Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

商売人8話

 忙しくなっている時期だけど、気合充填して継続中。

第8話「夢売ります手折れ花」

 コメント欄で、お勧めとあった回。
 実際に見てみて納得。
 前回は「嘘と真実」が入り乱れた回でしたが、今回は「虚構と真実」が入り乱れた回で、前回以上に凝っています。
 もっと具体的に言うなら、「嘘つきと偽者」ばかりだった前回に対し、
 今回は「絵空事と思われた絵草子の物語が実話だったということで、その女主人公に惚れ込んだ元・絵草子屋の正八が、彼女の仇を討つことを仲間に依頼する話」です。劇中で、実写の最中に、しばしば挿入される浮世絵が物語の幻想性を高めています。この回のために、わざわざ何枚も浮世絵を描く辺り、本当に凝った画作りと言えましょう。
 もう、商売人の話なんかどうでもよくて、主役は絵草子のヒロイン・お菊さんになっております。


 さて、そのお菊さん、幼少期に父親の潔癖な役人を悪人に殺されており、その後、武芸を磨いて成長。悪人への復讐を行いながら、その経過を、闇の絵草子にして江戸市中に流布しているわけですね。
 言わば、同人誌『風都・仕置人疾る』*1みたいなものですな。
 で、こういう話なので、出版関係者や同人誌にタッチしたことのある人には、正八に程よく感情移入できちゃうわけで(笑)。あるマンガやフィクションにハマってみたら、そこで描かれる事件のとおりに現実が動いちゃう……というのは、いろいろ想像力を刺激します。


 それでも、本作は必殺シリーズ
 お菊さんがどれだけ強くても、本懐を遂げられてしまえば、裏稼業の出番がありません。
 それじゃ困るということで、結局、「手折れ花」として散ってしまいます。
 余談ながら、このサブタイトルも6話「手折られ花は怨み花」に似ていますが、中身は本編と密接にリンクした素晴らしいもの。
 まず、主要キャラが「お菊さん」ですから、正に「花」です。
 しかも、「夢売ります」の部分が、夢物語の「絵草子」に集約されているので、きちんと本編の内容を示しています。
 さらに、「夢」はエンディングテーマ「夢ん中」を、「売ります」は作品タイトル「商売人」を、「手折れ花」はオープニングナレーションを示している辺り、もう、この番組にふさわしい完璧なサブタイトルと言っても過言ではなりません。
 で、こんな見事なサブタイトルの話を書いたのは誰? と脚本家をチェックすると「長田紀生」。必殺シリーズではこの一本だけですが、特撮ものでは「キャプテンウルトラ」、そして、他にヤクザ物の映画脚本を書いている人みたいですな。今回調べて印象的だったのは、梶芽衣子主演の『修羅雪姫』(1973)。その内容は、「家族を殺された女・雪が、剣豪でもあった和尚の元で厳しい修行を身に着けての復讐譚」。本話のお菊さんは、その設定をほぼ踏襲して、時代劇にアレンジしています。言わば、必殺風『修羅雪姫』となるわけですな。
 ちなみに、『修羅雪姫』の音楽担当は平尾昌晃氏で、必殺シリーズの代表的作曲家ですが、本作・商売人は担当していないので、つながりそうでつながらないのが、薀蓄ネタとしてはどことなくもどかしい。なお、商売人の時(78年)辺りは、この人、大場久美子の『コメットさん』の主題歌とか、『キャプテンハーロック』とか『銀河鉄道999』とか『サイボーグ009』とか『宇宙空母ブルーノア』とかの主題歌をいろいろ作曲していて、NOVAのSFアニメ魂などに大きな影響を与えています。


 って、ここまで書いて気付く。
 平尾昌晃氏の話に展開しても、「商売人」とはつながってこないよ。「商売人」の作曲家は、森田公一氏なんだから。
 どうやって話を引き戻す? と思いきや、あ、劇場版『サイボーグ009 超銀河伝説』の主題歌は、森田氏作曲だ。何とかつながった(笑)。


 ということで、森田氏の曲に乗って、商売人の活動開始です。
 ただし、仕置料は、正八のなけなしの金じゃ、ケチな八丁堀を動かすには至りません。
 必死に「足力あんま」の仕事*2をしても、大した収入にはならないのですが、お菊さんが形見に遺した絵草子原稿が助けになります。
 元絵草子屋の正八、という設定が非常に生きてくるわけですね。「出版なんて簡単だよ。適当な版元を探して、絵師を見つければ」と熱を入れて主張する正八。こういうノリは、人によっては裏稼業よりも感情移入できるかも(笑)。
 そして、絵師の当てですが、踊りの師匠のおせいの似姿を描きたい、という絵師がいまして、まあ、おせいをモデルに、お菊さんの新たな絵草子の制作作業が始まると。まさに、「必殺同人誌製作人」ですな。


 で、人気絵草子の出版を経て無事に仕置料もゲットして、後は絵草子の物語どおりに復讐劇の始まりです。
 主役はおせい。結局、1人で3人の悪人にとどめを刺す大活躍。
 主水さんは、用心棒の侍どもをバッタバッタと切り倒します。この辺のノリは、「寄らば斬るぞ」の剣劇人ですな。
 新さんの方は、おせいのサポートに徹します。帯で相手の女を絡めとって、とどめはおせいが刺します。まず一人。
 強敵の侍は短筒を持っています。おせいを狙おうとしたところ、その撃鉄の部分に、新さんがクシを投げ刺して発射不可能に。その間に、おせいは悠々と商人を倒して、2人め。
 そして、ラスボスの侍は、何とかクシを抜き取って銃を使おうとするのですが、結局、新さんの妨害で銃を落としてしまい、おせいの仕置を受けてしまいます。
 ……ええと、侍だったら、銃が使えないときは、すかさず刀を抜けよ、とツッコミ入れたくなるのですが、まあ、剣術には自信がなかったってことですね。


 いやあ、いろいろ書いたけど、それに値するほど、まっこと面白い話でござったなりよ。

*1:仮面ライダーWの7話と8話に登場したコックローチ・ドーパント=伊刈の描いた本。自分の裏稼業を予告マンガにして公開している点は、現代版の商売人8話と言えなくもない。まあ、ヒーローがゴキブリなので、商売人に見られた詩情は雲散霧消しているけれど。

*2:『新仕置人』で絵草子屋をしていた正八は、今作で、燈台守りをしながら、昼間は「足力(そくりき)あんま」をしている。まあ、あんま業はかつての仲間だった骨接ぎ屋の鉄が得意だったから、絵草子を見せてやる代わりに、初歩の技術を教えてもらったんだろう、と設定補足すると楽しいですね。