ただ、リプレイの表紙絵のセンターには女精霊使いのミーアさんが来ているな」

晶華「小説版では、末弥純さんの格好いいイラストでテューレさんが描かれているわ」

NOVA「蟻帝伝説の小説版も、イラストが末弥さんで、こっちはレードンが主役みたいだ」

翔花「やっぱり、レードンさんが主役で正解じゃない?」

NOVA「クリスタニア史的には、超重要人物だからな、レードン」

NOVA「媒体によって、全然イラストや作画が違うのが、統一感において難点なんだが」

NOVA「レードンと言えば、金髪のイメージが強いんだが、OVA版ではロードスのパーンに合わせてなのか黒髪の地味キャラになっている。末弥さんの皇帝レードンは、年をとったり、光の加減で銀髪に見えているのかもしれないと解釈できるけど、OVA版のキャラデザインは、いろいろツッコミが入るわけだ」

晶華「ダークエルフのピロテースさん(クリスタニアではシェールという偽名で行動してる)が全然ダークじゃなくて、これじゃない感だし」

NOVA「メディアミックスだったら、キャラ絵のイメージはある程度、統一して欲しかったな」

翔花「神王伝説ってのは、どういう話?」

NOVA「こちらは、リプレイ原作ではない、『はじまりの冒険者たち』の続編だな。まあ、一応、『はじまりの冒険者たち』は文章化されていない音声媒体のリプレイがあって、関俊彦さんが魔術師ナーセル役で『成せばナ〜セル』とか駄洒落を言っていたのが印象的だったんだが」

晶華「いろいろな記憶ボックスがどんどん開いて来るわね」

NOVA「ゲーム関連の書籍以外をいろいろ処分してしまったのが悔しい。まあ、神王伝説は、過去編につながる裏クリスタニアの歴史作品で、ロードスからのリンクも濃厚で、とにかくマニアックな情報量の非常に豊かな作品だったと記憶する。で、こういう話と、リプレイ4作『封印伝説』のリュースたちの物語が錯綜して、リアルタイムで追っかけていたファンは壮大な伝説リンクにワクワクしていたものだ。世間でエヴァの神話謎解きが流行していた裏で、TRPGファンの間ではクリスタニアの伝説謎解きが盛り上がっていたわけで、メディアミックスとか作品世界内クロスオーバーで、水野さん主導のファンタジー物語でも最も錯綜した傑作と認定する」

翔花「その中で、忘れ去られたテューレさんの物語があるのね」

NOVA「そうなんだ。『蟻帝伝説』のラストで晴れて復活したテューレは、しかし復活費用を莫大な借金として抱えてしまい、さらにかつての仲間たちはみな高レベルに育っていて、釣り合いがとれない。一人取り残されたテューレが一攫千金の願いが叶うという黄金峡への冒険を新たな仲間とともに開始する話で、最終的に願いが叶うんだが……」

翔花「叶うんだが?」

NOVA「『波乱万丈の人生を送る』という願いを抱いたミーアを除き、他のパーティーメンバーは黄金峡に関する冒険の記憶を消されてしまうんだ。つまり、公式にテューレたちの冒険物語は、一部の者を除いて忘れ去られてしまうというオチ。一応、小説版では、テューレがその後のクリスタニア物語の主流になる『傭兵団・獣の牙』の地方支部創設に力を貸したって形で補完されているが、彼の物語がクリスタニアの表舞台から忘れ去られてしまうのも、公式どおりということになる」

晶華「物語として忘れ去られてしまうのは、悲しいわね」

NOVA「そうやって、歴史の影に消えて行った物語は数多いが、自分の好きな物語は、こうして語り伝えるのも年寄りの責務かなあ、と感じることもあって」

晶華「何を年寄りぶっているのよ。NOVAちゃんが紡ぐべき物語は、まだまだたくさんあるでしょう?」

NOVA「そうかな? うん、そうだな。よし、『主人公論』でまだ語りたいネタはいろいろあるんだ。聞いてくれるか?」

晶華「つまらない話じゃなければね」

翔花「あと、あまりに錯綜しすぎる話だと、読者さんの参入障壁を上げちゃうと思うの。寄り道脱線癖を改めないと、読者さんが読んでくれなくなるわよ。話がどこに飛ぶか分からなくって、読みにくいって」

