最後にWですが、これは作品の性質上、ストーリー展開的なネタバレはあまり書かない方がいいな、と。
理由は、この作品がミステリー、推理小説的な作品だから。
よって、断片的なポイントに絞ります。
まず、物語の大枠は、「左翔太郎が風邪をこじらせたために、フィリップが中心となって探偵活動を行なう番外編」と。
Wの本編の32話(サイクロンジョーカーエクストリーム初登場の回)と、33話の間に位置する話で、
翔太郎が動けず、フィリップが彼の代わりとして活動する中で、翔太郎の役割や絆を内省したりする点が、Wという物語世界(ただし33話まで)を通してみるような趣があって、面白かったです。
ミステリーとしても、「犯人は誰か」「ドーパントの能力は何か」といった推理面がTV本編よりも密度濃く描かれており、語り手が論理的なフィリップということもあって、凄く緻密な造りの長編作品となっております。
フィリップが単独活動する中で、メインのフォームはファングジョーカーになるわけですが、
途中でファングが破壊される中で、フォローに入ったシュラウドが、スカルの使っていたロストドライバーをフィリップに託します。
これによって、フィリップが単独変身したのが、本作オリジナルの「仮面ライダーサイクロン」。
まあ、フィリップは本書での経験で、翔太郎の大切さを痛感したから、2度とロストドライバーを使わない、と決意するのですけど、そのロストドライバーを後で翔太郎が使うことになる、と(劇場版および最終話)。
ええと、このロストドライバー、劇場版では「死んだスカルの導きで、事務所に隠されていた物を翔太郎が見つけ出す」という展開なんですが、演出は良くても、「何で、それが事務所に隠されていたんだよ? スカルが死ぬ前に、それを隠す余裕なんてなかったじゃん(あるいは、予備でもあったの?)」とツッコミがありまして、それを見事に本小説が補完した形になります。
あと、リボルギャリーやバイク類、メモリガジェットなどのギミック関係、そして情報屋の面々や、所長のスリッパ、所長や照井の口癖、そして園咲若菜などのWの世界観を構成する諸要素がほぼ抜かりなく登場します。
まあ、フィリップ視点では見えない井坂センセとかは出てませんが、それでもミュージアムの刺客とか、きちんと出てきますし、「Wの一つのエピソードとして、申し分ない出来」であることは間違いありません。
Wのフォームチェンジで言うなら、ルナとトリガーは使ってないかな。ヒートとメタルは多用してますね。序盤の翔太郎が風邪を引く前と、終盤の翔太郎復帰後。
で、サイクロンジョーカーエクストリーム(CJX)の凄さが、本書できちんと描写されていたりも。
終盤、多数のドーパント集団(13体)が出現するのですが、それに対して、Wとアクセルの2人で迎え撃つ。
しかし、CJXの分析力(敵の弱点を探知)と戦闘力で、数の差を瞬く間に覆す展開は、TV本編以上に盛り上がる戦いとなっています。戦闘シーンだけなら、劇場版のお祭り感覚ですね。
最後に、フィリップに対して好意を寄せるツンデレお嬢さま(依頼人)との関係が、ミステリーに華を添えるわけですが、
翔太郎曰く、「女の涙はときには狂気になるんだ。俺の実体験さ……!」というセリフに象徴されるようなドンデン返しもあったりして、いろいろ気をもませてくれるストーリー。
おっと、この部分をこれ以上語ると、ミステリーの興が冷めてしまうので、ここまでにしておきます。
総じて、オーズファンとWファンは、小説の出来に満足できると思います。
カブトファンは、まあ新しい楽しさよりも、終盤の展開の思い出を確認する記念として買うといいかな。
PS:オーズの欠点はメインヒロインの「比奈ちゃん」が全く登場しないこと。「里中さん」はバース編に出るんだけど。
PS2:カブトの小説で読みたかったのは、「矢車さんを掘り下げること」とか、「シシーラワーム化したひよりの視点」とか、いろいろあったんだけどね。実のところ、最終決戦よりも、それ以外の話にカブトの面白さはあったと思うんだけど、そういう部分も一切省いちゃったからなあ。
PS3:Wの場合は、完成度が高くて、欠点と感じる部分が見当たらない。
以上が、自分の評価です。次は、今月に発売がズレ込んだ「クウガ」が楽しみ。