帰還者の物語
こうして、ぼくたちは失われた伝説の妖精郷から何とか帰還することができた。
信じられないかもしれないが、妖精郷は間違いなく存在する。ラクシアの地上から離れたところに。
物理的な証拠は残念ながら示せない。妖精郷で入手した物品はどうもラクシアには持ち帰れないようだ。特別な処置を施せば何とかなるかもしれないけど、あの時は妖精郷から帰還するための門を開くので精一杯で、細かいことを考える余裕はなかったんだ。
だけど、ぼくの記憶には確かに残っている。ここまで記した物語が何よりの証拠だ。記憶や思い出じゃ証拠価値が薄いことは分かっている。作り話じゃないかと言われたら、それまでだ。
それでも信じる人は信じるだろう。
また、物理的な証拠があっても、信じようとしない人は決して信じない。
人は信じたいものだけを信じるものだから。
あるいは、信じた方が得をする場合のみ、もしくは信じても損をしない場合のみ、信じるのかもしれない。
そして、ぼくにとって、その物語が真実かどうかは、どっちだって構わない。ただ、その物語が面白いかどうかが大切なんだ。
ぼくは妖精郷で面白い経験をいろいろした。その面白さをみんなに語って伝えたい。つまらない現実よりも、面白い夢物語の方が望ましいし、夢物語と思っていたことが実は現実だと分かるのは刺激的だ。
そう、ぼくたちが初めて妖精郷に転移したときみたいに。
夢と現実を行き来することは、なかなか難しい。
言葉の力で果たせるならば……それこそ魔法だ。
このラクシアで魔法の存在を信じない者はいないだろう。
冒険者であるなら、なおさらだ。
だったら、古い魔法で創られた妖精郷の存在だって信じて欲しい。あなたたちの信じる想いがマナの流れになって、妖精郷に流れ込み、妖精郷の崩壊を防ぎ止めるはずだから。
残念ながら、妖精郷は崩壊の危機に瀕している。
あまりに長くラクシアから切り離されたために。
だから、ぼくたちは妖精郷とラクシアをつなぐ門を開いたんだけど、一時しのぎでしかないだろう。
近い将来、ぼくたちは妖精郷の真の復興、再生、新たな創造のために、再び彼の地に旅立つつもりだ。
ぼくは鍵を持っていないけど、向こうの地に残された人たちのためには放っておけないんだ。
今のままでも、ぼくは個人的な目的を果たした。妖精郷に赴き、いろいろな奇跡を見聞きし、妖精郷がラクシアから切り離された理由の断片を知り、あなたたちに一片の真実を伝えることができて、かけ出し作家としての名誉を得た。
だけど、これだけでは、ぼくの心はまだまだ満たされない。
どうやら、ぼくの心は妖精郷に取り憑かれ、彼の地に囚われてしまったようだ。
だから、旅立つんだ。
向こうの地で、やり残した仕事を果たすために。
さらなる好奇心を満たすために。
そして、もっとみんなが妖精郷を信じることができて、彼の地とラクシアをしっかりと結びつけることができるように。
その時には、また新しい物語を公開しよう。続編はもっと素晴らしい話になるはずだから。
(『深智魔術師にして冒険小説家、サイバ☆リオンの妖精郷に関する手記』より抜粋)
ゲーム終了後の精算
GM(NOVA)「さて、君たちはカシュミーラを除いて、それぞれの目的を果たしたので、いろいろと精算しよう。まず、妖精郷から帰って来れた者は『妖精郷からの帰還者』の称号を得て、名誉点を300点得る」
サイバ(009)「これでウォーリーダー技能の鼓砲が使いやすくなるな。効果範囲が名誉点に応じて拡大するシステムだから、名誉点が得られない妖精郷では成長させ難かったんだ」
