塔への侵入者
晶華「さて、14日の土曜日だけど、昼間は特に何も起こらなかったわね。このまま何も起こらなくて、全てはNOVAちゃんの杞憂でしたってことになればいいんだけど」
ケイPマーク2『油断してはなりません、晶華ママ。事件が起こる可能性が高いのは夜、と古来から決まっています』
晶華「だけど、よりによって何で今日が14日の土曜日なのよ。できれば、今夜は『仮面ライダークウガ』をYouTubeで見たいのに。前回はキノコ怪人の毒攻撃で雄介さんが大ピンチで続きが気になるんだから。ケイソンが出て来たら、絶対に文句を言ってやる」
ケイPマーク2『ん? 塔に接近する影あり。パターン青、シロです』
晶華「使徒なら、すぐにシンジ君を呼ばないと」
ケイP『シンジ君って誰ですか?』
晶華「いたじゃない。NOVAちゃんのストーカーやってて、コメント欄に変なことをいろいろ書いて、『よしりん何ちゃら』ってハンドル使って、通称シンジって呼ばれていた人」
ケイP『今もいますよ。名前を変えて、アステロイド観測所のコメント欄に出没しております。20周年記念でマスターNOVAが忙しいから相手できないって記事で書いているのに、12日もまた空気の読めないコメントを入れて、当面放置されています。この時期にブログコメントを入れるなら、せめて「20周年おめでとう」の一言ぐらい述べるのが社交的マナーだと考えますが、それはともかく、そんな人をこっちに呼んで、一体どうすると言うのです?』
晶華「悪霊と戦ってもらうのよ。悪霊VS後ろ向きネガティブパワーのどちらが勝つか、見てみたい読者の人もいるのではないかしら? いわゆる目には目を、的な何か?」
ケイP『そんなヨドンだ、つまらない戦いを見たい奇特な読者がどれだけいるか分かりませんが、彼はマスターNOVAに当ブログでの書き込み禁止処分を食らったままなので、こちらにコメントすることは許されない身です。まあ、できることがあるとしたら、アステロイドで「20周年を祝う」ことぐらいでしょうか』
晶華「うん、こっちは絵師の人の応援の声が耳に届いて、勇気100倍だし、これなら使徒が来ても大丈夫だと思う」
ケイP『使徒ではなく、シロですよ。それとリトルな青龍くん』
晶華「え? シロ君とリウ君? だったら、どうして直接、塔の中に飛び込んで来ずに、外から接近してくるのよ。それに紛らわしいBGMを流さないで。てっきりエヴァの使徒かと思ったじゃない」
ケイP『それはこちらです』
晶華「どっちも同じようなものじゃない?」
ケイP『同じようなものですね。まあ、エヴァとゴジラはシンカリオンを通じてリンクしているという話ですし、もうすぐそこにウルトラ時空もつながるのではないか、と予想されます』
晶華「とにかく二人がお手伝いに来たんだったら、すぐに迎えてあげないと。今はどこにいるの?」
ケイP『塔の中のダンジョンを駆け抜けて、ここまで上がって来る途中ですね。うまくトラップを避け、強敵とは戦わずに逃げたりしながら、最小限の労力とスピードで迷宮突破。さすがは忍者、と言ったところでしょうか』
晶華「何で、そんな風に探知できるのよ」
ケイP『だって、マスターNOVAが塔の中のダンジョンのマップを、私の中にインプットしてくれていますからね。それに塔内の管理オペレートは私の仕事です』
晶華「知らなかった」
ケイP『晶華ママがマスターとお喋りしている間に、私は私の仕事をきちんとしていたのですよ。正に縁の下の力持ちといったところでしょうか、ハハハ』
晶華「もう一つ聞いていい、KPちゃん? どうして、今回はそんな口調なの? 前の記事の『おいら』とか『ピプ』はどこに行ったの?」
