Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

商売人19話「親にないしょの片道切符」

 ちょっと不思議に感じた話。
 前回の300回記念の後だからか、過去の必殺と絡まる部分が散見されて、自分的にはマニアックに面白いと思いつつ、そこはかとない違和感も覚えたりして。


 物語としては、大店の若旦那が外国に行きたがっていて、その夢を利用した悪人の口車に乗って、殺害される話。
 『龍馬伝』なんかを見ている現状では、夢見る若者なんてのは、ちょっとしたツボと言えるし、「ビューティフル・ドリーマー」的な作風は決して嫌いじゃない。でも、本話のキャラは、あまりにも純粋すぎて、周りが見えていないことが滑稽にも思えてくる。
 龍馬の場合は、「自分が何も分かっていないことを自覚し、どうしたらいいのか? と本気で悩みながら、いろいろな人から学んで成長する真摯な姿勢」が共感できる。それに対して、本話の若旦那は、「自分の夢を理解しない大人に対して、『世界に目を向けない臆病者』呼ばわりし、現実を見ようとしない独り善がりな姿勢」が痛い。


 まあ、あくまで大人の物語である、商売人にはそぐわない話というか。
 若旦那、後年の順之助と絡んでいれば、いいキャラに描かれていたろうな、と思いつつ。


 さて、自分が気になった「過去の必殺と絡まる部分」ですが。


 まず、外国に行きたいという夢を語る若旦那と、それを横で聞く主水。
 こういうシチュエーションで思い出すのは、やはり『暗闇仕留人』糸井貢。
 本作は、黒船来航前なので、「時をかけるおじさん」である中村主水が、黒船来航後に知り合った糸井貢のことを知っているかどうか、はっきりしません。て言うか、貢のことを知っていれば、若旦那の話からいろいろ思い出すこともあるはず。
 当然、本話の主水は、外国に行きたいという夢を持ちながら殺し屋稼業の中で命を落とした貢のことは知らない、と考えるべきでしょう。でも、視聴する立場としては、そういう「過去の主水」を知った目で見るため、何とも言えない不思議なデジャブに襲われるわけで。


 次に、行方不明になった息子の捜索を大店の主人から頼まれる主水。
 袖の下と思って渡された「おむすび」を、ほじくり返します。
 ええと、「おむすびの中に一両」ってのは、『仕置屋稼業』最終話で、市松に託した名演出を思い出しました。奉行所に囚われた市松を、主水は悩んだ末に、逃がす選択をします。しかし、市松は主水の気持ちを信用できずにいた。あくまで、「最初から助けるつもりはなく、たまたま偶然、どさくさ紛れにドジを踏んでしまったために、逃がす形になってしまった」のでは? と疑念が生じるわけですね。
 でも、主水から託された「おむすびの中に一両」が入っていたことから、主水の真意を悟るんですね。そんな準備がいいのは、「最初から助けるつもりがあった」ことを如実に示しているわけです。言葉にしないで、あくまで物による演出効果で、キャラの心情を描写する。ナイスな映像でした。
 そんな名シーンを思い出した「おむすび」。
 でも、大店の主人は、そこまで粋じゃなかった。おむすびはただのおむすびでしかなく、主水は腹を立てて、正八にほじくり返された握り飯をやります。
 う〜ん、NOVAの回顧も空回り。


 さて、悪党の手に捕まった若旦那。拷問器具でひどい目にあっています。
 その姿に、『新仕置人』最終話の巳代松の姿がかぶりました。無惨。


 でも、何とかぼろぼろの姿で釈放された若旦那。必死に逃げようとする、その首に巻きつくのは……鎖。う〜ん、どうせなら「元結を切られた髪の毛」を巻きつけてほしかった。そうすれば、『仕業人』赤井剣之介だ〜、と喜んでネタにしていたのに……って、勝手に妄想回路で補完して、ネタにしてますが(爆)。
 どっちにしろ、鎖で締め殺すなんてのは、ちょっとえげつないですね。屋根裏で見ている正八が、思わず目をそらしたのも納得です。


 何だか、ここまで来ると、無理矢理、過去の必殺と結び付けている気もしますが、そういうイメージが自然に浮かんだんだから仕方ない。
 さらに続けます。
 息子を殺された大店主人の依頼で、仇討ちをする商売人。
 小船の上で夜鷹の女と乳繰り合っている悪党に対しては、新次が水中から忍んできて、首筋をプスリ。
 夜鷹の姉さんは、気付けば自分の相方が死んでいるので、キャー。
 思わず、『新仕置人』最終話の念仏の鉄の死を思い出しました。合掌。
 

 あとは、おせいと八丁堀が、それぞれ自分の的を始末して終了。そこは特筆するところなし。
 でも、おせい、日常会話で、突然、新さんに「あなたの子供を作っていれば良かった」なんて、彼女らしくないセリフを口にします。う〜ん、『仕事屋』の最終話で、実の子の政吉の壮絶な最期を目にした彼女とは思えません。その辺りが違和感だったり。


 脚本家の人(南谷ヒロミ)は、『仕業人』20話に続いて、本作が執筆2本目。あまり、必殺シリーズの文芸設定を熟知していないのかもしれません。貢のことも、おむすびのことも、たぶん知らなかった? こっちが勝手に結び付けただけ? 
 分からないことばかりですが、分かっていること、ただ一つ。
 何だかんだ言って、この人、後の『新仕事人』では、全55話中、12話と意外にたくさん書いているんですね。メインライターというわけではないのですが、実は同作で一番たくさん書いているライターだったりします。ええと、2位が石森史郎9話分、3位が吉田剛8話分。すると、後期必殺の方向性を決めたライターさんの一人と考えられるわけで。
 それが、どれだけ凄いことかというと、『主水猫を逮捕する』とか『主水金魚の世話する』などの話を書いた人と考えれば……あまり凄さが分かるわけないか(苦笑)。ある意味、中村主水のギャグ化路線に一役買った人であることは間違いないですな。
 本話でも、ラストでバカなことを言って、正八にバカにされる「痛い主水」を見せてくれますしね。その意味では、後期の作風に近い話だったということで。


 うむ、前期と後期をつなぐミッシングリンク的な回と言えば、何となくほめている感じだな。じゃ、そういうことで(笑)。