GM「近い将来、鼓砲のルールも改訂されるようなことがGMウォーロック誌の1号に書いてあったけど、それがいつのことになるかは未定と」
サイバ「改訂されたら、それに合わせたらいいさ。今は2.0版のルールのままで使うしかない」
GM「そして、サイバ☆リオンの目的である妖精郷の謎は一定量、解明できたということで、『妖精郷の解明者』の称号と共に、名誉点が100点加算される」
エマ(翔花)「それはリオンさんだけなの? それともパーティー全員?」
エマ「緑のオーラを放ちます。うん、リオンさんの名誉はみんなのもの」
GM「次に、キャプテン・マークスの目的であるエマ救出も果たして、『妖精郷の救出者』の称号と共に、名誉点が100点加算。さらにエマの実家から一人2000ガメルの報酬が得られるとシナリオには書かれているんだけど、エマの設定が変わったからなあ。没落したローズワース家の資産を入手できたことにしよう」
マークス(ケイP)「ローズワース家は没落したんですか?」
GM「政敵ザイアス・N・ヴァイコスの陰謀でね。ただ、そのザイアスも後からエマみたいに行方不明になって、ヴァイコス家も陰謀の罰が当たったかのように没落したんだ。つまり、ローズワース家とヴァイコス家はどちらも政治の表舞台からは姿を消したということで」
マークス「それって、どこの国でしょうね」
GM「うん、テラスティア大陸で、貴族がいて、海の側で、海賊というものが重要な国を探してみたら、ザルツ地方で『クーデリア侯爵領』というルキスラ帝国の自治領があったんだ。この国は『悪の巣窟』という異名でも知られており、現在の当主のカデル・クーデリア侯爵が盗賊ギルド〈デス・クリムゾン〉と結託していて、悪徳政治を行なっているわけだね。さらに前当主のグレゴールは健在で、表向きは隠居しているものの裏社会における影響力はまだまだ大きいとか、彼の娘にして現公爵夫人のドルネシアは『海賊妃』の異名を持つ豪快な姉ちゃんで、この地方最大の海賊団〈アレスタの黒い鮫〉の女首領でもあり、夫と対立関係にある」
エマ「え? 何、その設定? 夫婦なのに対立関係っておかしくない?」
GM「ドルネシアの母方の祖父が、この地の海賊王だったりするわけだな。その祖父が亡くなったので、既に政略結婚でカデルに嫁いでいたドルネシアが家出して、海賊一党の女ボスになったんだ。カデルは粘着質の陰謀家で、ドルネシアは直情的な気性だったから、性格の不一致もあったのだろう。おまけにカデルがルキスラ帝国に叛旗を翻すためにアンデッド軍団を作る陰謀を企てていたから、関係性が決裂。まあ、いつ内戦が勃発しても不思議ではないそうだね」
マークス「公妃が海賊の親玉なら、そりゃあ、私とお嬢さまが海賊になってもおかしくありませんね」
エマ「ちょっと待ってよ。わたしは聖戦士よ。海賊に巻き込まないで」
GM「うん、ローズワース家はこの地では珍しいぐらい公明正大な貴族の家柄だったんだ。悪徳が蔓延る地にて、正義の冒険者ギルドをバックアップするなど、法や秩序を維持しようと頑張ってきた。だから悪徳貴族のヴァイコス家と対立し、いろいろあってエマの失踪とかをきっかけに両者共倒れになったんだね。不穏な情勢の続くクーデリア侯爵領では、日常茶飯事的な事件かもしれない」
サイバ「それって、ソード・ワールドの公式設定なのか?」
GM「公式設定だよ。ワールドガイドのザルツ博物誌にしっかり書いてある。ローズワース家とヴァイコス家はもちろんこっちのオリジナルで組み込んだけど」