ケイP『今回はシリアスなバトル編を予定しているみたいなので、日常編の口調じゃコメディーになるだろうと空気を読んでみたのです。空気を読むのは、人間性の一つですからね。まあ、たまに、どうしようもなく空気を読めない人もいらっしゃいますが』
晶華「そんな人の話は、もういいわ。それより、白青忍者の人たちよ。今どうなってる?」
ケイP「どうやら、ダンジョンを突破して、まもなく到着するようですね。3、2、1……」
シロ「(扉を開けて)やあ、アッキー。まだトラブルは発生していないようだな。邪神Kって恐ろしい悪霊が出現するって情報を聞いて、辺りをざっと探ってみたけど、今はまだ平和みたいだから、ついでにいろいろ食材を狩って来た。アリナ様から託されたホールディングバッグにいっぱい詰め込んだから、後で仕分けを手伝ってくれ」
リトル「ふう、ふう、シロ姉さんのスピードに付いて行くのは大変だったですぅ」
シロ「それでも、だいぶ付いて来れるようになったじゃないか。これなら、琉球忍者下忍の資格を得る日も、遠くないだろう」
晶華「……あのう、二人は何で塔のダンジョンみたいな危険な場所を、わざわざ駆け抜けてきたわけ?」
シロ「え? ここってそのための修行場じゃないのか? 日頃の運動不足を解消するための、塔内にいながら経験値稼ぎができるためのダンジョン。さすがは新星さまだよ、このような施設を用意して、日常生活の中で自分を鍛えられるように設計するなんて。これこそが、あの人の強さの秘訣だったんだなあって」
リトル「まさに、暮らしの中に修行あり。ニキニキですぅ」
晶華「そんなはずはないって思うんだけど……」
湖の恐怖
シロ「……それで、今のところ、まだ悪霊らしき兆候は見られない、と言うんだな?」
晶華「ええ。私とKPちゃんの目が節穴じゃなければ、この塔の周辺の守りは万全よ」
ケイP『まあ、シロさんの超忍者スピードの前には、容易く突破を許しましたけど、その動向は問題なく察知できていましたよ』
シロ「ケイPが言うなら、間違いないだろうな。ボクがここを簡単に突破できたのは、何度もダンジョンを走り回って、比較的安全なルートを熟知していたからだし。ただ、明らかに手に負えない危険が察知できる場所は、近づかないようにしているから、完全攻略とまでは行かないんだが。おおよその感覚だと、全体の20%ぐらいしか探索できていないと思う」
晶華「私は、この塔の中に、そんなダンジョンがあることを知ったのも最近なのに」
シロ「お前、自分の住んでいる場所だろう? どうして探検したいと思わないんだ? カラクリ仕掛けでいっぱいの忍者屋敷なんて、ボクならいっぱい探索したくなるんだが」
晶華「私の探索の舞台は、本の中よ。本の中には、現実世界よりも果てしない無限の時空間が広がっているんだから」
シロ「だからと言って、自分の周りの世界を疎かにしていいはずがない。『足は大地につけながら、目は広がる大空へ』と言うのが、ボクが新星さまより学んだ哲学だぞ。翔花も、お前も花粉症ガールって連中は地に足付けず、フワフワポンポン空を飛び回りすぎる。もっと、現実に生きてるって感じを見せないとプリキュアになれないぞ」
晶華「そんなことを、リナ老師の前で言ったりするの? 日野木アリナ様だって、花粉症ガール3号じゃない!」
シロ「うっ、さすがにアリナ様に対しては、そんなことは言えない……」
晶華「空を飛び回るのは、リナ老師だって同じでしょう? 鳥は飛び、獣は地を駆け、花は舞うのは当たり前じゃない。シーさんはスギ花粉に向かって、地を駆け回れって言うの?」
シロ「いや、さすがに、そこまでは言わないが……」
晶華「だったら、自分の獣忍者な価値観を花粉の精霊少女に押し付けないで。別に説教しに、ここに来たわけじゃないでしょう? 今夜は悪霊に備えて、20周年記念を盛大に盛り上げるための準備のために来たんじゃないの? 自分がここにいる目的を忘れちゃいけないわ」
