ふだんの牙狼は、都会の闇に潜むホラー(化け物)退治の話ですが、
今回は、非常に力の入った番外編。
半分は、時代劇です。オープニングもいつもと違って、「東北新社創立50周年記念の時代劇映画」の趣き。
いつものルーチンとは全く違うぞ、と。
主人公は、妖刀ホラーのカゲミツに接触した江戸時代の剣客・猪狩重蔵。
不治の病に冒されながらも、強者との戦いを望む彼が、ホラーに憑依された人斬り右京と戦い、かろうじて勝利するものの、自らも病が悪化し血を吐く。
そこで、生き永らえるべく、妖刀と契約するわけですね。
「病を癒す代わりに、人の血を吸わせろ」と。
「オレの望みは、強き者と戦うことだ」と宣言した彼は、ホラーと契約をかわします。
ここまでが、時代劇モード。
妖刀・現代編
侍の時代にホラーと契約した重蔵は、病を癒すため、長い眠りに就きます。そして、目覚めると現代……という「SFソードキル」状態。
ここでホラーは、人斬りを命じますが、重蔵は遭遇する人間が皆、戦闘能力を持たない一般市民であることに気付き、「町人が斬れるか」と人斬りを拒みます。
ヤクザに絡まれもしますが、侍の殺気を向けると、相手の方が怖気づくという描写。
そして、あてもなく歩いていると、魔戒騎士・零とホラーの戦いに遭遇。
そう、今回の話には、牙狼こと鋼牙は登場せず、6話同様、零がメイン。
零の剣さばきに、「自分の戦うべき相手」を見い出した重蔵が、彼との戦いに命と魂をかける様が、豪華なアクションで描かれる回なわけで。
人は斬らず、強敵との戦いのみを求める侍の生き様、死に様が濃厚に描写されます。
ホラーの方も、しきりに「人の生き血」を求めるのですが、重蔵は「自分は人斬りに堕するつもりはない」と拒み通し、自ら切腹。しかし、零と戦いたい執念から、死と、ホラーの呪縛をも凌駕し、ホラーの力を手に入れた侍として転生。
零も、最初は「自分の使命はホラーと戦うことだけ」と、重蔵の挑戦を断っていたのですが、自らホラーとなってまで挑戦してくる相手と、決着をつける覚悟を固めます。
結果は、死闘の末に零の勝ち、なんですけど、
その過程で、重蔵がそこまで強敵との戦いにこだわった理由として、「昔、少年だった頃、魔戒騎士の戦いを目撃し、その戦いに魅了され、それを越える剣士になることを誓った」というエピソードが示されます。
そして、零に敗れて、「だが、オレは後悔していない。最強の男とやり合えたのだからな」と言い残す重蔵に対して、零は「オレは最強じゃない。オレより強い男はいる。黄金の鎧の男だ」と正直に告げます。
それを聞いたときに、重蔵が複雑な心境ながら、納得した表情で息絶え、亡骸が白骨化する過程が、何とも味わい深かったり。
一本の大作時代劇を、30分で視聴できた、という非常に密度の高かった回でした。