GM「きっとローズワース家はドルネシア派で、ヴァイコス家はカデル派だったんだろう。だから、キャプテン・マークスもドルネシア配下の船長だったのが、ローズワース家に仕えるようになって、聖戦士冒険者として正義のために励むエマお嬢さまのボディガードになったという設定を考えてみた。まあ、妖精郷の物語とは全く関係ない後付け背景情報なんだけど」
エマ「おとぎ話の世界である妖精郷に、ラクシアのリアル背景を持ち込むと、急に物語が生々しくなったわね。悪徳盗賊ギルドと、正義の海賊の抗争劇とか」
GM「何にせよ、ローズワース家は没落したし、仇のヴァイコス家も没落したから、今のエマは何のしがらみもない身だよ。もちろん、家の再興を考えるなら、しがらみを持つという選択肢もなくはないけど、そうなった場合、おいそれと妖精郷に向かうのは無責任ということになるだろうね。公式には、エマは行方不明扱いで、多くの者には死んだも同然と見なされているから」
エマ「自分の故郷がどうなったか気にはしていたけど、仇もいないんじゃ、今のわたしが戻ったところで政治体制をどうこうできるものじゃないってことは分かった。妖精女王の魂の片割れであり、女神を目指す身としては、俗世のことよりも彼方の地の安泰を守ることが使命だと考えた。それに行方不明のザイアスのことも気に掛かる。もしかして、わたしみたいに妖精郷に転移しているような虫の予感を覚えているってことで」
GM「そして、ミリィがどうなったか、と言うことなんだが」
ミリィ(晶華)「帰還ダイスの出目は9。バッチリ帰って来れたわね。個人目的の10万ガメルは未達成だけど、それは続編で果たしてみせる」
サイバ「君が帰れなかったら、ぼくたちも妖精郷に戻れないところだったからな。ぼくみたいにピンゾロを出したら、どうなるかドキドキしたよ。君には運命変転がないんだし」
ミリィ「運命変転はないけれど、あたしにはラッキーとハッピーの妖精がついているんだから」
サイバ「そうだったな。うん、君のラッキーとハッピーは、ぼくの人生にも少なからず良い効果をもたらしたようだ。君と一緒の妖精郷冒険譚は、ぼくを人気作家にしてくれたよ」
ミリィ「あれ、そうなの?」
サイバ「名誉点が得られたってことは、それを消費して、自分たちの冒険譚を小説にして出版することもできるんだよ。ルールによれば、誰か作家を雇って小説を書いてもらう形だけど、自分で書いた小説を出版できるようにアレンジしても構わないだろう」
GM「まあ、その辺の名誉点の使い方は、後でキャラ成長の時に考えるとしよう。最後に、君たちにはラクシアに帰還して、やるべきことがある。覚えているかな?」
ミリィ「詩人のマルキさんの願いを叶えてあげることね」
マルキの願い
GM「マルキの願いについては、この回に書いてある」
ミリィ「クエスト『マルキのペンダントを故郷のロッテに渡す』ね。エマさんとキャプテンさんが故郷に戻っている間に、あたしとリオン様も、ロッテさんに会って来る。そして、かくかくしかじかで、マルキさんは妖精郷で元気にやってるから、あなたも彼のことを愛しているのなら、あたしたちについて来て。彼に会わせてあげるから、と未来の妖精女王の微笑みで、ロッテさんに誘いかけるの」
サイバ「ちょっと、ストレート過ぎやしないか?」
ミリィ「こういうのは、強引すぎる方が上手く行くの。もしも、脈がないなら、あっさり断られるけど、その場合はしつこいアプローチは厳禁。断っているのに、ゴリ押しするようなやり方じゃ、ただの迷惑行為ね。だけど、相手が迷っているなら、しっかりリードしてあげて、全ての責任は自分が持つって約束してあげる。相手の嫌がる、得にならないことを頼んでおいて、自分は何の責任も持たないような一方的なお願いを押し付けてくるのは論外ね」