シロ「うっ、確かにそうだな。ボクはまだまだ未熟だ。自分が今いる理由さえ忘れるなんて……」
晶華「勝った。それに一つ言っておくと、私だってプリキュアになったことぐらいあるんですからね。シーちゃんはその時、屋久島にいたから知らないと思うけど、この記事を見てよ」
シロ「何と。このボクの知らないところで、アリナ様がキュアフェニックスになっていただと?」
リトル「ゲンブさんまで、キュアゲンブになってるですぅ」
晶華「そうよ。2019年1月20日に最終回間際の『Hugっと!プリキュア』を視聴していた人たちは、明日パワワが満ちたおかげで老若男女みんなプリキュアになれたんだから。このキュアアッキーになった私に対して、よくもまあ『プリキュアになれない』なんて差別発言を口にしたわね。あなた、本放送を見てもいないのに、公式に盾突くつもり? 主題歌を百回聴いて、反省してなさい!」
【HUGっと!プリキュア】オープニング主題歌 「We can!!HUGっと!プリキュア」
【HUGっと!プリキュア】後期エンディング主題歌 「HUGっと!YELL FOR YOU」
シロ「_| ̄|○(がっくり膝をついて反省中)」
晶華「さて、口ゲンカを制したところで、今夜はもう、何も起こりそうにないわね。じゃあ、プレミア公開は見逃したけど、楽しみにしていたクウガさんが復活して、未確認生命体第26号のギノガをやっつける話を見て、スッキリした気分で今夜は寝ましょう。明日は明日で忙しくなるだろうし、今夜のケイソン復活はなしってことで。やっぱり、令和の光の前では、ケイソンさんも賞味期限が切れちゃったみたいね」
ケイP『いえ、そう断言するのは、まだ早いようです。クリスタル湖で次元の扉反応あり。巨大怪物体、出現します』
晶華「え? 巨大怪物体って? ケイソンじゃなくて」
ケイP『悪霊反応あり。しかし、それだけではありません。特定できない悪意の塊が湖の底から浮上中』
晶華「言葉だけじゃ分からないわ。モニターで映し出して」
ケイP『イメージ映像出ます』
晶華「こ、これは……」
リトル「もしかして、宇宙大怪獣ドゴラですかぁ?」
晶華「ほら、シーさん、起きて。這いつくばって反省している場合じゃないわよ。モニターに何かおかしなものが映っているんだから」
ケイP『全長150メートル大。塔の管理コンピューターに登録されているデータによると、種族:宇宙大怪獣ドゴラで間違いありません。さらに個体名:ケイPマーク1? えっ、もしかしてイチロー兄さん? そんなバカな……』
晶華「ちょ、ちょっと、KPちゃん? 大丈夫?」
ケイP(返事がない。ショックでこわれたようだ)
晶華「もう、どうなってるのよ。こっちのKPちゃんは、気が弱くて、すぐに思考回路がショートしてしまうし、あっちの巨大ドゴラはKPマーク1ちゃんだっていうし、シーさんは這いつくばって反省から立ち上がって来ないし、一体、私にどう対処しろって言うのよ。とりあえず、久々にピプペポパニック!って言ってみる〜」
謎の声『落ち着け、花粉症ガール!』
晶華「ん? この威厳ある声は?」
謎の声『おい、ビャッコの子、若きシーサーよ。いつまで、自分が未熟だと落ち込んでおる? そろそろ這い上がって来んか』
シロ「その声は、もしかして師匠?」
セイリュウ『ああ、リトルの体を借りて話しておる。とりあえず、何が起こっているか状況を解説するためにな。それもGMの仕事であるゆえに』
晶華「GMって、これはフェアリーガーデンの話じゃないでしょうに」
セイリュウ『黙って、わしの話を聞け、カシュミーラ・ミルモワール』
晶華「SWのキャラクターの名前で呼ばないで。今の私は、粉杉晶華なんだから」