NOVA「転がるカオスを楽しむ時代じゃないのか、今は? まあ、クリスタニアという作品シリーズ自体、そうしたメディアミックス錯綜感を楽しむ作品だったんだがな。インターネットでファン談義をするのに絶好のコンテンツだったと思うんだが、その意味では少し早すぎたってことになる。まあ、クリスタニア公式サイトみたいなものがあれば良いんだが、結局、水野さんの簡単な作品紹介とWikipediaの他は、断片的だからなあ」

晶華「一応、こういう本もあったけど?」

NOVA「持ってるよ」

翔花「……だったら、ここまでグダグダ説明しなくても、その本を読ませなさいよ〜。本一冊で、複雑怪奇なクリスタニア博士になれるんだったら、読む価値がある」

NOVA「……って言うか、この本の最大の謎は、80ページに及ぶキャラクターリストなんだが、どうして先頭にテューレがいるんだ? テューレ、ナーセル、フィランヌ、リュース、レイルズ、レードンと並んでいる順番の基準が分からん。一応、その後は五十音順になってるんだが」

晶華「テューレさんのプレイヤーの人が編集したんじゃないの?」

NOVA「誰だろう? 俺のSNE参加時期的にリュースのプレイヤーが誰かは分かっているんだが、それ以前が分かっていない。ミーハー的にあれこれ質問するのは遠慮していたので、関連業務以外は日常会話や飲み会の場で語られた裏話しか記憶がないからな」

翔花「NOVAちゃんは確か、ロードス・リプレイのPC1経験者だったのよね」

NOVA「水野さんじゃなくて、コンプRPGの高山GMリプレイのうち、単行本化されていないキャラだな。モスの王族騎士ボーグナインってんだが、さっき見たらWikipediaに載っていたので、ニッコリだ。昔、調べたときには載っていなかったので、やっぱマイナーだよなあ、とガッカリしていたんだが、忘れ去られていなくて嬉しい。

「たった1シリーズだけの公式PC1で、主人公を演ったときもあったんだぜ。来年が、ボーグナイン誕生30周年になる。読者参加企画なので、ボーグナインを作ったのは俺じゃなくて、コンプRPG読者さんの誰かってことになるんだが、もしも、この記事を読んでいたら、あんなキャラの演じ方で良かったのかと感想を聞きたい次第」

晶華「いや、ここでコメント欄で『ボーグナインを投稿した者です』って書き込みがあったら、ビックリよ。まさに運命がリンクしたって感じで」

NOVA「それこそ、マジカオスの転がり方だな。ともあれ、ロードスのお仕事をしたいとリクエストをしたら、少しぐらいは関わることができたって話だ。今にしてみると、クリスタニア志望の方が小説家デビューもできたのかもしれないが、水野さんは栗原くんの方に目をつけたからな。多少は、いいなあ、と思いながら、こちらは友野さんからあれこれご教示いただいたり、その縁で山本さんともわずかながら関われて、うん、冬の時代までは良い時代だった」

晶華「NOVAちゃんが一番、輝けた時代ってこと?」

NOVA「いいや。他人の光で輝いていても、ただの衛星、月の光だからな。俺はささやかながら、自分の光で輝きたいと思って、今日まで頑張っているんだし、だからこそのShiny NOVAってことさ」

翔花「うん、懐かしの90年代の思い出は輝かしいけど、今も心は輝かしくありたいってことね」

晶華「変身できなくても、心はShinyってことね」

NOVA「それはそれとして、自分の中での輝ける瞬間は、その都度、大切な思い出として大事にしたいけどな」

(当記事 完)

*1:リアル世界の住人が架空の不思議な異世界に行くのが異世界転移。リアル世界で死んだりして生まれ変わるのが異世界転生。リアル世界に帰って来れる可能性のあるのが転移で、ほぼ帰って来れない一方通行なのが転生と定義できる。一方、エブリデイマジックは、日常のリアル世界に非日常の存在が出現して、ドタバタコメディを展開したり、別世界視点からの日常風刺を行ったり、現代ではサブカル雑談を日常系エンタメ物語に昇華したものまで拡張してる。物語の登場人物が、作者アバターと自分の物語の作風をあれこれ言ってるショートコントも、エブリデイマジックの範疇に入るかも。多分にメタ視点の要素がある。

*2:ロードスの暗黒皇帝ベルドの名にちなんで、漂流王となったアシュラムが付けた国名。