GM「確かに、その通りだな。そして、ロッテは今でもマルキのことを愛していて、忘れられないでいるから、未来の妖精の女王を自称する美しいエルフの美女の誘いかけに、素朴な乙女らしく瞳をキラキラ輝かせて、おとぎ話のヒロインになった気分で『はい、喜んで』と後先考えずについて行く」
ミリィ「チョロいわね。これでもしもあたしが人さらいの一味だったら、どこかの盗賊ギルドの組織に高い値段で売って、お金儲けに走るところだけど、そんなことは考えても実行するほど下衆じゃないんだから」
サイバ「考えて口に出すだけでも、十分下衆だと思うが?」
ミリィ「大丈夫。あたしは悪徳渦巻くクーデリア侯爵領の出身じゃないから。そういうダークな役割は、エマさんに任せた」
エマ「ちょっと。わたしは清く正しい聖戦士なんだから。実家のローズワース家はそういう悪徳とは対立する側よ」
ミリィ「ということで、あたしは未来の女王だし、仲間には聖戦士さまもいるし、有名作家もいるし、海賊の汚名を着せられた忠義の騎士さんもいるんだから、大船に乗ったつもりで付いて来て、とロッテさんを妖精郷に引きずり込む」
サイバ「引きずり込むって言い回しをやめろ。まるで、宇宙犯罪組織みたいじゃないか」
GM「そんなミリィの妄言を気に掛けることなく、恋心とお花畑ファンタジーな想いにのぼせ上がったロッテは、のこのこ妖精郷について行く。こうして、一人のうら若い乙女がラクシアから行方不明になるのだった。クエストを達成したということで、★3つを進呈だ。ただし、続編の物語で、ロッテをマルキに会わせられない状況になったら、ペナルティーで★3つを減らしてもらうけど」
ミリィ「売り払ったり、殺したりしちゃダメってことね」
GM「当たり前だ。そんなことになれば、妖精郷の女王としての名誉に傷がつくからな」
こうして、妖精郷の物語の第1シーズンは、続編への期待を膨らませながら幕を閉じるのである。
御愛読をありがとうございました(m0m)
●フェアリーガーデンEXクリアの状況
経験点:転移の魔法陣ダンジョンをクリアした★14個
マルキの願いクエストを果たした★3個
★合計17個
魔物退治分400点
ピンゾロ分(エマ1回)
収支:戦利品3250ガメル分+1人2000ガメル
獲得名誉点:500点
ブラウニー発見数:6体
遂行中のミッション
・転移の魔法陣を解放せよ→達成
受注したクエスト
・マルキのペンダントを故郷のロッテに渡す→達成
・凍結海のフラウにスイーツ5個買ってくる。
・光の樹のお宝を取り戻す(犯人は【虹の根元】の魔神)
その他の冒険目的&情報
「火柱の塔の魔力炉で〈妖精郷の鐘〉を鋳造できる」
「火柱の塔のエインセルにラナスイーツを渡せば、
〈炎精鉱〉をもらえる」
「火柱の塔に〈炎精鉱〉を持ってくれば、火の封印が解除できる」
「水晶塔の情報6ヶ所」(光は封印解除済み)
「大神殿の信者を解放できるよう成長」
(エマのプリースト10レベル以上でイベント発生)
「凍て付く山でスカディに会う」
「凍結海でミーミルに会う」
「スレイプニールがいれば、妖精郷内を瞬間移動できる」
「ヒックリカエルはダジャレで世界をひっくり返し、闇に包む」
「雪山にドラゴンゾンビがいる」
「鳥籠の木には偽女王が捕まっている」
(レベル11以上でイベント発生)
「虹の根元には、魔神召喚の門が築かれている」
「魔女の名前はネアン。邪妖の女神を目指している」
「崩壊しかけている妖精郷を救う」
冒険達成度:転移の魔法陣の封印を解除した+2%
「妖精王からの帰還者」の称号を得た+2%
マルキとロッテの再会+2%
合計45%
(当記事 完)