セイリュウ『わしにとっては、カシュミーラの方が呼び慣れておる。とにかく、これはフェアリーガーデンにもまつわる話でもあるからして、わしはGMとして話す。お前たちが妖精郷に入った理由は何か?』
晶華「え? 妖精郷の女王になるためでしょ?」
セイリュウ『ゲーム内ではそれもあるが、元々はお前の姉、粉杉翔花とお供のケイPマーク1が異世界で行方不明になったので、捜索して救出するためだったはず』
晶華「居場所は分かったわよ。お姉ちゃんのアバターであるキャラクター、エマ・ショーカさんは吸血鬼の森で捕まっている。KPイチローちゃんは、そのボディーが〈エマの帽子〉、そのAIデータが〈エマのハンカチ〉って二つの象徴アイテムに分かれてしまった。言わば、体と心がバラバラの状態になったんだけど、私たちは現在〈エマの帽子〉のみ発見して、ハンカチの方はNOVAちゃんがGMになるっていう裏技を使って、どこにあるかまでは探り当てた」
セイリュウ『そうなのか。裏技を使って、探り当てたという話は初耳だな。時空魔術師は、そのような姑息な手まで使いおるのか』
晶華「状況もよく知らずに、姑息なんて勝手に決めつけないで。評価するなら、せめてこの記事から後のフェアリーガーデンを読んでからにした方がいいわよ。ハイラスおじさんにNOVAちゃん流のGM道を示すために、ハロウィン特別企画としてGM交代したんだから」
シロ「おい、アッキー。お前はセイリュウ師匠に何て口の聞き方をするんだ? 怖いもの知らずかよ」
晶華「怖いものならいっぱいあるけど、セイリュウさんは道理の分かる御方だから、熱意と誠意をもって話せば理解してくれる。怖いのは、道理も解さず、感情だけで攻撃してくる人間性を喪失した化け物よ。今のセイリュウさんはそうじゃない。でしょ?」
セイリュウ『まあ、感情的に叩き潰したい気持ちもないではないが、そんなことをして、ますます事態を悪化させるのも本意ではない。とにかく、お前たちが行方不明のケイPのボディである〈エマの帽子〉のみを発見し、心を発見するのが遅れたために、そこに悪霊の付け入る隙ができたのだ。悪霊ケイソンは自らに親和性の高いケイPの心を持たない肉体に憑依し、そこに別の悪霊までもが関与してきた』
晶華「別の悪霊って?」
晶華「ヤプールですって? そんな大物がどうして、私たちの日常おしゃべりブログに出現するのよ? 円谷公式さんの許可はちゃんと取ったの?」
セイリュウ『そんなことをわしに言われても、どうしようもない。とにかく、今、モニターに映っているドゴラ、元ケイPマーク1は、悪霊ケイソンと、それより恐ろしい異次元の悪魔ヤプールの器と化して、このクリスタル湖畔の地を侵食に現れたのだ。お前たちは、奴の襲撃からこの地を守らねばならん』
セイリュウ『無理じゃ』
晶華「どうしてよ?」
セイリュウ『時間が尽きたからな。このわしはGMとして、お前たちに情報だけを与えに来た。情報を受けとったお前たちは、この後の対処法を自分たちだけで……』
リトル「……あれ? みんな、どうしてリウの顔をじろじろ見ているのですかぁ? 何だか恥ずかしいですぅ」
シロ「どうやら、師匠との交信は途切れたようだ」
晶華「リウ君、もう一度、セイリュウ様に連絡がとれないの?」
リトル「無理ですぅ。ブルーソウルが輝きを失っているので、しばらくエネルギーの充填が必要なんですよぉ。時間が経てば、またつながるようになりますが、今すぐというわけには……」
晶華「こっちのKPちゃんも壊れたまんまだし、私たちだけで、全長150メートルの巨大怪物体にまで成長したKPドゴラちゃんなんて、どう対処しろって言うのよ〜」
(当記事 完。「第2話 誕生!父娘アーマー」につづく)